事務所案内 Office Information

依頼者の被害救済を目的としたクラウドファンディングの支援

ベリーベスト法律事務所は、訴訟をしたいが活動資金が足りないという問題を抱えている被害者を募金で支援する、リーガルファンディングサービスをバックアップしています。

リーガルファンディングの社会的意義

「リーガルファンディング」は、訴訟に特化した日本初のクラウドファンディングサービスです。訴訟を行うためには、裁判所に訴訟を提起する際に納付する手数料(印紙代)はもちろん、弁護士費用や調査費用、移動費などさまざまな費用がかかります。そのため、何らかの被害に遭って訴訟をしたいと考えても、資金が足りないときは「あきらめる」ことを選択せざるを得ないケースが多数あるという現状があります。

しかし、訴訟を通じて救われる可能性があるのは、裁判を起こした当事者だけではないケースがあります。個人が提起した訴訟の判決によって、社会や制度が変わり、被害者と同じ苦しみを抱えていた多くの方が救われることになった実例も多々あるのです。だからこそ、弁護士は「あきらめる」しかないようなケースでも見過ごせません。その結果、依頼人に訴訟を起こすだけのお金がないにもかかわらず、社会的意義があると考えられる事件であれば、弁護士個人が私財をなげうって対応するか、カンパや募金を集めるか……などの方法によって訴訟を提起するしかありませんでした。

そのような中、インターネットを通じて不特定多数の人々からの支援を募り資金調達を実現する「クラウドファンディング」が登場しました。実際に、社会的意義がある刑事事件においてクラウドファンディングを通じた支援を募り、逆転無罪を勝ち取った事例も存在します。しかし、既存のクラウドファンディングサービスには、手数料がかかりすぎる、支援者へのリターンを用意することが難しいケースが多い、本当に弁護士がプロジェクトを立ち上げているのかどうかを証明しづらいなどのデメリットがありました。

社会的意義がある訴訟は、令和の時代を迎えた現代にも数多くあります。そこで、これまでも頻繁に手弁当による弁護活動を行っていた日本羅針盤法律事務所 代表弁護士 望月宣武弁護士らが、すでにイギリスやアメリカには存在している裁判費用の調達を目的とするクラウドファンディングサービスの日本版開設を提案。ベリーベスト法律事務所と株式会社カイラステクノロジーの協力を得て、訴訟支援に特化した「リーガルファンディング」を開設し、新たなリーガルサービスを提供しています。

ベリーベスト法律事務所が支援するリーガルファンディング

「リーガルファンディング」は、平成30年10月11日よりスタートしたインターネットを通じた募金によって特定の訴訟を支援者がバックアップできる、日本初の弁護士による被害救済に特化したクラウドファンディングサービスです。

リーガルファンディングでは、誰でもプロジェクトを立ち上げられるわけではありません。新規プロジェクトを作成できるのは、すでに該当案件を担当している弁護士のみ。さらに弁護士等で構成された審査委員会の審査・承認を経て、実際に支援金を募ることができるというシステムを採用しています。

リーガルファンディングを利用した訴訟の流れ

リーガルファンディングを利用した訴訟の流れ

プロジェクトを作成した担当弁護士は、事件概要から支援金の使い道などを明示します。その上で事件内容に共感した支援者により集まった支援金は、主に弁護士費用や訴訟費用に使われることになります。事件が解決したら、弁護士からの報告が行われるため、支援者は、「和解」や「判決」などが出て事件が解決するところまで、該当事件の当事者に寄り添うことができるというメリットがあります。

リーガルファンディングの第一号案件は、地方アイドルグループの一員だった少女が自ら命を絶つという選択をした事実に対する真相解明と、現在横行していると考えられる芸能事務所による不当なハラスメント行為や違法な過重労働をひとつでも減らすことを目的にした事件です。第二号案件は、官報に掲載された情報をもとに作成され、平成30年12月から翌年3月まで公開されていた「破産者マップ」の責任者を特定し、法的な対抗措置を行うとともに、破産等の公告の在り方に関する提言を目的に立ち上げられたプロジェクトでした。令和元年9月現在、いずれのプロジェクトにおいても担当弁護士らは、多額の支援金を集めて、目的達成を目指して活動しています。

ベリーベスト法律事務所は、このリーガルファンディングの取り組みを支援し、強力なバックアップを行っています。

一般社団法人リーガルファンディングの代表理事、望月 宣武弁護士に、活動についてお話を伺いました

望月宣武弁護士
望月 宣武
Mochizuki Hiromu
一般社団法人リーガルファンディング 代表理事
日本羅針盤(ニッポンコンパス)法律事務所 代表弁護士

新たな「共助」のしくみをつくりたい

近年、社会全体が自己責任論に偏りがちです。しかし、本当にそうでしょうか。いかに裕福な生活をしていようともあっという間に貧困に陥ってしまう可能性があるのが実際の社会です。ほとんどの方は、真面目にコツコツ生活していて、体調を崩した、事故にあったなど、ちょっとしたきっかけによって被害者となってしまいます。刑事事件、民事事件を問わず、いつ何らかの被害を受けるとも限りません。日本では法制度が整っているはず なのに、訴訟を提起するだけの資金がないという理由だけで、相手に責任を追及したり、損害を賠償してもらうことをあきらめざるを得なかったりするケースが非常に多いという現実があります。

資金がないのであれば、法テラスを使うというのも一案であり、たしかに法テラスは有用です。しかし、法テラスの援助金は原則として貸付であり、被害者自身が返済(償還)する必要があります。明日の生活にも悩む被害者が気軽に利用できるかといえば、難しいケースがあることは否定できません。また、法テラスの援助金は非常に低額ですので、複雑で難しい訴訟には利用しにくいのが実情です。

私は、「自助・公助・共助」のバランスが非常に重要だと考えています。自己責任論で解決する場合は自ら訴訟費用を用意するわけですから、このうちの「自助」にあたります。法テラスは税金を使った公的支援という一面があることから「公助」に該当する面が強いと考えられます。

では、法解決するために「共助」できるサービスは? といえば、これまで存在していなかったのではないでしょうか。私は「共助」により被害者を救済するためのシステムをつくる必要があると、日々の弁護士業務を通じて痛感していました。ちょうどそのころ、イギリスをはじめ諸外国ではすでに普及している訴訟事件に特化したクラウドファンディングの存在を知り、そのようなサービスの日本版をつくることを目指し、ベリーベスト法律事務所の協力を得て「リーガルファンディング」を立ち上げることができました。

もちろん、既存のクラウドファンディングを利用する方法もあったでしょう。しかし、既存サービスは手数料の割合が大きく、いただいた支援金をフルに活かしきれないというデメリットがあります。また、多くの当事者はリターン(返礼品)を用意できません。さらには、弁護士法や弁護士倫理(弁護士職務基本規程)との関係も考えなければなりません。

法解決に特化したクラウドファンディングサービスである「リーガルファンディング」は、社会的意義がある訴訟を、弁護士の手弁当に頼らずともより素早くスムーズに行うことができる、新たなリーガルサービスです。もっと数多くの弁護士に活用していただけるようにしたいと考えています。

望月宣武弁護士

カンパや募金ではなくクラウドファンディングサービスを選択した理由

かつて、社会的意義がある訴訟については、募金やカンパを通じて訴訟に必要な費用を集めて行われてきました。しかし、ホームページを作成したとしても拡散力が弱く、カンパを集めるためにFAXを使ったりビラを配ったりなどの、多大な費用や手間を要する手法に頼らざるを得ない状態となるケースがほとんどです。結果、一部の人にしか情報が届かないという事態に陥り、十分な費用が集まるまで時間がかかってしまいます。また、情報を拡散させることそのものや、集計作業などにも非常に労力がかかります。つまり、かなりのマンパワーが求められるのです。

そこまでしても必要なだけの資金が集まらず、弁護士の持ち出しで賄うケースが少なくありません。そのうえ、せっかく募金などの形で支援していただいても、募金箱などを通じて支援いただいた方などには、その後どうなったかの報告を漏れなく届けることが難しいというデメリットもありました。

しかし、クラウドファンディングサービスを利用すれば、SNSなどを通じた拡散がしやすく、クレジットカードを用いることで素早く支援いただくことが可能となります。実際に、第二号案件では、わずか3か月弱の募集で400名以上の支援者が集まり、およそ180万円の支援をいただくことができました。従来の支援者を募る方法では、なかなか成し遂げることは難しかったでしょう。そして、集計作業をわざわざ行わなくても、リアルタイムで支援金が目標額の何パーセントまで集まったかが確認できることも大きなメリットだと感じました。

さらには、支援いただく際にメールなどを通じて会員登録していただくことから、支援者の履歴がシステム上に登録されています。だからこそ、すべての支援者に事件のいきさつや現在のプロジェクトの進行状況などの情報を届けることができるというメリットがあります。もちろん、プライバシーや訴訟戦略などの問題からすべての情報をリアルタイムで明かすことはできませんが、現時点でどのように支援金を使わせていただき、どのような意図を持って行動をしているのかについての報告をリアルタイムで行えることは、弁護士はもちろん支援者にとっても有意義なポイントとなると思っています。

クラウドファンディングによって支援者を募ることは、現代ならではの方法です。集団いじめを誘発するのではないかと懸念する声をいただきましたが、従来から行われている、弁護団による記者会見などと同様のことがいえると思います。当事者一方の言い分だけが発信されることになりますし、センセーショナルな表現を用いてたくさんの方に注目してもらおうとする危険性があります。これは、クラウドファンディング特有の問題ではありません。クラウドファンディングでも、従来の募金やカンパでも起こり得る問題です。したがって、プロジェクトを立ち上げて発信する弁護士には、過激な表現や名誉毀損にならないように気を付けてもらう必要があり、運営側からも注意喚起することにしています。

望月宣武弁護士

裁判手続きの詳細を伝える必要性を改めて実感

リーガルファンディングを利活用して訴訟を進めるにあたり、改めて気づかされたことがあります。それは「弁護士以外の方に、法解決の手段やプロセスがあまりにも知られていない」という事実です。

訴訟を提起したとしても、裁判は時間がかかります。次回の期日までだけで数か月かかることさえあり、判決が下るまで数年かかるというケースは少なくありません。控訴・上告すれば年単位の月日が流れてしまうこともあり得ます。さまざまな調査や交渉にも時間が必要となります。その間、当事者の立場が不利になりかねないと考えると、たとえ支援者に対してであっても、証拠や和解交渉中のやりとりなどを逐一すべて公開してしまうわけにもいきません。

しかし、一部の支援者から詳細かつリアルタイムの報告を求める声をいただくことがあります。「自分が考えていた方向性とは違う」と返金を求める方もいらっしゃいました。この点は、従来の募金やカンパなどとは大きな違いだと感じています。

被害救済が目的ですから、判決に限らず、当事者が納得した上で和解に応じることもあるでしょう。それもまた救済であり、法による解決方法のひとつです。また、リーガルファンディングでは当初より「ネットを通じた募金」という表現を用いていますし、明記してある通り、原則として返金には応じられません。募金やカンパとは異なる「クラウドファンディング」という支援者の「参加」という期待と、当事者の自己決定をどうバランスさせるのか、もう少し支援者にご理解いただくように努力する必要があると感じています。

弁護士が利用しやすいサービスに成長するよう、今後、さらなる改善を行わなければならないでしょう。

望月宣武弁護士

弁護士がリーガルファンディングサイトを運用・利用する意義

弁護士は、弁護士法や弁護士倫理(弁護士職務基本規程)にのっとって行動しています。違反をすれば懲戒を受け、仕事を続けることが難しくなるでしょう。「事件の担当弁護士であるという条件を満たさなければプロジェクトを立ち上げられない」というルールに決定したのは、ひとつはプロジェクトの信頼性を高めるためです。

そもそも、支援者の共感を得られなければ支援金を集めることはできないわけですから、弁護士が支援金目当てにプロジェクトを乱立するメリットはありません。弁護士の倫理観、そして審査委員会による審査、さらに支援者の共感という3つの壁を乗り越えなければ、訴訟に必要なだけの支援を受けることはできないことになります。仮に支援金をだまし取るような弁護士がいれば、懲戒によって該当弁護士は追及されることになるでしょう。

繰り返しになりますが、リーガルファンディングで扱われるのは被害者救済のためのプロジェクトです。したがって、今後扱われる事件は弱者が強者に立ち向かうための事件だけに限らなくなるでしょう。救済されるべき被害者は、刑事事件や一般民事事件に限らず、多種多様な事件で存在するためです。

リーガルファンディングを利活用する弁護士にとってのメリットは、このような信頼性の高いプラットフォームが確立されていることです。本来救済すべき被害者が相談に来ているのに、資力がないがために門前払いせざるを得ないという状況を打破することができます。弁護士が今まで以上に社会正義に基づいた仕事を手がけることができるようにしたいと、私は常に考えています。

望月宣武弁護士 プロフィール

望月宣武弁護士
  • 一般社団法人リーガルファンディング 代表理事
  • 日本羅針盤(ニッポンコンパス)法律事務所 代表弁護士

静岡県出身。東京大学法学部在学中、障害者の権利擁護活動に打ち込む。大学卒業後はNGO機関などに勤めたのち法科大学院を経て弁護士へ。札幌市内の大手法律事務所に所属したのち、平成21年4月に日本羅針盤法律事務所を開所、独立して現在に至る。東京弁護士会、日本経済法学会、日本医事法学会所属。 リーガルファンディング代表理事を務めるほかに、日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事、破産者マップ被害対策弁護団 団長、コインチェック被害対策弁護団 事務局長など、社会問題の解決を目指したプロジェクトへ積極的に携わっている。

TOPへ