中国における商業賄賂とリスクマネジメント -法概要-
- 訴訟・仲裁手続

ここ数年、中国で外資系企業には商業賄賂による工商局などの官憲の調査が相次いでいる。この商業賄賂という概念、いったいどのようなものであり、どのような法的問題意識から発生したものか。問題を回避するために、外資系企業は何をすべきか。
1.商業賄賂とは何か
商業賄賂、その名のとおり、商業ビジネス領域における賄賂のことを指します。
中国法において、商業賄賂に関する法的概念は1993年12月1日の「中華人民共和国反不正当競争法」(以下「同法」と言います。)において初めて登場しました。当該法第八条は商業賄賂という名称を直接用いていないものの、「経営者は財物或いはその他の手段による賄賂を行うことを通じて商品の販売或いは購入をしてはならない」と規定しています。
その後、1996年11月15日の「関与禁止商業賄賂行為的暫行規定」(以下「同規定」と言います。)の第二条は、「商業賄賂とは、経営者がその商品の販売或いは購入のために、財物或いはその他の手段を通じて相手単位(会社等の組織を指す)或いは個人に対して賄賂を贈ることを指す」と規定しています。
2.経営者とは何か
上記法律法規に規定している経営者とは、非常に広範な概念です。同法第二条によれば、同法における経営者とは、商品の経営或いは営利的なサービスに従事する法人、その他の経済組織及び個人を指します。
同規定第三条によれば、経営者の従業員が行った商業賄賂行為は経営者の行為とみなされます。
3.財物とその他手段とは何か
「関与禁止商業賄賂行為的暫行規定」第二条によれば、財物とは、販促費、宣伝費、賛助費、科研費、労務費、コンサル費、仲介料等或いは経費勘定等の名義を借りて、相手単位或いは個人に対して不当な財物を与えることを指します。
その他手段とは、同規定同条によれば、国内外にける各種名義の旅行、考察、訪問等行うことで、財物以外の利益を与えることを指します。
4.商業賄賂の認定基準
商業賄賂の認定基準は、実務上非常にあいまいとなっています。同規定第五条は「財務帳簿に明示的に記載しない」ことを基本ベースとしています。但し、明示的に記載を行っても商業賄賂として認定される可能性はあります。