ご相談に至った経緯
Mさんは、作物を栽培する会社に、次長という役職で中途採用されました。
農業に従事する労働者については、法律上、深夜業を除く残業代の規定は適用されないこととされており、会社の業務は作物の栽培であったこと、Mさんが次長の地位として採用されており、管理職に該当するとされていたことから、Mさんには残業代が支給されていませんでした。
このような状況で、Mさんの残業時間は長時間のものとなっており、Mさんは体調を崩してしまいました。さらに、会社から転勤や降格を通告されたことから、最終的には合意退職をすることになりました。
ご相談内容
Mさんは、体調を崩すほどの長時間労働をさせられたにもかかわらず、残業代が支給されなかったうえ、転勤や降格を言い渡されて退職をせざるをえなくなったことから、相談にいらっしゃいました。
弁護士は、Mさんが勤務していた会社は、作物を栽培していたとはいえ、工場ともいえる室内環境で栽培をしており、温度や光などを人工的に管理していたことから、Mさんは農業に従事する労働者とはいえない可能性があること、Mさんは次長という地位にいたものの、仕事内容は会社がトップダウン式に決めることになっていたこと等から、管理監督者には該当しない可能性があることを説明しました。
Mさんは、会社から残業代が支給されなかったことに納得ができず、弁護士に交渉を依頼することにしました。
ベリーベストの対応とその結果
弁護士は、早速、会社に対し、Mさんは農業に従事する労働者とはいえないこと、Mさんは管理監督者とはいえないことを指摘し、残業代の支払いを請求する旨の内容証明郵便を送付しました。
これに対し、会社も弁護士に依頼したため、弁護士同士の交渉になりました。
しかし、会社側の弁護士は、Mさんが農業に従事する労働者であること、Mさんが管理職として採用されており管理監督者に該当することを主張し、残業代の支払いを拒否しました。
そのため、弁護士は、Mさんと打ち合わせをし、会社に対して未払い残業代等を請求すべく訴訟を提起することにしました。
訴訟の第一審では、裁判所から和解勧告もされましたが、会社との間で折り合いがつかず、判決となり、請求金額の一部が認められました。
これに対し、会社側が控訴してきたため、弁護士も附帯控訴をすることにしました。控訴審でも裁判所を交えて和解の話になりましたが、会社側が応じなかったため、判決となりました。控訴審でも第一審とほぼ同程度の金額が認められました。
控訴審判決に対しては、会社側もMさんも最高裁判所に上告をしたところ、最高裁判所から上告を受理しないという決定が出たため、控訴審の判決が確定しました。
結果として、請求金額全額ではないものの、かなりの金額の残業代を会社から受け取ることができました。