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    • #契約不適合責任免責
    2022年09月29日
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    2022年09月29日
    契約不適合責任免責を理由に修繕を断られた! 責任を問うためにできること
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    契約不適合責任免責を理由に修繕を断られた! 責任を問うためにできること

    住宅などを建築してもらった場合や購入した場合には、漏水、結露など、建物の引渡を受けてから初めてさまざまな不具合に気づくことがあります。

    このような不具合が生じた場合には、施工業者や売り主に対して契約不適合責任を追及していくことになりますが、契約書に「契約不適合責任免責特約」が記載されていた場合には、どうなるのでしょうか。

    今回は、契約不適合責任免責を理由に、施工業者や売り主から修繕や損害賠償を拒否された場合の対応について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、契約不適合責任免責とは

建物に不具合があった場合には、契約不適合責任を追及してくことになりますが、契約不適合責任とはどのようなものなのでしょうか。

  1. (1)契約不適合責任とは

    契約不適合責任とは、請負契約や売買契約に基づいて引き渡された目的物について、以下の点について契約内容と異なる不具合(契約不適合)があった場合に、施工業者(売り主)が施主(買い主)に対して負う責任のことをいいます。

    • 目的物の種類
    • 目的物の数量
    • 目的物の品質


    たとえば、中古住宅を購入した場合に、雨漏りが生じていたり、給排水設備に欠陥があったりした場合には、契約上その不具合を前提として契約したのでない限り、売り主は契約不適合責任を負うことになります。

    契約不適合責任は、以前は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼ばれていました。令和2年4月1日に施行された改正民法によって契約不適合責任という名称に改められることになりました。責任追及の方法などについて若干の違いはありますが、「瑕疵」と「契約不適合」は同一といってよい概念であり、いずれも目的物の不具合に対する責任追及の手段であることに変わりはありません。

  2. (2)契約不適合責任免責とは

    契約不適合責任は、民法上認められている責任になりますが、当事者の特約によって責任を免除することも可能です(民法572条、559条)。このような特約のことを「契約不適合責任免責」といいます。

    不動産売買契約書や請負契約書に契約不適合責任免責がある場合には、当事者の合意によって定めた特約になります。したがって、原則として、買い主や施主は、売り主や施工業者の契約不適合責任を追及することができなくなることを知っておくべきです。

    ただし、契約不適合責任免責の特約があれば、どのような場合でも常に免責が認められるかというとそうではありません。後述するように、契約不適合責任免責の特約が無効になったり、制限されたりするケースがあります。あきらめずに確認しましょう。

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2、施主(買い主)が個人のときは免責特約が無効になることも

施主や住宅の買い主が個人である場合には、契約不適合責任免責の特約があったとしても、無効になる場合があります。

  1. (1)消費者契約法による制限

    消費者契約法とは、消費者と事業者との間の情報や交渉力に格差があることを踏まえて、消費者が不当な契約によって不利益を被ることのないようにするためのルールを定めた法律です。

    消費者契約法では、消費者である買い主や施主の利益を守る観点から、売り主や施工業者の損害賠償責任のすべてを免責するという条項については、無効になると規定しています(消費者契約法8条1項1号)。ただし、目的物の種類または品質に関して契約不適合がある場合において、売り主や施工業者が追完責任または代金減額責任を負うとされている場合には、契約不適合責任免責(損害賠償の免責)の特約は無効にはなりません。この場合には、売り主や施工業者の損害賠償責任を免責するという特約も有効になります。

    なお、消費者契約法は、消費者の利益を守るための法律です。したがって、施工業者(売り主)が事業者、施主(買い主)が消費者である場合に適用されます。事業者とはいえない個人間の請負契約や売買では消費者契約法は適用されないため、注意が必要です。

  2. (2)宅地建物取引業法による制限

    宅地建物取引業法とは、宅地や建物の取引を行う不動産業者に対して、必要な規制を行うことによって取引の公正を確保することを目的とした法律です。

    宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が売り主となる場合には、買い主が契約不適合を知ったときから売り主に通知しなければならないと民法で定められている期間を、「目的物の引渡の日から2年以上」とする特約を除いて、民法の規定よりも買い主に不利な特約をすることを禁止しています(宅地建物取引業法40条)。民法では、買い主は契約不適合を知ったときから1年以内に契約不適合の事実を売り主に告げないといけないのですが、宅地建物取引業者が許されている契約不適合責任免責の特約は、この期間を、「目的物の引渡の日から2年以上」とすることだけなのです。従って、宅地建物取引業者が、売り主のすべての契約不適合責任を免除するという契約不適合責任免責の特約を設定しても、それは宅地建物取引業法によって無効になります。

3、施主や買い主の立場に関係なく免責特約が無効になるケース

以下のようなケースでは、施主や買い主の立場に関係なく、契約不適合責任免責の特約により責任を免れることはできません。

  1. (1)施工業者(売り主)が契約不適合を知りながら施主(買い主)に告げなかった場合

    売り主または施工業者が契約の目的物について契約内容に適合しないことを知っていながら、それを買い主または施主に伝えなかった場合には、契約不適合責任免責の特約があったとしても、それは適用されません(民法572条、562条、559条)。

    契約不適合について知っていた場合には、当然、それを相手に知らせるべきであり、それをしなかった本人の保護を優先するべきではないからです。

    知っていたという故意に等しいと解される重大な過失があるときにも、この条文は類推適用されると考えられており、重大な過失があるときにも免責されません。

  2. (2)売り主の行為によって権利に関する不適合が生じた場合

    売り主が売買契約の目的物に抵当権を設定して融資を受けた場合のように、売り主自らが第三者のために権利を設定したり、権利を譲渡したりしたことによって契約不適合が生じた場合には、契約不適合責任免責の特約は適用されません(民法572条、565条)。

    売り主自らが契約不適合責任の状態を作り出したのですから、当然の結論といえるでしょう。

4、施工業者(売り主)に責任を問える可能性がある瑕疵と請求できる内容

契約の目的物に契約不適合にあたる瑕疵が生じた場合には、売り主に対して、契約不適合責任を追及できます。

  1. (1)施工業者(売り主)に責任を問える可能性がある瑕疵

    契約の目的物である建物に以下のような瑕疵がある場合には、施工業者(売り主)の契約不適合責任を問うことができる可能性があります。

    • 漏水(雨漏り、水漏れ)、結露
    • タイルの剥落、外壁のひび割れ
    • 建物の沈下
    • 構造耐力不足
    • 電気設備等の不具合
    • 耐火・防火の不備


    また、建物の売買の場合には、下記のような事項も瑕疵と考えられる場合があります。

    • 近所での騒音、振動、悪臭
    • 近所に暴力団事務所や火葬場などがある
    • 中古の建物内で自殺や事故があった
  2. (2)契約不適合責任の内容

    上記のような瑕疵が見つかった場合には、施工業者(売り主)に対して契約不適合責任を追及することが可能です。

    具体的には、次に紹介する方法で責任を取るよう求めていくことになります。

    ① 追完請求
    追完請求とは、施工業者や売り主に対して契約内容に適合するような修理や改善などの履行を求めることをいいます。具体的には、目的物の修補請求、不足分の引渡し請求といった形で行います。たとえば、建物に雨漏りが生じている場合には、追完請求として屋根の修理などを求めることができます。

    ② 代金減額請求
    施主や買い主が追完請求をしたにもかかわらず、相当期間内に施工業者や売り主が追完を行わない場合には、施主や買い主は、契約不適合に応じた売買または請負代金の減額を請求することができます。
    なお、そもそも追完が不能である場合には、追完請求をすることなく代金減額請求をすることもできます。

    ③ 損害賠償請求
    契約不適合が生じたことについて、施工業者や売り主に帰責事由がある場合には、施主や買い主は、施工業者や売り主に対して損害賠償請求をすることができます。
    たとえば、建物の雨漏りによって家具や家電が汚損した場合には、汚損による損害を請求することができ、修理のために一定期間ホテルでの生活を余儀なくされた場合には、宿泊料などを請求することができます。

    ④ 契約の解除
    施主や買い主が追完請求をしたにもかかわらず、相当期間内に施工業者や売り主が追完を行わない場合には、施主や買い主は、売買契約を解除することもできます。
    ただし、契約不適合の程度が、取引上の社会通念に照らして軽微だと判断された場合には、契約の解除までは認められません。

5、契約不適合責任をめぐりトラブルが起きたときは弁護士に相談を

契約不適合責任をめぐって施工業者や売り主との間でトラブルになった場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)契約不適合責任免責の特約の有効性を判断してもらえる

    請負契約や売買契約においては、契約書に契約不適合責任免責の特約が記載されていることがあります。このような特約があるということで、契約目的物に何らかの瑕疵があったとしても、施工業者や売り主への責任追及をあきらめてしまう方もいるでしょう。

    しかし、すでに説明したとおり、契約不適合責任免責の特約があったとしても、具体的な状況によっては当該特約により免責されない場合もあります。ご自身で特約の有効性について誤った判断を下してしまう前に、まずは専門家である弁護士に判断をしてもらいましょう。

  2. (2)施工業者(売り主)に対する交渉を任せることができる

    施工業者や売り主に対して契約不適合責任を追及する場合には、まずは、施工業者や売り主との間で具体的な対応について交渉をしていくことになります。しかし、施主と施工業者では、住宅建築についての知識や経験で大きな格差があるケースがほとんどです。売買でも、売り主が不動産業者で、不動産のプロという場合もよくあるでしょう。専門用語などを使って説明されてしまうと、責任の所在が把握できず、曖昧になってしまいかねません。

    契約不適合責任の追及などの建築、建物に関するトラブルが生じた場合には、専門家である弁護士に対応をお任せください。弁護士であれば建築に関する法的知識や経験を有しておりますので、施工業者や売り主との関係でも対等に交渉を進めることが可能です。弁護士に対応を任せることによって、施主や買い主の方の負担も大幅に軽減できるといえるでしょう。

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6、まとめ

契約不適合責任免責の特約があったとしても、すぐにあきらめてはいけません。特約が無効になるケースもありますので、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

建築トラブル、購入した建物のトラブルでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。どのような対応を求めることができるかなど、具体的なアドバイスを行います。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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