小林 巧

ベリーベストのAI開発を手掛ける、元エンジニア弁護士。
「AI×法律」で、蓄積された知識と
ノウハウの最大化を目指す

小林 巧Takumi Kobayashi
アソシエイト弁護士 / 73期
#弁護士兼エンジニア
※所属や役職、業務内容はインタビュー当時のものです。
ITベンチャー企業から弁護士に転身。
ベリーベストを選んだのは、豊富な実績・ノウハウから学べることが多かったから
ベリーベストに入所する前の経歴と、弁護士になったきっかけを教えてください。

工業系の大学院を卒業し、ITベンチャー企業でブラウザー開発をしていました。大学や大学院で研究していたのはAIの領域です。当時はAIがここまで進化し、活用されるようになるとは想像しておらず、AI関連ではない企業に就職しました。当時の仕事はグローバルで面白みがあったのですが、5年半ほど勤めた頃、情報分野で「学んだ知識や技能が使い捨てになってしまうこと」に疑問を感じるようになりました。

そこで「学んだことを長く生かせる仕事をしたい」と考え、かねてより興味があった知的財産権など法律について勉強をスタートしました。ちょうどその頃父が亡くなり、これが自分の人生について今一度考える契機になりました。その結果「一生ものの技術力となる、法律の力で生きていこう」と法律家になることを決意したんです。

理系から文系への転換だと思いますが、弁護士になろうと決めたとき、どのように法律を学んだのですか?

法律においてはまったくの素人で年齢は30代前半でしたので、法科大学院には進まず予備試験を目指すことにしました。1冊の参考書をボロボロになるまで使い尽くすような勉強が好きだったので独学で法律に向き合い、司法試験に合格しました。

前職のときから「分類すること」が好きで、法律の学説や見解を系統立ててまとめる作業に面白みを感じましたね。没頭しすぎるので、ほどほどにするよう気をつけていたほどです(笑)。合格するまでは苦しいこともありましたが、自分が蓄積してきたノートの束を前にすると、「続けさえすれば不可能はない!」という確信が持てました。

数ある法律事務所の中から、ベリーベストを選んだ理由を教えてください。

「一生ものの技術力を手に入れよう」と思っていたので、幅広い分野について学び、挑戦できる環境を探した結果、ベリーベストにたどり着きました。
もっとも魅力に感じたのは、教育体制です。事務所説明会で「所内の勉強会や研修内容は全てアーカイブに残してある」と聞き、「それは是が非でも見てみたい」と思いました(笑)。ベリーベストといえば、全国に数多くの事務所を持ち、所属弁護士数も案件数も多い事務所です。そのため幅広い分野の最先端の知識が無限に詰まっているはずだと思い、それが学び放題だというのなら、こんなに魅力的なことはないと思ったんです。

エンジニアとして、弁護士業務を効率化するAI開発に着手。
法律事務所で求められる「セキュアなシステム」を創る
現在はAI開発に携わっているとのことですが、どのようなきっかけでこの業務に携わることになったのですか。

入所後は千葉オフィスで離婚や労働、交通事故など通常の弁護士業務を行っていました。しかし弁護士として働くうちに、エンジニアとしての一面が顔を出し、「これはAIにやらせたい」という業務が目につくようになったんです。確かに事務所に蓄積されているノウハウは膨大でしたが、多いからこそフル活用し切れていないようにも見えました。

「AIを活用すれば業務を効率化、あるいは成果を最大化できるのでは」と考えるようになった頃、チャットGPTがリリースされ、「ベリーベストの知能の蓄積とAIの相乗効果ははかり知れない」とアイデアが膨らみました。そして「これは自分の手でやってみたい!」と一念発起し、その後作りたいシステム案をいくつか実装して代表に直接メールを送り、プレゼンテーションしました。

先生ご自身でサンプルを実装してから代表に提案されたのですね。具体的にどのようなアイデアだったのでしょうか。

最初に提案したのは、チャットボットを使ってお客さまからの最初のご相談を受けるシステムです。相談後は、条件に合った弁護士が提示される仕組みになっており、よりスムーズに案件を引き受けることができます。弁護士向けには、録音データの文字起こしや訴状の書き起こしなどをAIがやってくれるソフトを考案しました。

もちろん、文字起こしサービスは外部にも存在しています。ただ、弁護士が使うとなると守秘義務違反にならない仕組みでなくてはなりません。外部システムはその点が難しいという課題があったため、事務所のローカルネットワーク内で運用する「オンプレミス型システム」によって、よりセキュアなシステムを構築しようとしたわけです。
(※オンプレミスとはサーバーやネットワーク機器、ソフトウエアなどを自社で保有し運用するシステムの利用形態のこと。対義:クラウドシステム)

現在、他の法律事務所でも、個人情報や機密情報、著作権法違反をクリアにすることがDX化やAI導入時の課題になっています。弁護士としてそういった点は見過ごせないため、事務所内で内製して課題点をクリアしながら構築しています。

お客さまのために蓄積されたノウハウを最大限に引き出す。
それを目指して、AIと法律の橋渡し役を担っていきたい
弁護士である小林先生が、AI開発に取り組む意義をどう感じていますか。

現在、AI開発のチームメンバーは10人ほどで、私以外はエンジニアです。私は技術顧問として、弁護士が働く現場で「あったらうれしいもの」を提案したり、技術的な限界に直面した際に突破口を開いたりするような役割です。アイデアをメンバーで共有しながら、形にしていく作業を繰り返しています。

私がAI開発に取り組むことには大きく2つのメリットがあると思っています。ひとつは私自身が実際にソフトを使う弁護士だということ、そしてもうひとつはAIに学ばせるべき素材を把握していることです。これらによりゴールがより見えやすくなります。
「とはいえ弁護士自らがやらなくても……」という意見もあるかもしれませんが、元エンジニアなので誰かが開発してくれるのを待ちきれなかったんですよね(笑)。経験を生かして自分で挑戦したいと思いました。それを実践している今、法律実務とAI実務の両方が分かっているからこそ、両者の橋渡しができるのだと自負しています。

AIが導入されることで、弁護士やパラリーガルの仕事は変わるのでしょうか。

「弁護士×AI」という掛け算を思いつく人は多いでしょう。AIが出てきたときには、「弁護士はいらなくなるのでは」という声があったほどです。しかし、私は少なくとも今の技術力で弁護士がいらなくなるとは思っていません。そもそもAIが弁護士の代わりを担った場合、お客さまは「AIで武装した自分」で法廷に立たなければならず、これはしんどいです。多くの人はそれよりも「AIを有効活用できる法的な専門家に、代わりに戦ってほしい」と願うのではないでしょうか。

さらに、弁護士を支える人たちの仕事は、かなり楽になると予測しています。文字起こしや誤字チェックなどの時間がかかる単純作業は社内パソコンに搭載されたAIがやってくれるので、ほかの重要な業務に注力する時間や余裕ができるでしょう。AIを活用することで、豊富な案件の中にあるノウハウを最大限に引き出すことは、お客さまにとっても大きなメリットとなるはずです。目指すのは「蓄積された知識、技能の最大化」です。AI開発によって弁護士やパラリーガル、そしてお客さまを幸せにすることが、私の目指すゴールです。

エンジニア兼法律家として挑戦し続けたい。
独自性や技術力を磨けるベリーベストの環境に感謝
今後のご自身のキャリアステップについて、教えてください。

エンジニアとしてAIを突き詰めたいという思いと同時に、弁護士としての能力も生かしたいという欲張りな思いがあります。たとえば挑戦してみたいのは、企業のコンサルティングです。ソフトウエア開発やシステムが絡んだ新事業をスタートする際に、技術と法律の両面から踏み込んだコンサルができることが私の強みです。法律面の抜け漏れがなく、かつ使いやすいサービスを提案する仕事は、ますますニーズが高まってくるはずだと思います。その領域で活躍できるようになりたいですね。

とはいえまずは、ベリーベストで有用なシステムを確立させることを目指しています。これを実証モデルとし、「法律を順守する法律事務所で実現されているシステムだから安心して導入できる」と対外的に示せるよう、横展開できる形まで持っていくつもりです。

ベリーベストで働くことを、どのように感じていますか。

挑戦したい人を支えようという風土があり、さらに「成果を出した人には待遇が伴うべき」という哲学もあります。そういう意味で非常に働きやすい職場です。

代表にAI開発のプレゼンテーションをしたときにも、新しいものや面白そうなものに積極的に取り組んでいくマインドを持っていらっしゃったので、とても心強かったです。開発を進めていくとなったときのスピードも迅速で、本当にありがたく、絶対によいものを作り上げようと決意したのを覚えています。

今は、毎日が楽しくて仕方ありません。興味のある得意分野が2つそろい、その開発に携われています。自分の力を最大限に生かして挑戦できるため、非常に恵まれた環境に身を置いていると感じています。

どのような方がベリーベストに向いていると感じていますか。

自分のやり方にこだわりすぎず、先輩方のノウハウをどんどん学び、業務に生かしたい人には、素晴らしい環境です。さまざまなバックグラウンドを持つ弁護士が多く在籍しているので、組織の中で先輩方から幅広い学びを得つつ、知識や経験を高められます。

また、多様な分野に精通した弁護士やパラリーガルに囲まれつつ、その中で独自の価値を磨き、オンリーワンの弁護士を目指したいという方にもおすすめです。私自身がAI開発を担当していますので、AIを生かした働き方改革の中で、新しい可能性を見いだしたいという方もお待ちしています。

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