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削除請求の5つの方法

Five Ways to Remove Online Defamatory Statements

企業におけるネット風評対策の重要性

企業におけるネット風評対策の重要性

インターネットの普及により、今や誰もが簡単に情報を入手することができるようになっています。スマートフォンはその利用のしやすさゆえに、情報へのアクセスが時間場所を問わず容易になるとともに、SNSの発達により、情報を得るだけでなく、自ら情報を発信することも簡単にできるようになりました。

また、いち早く世の中のできごとや動きを知るメディアとしてインターネットを利用する割合が増加傾向にあり、従来とは異なる情報の流れが生じています。
すなわち、ある者が特定の情報に触れた時、その情報を他者へも知らせたいということで情報を共有するという行動に出ます。いわゆる拡散です。そういったところからすると、情報の検索結果がどういった内容になるかで、伝わる情報が大きく変わることになります。

情報が容易に手に入る、情報を発信できることは便利であり社会へのアクセスの多様性が確保できる反面、誤りや企業価値を低下させる内容があったりすると、不特定多数の者に短時間でその情報が伝わるため、思いがけない被害が拡大する可能性が高いです。
そこで、そのような情報を素早く削除・訂正する、あるいは、悪意のある書き込みに対処する必要があります。

削除請求における5つの解決方法

プロバイダ責任制限法4条1項の要件を整理すると、以下のようになります。

1.ウェブフォームなどからの削除対応

1.ウェブフォームなどからの削除対応

サイトの中には、削除依頼をするためのフォームを準備していたり、クリックするとメールソフトが立ち上がるようになってるものがあります。
それらを利用して、特定の記事・投稿の削除依頼をするという方法があります。

メリット

記事の削除をしてほしいと思っている本人がフォームなどを利用して削除依頼をすることができるので、手軽にできる上、削除依頼に関して費用がかかりません。サイトによっては、早ければ数日で対応してくれることもあります。

デメリット

サイト側がその依頼が正当なものか、それに応じるかを判断するため、サイトによって対応がまちまちであり、ほとんど対応がなされないまま連絡も来ないこともあります。また、削除対象となるのはどの記事・投稿か、権利が侵害されている理由は何か、背景事情としてどういったことがあるかということを自身でサイト側に伝えなければならないので、不慣れであると十分に伝わらず結果として記事等が削除されないままになることもあります。
また、この方法はあくまで記事等の削除を求めるだけですので、発信者情報の開示を求めることはできません。

削除代行業者について

注意を要するのが平成29年2月20日に東京地方裁判所において出された判決です。
男性が削除代行業者に記事の削除代行を依頼し、業者が10件の記事削除をしたことに対する対価として約50万円を支払ったという事案において、削除代行業者のこの行為が非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士しか行えないことを行うこと)に当たるとして、削除代行業者との契約を法的に無効なものとしました。
つまり、個人ではどう書いたらよいかわからないからといって、削除代行業者に依頼しても、今後は、サイトが削除代行業者からの削除依頼を受け付けなくなり、削除代行業者に依頼すること自体無意味となることも十分考えられます。

2.弁護士によるウェブフォームなどからの削除対応

2.弁護士によるウェブフォームなどからの削除対応
1.サイト管理者が個人の場合

サイト管理者が個人である場合、弁護士に依頼した方が効果的なこともあります。単に個人名で削除依頼をすると、前述のように、サイト管理者が対応をしてくれないことも多いです。他方で、弁護士を代理人として、弁護士が削除依頼をすると、サイト管理者に与えるインパクトが大きく違いますので、より早い対応をしてくれることがあります。早期の段階で弁護士に依頼することは、サイト管理者に素早い記事削除の対応を求めることができるという点で有用です。

2.大手サイトの場合

サイト管理者が個人である場合と異なり、大手のサイトになると、たとえ弁護士が本人の代理人として削除依頼をしたとしても、対応が鈍いこともあります。そういった場合には、ウェブフォームからの削除依頼だけでなく、ガイドラインに則った請求や裁判など相手に応じた対応をとることになります。

3.ガイドラインに則った請求対応

3.ガイドラインに則った請求対応

記事の削除について、情報通信技術関連の企業が多く所属する一般社団法人テレコムサービス協会が作成した、ガイドラインが存在します。そのガイドラインに従って送信防止措置依頼をする方法があります。

手順
  1. ① サイトの管理者やプロバイダに依頼書を郵送する
  2. ② サイトの管理者やプロバイダが本人からの依頼か確認の後、発信者に対してその書き込みの削除の可 否を尋ねる
  3. ③ 発信者から7日間以内に反論がなければ削除されるという流れになります。また、発信者から反論があった場合には、「権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」の有無をサイトの管理者やプロバイダが判断することになります。
    また、同様の手順で発信者情報開示請求を行うこともできます。
メリット

ガイドラインに従った方式の必要事項を埋めることで申請できるので比較的容易に行えるため、記事削除を求める本人が自ら請求することが可能です。

デメリット

依頼書には、侵害されたとする権利、権利が侵害されたとする理由を記入する欄があります。そのため、適切な権利の設定、権利に対応する理由の記載が不可欠となります。また、必要であれば主張を支える資料を添付することもあります。もっとも、それらには法的な知識が必要になるため、個人で行った場合、要件を満たす適切な記載にならないこともあります。また、発信者情報の開示はほとんど認められた例がありません。

4.法的手段による削除対応

4.法的手段による削除対応

サイトやプロバイダが削除や発信者情報開示に任意に応じてくれることは難しいのが現状です。そのような場合、強く記事の削除や発信者情報の開示を求めるのであれば、裁判手続に基づいてそれらを実現する手段を講じる必要があります。
裁判所を利用するものとして、記事の削除を求める仮処分の申立てをする方法があります。
また、当該記事を書いた者に対し損害賠償請求を行う前提として、当該人物を特定するために、コンテンツプロバイダに対して発信者情報を開示させる仮処分の申立てや経由プロバイダに対して発信者情報を開示させる民事訴訟を提起する方法もあります。

メリット

裁判所において記事削除や発信者情報開示の主張が認められると、任意でそれらに従った対応をするプロバイダも多いです。そうでなくともこの手続を行えば、裁判所の決定、判決で判断がなされ、応じない場合には強制的に決定、判決に従った結果を実現する執行手続もあるので、記事の削除、発信者情報の開示を確実に行わせることができます。これらの手続は弁護士に依頼すれば弁護士が代理人として行いますので、経験豊富な弁護士であれば、必要な事項に関する十分な証拠の収集や主張を行うので、本人が行うよりも認められる可能性は高まります。
また、仮処分においては、主張していることが一応確からしいといえれば申立てが認められるので、通常の裁判よりも比較的早い解決が見込めます。

デメリット

弁護士に依頼をすると費用がかかります。民事訴訟においては、慎重な手続きが行われるため、他の手段と比較すると時間がかかってしまいます(なお、仮処分を先に行っておけば、「仮の状態」として訴訟で勝訴した場合と同じ状態、すなわち、記事であれば削除され、発信者情報であれば開示されるので、時間がかかることでその間継続して記事の掲載が行われたり、発信者情報がなかなか開示されないという事態は防げます)。

5.逆SEO等の技術的な削除対応

5.逆SEO等の技術的な削除対応

インターネット検索では、特定のワードを入力するとその単語に関連するワードが付された検索候補(サジェスト、虫眼鏡などと呼ばれます。)が出てきます。ここに表示される関連ワードの中に個人を貶めたり企業価値を低下させる言葉がある場合(「ブラック」「圧迫面接」など)、それだけでその個人や企業のマイナスイメージとなりかねません。また、悪意のあるサイトが検索結果の上位に表示されるとそれだけ閲覧の機会が増え、被害が増えます。
そこで、専門の業者に依頼して、その関連ワードを表示させないようにする、あるいは、有害な情報が記載されたサイトを表示されにくくする逆SEO対策(SEO対策とは反対に、検索されにくくする対策のこと)を講じる方法があります。

メリット

技術的な対応は専門の業者でないとなかなか行えないものであり、かつ、これより比較的早期に解決を図ることが可能になります。

デメリット

一度対応すればその後削除した情報が出現することがなくなるというものではなく、再度関連ワードが出現したりサイトが表示されるようになった場合には対応する必要が出てくるので、その都度費用がかかることになります。根本的な解決は難しいです。

5つの解決方法まとめ

対策方法 メリット デメリット
ウェブフォームからの削除対応 個人でもできる 対応してくれないことが多い
個人で行うと要件を満たすような記載が不十分となる
弁護士による
ウェブフォームからの削除対応
弁護士が代理人として対応することにより、
サイト管理者が早急に対応してくれるケースが多い
大手サイトの場合は反応が鈍い場合がある
弁護士に依頼すると費用がかかる
ガイドラインに則った請求 個人でもできる 対応してくれないこともある
個人で行うと要件を満たすような記載が不十分となる
仮処分・訴訟 実現が確実
サイトやプロバイダが応じやすい
弁護士に依頼すると費用がかかる
他の方法と比較して時間がかかる
技術的対応 専門業者が行う 常に対応が必要なこともある
発信者情報開示請求をお考えでしたら
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