工事請負契約に関連する資料は、できる限り事前にご用意いただくことが望ましいです。何が必要かわからない場合には、お気軽に弁護士へご相談ください。
たとえば以下のような資料をご用意いただくと、工事トラブルに関するご相談をスムーズにお伺いできます。
お手元にある関連資料は、すべてご用意いただくことが望ましいです。
しかし、どのような資料が必要かわからない場合でも、弁護士がアドバイスいたしますのでご安心ください。
工事請負契約で指定された壁の色と、実際の壁の色が異なる場合は、施工業者にやり直しを求めることができます。
引き渡された建物の種類・品質・数量が、請負契約の内容に適合していない場合は、施工業者は施主に対して契約不適合責任を負います。壁の色の違いについても、契約不適合責任の対象です。
契約不適合責任に基づき、施主は施工業者に対して、契約の内容に沿うように修補を行うことを請求できます。施工業者が修補を拒否すれば、工事代金の減額を請求することも可能です。さらに不適合の程度が甚だしい場合は、請負契約を解除して、請負代金全額の返還を請求できることもあります。
そのため、まずは工事請負契約書を確認し、壁の色の指定があるかどうかを確認してみましょう。ただ、明確に品番が違うなどというのであれば、契約内容と異なることの立証は比較的容易ですが、思っていた色合いと異なるという程度ですと、契約不適合責任を追及するのは難しいことも多いです。
なお、壁の色が工事請負契約の内容に沿っている場合は、施工業者の契約不適合責任は発生しません。この場合、壁の色を変更してもらうためには、追加工事費用を支払う必要があります。
雨漏りについて、施工業者の契約不適合責任を追及しましょう。
新築工事について、引き渡された建物の種類・品質・数量が請負契約の内容に適合していない場合、施工業者は施主に対して契約不適合責任を負います。
住宅の場合、雨漏りが発生しないように施工するのが当然です。したがって、雨漏りが発生している状態は契約不適合に該当し、施工業者は施主に対して契約不適合責任を負うと考えられます。
施主は施工業者に対して、以下の4つの方法によって契約不適合責任を追及できます。
①修補請求
雨漏り部分の修補を請求できます。
②代金減額請求
施工業者が雨漏り部分の修補を拒否する場合などには、工事代金の減額を請求できます。
③損害賠償請求
雨漏りによって発生した損害(家具の損傷、腐食など)について、損害賠償を請求できます。
④契約の解除
工事請負契約を解除できます。不適合(雨漏り)の程度が軽微でないことが必要です。
施工業者の契約不適合責任を追及する場合は、弁護士に代理人を依頼するのが安心です。
引き渡された建物の種類・品質・数量が、工事請負契約の内容に適合していない場合、施工業者には施主に対する契約不適合責任が発生します。そのため、まずは工事請負契約の内容を確認して、実際の施工内容との間に異なる点がないかを確認しましょう。
契約不適合責任が発生する場合、施主は以下のいずれかの方法により、施工業者の契約不適合責任を追及できます。
①修補請求
工事請負契約に適合していない部分の修補(追完工事)を請求できます。
②代金減額請求
施工業者が修補(追完工事)を拒否する場合などには、工事代金の減額を請求できます。
③損害賠償請求
不適合によって何らかの損害 が発生している場合には、損害賠償を請求できます。なお、慰謝料を求められるのは、修補ができても、なお償いきれない精神的損害がある場合に限られるものであり、例外的なものなので、契約不適合があれば常に認められるものではありません。
④契約の解除
施工業者が修補(追完工事)を拒否しているなどの事情があり、かつ不適合の程度が軽微でない場合は、工事請負契約を解除できます。
施工業者の契約不適合責任を追及する場合は、事前に弁護士へご相談ください。
追加工事を行うという合意が必要です。契約書も、見積もりも何も無い場合には、合意がなく追加工事代金は支払う必要がないと判断される場合もあります。
また、追加工事を行う場合に、それを幾らで行うかという費用面の合意も必要ですが、「相当の」代金を払うという合意で足りるとされていて、幾らと明確に定める必要まではないとされています。また、合意のないときに、商法第512条に基づいて「相当の報酬」を支払うとされる場合もありますが、この要件を充たすケースは少ないと考えられています。
一般的には、契約を締結する際に契約書を作成する必要はなく、口頭の合意でも契約は成立します。
しかし、建設工事の請負契約については、追加・変更契約の場合を含めて、契約書面の作成が義務付けられています(建設業法第19条第1項)。書面なしの契約成立が一切否定されるわけではありませんが、建設業法に基づく手続きを踏んでいなかったことは、見積書への承諾のサインすら貰っていないこと、そもそも追加工事に関する見積すら出していないことなどは、追加工事に関する契約成立を否定する方向の事情として働きます。
追加工事請負契約が成立していなければ、追加工事の請負代金を支払う必要はありません。
ただし、追加工事請負契約が成立していなくても、商法第512条に基づく報酬請求権が発生しないかについては、別途検討を要しますが、追加工事を行う合意も、相当の報酬を払うという合意も認められないときに、同条による追加工事代金請求が認められるケースはそんなに多くないと考えられます。
引き渡し後に壁のひびが発生した場合は、原因を特定できなければ、施工業者の責任を追及することは難しいです。ホームインスペクションを実施するなどして、壁のひびの原因を調査しましょう。
施工ミスに起因する壁のひび割れは、施工業者が負う契約不適合責任の対象です。施主は施工業者に対して、ひび割れの修補などを請求できます。
ただし、施主が施工業者の契約不適合責任を追及する場合、引き渡しの時点で不適合の原因が存在したことを立証しなければなりません。
引き渡しの時点で明らかに壁がひび割れていた場合は、その現場写真などを撮影しておけば、契約不適合責任の立証に用いることができるでしょう。
これに対して、引き渡し後に壁のひびが発生した場合は、その原因が引き渡しの時点から存在したことを立証する必要があります。例えば、引渡から何年も経過しているなどと言う場合には、経年劣化によるのではないかという疑問も当然出てきます。そのためには、まず壁のひびが発生した原因を調査することが先決です。
原因調査には一定の費用が掛かりますが、壁のひびの原因がわからない状態では、訴訟で契約不適合責任が認定される可能性は低いです。
建築士にホームインスペクションを依頼すれば、壁のひび割れの原因がわかる可能性があります。必要に応じて相見積もりを取得したうえで、早めに調査を実施してください。
契約不適合責任が発生する場合には対応する必要がありますが、そうでなければ対応は不要です。元請けが下請代金の支払いを拒否する場合は、訴訟の提起を検討しましょう。
実際の施工内容が、元請けとの間で締結した下請工事に関する契約に適合していない場合は、下請事業者に契約不適合責任が発生します。この場合、下請事業者は不適合部分について、工事のやり直しを含めた修補(履行の追完)を行わなければなりません。
そのため、まずは元請けがやり直しを主張する理由について、自社の契約不適合責任が発生するかどうかを検討しましょう。もし契約不適合責任を負うと思われる場合は、トラブルの深刻化を防ぐために、可能な範囲で対応することをおすすめいたします。
一方、契約不適合責任が発生しないと思われる場合は、工事のやり直し等について対応する必要はありません。元請けに対しては、対応を拒否する旨を明確に伝えましょう。
元請けが下請代金の支払いを拒否している場合は、訴訟を通じて請求を行いましょう。下請代金の支払いに関する訴訟を提起する場合は、弁護士にご相談ください。
工期が遅れる理由を、依頼者に対してしっかりと説明しましょう。また、工期遅れが発生した際の取り扱いについて、工事請負契約の内容を確認したうえで対応することが大切です。
住宅等の新築工事において、発注した器具の納品時期がずれたために、工期が延長されることはよくあります。依頼者に対しては、工事請負契約を締結する前の段階で、そのことを十分説明しておくことが大切です。
実際に工期遅れが発生する見込みとなった段階でも、改めて依頼者に丁寧な理由説明を行い、依頼者の納得を得られるように努めましょう。
なお、住宅等の工事請負契約では、工期遅れが発生した際の取り扱いについて定められていることが多いです。
たとえば、中央建設業審議会が定める「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」第21条では、不可抗力によるときまたは正当な理由があるときは、受注者は速やかにその事由を示して、発注者に工期の延長を求めることができると定められています。
この場合であっても、工期の延長を求めることができるというものであり、材料の発注が遅れたなどの自分のミスである場合はもちろん、注文した業者の不手際で材料の納品が遅れたとなどの理由の工期の遅れについても、当然工期を延長してもらえるものではなく、施主が延長に同意してくれなければ、遅延損害金の支払といったものが必要になることに気をつけてください。
工事請負契約において、工期遅れ発生時の取り扱いが定められている場合、その規定に従って工期変更の手続きを行いましょう。
違和感のある箇所につき、工事請負契約で定められた施工内容への不適合がある場合には、施工業者の契約不適合責任を追及できます。
施工業者の契約不適合責任が発生する場合、施主は工事のやり直し(修補、履行の追完)、代金の減額または損害賠償を請求できます。修補が不可能で、かつ不適合の程度が軽微でない場合などには、工事請負契約を解除して代金の返還を求めることも可能です。
ただし、契約不適合責任の原因となる不適合の事実については、施主側が立証する必要があります。そのためには、違和感のある箇所について、契約内容への不適合があることを立証するに足る証拠が必要です。
まずは工事請負契約の内容を確認し、それを実際の施工内容と照らし合わせたうえで、施工業者の契約不適合責任を追及できるかどうかを検討しましょう。判断が難しい場合は、弁護士へご相談ください。
本来は書面の証拠があることが望ましいですが、録音でのやり取りについても証拠となる可能性があります。
工事請負契約による合意内容については、本来であれば書面の作成が義務付けられています(建設業法第19条第1項)。また、一般的にも、書面によってなされていない合意については、立証のハードルが高いことは否めません。例え録音があった場合でも、第三者がそれを聞いたときに、当事者が思っているほど明確な意思表示がなされているとは判断できないと解される場合もあります。
しかし、書面以外でなされた合意が一切否定されるわけではありません。有力な証拠があれば、書面以外による合意が認定される可能性もあります。
契約交渉の段階におけるやり取りの録音データは、当事者間の合意内容を立証し得る有力な証拠の一つです。特に、施工業者の責任ある担当者とのやり取りであれば、契約書に書いていない内容の合意があった事実を推認させる方向に働きます。
録音データを証拠として用いる場合、内容の精査と主張内容の精緻な検討が必要となりますので、弁護士へのご相談をおすすめいたします。