売買契約の目的物に欠陥が見つかった場合、買い主は売り主に対して「契約不適合責任」に基づき、損害賠償等を請求することができます。不動産の売買契約も例外ではなく、契約不適合責任が問題になる場合があります。
もし購入した不動産に欠陥などが見つかった場合には、速やかに弁護士にご相談ください。
今回は、不動産売買契約において、契約不適合責任に基づく売り主の責任を追及する方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
契約不適合責任とは、売買契約の目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合していない場合に、売り主が買い主に対して負担する責任です。
売買契約において、売り主は買い主に対し、契約内容に沿った目的物を引き渡す義務を負っています。この引き渡し義務に対応して、目的物と契約内容との間に齟齬があった場合には、売り主に損害等を補塡(ほてん)させることが、契約不適合責任の目的です。
令和2年3月31日まで適用されていた旧民法では、契約不適合責任は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼ばれていました。
旧民法下の瑕疵担保責任については、条文解釈について『法定責任説』と『契約責任説』とで見解が分かれており、判例法理によって補充的にルールが定められている状態でした。
また、買い主が選択できる救済手段の幅が狭いことも問題視されていました。
令和2年4月1日に施行された改正民法(現行民法)では、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと名称を改めるとともに、判例法理の明文化と買い主の救済手段の拡充が図られました。
旧民法下の瑕疵担保責任と、現行民法下の契約不適合責任のいずれが適用されるかは、売買契約が締結された時期によって異なります。
具体的には、令和2年(2020年)3月31日以前に締結された売買契約には、瑕疵担保責任が適用されます。
これに対して、令和2年(2020年)4月1日以降に締結された売買契約には、契約不適合責任が適用されます。
なお「瑕疵担保責任」の名称は、「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)第94条・第95条に残されています。品確法上の瑕疵担保責任については、後述します。
契約不適合責任は、契約に基づく債務不履行責任の一種です。
したがって、契約不適合責任を追及できるのは、売買契約等の相手方に対する場合に限られます。
たとえば、中古・新築マンションの売買契約であれば、買い主は売り主に対してのみ契約不適合責任を追及できます。
仮に施工業者など、契約当事者ではない主体の責任を追及したい場合には、契約不適合責任ではなく、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償を請求することになります。
不動産売買では、契約不適合責任が問題となるケースが比較的多いといえます。
では、不動産売買において、契約不適合責任が問題となるケースの具体例をいくつか見てみましょう。
不動産は、居住用であってもそうでなくても、人による利用が想定されるため、構造耐力をはじめとした基本的な安全性能を備えている必要があります。
したがって、基礎や建物の基本的な安全性能に重大な欠陥があった場合には、その時点で売り主の契約不適合責任が認められます。建物としての基本的な安全性を損なうような瑕疵がある場合には、契約不適合責任を問える期間を経過した後でも、不法行為責任を追及できる場合もあります。
売買契約の締結時に、売り主が買い主に対して欠陥がないと説明した箇所については、欠陥がない状態で不動産を引き渡すことが売り主の義務となります。
そのため、欠陥がないと説明された部分について、実際には欠陥が存在した場合には、売り主の契約不適合責任が認められます。
売買契約上明記された建物の仕様については、そのとおりのものを買い主に建物を引き渡さなければなりません。
もし建物の仕様について、契約内容と実物の間に齟齬があった場合には、売り主の契約不適合責任が認められます。
不動産売買契約において契約不適合が存在する場合、買い主は4つの方法を通じて、売り主の契約不適合責任を追及できます。
ただし、契約不適合責任には期間制限がある点に注意が必要です。
契約不適合責任を追及する4つの方法について、ひとつずつ解説します。
買い主が売り主の種類又は品質に関する契約不適合責任を追及するには、原則として不適合を知った時から1年以内に、不適合の存在を売り主に通知する必要があります(民法第566条本文)。
ただし、不適合について、売り主に悪意または重過失が認められる場合には、期間制限は適用されません(同条但し書き)。
なお、契約不適合責任の期間は、原則として売買契約書の特約による変更が認められますが、契約不適合責任の期間を変更する特約が無効となる例外的なケースもあります。
新築住宅の売買契約については、構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分に瑕疵(欠陥)がある場合には、売り主は買い主に対して品確法上の「瑕疵担保責任」を負います(品確法第95条第1項)。
構造耐力上主要な部分とは、次のいずれかのうち、当該住宅の自重、積載荷重・積雪・風圧・土圧・水圧、地震その他の震動や衝撃を支えるものを指します。
なお、品確法上の瑕疵担保責任の期間は、住宅の引き渡しから10年で短縮は認められません(同条第2項)。
前述したように、契約不適合責任の追及方法のひとつとして、買い主は損害賠償請求を選択することができます。具体的な損害賠償の請求方法について、確認していきましょう。
購入した建物等の契約不適合により、買い主に損害が生じていれば、売り主に対して契約不適合責任を追及できます。
買い主は、他の責任追及方法と損害賠償請求を併用することも可能です。ただし、他の方法によって損害が回復される場合には、二重にその契約不適合部分に関する損害賠償を請求することはできません。
買い主が不動産売買契約について、契約不適合責任に基づく損害賠償請求を行う場合、まず売り主との間で協議するのが通常です。
協議で解決ができなければ、調停や訴訟などを通じて解決を図ることになるでしょう。
協議・調停・訴訟のいずれの局面でも、買い主は法的根拠のある主張と証拠に基づいて、適正な金額の損害賠償を請求することが大切です。また、売り主側の反論に対して、法的な観点から論理的な再反論を行うことも求められます。
そのため、損害賠償を請求したいとお考えの場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。
購入した不動産に欠陥や契約との齟齬(そご)が見つかった場合、買い主は売り主の契約不適合責任を追及できます。
売り主の契約不適合責任が認められる場合、損害賠償請求をはじめとした複数の責任追及手段が考えられるので、弁護士にご相談のうえで対応策を検討することをおすすめします。
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