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    2024年09月18日
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    2024年09月18日
    施工不良で損害賠償請求をするには? 契約不適合責任と免責特約
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    施工不良で損害賠償請求をするには? 契約不適合責任と免責特約

    一戸建てを新築したにもかかわらず、施工不良が発見された場合、新たな生活に向けた希望が台無しになってしまいます。

    施工不良によって施主に生じた損害は、施工業者に対して賠償を請求することが可能です。早期に弁護士に相談し、施工業者に対して然るべき対応を求めましょう。

    この記事では、新築住宅の施工不良につき、施工業者に損害賠償を請求する方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、施工不良とは?

施工不良とは、建物の仕様・設備などに不備があることを全般的に意味しています。法的には施工瑕疵とも呼びます。主に、以下の3つのパターンが考えられるため、確認していきましょう。

  1. (1)契約で定められた仕様や性能等に反している

    新築住宅の売買契約や請負契約では、施主と施工業者の間で、完成する建物の仕様や性能等について綿密な打ち合わせが行われ、その結果が契約に反映されます。
    完成した建物の仕様や性能等内容が、契約に定められた内容に達していない場合、施工業者は施工不良の責任を負うことになります

    たとえば、

    • 契約で指定された部材よりも質の劣った部材が使われていた
    • 棚板を4枚備え付けて造作すべきところを、3枚しか備え付けられていなかった
    • 塗り壁とすべき外壁部分が、タイルを用いて施工された


    といったケースが、このパターンの施工不良に該当します。

  2. (2)法令に違反している

    建物を建てるときには、当然、法令に適合する建物を建てるということが目的となっています。建物の耐震性や防火・耐火の性能が法令に違反しているようなものであった場合には、住んでいる人の安全が脅かされてしまいます。このような施工不良は、早期に是正が必要です。

    たとえば、

    • 防火地域内の建物が、建築基準法上の耐火建築物の使用を満たしていない
    • 耐震基準を満たしていない
    • 階段の幅が足りない


    といったケースが、このパターンの施工不良に該当します。

  3. (3)一定の施工水準を満たしていない

    建物の建築にあたっては、通常、一定の施工水準を満たすことが要求されます。余りにも汚い塗装で、社会通念上とうてい許容できないというものであれば、施工業者が責任を負うべき施工不良ということができます。

    たとえば、

    • 外壁の塗装にひどいムラがある
    • 貼られたクロスが皺だらけになっている


    といったケースが、このパターンの施工不良に該当します。

    上記以外にも、契約や法律、施工水準、さらに居住者の安全性や健康面に照らして、建物に何らかの問題がある場合には、施工不良に当たると評価すべきでしょう。

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2、施工不良に関する施工業者の責任内容

新築住宅に何らかの施工不良が発生した場合、施工業者は施主に対して、契約不適合責任を負担します。不法行為の要件を充たす場合には、不法行為責任を負担する場合もあります。

  1. (1)契約不適合責任(債務不履行責任)

    「契約不適合責任」とは、売買契約や請負契約において、引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合していない場合に、売主(施工業者)側が負担する責任をいいます(民法第559条、第562条以下)。令和2年4月1日に施行された改正民法により、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが整理され、「契約不適合責任」が定められました。

    契約不適合責任は、契約違反に関する責任一般を意味する「債務不履行責任」の一種と解されています。

    施主は施工業者に対して、以下の方法で契約不適合責任を追及することができます。

    ① 履行の追完請求
    施工不良の是正工事などを行うことを請求できます(民法第559条、第562条第1項本文)。
    工事費用は施工業者の負担になりますが、施主に不相当な負担を課すことにならない限り、工事の方法は施工業者が決定できます(同項但書き)。

    ② 代金減額請求
    請負契約の代金を減額するよう請求できます(民法第559条、第563条第1項)。
    原則として、先に履行の追完請求を行う必要がありますが、施工不良の是正が不可能な場合や、施工業者が是正工事を拒否した場合などには、直ちに代金の減額を請求することが可能です(同条第2項)。

    ③ 損害賠償請求
    施工不良に起因して、施主側に何らかの損害が発生した場合には、施工業者に対して損害賠償を請求することができます(民法第559条、第564条、第415条第1項)。
    是正工事に代えて修補費用を損害賠償請求することもできます。
    是正工事期間中の仮住まい費用や引っ越し費用なども、損害賠償の対象となります。

    ④ 契約の解除
    是正を求めても施工業者が是正しない場合で、かつ是正しない瑕疵が軽微であるとは社会通念上いえないときや、是正が不可能な場合で、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときなどには、施主は請負契約を解除できます(民法第559条、第564条、第541条、第542条)。

    なお、あらかじめ契約で取り決めたはずの工事を一部行なわないまま、建物を引き渡されたという場合もあるでしょう。

    この状態は、施工不良ではなく未施工と呼びます。この場合も施工業者の責任を問うことが可能です。

    反対に、最初の契約では工事することになっていたが、さまざまな理由により一部工事をしないと後で合意に至った場合もあるでしょう。これを減工事といいます。施主と施工業者で契約内容に行き違いがある場合、施工業者側から「減工事だった」と反論される可能性もあります。

    もし裁判になり、減工事であると認められれば、その減工事の分だけ、損害賠償額が少なくなることもあります。

  2. (2)不法行為責任

    施工不良について、施主は施工業者の不法行為責任(民法第709条)を追及することも可能です。

    不法行為責任は、故意または過失により、相手に対して違法に損害を与えた場合に成立します。施工者の不法行為責任として、最高裁判所では、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」のある場合に不法行為責任が認められています。

    不法行為責任を追及する方法は、損害賠償請求のみであり、契約不適合責任に比べると、施主側の選択肢が狭くなっています。また、施工業者の故意または過失を、施主の側で主張立証する必要があります。
    その一方で、消滅時効や除斥期間について、契約不適合責任とは異なるところがあるので、請求の時期によっては不法行為責任の追及しか行えないこともあります。

    <消滅時効・除斥期間>

    ● 契約不適合責任
    施主が不適合を知った時から1年以内に不適合の内容を施工業者に通知する必要があります(民法第637条第1項の除斥期間。ただし、施工業者側に故意または重過失がある場合は、同条第2項により期間制限なし)。また、不適合を知ってから5年(同法第166条第1項第1号)及び引渡しから10年(同項第2号)でそれぞれ消滅時効が成立します。

    ● 不法行為責任
    施主が損害(および加害者)を知った時から3年(民法第724条第1号。ただし、生命または身体が害された場合は5年(民法第724条の2))及び不法行為時から20年(同法第724条第2号)でそれぞれ消滅時効が成立します。

3、施工不良の免責特約があった場合、施工業者の責任を追及できないのか?

施工不良が発覚した場合に、施工業者を免責する特約が設けられることがあります。

しかし、このような免責特約は、各種法令に照らして無効となる可能性があるので、施工業者から免責を主張された場合は弁護士にご相談ください

  1. (1)品確法の瑕疵担保責任は10年間|免責不可

    新築住宅の以下の箇所に施工不良が存在する場合、施工業者(又はその売主)は施主(又はその買主)に対して、引渡から10年間の瑕疵担保責任(≒契約不適合責任)を負います(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条第1項、第95条第1項)。

    • 住宅の基礎
    • 基礎ぐい
    • 小屋組
    • 土台
    • 斜材(筋かい、方づえ、火打材など)
    • 床版
    • 屋根版
    • 横架材(はり、けたなど)
      のうち、当該住宅の自重、積載荷重・積雪・風圧・土圧・水圧、地震その他の震動や衝撃を支えるもの(同法施行令第5条第1項)
    • 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくなどの建具(同施行令第2項第1号)
    • 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、その住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分(同項第2号)


    品確法に基づく瑕疵担保責任は、免責・軽減不可とされているため(同法第94条第2項、第95条第2項)、施工業者の免責規定は無効です。

  2. (2)民法の契約不適合責任は任意規定|ただし宅建業者の特則あり

    品確法の適用対象ではない不適合については、民法の契約不適合責任のルールに従います。

    民法の契約不適合責任は、特約による排除が可能とされている任意規定です。

    ただし、宅建業者が売主となる新築住宅の売買契約については、最低限引渡しから2年間は、売主が契約不適合責任を負う必要があります(宅地建物取引業法第40条)

  3. (3)消費者契約法により免責が無効となるケースもある

    施主が一般消費者である個人の場合には、以下のいずれかに該当する免責規定が無効となります(消費者契約法第8条、第8条の2、第10条)。

    • 契約不適合責任や不法行為責任の全部を免責し、または施工業者に責任の有無を決定する権限を付与する規定
    • 施工業者に悪意または重過失が認められる場合に、契約不適合責任や不法行為責任の全部または一部を免責する規定
    • 施主の解除権を放棄させ、または施工業者に解除権の有無を決定する権限を付与する規定
    • 契約不適合責任等を制限することで、信義則に反して施主の利益を一方的に害する規定

4、施工業者に対して施工不良の損害賠償を請求する方法

新築住宅の施工不良が発見された場合、以下の方法によって、施工業者に対して損害賠償等を請求しましょう。

① 施工業者との直接協議
ハウスメーカーや工務店などに直接連絡を取り、施工不良の是正策や補償について協議します。
損害賠償を請求する場合は、施工業者側の言い分にかかわらず、客観的な損害額を見積もったうえで条件提示を行いましょう。

② 民事調停
裁判所において、調停委員の仲介の下で調停案への合意(和解)を目指します。
確実かつわかりやすい証拠資料を提出し、調停委員を味方に付けることが、民事調停を有利に進めるためのポイントです。
(参考:「民事調停手続」(裁判所)

③ 建築工事紛争審査会の紛争解決手続き
建築紛争に特化した建築工事紛争審査会が、あっせん・調停・仲裁による施工不良紛争の解決を行います。
審査する側が建築に関する専門的知識を備えているため、法的な観点に加えて、建築技術や商慣行の観点を踏まえた主張を展開する必要があります。
(参考:「建築工事紛争審査会 トップ」(国土交通省)

④ 訴訟
裁判所の公開法廷において主張・立証を戦わせ、裁判所の判決により強制的に施工不良紛争を解決します。
施工業者側の契約不適合責任を立証するため、確固たる証拠を提出し、論理的な主張を展開できるかどうかがポイントになります。
訴訟においても和解は広く活用されています。裁判所の専門委員の知見を活用することで、適切な紛争解決を、調停や和解で図ることも可能です。


いずれの手続きについても、早期に弁護士にご相談いただくことで、適正かつ円滑に損害賠償等を請求することが可能です。
新築住宅の施工不良を発見した場合は、お早めに弁護士までご相談ください。

なお、弁護士と相談する場合には、

  • 合意書や契約書
  • 設計書や仕様書、見積書
  • 瑕疵の状態が分かる写真


などの証拠があると、施工不良であるかどうか判断しやすくなります。

弁護士は、こうした資料と、実際に発生した瑕疵、法令に違反している場合には建築基準関係法令なども確認して、お客さまのケースでの最適な解決方法をご提案します。

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5、まとめ

新築住宅の施工不良については、施工業者側の契約不適合責任や、場合によっては不法行為責任を追及できます。
施工業者の免責規定は無効となる可能性がありますので、弁護士にご相談のうえで、損害賠償請求の方針などを検討しましょう。

ベリーベスト法律事務所では、注文住宅・分譲住宅の施工不良に関するご相談を随時受け付けております。
施工業者側の責任を適切に追及するため、建築士とも連携のうえで、さまざまな手段を尽くして施主の皆様をサポートいたします。

新築住宅の施工不良トラブルにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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