中国における商業賄賂とリスクマネジメント -贈答は商業賄賂ですか?-
1.中国法上、取引先に贈答品を送ることは可能ですか
取引先に贈答品をお送りすること自体に関して、法制度上は禁止していません。1996年11月15日の「関与禁止商業賄賂行為的暫行規定」(以下「同規定」と言います。)の第八条は、「経営者は商品取引において取引先の組織或いは個人に対して現金或いは物品を贈与してはなりません。
但し、商取引慣習によって少額の広告品を送る場合を除く。
前項規定に違反した場合、商業賄賂行為としてみなします」と規定しています。従って、中国法上、取引相手に贈答品を送ることは許されています。
2.贈答品の金額をどう決めればいいですか
同規定第八条は、取引先に贈答品送ることを許していますが、商取引慣習及び少額の広告品との二つの条件を付けています。当該規定を厳格に解釈すると、上記条件外の贈答品はすべて商業賄賂行為として取締り受けることになりかねません。しかし、実務上は、取引先に対して少額であれば、広告品以外のもの送っても構いません。問題は、金額及びその目的にあります。
贈答品の金額はどう決めればいいでしょうか。公務員が贈答品を受け取る場合、中央政府の規定があります。公務員個人が受け取れるのは基本的に200人民元以下のものと規定していますので、公務員に対して贈答品を送る場合の安全な金額は分かりやすいです。但し、現金、有価証券等を贈答することに関しては禁止しています。問題は、民間取引先に対する贈答品の金額の設定です。
工商行政管理局の実務上の理解(地方によって理解が異なる点に注意ください)取引先に対する贈答品の金額は日常的な贈答のレベルを超えると商業賄賂として認定される可能性は高まります。例えば、中国春節の際に、取引先に市販の缶ビールをひと箱送るのは商業賄賂にならないと思われますが、高価な金箔包装のものにしたら明らかに商業賄賂行為として認定されるでしょう。
3.事例でみる贈答としての商業賄賂
具体的事例で贈答としての商業賄賂の詳細を確認しましょう。これは、上海の某医療機器会社(以下「A社」と言います)が福建省漳州市雲霄県にある某病院(以下「同病院」と言います)に対して、贈答として設備を送った事例です。具体的には、A社は同病院に対して、150000人民元の富士能WC-88WM小腸検査鏡を販売する契約を締結する際に、契約においてその他の設備10000人民元程度のものを贈答し、工商行政管理局は同規定八条違反として処罰しました。A社は、工商行政管理局の処罰に対して、行政訴訟を提起しましたが、裁判所は工商行政管理局の処罰を維持する判決を下しました。
A社の贈答行為を割引と認定すべきか、商業賄賂として認定すべきかに関して、処罰を行った工商行政管理局は以下のように判断しました。
4.贈答が商業賄賂として認定される判断基準はなんですか
贈答が商業賄賂として認定される判断基準に関して、一例に過ぎないが、上記3の事例に沿ってみましょう。
工商行政管理局は、第一に、贈答したのは売買目的物代金以外の財物或いはその他の手段であること、本事例の場合、10000人民元程度のその他の設備であること、第二に、贈答者が送った財物或いはその他手段は受領者と取引するため供与した違法な利益であり、或いは違法に取引の機会を獲得するためでありこと、本事例の場合、当事者対する調査の際に本人は陳述書の形で認めており、第三に、不当な財物を送る或いはその他手段、或いは合法的な形式で競争相手を排除する目的と動機があり、かつ競争相手を排除する目的に達したことの三つの面から証拠を集めました。
工商行政管理局はさらに、本事例における贈答を割引としてみなすことはできるかどうかに関して検証しました。その結果、贈答品に関しては、売買契約においても別項目として明記しており、代金の支払にも含まれていませんでした。A社と同病院ともに贈答品の金額に関して「記帳せず、非明示的」でした。割引の要件には該当していません。また、A社の主観的面に関しても、調査した結果、当該地域に同じ製品を販売している会社は別にありましたため、当該販売会社を排除する意図会ったことは明らかでした。
中国は日本と同じく贈答を重んじる国であり、中国に進出する企業もよく行っていることです。しかし、その贈答の際に、リスク侵さないような工夫をすることは大事だと思います。