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    2022年01月11日
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    2022年01月11日
    契約不適合責任とは? 瑕疵(かし)担保責任との違い・期限・免責について
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    契約不適合責任とは? 瑕疵(かし)担保責任との違い・期限・免責について

    2020年4月1日に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は、「契約不適合責任」へと改められました。

    注文住宅の建築に当たって、竣工した建物に欠陥が見つかった場合には、契約不適合責任が極めて重要な意味を持ちます。施主・施工業者ともに、契約不適合責任に関する正しい理解を身に着けておきましょう。

    この記事では、注文住宅の建築に関して重要となる契約不適合責任について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、契約不適合責任とは?

「契約不適合責任」とは、売買や請負などの契約に基づき引き渡された目的物につき、以下の3点のいずれかに関して契約内容との間に相違があった場合に、売主(施工業者)が買主(施主)に対して負担する法的責任をいいます

① 目的物の種類
契約上の目的物と、実際に引き渡された目的物の品目が異なる場合、契約不適合責任が発生します。
(例)シューズクロークを設置すべき場所に、通常の靴箱が設置されていた

② 目的物の数量
契約上定められた目的物の数量に対して、実際に引き渡された数量が過剰または不足している場合、契約不適合責任が発生します。
(例)収納棚を3つ並べて設置すべき場所に、収納棚が2つしか設置されていなかった

③ 目的物の品質
契約上定められた目的物の品質に対して、実際に引き渡された目的物の品質が劣っている場合、契約不適合責任が発生します。
(例)無垢材を使用すべきリビングの床に、合板材が使用されていた


特に新築の注文住宅では、建物に欠陥や契約との相違が見つかり、契約不適合責任が問題となるケースが多いのが特徴です。

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2、契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは?

2020年4月1日に改正民法が施行される以前は、「瑕疵担保責任」が契約不適合責任に近しいものとして存在していました。

改正前民法における瑕疵担保責任は、現行民法における契約不適合責任と類似し、売買等の目的物の欠陥・不備(=瑕疵)について、売主(施工業者)側の責任を認めるルールです。
それでは、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いは、どのような点にあるのでしょうか。

  1. (1)契約不適合責任では、契約責任説を明示的に採用

    改正前民法における瑕疵担保責任については、学説上「法定責任説」と「契約責任説」が対立していました。

    ① 法定責任説
    特定物の売買においては、契約で定められた目的物を引き渡せば足りるという考え方(特定物ドグマ)を基本としつつ、売主・買主間の公平を図るため、売主に特別の責任を認めたのが「瑕疵担保責任」であるとする説です。
    法定責任説によると、瑕疵担保責任は、特定物に関する有償契約についてのみ適用されます。

    ② 契約責任説
    実際に引き渡された目的物の種類・数量・品質が、契約内容と適合していない場合には「不完全履行」に当たるため、瑕疵担保責任は「債務不履行責任」の一種として捉えるべきであるとする説です。
    契約責任説によると、瑕疵担保責任は、目的物が特定物・不特定物のいずれである場合にも適用されます。


    改正前民法下では、法定責任説が一応の通説とされつつも学説上の批判が根強かったため、現行民法では、契約責任説を明示的に採用し、「契約不適合責任」として再構成されるに至ったのです

  2. (2)買主側が利用できる救済手段が増えた

    改正前民法における瑕疵担保責任では、買主は売主に対して、「損害賠償請求」と「契約の解除」を行うことができるにとどまりました。

    これに対して、現行民法における契約不適合責任では、上記の2つに加えて、新たに「履行の追完請求」と「代金減額請求」が救済手段として認められています

    各救済手段の詳細については、後で詳しく解説します。

  3. (3)「隠れた瑕疵」の要件の撤廃

    改正前民法下の瑕疵担保責任では、法定責任説の考え方をベースとして、瑕疵の存在が「隠れた」ものであること、すなわち契約締結時点において、買主が瑕疵の存在について善意無過失であったことを要求していました。

    これに対して、契約不適合責任の下で採用されている「契約責任説」によると、契約不適合責任が発生するかどうかは、専ら目的物が契約内容に適合しているかどうかによって判断されますので、買主の善意無過失は要件となりません。

    そのため、現行民法下の契約不適合責任では、瑕疵担保責任で要求されていた「隠れた瑕疵」の要件が撤廃されています

3、契約不適合責任に基づき、施主・買主ができる4つの請求

注文住宅の施主や分譲住宅の買主は、施工業者または売主に対して、契約不適合責任に基づき、以下の4つの請求・主張を行うことができます。

  1. (1)履行の追完請求

    目的物の種類・品質・数量が契約に適合していない部分については、買主は売主に対して、「履行の追完」(完全なものを引き渡すように求めること)を請求できます(民法第562条第1項、第559条)。

    (例)
    • 雨漏りがしている天井や、壁の亀裂を直してもらう
    • 契約とは異なる合板材の床を、契約どおりの無垢材で張り替えてもらう
    • 収納棚の台数が契約の定めに不足しているので、不足分を追加で納品してもらう
  2. (2)代金減額請求

    施主・買主が履行の追完を催告したにもかかわらず、相当の期間内に施工業者・売主が履行の追完を請求しない場合、不適合の度合いに応じた代金減額請求が認められます(民法第563条第1項、第559条)。

    なお、履行の追完が不能となったり、相当の期間の経過前に、施工業者・売主が明示的に履行の追完を拒否したりした場合には、その時点で代金の減額を請求することが可能です。

    (例)
    • 契約とは異なる合板材の床を、契約どおりの無垢材で張り替えるよう請求したが、張替えを拒絶されたので、合板材と無垢材の差額を返還してもらう
  3. (3)損害賠償請求

    履行の追完請求や代金減額請求と併せて、施主・買主は施工業者・売主に対し、契約不適合責任に基づく損害賠償を請求することもできます(民法第564条、第559条、第415条第1項)。

    (例)
    • 天井の雨漏りを施主自身が費用を支出して修理したので、修理代金を施工業者に対して請求する
    • 天井の雨漏りによって汚損した家財道具の価額を、施工業者に対して請求する
  4. (4)契約の解除

    履行の追完を催告したにもかかわらず、施工業者・売主が相当の期間内に履行の追完を行わない場合、施主・買主は契約を解除し、代金全額の返還を請求できます(民法第564条、第541条本文、第559条)。
    ただし、不適合の程度が契約および取引上の社会通念に照らして軽微である時は、契約解除までは認められず、その他の救済を受けられるにとどまります(民法第564条、第541条ただし書き、第559条)。

    なお、そもそも引き渡しが履行不能である場合や、不適合を是正できなければ契約の目的を達成できない場合などには、無催告解除が認められています(民法第564条、第542条第1項、第559条)。

    (例)
    • 基礎工事について重大な欠陥が判明し、請求をしても修補がされなかったため、建築請負契約を解除する
    • 床の傾きがあまりにもひどく、補修不能なため、建築請負契約を解除する

4、契約不適合責任に関する注意点

注文住宅の新築や分譲住宅の売買においては、契約不適合責任の期間と容認事項の取り扱いについて、特に注意する必要があります。

  1. (1)契約不適合責任の期間について

    施主・買主が、種類または品質に関して、施工業者・売主の契約不適合責任を追及する場合、契約不適合責任の責任期間内に、施工業者・売主に対して不適合の存在を通知しなければなりません。
    責任期間は原則として、「不適合を知った時から1年」です(民法第566条、第637条第1項)。

    責任期間に関する民法の定めは「任意規定」であるため、特約による排除が認められます。

    ただし、新築住宅については、「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」における特則が存在します。
    すなわち、「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」については、「引き渡しから10年」の責任期間が強制的に適用されるので注意が必要です。

    また、以下の場合についても、施工業者・売主側の免責が認められないので気を付けましょう。

    ① 不適合の存在を知りながら、施主(買主)に告げなかった場合
    ② 自らの行為により、権利に関する不適合が発生した場合
    →いずれも契約不適合責任の免責が一切認められません(民法第572条、第559条)。

    ③ 売主が宅建業者の場合
    →契約不適合責任の責任期間を、「引き渡しから2年以上」とする特約以外の、買主に不利となる民法566条に関する特約をすることはできません(宅地建物取引業法第40条第1項)。
  2. (2)明記することで、契約不適合責任を回避可能

    契約不適合責任は、あくまでも「目的物が契約内容とは異なること」について、売主(施工業者)側が負担する責任です。

    不動産の売買契約書では、契約不適合責任の対象外とする事項を、「容認事項」として記載することがあります。

    施工業者・売主としては、責任を負いきれないものについては、容認事項として漏れなく列挙しておくか、特約として契約不適合責任の対象とならないことを明記しておくことが大切です。

    一方、施主・買主としては、容認事項や特約に記載されている内容の中で、受け入れ困難なものがないかを必ずチェックしましょう。

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5、まとめ

住宅の購入や建築は、一生に一度の大きな買い物です。

万が一、後から住宅の欠陥等に関するトラブルが発生した場合に備えて、契約書中の契約不適合責任に関する条項を確認しておきましょう。

ベリーベスト法律事務所は、建築トラブルへの対応や、購入した住宅に契約不適合があった場合などについて、依頼者の権利を守るためにサポートを行っています。住宅の購入や建築の契約で、契約不適合があるのではないかとお考えの方、契約内容に疑問や不明点があるがどう対処すべきか悩んでいる方、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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