中国民事訴訟Q&A(その7)
中国律師からの回答
「民訴法」は、事件ごとの特殊性に応じて認められる特殊地域管轄(特別裁判籍)も採用しています。「民訴法」第2章第2節(地域管轄)第23条から32条まで、及び関係司法解釈において規定されています。
特殊地域管轄(特別裁判籍)
- 契約紛争により提起する訴訟は、被告の住所地または契約履行地の人民法院が管轄します。
- 保険契約紛争により提起する訴訟は、被告の住所地または保険目的物の所在地の人民法院が管轄します。保険目的物が車両等の運送手段または運送中の貨物である場合、保険目的物の所在地は、運送手段の登録地、運送目的地、保険事故発生地を含みます。
- 手形紛争により提起する訴訟は、被告の住所地または手形支払地の人民法院が管轄します。手形に支払地が明記されていない場合、代理支払人を含む手形支払人の住所地、または主要営業所の所在地が支払地となります。
- 会社設立、株主資格の確認、利益配当、解散等に関わる紛争により提起する訴訟は、会社の住所地の人民法院が管轄します。
- 鉄道、道路、水上、航空の運輸及び連絡運輸の契約に関わる紛争により提起する訴訟は、被告の住所地または運輸の開始地もしくは目的地の人民法院が管轄します。
- 権利侵害行為により提起する訴訟は、被告の住所地または権利侵害行為地の人民法院が管轄します。権利侵害行為地には、侵害行為の実施地及び侵害結果の発生地が含まれます。
- 鉄道、道路、水上、航空の事故の損害賠償請求により提起する訴訟は、被告の住所地または事故発生地、車両及び船舶の最初到着地、航空機の最初降下地の人民法院が管轄します。
- 船舶の衝突その他の海事損害事故により提起する訴訟は、被告の住所地または衝突発生地、衝突船舶の最初到着地、加害船舶の差押地の人民法院が管轄します。
- 海難救助費用により提起する訴訟は、被告の住所地または救助地、被救助船舶の最初到着地の人民法院が管轄します。
- 共同海損により提起する訴訟は、船舶の最初到着地、共同海損清算地、または航程終了地の人民法院が管轄します。
ちなみに、訴訟前の財産保全については、当事者は財産所在地の人民法院に申立をしなければならず、当該人民法院が訴訟前の財産保全を実行した後、申立人が提訴する場合、当該財産保全を実行した人民法院、またはその他の管轄権を有する人民法院に提訴することができます。なお、法定期間内に提訴しなかったことにより被申立人に財産損失が生じた場合、当該財産保全を実行した人民法院が管轄することに注意する必要があります。
注意点
製品品質責任(製造物責任のこと)に関わる他人の財産及び人身に損害を与えた場合の訴訟の管轄については、被告の住所地または権利侵害行為地のほか、製品の製造地及び販売地の人民法院も管轄権を有します。
重要関係司法解釈
「最高人民法院の『民事訴訟法』の適用の若干問題に関する意見」(1992年7月14日施行、法発[92]22号)第1章(管轄)