近年の住宅は気密性や断熱性が高いため、新築であってもカビが生えることがあります。念願の新築住宅を手に入れたにもかかわらず、カビが発生してしまったらショックを受けるのは当然のことです。
カビを放置していると健康被害なども生じるおそれがありますので、カビを発見した場合は早期に適切な対応を行うことが大切です。また、カビの原因によっては、施工業者の責任を問える可能性があります。泣き寝入りせず対策を講じましょう。
今回は、新築でもカビが生える原因やカビを発見したタイミング別にすべきこと、相談先について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築でもカビが生えることがあります。カビが生える主な原因としては、以下のものが挙げられます。
構造上ではなく、土地の問題で新築の家にカビが生じることがあります。
たとえば、建築した土地が以下のような場所であった場合には、湿度が高くカビが発生する可能性が高くなります。
宅地造成により一見すると問題ないような土地であっても、登記事項証明書などからさかのぼって過去の地目を調べることにより、カビのリスクのある土地であるかどうかを確認することができます。
近年の住宅は、住宅性能が向上しているため、新築であれば高気密・高断熱の住宅がほとんどでしょう。高気密・高断熱住宅は、冷暖房効率が上がり省エネの期待ができるなどさまざまなメリットがありますが、空気の入れ替えが行われにくく湿度が高くなるというデメリットもあります。
そのため、適切な換気の設計が図られていない場合には、湿度がこもりカビが生えるリスクが高くなります。
コンクリートは、セメントと水などにより作られており、コンクリートが完全に乾燥するまでには、数年の期間が必要になります。しかし、近年の新築住宅は、着工から引き渡しまで半年から1年程度の短期間の工期となっていますので、水分が完全に抜けきらない状態で新築住宅が完成してしまいます。
基本的に、コンクリートはカビの生えにくいアルカリ性の建材ですが、床下の通気が不十分な状態で基礎コンクリートの湿気がたまった場合、新築であってもカビが生える可能性があります。
日本の風土では、建築途中の雨は避けられません。建築途中に雨が降ったとしても、しっかりと雨養生をして、木材がぬれないように配慮し、ぬれた後も十分な乾燥を行えば問題はありません。
しかし、雨養生が不十分な場合や、建材の乾燥を十分に行わず、含水率の高い状態で施工を進めてしまうと、湿気が蓄積され、カビが生えるリスクが高くなります。また外壁のモルタルが薄くクラックが発生しやすいと、そこから雨水が染み込みカビの温床となることもあります。
このようなケースでカビが発生した場合には、施工業者の不手際だといえるでしょう。
新築でカビを発見した場合には施工業者に対してどのような責任を問うことができるのでしょうか。以下では、カビを発見したタイミングごとの対応方法と施工業者の責任について説明します。
建築中にカビを発見した場合には、建築工事をいったんストップさせ、カビの除去や対策を講じるよう求めていきましょう。
建築中にカビが発生するような状況は、換気不良や雨水の放置などが考えられます。施工業者は適切に建材の管理を行う責任がありますので、施主は施工業者に対して、施工のやり直しを求めることができます。
なお、カビの除去や建材の乾燥のために工期が延びることがありますが、カビの発生が業者による管理が不適切なことが原因であれば、請負契約書の完成期日に基づき工事遅延損害金を請求できる可能性があります。
建物が完成し、引き渡し直前に行う施主検査などでカビを発見した場合は、以下のいずれかの対応が可能です。
いずれにしても完成した状態でカビの除去をするためには、壁紙をはがす、壁を撤去するなどの大規模な補修工事が必要になる可能性があります。補修工事期間は、新築の建物に住むことができませんので、仮住まいでの生活を余儀なくされます。
仮住まいでの生活が長引けば、賃料の負担などが生じます。カビの原因が明らかに施工業者にある場合は、それらの経済的な損害についても賠償を求めていくこともできます。
注文住宅をはじめ、建売の新築物件の引き渡し後にカビを発見した場合には、施工業者に対する契約不適合責任を追及していくことになります。契約不適合責任とは、引き渡し後に住宅の欠陥が見つかった場合、売主に損害賠償を請求できる権利です。
しかし、契約不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を通知していなければ、その契約不適合に基づいて契約不適合責任を追及することができなくなってしまうため、注意が必要です。
具体的には、以下の4つの請求が可能です。
新築の場合、住宅品確法に基づき、構造耐力上の主要部分ならびに屋根などの雨水防止部分として政令で定めるものの隠れた瑕疵(売買の目的物が通常有すべき品質・性能を備えていない事を言います。)については10年間の責任追及が可能です。
期間については、買主と売主の間の合意により長くすることも短くすることも可能ですが、売主が不動産会社(宅建業者)で買主が一般人(宅建業者でない)の場合、すべての責任を免除する特約は無効で、引き渡しから2年以上は契約不適合責任の範囲としなければならないとされています(宅建業法40条)。
施工業者への責任追及する際には、以下のような手続きにより進めていきます。
新築住宅のカビを発見した場合には、まずは施工業者と協議を行い、今後の対応を決めていきます。
その際には、いつ、どの部分にカビが発生したのかを明らかにするために、以下のような証拠を準備しておくとよいでしょう。
施工業者との話し合いの結果、お互いに解決に向けた合意に至った場合には、必ずその内容を書面に残しておくようにしましょう。また、カビが生じたことに付随して発生した損害(仮住まいの家賃、遅延損害金など)がある場合には、その負担についても取り決めをしておくようにしましょう。
施行業者と話し合いで解決できない場合には、簡易裁判所に民事調停を申し立てることも考えられます。
民事調停とは、裁判所で話合いを行う者ですが、弁護士や建築士などの専門的知識を有する調停委員が当事者の間に入り、専門的知見を活用した上で、紛争の適切かつ円滑な解決を図る制度です。当事者同士の話し合いでは、知識や経験の乏しい施主が不利な立場になることもありますが、民事調停であれば、不安は小さくなるでしょう。
ただし、調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、当事者双方の合意が得られない場合には、調停は不成立となり終了します。
建設工事紛争審査会とは、建設業法に基づき、建設工事の請負契約に関する紛争の処理を行うADR機関です。建設工事紛争審査会では、法律、建築、土木などの専門委員の知見を活用し、あっせん・調停・仲裁により紛争の解決を図っています。
建設工事の紛争に関する専門家が関与することで、より妥当な解決が期待できる手続きといえるでしょう。ただし、あっせん・調停は、民事調停と同様に当事者同士の歩み寄りが必要になりますので、お互いの合意がなければ成立させることはできません。しかし、仲裁であれば、あらかじめ仲裁合意をすることが前提になりますが、裁判と同様に判断が下されます。
上記の方法で解決に至らない場合には、最終的に裁判所の訴訟を提起して解決を図ることになります。
訴訟になると施主の側で、施工業者の責任や損害についての主張立証が求められますので、法律はもちろん建築においても専門的な知識がなければ適切に進めていくのは困難です。建築紛争については、一般的な民事事件よりも専門的な内容になりますので、建築トラブルの解決実績がある弁護士のサポートを受けながら対応していくようにしましょう。
新築にカビが生えた場合の相談先としては、以下のものが挙げられます。
新築にカビが生えた場合、そのままでは健康被害のおそれもありますので、カビ取りの専門業者に相談してみましょう。
カビは、表面上は除去できたと思っていても、カビの根が残っており再発のリスクが高くなります。施工業者は、建築の知識はあってもカビの除去に関する知識は乏しい可能性もありますので、カビを根元から除去するのであれば、専門業者に相談することも検討しましょう。
カビの発生が施工業者の落ち度であるのが明らかな場合は、除去費用について施工業者に請求することができます。
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターとは、住宅紛争の迅速かつ適正な解決を図るための相談・支援などの業務を行う国土交通大臣指定の機関です。
「住まいるダイヤル」という住宅に関するさまざまな悩みを受け付ける電話相談窓口があり、一級建築士の資格を持つ相談員から問題解決に向けた適切な助言を受けることができます。また、相談内容によっては、専門家相談や紛争処理の手続きも案内してもらうことができます。
ただし、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、基本的には相談やアドバイスのみの対応になりますので、施主の代わりに施工業者と交渉をしてくれることはありません。
施工業者への責任追及をお考えの方は、弁護士に相談するのがおすすめです。施工業者に対する責任追及にあたっては、建築紛争に関する知識や経験が必要になりますので建築トラブルについて実績がある弁護士を選ぶことが重要です。
実績がある弁護士であれば知識や経験に基づいて適切に対応することができます。また、施主の代理人として施工業者と交渉することができますので、相手の主張に言いくるめられてしまうおそれもありません。
施工業者が責任を認めない場合には、最終的に裁判になりますが、弁護士に依頼すれば交渉から裁判までの移行もスムーズになるため、安心して任せることができるでしょう。
新築住宅であってもさまざまな原因でカビが発生することがあります。中には、施工業者の施行ミスによるものも含まれている可能性もあるので、しっかりと原因を究明して、責任追及をしていくことが大切です。
ただし、カビは建物の立地条件なども原因となるため責任の立証が難しく、施工業者に対応してもらえないケースも少なくありません。新築住宅のカビや欠陥などで施工業者への損害賠償請求を検討しているという方は、一級建築士との連携も可能なベリーベスト法律事務所の建築訴訟専門チームまで、まずはお気軽にご相談ください。