中国における商業賄賂とリスクマネジメント -行政取締り-
1.取締りの発端は何ですか
工商行政管理局の取締りの発端は、まず職権による発見です。工商行政管理局の職員は定期的に管轄内の企業を回ったりしており、その過程で発見する場合があります。また、他人の告発により調査することもあります。ちなみに、他人から告発があった場合、工商行政管理局は調査を開始する義務があり放置することはできません。さらに、ほかの部門、例えば検察院、公安等が案件調査過程で商業賄賂行為を発見した場合に工商行政管理局に移送します。ほかにも、上級機関からの指示で調査開始する場合等があります。
2.調査手続は如何に行われますか
「工商行政管理執法証管理弁法」第二条には、工商行政管理局職員が調査対象に対して調査を行う際、国が統一的発行している「中華人民共和国工商行政執法証」を携帯し、調査対象から要求があった場合に、提示しなければなりません。しかも、現場調査を行う職員は、少なくとも二人でなければなりません。
「中華人民共和国工商行政執法証」は黒カバーであり、正面は工商行政管理徽章と中華人民共和国工商行政管理執法証と印字してあり、裏面は英文でAICと印字してあります。中を開くと工商行政管理徽章と「工商行政管理」との六文字が印字されており、片面には所持者の写真、氏名、生年月日、番号、有効期限等が書かれています。
3.調査人員は如何に証拠収集しますか
工商行政管理局の調査人員は、証拠が滅失しやすい或いは現場で抑えないと後で入手が難しいと判断した場合、上司の批准を伺った後「先行登記保存措置」をとることができます。「先行登記保存措置」とは、調査現場にて発見した証拠に関してリスト作成し、当事者と調査人員が署名或いは捺印して保存することを言います。保存期間中に証拠に対して毀損、破損或いは移転してはなりません。当該手続が完了後、当事者に対してその場で「先行登記保存証拠通知書」を交付します。当該手続を行った後、工商行政管理局は7日以内に保存した証拠に対して、証拠作成、鑑定等の手続を行わなければなりません。7日過ぎて何らかの措置を行わない場合、当該保存行為は自動解除されます。
4.調査人員がやっていいこととやってはいけないことは何ですか
商業賄賂調査において、調査人員は以下の職権を行使できます。まずは、調査対象の経営者及びその他の関係者に対して質問ないし資料提供を要求することができます。また、調査対象の調査事項と関連する契約書、資料、記録、電子メール等の閲覧、複写ができます。
しかし、法律上調査対象に対する強制措置をとる権限を与えていないため、調査人員は身柄拘束、財産の差押え等の強制措置を行ってはなりません。
5.調査にどう対応すればいいですか
工商行政管理局の調査人員は、通常の調査以外に抜き打ち調査を行う場合もあります。とは言って、対応に慌てる必要はありません。しかし、言いなりにすべてを提供する必要もなければ、無理に抵抗して調査人員の心証を悪くするのも禁物です。調査人員の身分を確認後、丁寧に会議室へ案内し、その間に速やかに上司或いは外部専門家等に連絡することが大事です。