新築住宅の建築にあたっては、建築途中や完成後の引き渡し前に「施主検査」と呼ばれるチェックが行われるのが一般的です。
契約内容どおり新築住宅が仕上がっていればよいですが、仕上がりのイメージに相違があったり、設備や配線不良があったり、さまざまなトラブルが発覚することがあります。このような施主検査でトラブルが生じた場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
今回は、新築の施主検査(竣工検査)でよくある5つのトラブル事例とその対策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築住宅の建築にあたっては、建築途中や建物完成後の引き渡し前に、施主によって、契約どおりの仕様・設計になっているか、傷などの不具合がないかどうかといったチェックが行われます。このような検査を「施主検査」といいます。
住宅は、多数の職人による手作業により建てられますので、何らかのミスや不具合があったとしても、そのまま気付かずに建物が完成してしまうことがあります。施工業者でもそのようなことがないように、しっかりとチェックが行われていますが、施主の立場でもしっかりとチェックすることが大切です。
施主検査には、施主が建築途中で行う検査と建物の完成後に行う検査の2種類があります。本コラムでは施主が建物の完成後引き渡し直前に立ち会ってする検査を「施主検査」として解説します。なお、似たものとして、同じく完成後に行う検査で建築会社などが行う検査を「竣工検査」といいます。
新築住宅の施主検査では、以下のようなトラブルが生じることがあります。
引き渡し直前の施主検査は、建物が完成して、いつでも引き渡しができる状態でチェックが行われます。
しかし、さまざまな原因で施主検査の日までに建物が完成していないことがあります。建物が完成していない状態では、仕上がりの状態や設備の不具合などを確認することができませんので、施主検査を実施することができません。施工業者の中には、建物未完成の状態でもそのまま施主検査を強行し、引き渡しを行おうとする業者もいますので注意が必要です。
新築住宅は、施主の希望などを踏まえて作成された図面や仕様書に従って建築が進められます。しかし、窓の位置、サイズ、種類が違うなど、実際に完成した建物の図面・仕様書との間で相違点が生じることがあります。
施主としては、契約どおりの仕上がりを希望するのが当然ですが、補修費用の負担や補修方法などをめぐって施工業者と折り合いが付かないケースではトラブルに発展する可能性があります。
図面や仕様書との違いがなかったとしても、実際の仕上がりが雑で見栄えが悪いケースもあります。注文住宅を購入する施主としては、見栄えに関しても一定のレベル以上のものを求める方が多いため、塗装むらやクロスのずれなどがあると、工事のやり直しを求めることも多いでしょう。
しかし、施工業者としては、構造や性能に問題がない美観上の問題に関しては、真剣に取り合ってくれず施主と施工業者との間でトラブルに発展する可能性があります。このようなトラブルは、程度によっては法的問題とはならないケースもありますが、美観上の問題なのか構造・性能上の問題なのか判断に迷う場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
外壁にヒビが生じている場合、その程度によっては雨水の浸入を招き、建物の構造部分に重大なダメージを与えることがあります。また、基礎のヒビも程度によっては、雨水の浸入により、基礎の膨張破裂を招くおそれがあります。
引き渡し時点の施主検査でこのような不具合が発覚すると、補修工事も大規模なものになりますので、引き渡しの遅延や補修工事の拒否などのトラブルが生じる可能性があります。
新築住宅の見た目には特に問題がなかったとしても、電気、ガス、水道などの設備不良があり、予定していた性能を発揮できないケースがあります。また、電気工事の配線不良や水道工事の配管不良により漏電、漏水などのトラブルが生じることがあります。
見た目にはわからない部分ですが、施主検査では、このような部分までしっかりとチェックすることが大切です。
施主検査で不具合が発覚した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
施主検査で不具合が発覚した場合には、まずは施工業者に不具合を指摘して、今後の対応を協議していくようにしましょう。
施主検査は、施主により建物の不具合などをチェックし、それに基づいて施工業者が補修などを行う機会になります。そのため、施主検査で不具合が見つかった場合には、施工業者に指摘すれば、基本的には補修などに応じてもらうことができます。しかし、不具合の程度が大きく、補修に過大な費用が発生するような場合や施主と施工業者との間で不具合に関する認識に齟齬(そご)があるような場合には、施工業者との協議では納得いく解決に至らないこともあります。
施工業者から是正工事を拒まれた場合や、工事延長による損害賠償請求を考えているのであれば、建築トラブルの実績がある弁護士に相談するのがおすすめです。
施主と施工業者との間には、知識や情報量などで圧倒的な格差がありますので、施主検査で不具合が発覚したとしても、施主個人での交渉では満足いく結果が得られないことも少なくありません。弁護士であれば、施主に代わって施工業者と交渉することができますので、法的観点から不具合を指摘し、是正工事等に応じるよう求めることができます。
また、施工業者との話し合いで解決できない場合でも、弁護士であれば調停や訴訟などの法的手段により問題の解決を図ることができます。
建築関係のトラブルを解決するには、専門的知識や経験が必要不可欠になりますので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
住宅の施工中ではなく引き渡し後に不具合が発覚した場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅の引き渡し後に不具合などが発覚した場合に、補修を行った施工業者に対して、保険金が支払われる制度です。住宅瑕疵担保責任保険は、安心して新築住宅を購入できるようにするために施工業者が加入する保険です。施工業者が住宅瑕疵担保責任保険に加入していれば、事業者の資力を気にすることなく、補修工事を依頼することができます。
そのため、まずは住宅瑕疵担保責任保険の利用ができるかを確認してみるとよいでしょう。
新築住宅において契約内容との不適合があるような不具合が見つかった場合には、施工業者に対して契約不適合責任を追及することができます。契約不適合責任とは、以前「瑕疵担保責任」という名称でしたが、民法改正により名称が変更されたものになります。
引き渡された目的物に種類・数量・品質に関して契約内容との相違があった場合、売り主(施工業者)は、以下のような法的責任を負わなければなりません。
施工業者に対して契約不適合責任を追及する際には、期間制限がある点に注意が必要です。
具体的には、施主は、不適合を知った時点から1年以内に施工業者に不適合の存在を通知しなければなりません。その期間内に通知をしなければ契約不適合責任を追及することができなくなります。
ただし、新築住宅に関しては、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による、期間制限の特則が設けられています。契約不適合が「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に生じた場合、権利行使の期間は、引き渡しから10年に延長されます。
新築住宅の引き渡しの際には、施主検査と呼ばれる施主による不具合などのチェックが行われます。施主検査で不具合が見つかった場合には、まずは施工業者との協議により補修などを求めていくことになります。しかし、施工業者が補修に応じてくれない、補修費用の負担を求めてくるような場合には、施主個人での対応は困難ですので弁護士に相談することをおすすめします。
建築トラブルでお困りの方は、一級建築士も所属し、解決実績も豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。