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    2024年10月30日
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    施主が新築でアレルギーに? 施工業者が負うべき責任範囲と対応
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    施主が新築でアレルギーに? 施工業者が負うべき責任範囲と対応

    新築の家を引き渡した後で、施主から「新築に住み始めたらアレルギーが出たので賠償金を払え」と言われたら、どのように対応すべきでしょうか。

    本記事では新築住宅におけるアレルギーについて、施工業者や売り主が負うべき責任の範囲や、施主から責任追及を受けた場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、新築住宅の引き渡し後に生じるアレルギー症状の原因と対策

新築住宅に住み始めた後で、施主がアレルギー症状を訴える原因としては、以下の例が考えられます。施工業者としては、できる限りのアレルギー対策(シックハウス対策など)を講じておきましょう。

  1. (1)原因①|有機化合物の揮発などの化学的要因

    建材や溶剤などから、ホルムアルデヒドなどの有機化合物が揮発し、それを吸い込んだ施主や家族にアレルギー反応が生じるケースがあります。

    施工業者としては、化学物質の揮発量などを計測して、健康被害を生じ得る水準に達しないような管理を行うことが求められます。

  2. (2)原因②|カビ・ハウスダストなどの生物学的要因

    住宅内においてカビやハウスダストなどが発生すると、アレルギーの原因になる可能性があります。

    カビやハウスダストなどがどの程度発生するのかは、引き渡し後の使用方法による部分が大きいので、施工業者としてできることは限られています。
    適切な換気・温度管理・湿度管理ができる空調設備を導入するなど、できる限りアレルギーの原因物質の発生を抑えられるような対策を提案しましょう。

  3. (3)原因③|浮遊粒子

    屋外排気のない開放型の石油ファンヒーターは、窒素酸化物・ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・トルエン・アンモニアなどの汚染物質を発生させます。

    これらの汚染物質が居室内の空気中に浮遊すると、それを吸い込んだ施主や家族のアレルギー症状を引き起こすことがあります。
    施工業者としては、施主に対して、石油ファンヒーターなどの家具を使用する際の留意事項などを注意喚起しましょう。

    また、PM2.5・花粉・黄砂なども、居室内に入り込んでくるとアレルギーの原因になり得ます。施工業者は施主に対して、これらの粒子の流入を防げるフィルターを提案することも検討すべきでしょう。

  4. (4)原因④|湿度・温度などの気候要因(物理学的要因)

    新築住宅では、温度や湿度を施主や家族の体感に合わせて調整することが最初は難しく、不快度が増した結果、体調を崩してしまうことがあります。

    施工業者としては、適切な空調設備の導入を提案した上で、空調設備の使用方法についても適宜フォローすることが望ましいでしょう。

2、施主のアレルギーについて、施工業者や売り主は責任を負うのか?

新築住宅に暮らし始めた施主が1章で紹介したようなアレルギーの症状を訴えたとしても、施工業者や売り主が常に責任を負うわけではありません。
施工業者が施主のアレルギーについて責任を負うのは、施工とアレルギー発症の間に因果関係があり、かつ施工業者においてアレルギーが起こると予測でき、回避しようと思えばできた場合に限られます

  1. (1)施工業者・売り主が責任を負うケース

    施主のアレルギーについて施工業者や売り主が責任を負うのは、たとえば以下のようなケースです。

    • ホルムアルデヒドなどの有害物質の発生量が、基準値を上回っていた
    • 浮遊粒子を遮断するフィルターが、施工計画に従って取り付けられていなかった
    など


    上記のような事情が原因で、施主がアレルギーを発症した場合は、施工業者の契約不適合責任が認められ、修補や損害賠償などの義務を負うものと考えられます。

  2. (2)施工業者・売り主が責任を負わないケース

    以下のようなケースでは、施主がアレルギーなどの症状を生じたとしても、施工業者や売り主は責任を負わないと考えられます。

    • 施主が自らの判断で、密閉空間において屋外に排気ができない、燃やした後の空気もそのまま室内に残るタイプの石油ファンヒーターを使用した結果、大量の汚染物質が放出された
    • 有害物質の発生量は基準値以下だったが、施工業者が聞いていなかった施主に特有の体質により、少量の有害物質に反応してアレルギー反応が生じた
    • 環境の変化によるストレスが原因で、施主が体調を崩した

3、新築住宅と化学物質過敏症(アレルギー)に関する裁判例

2章では施工業者が責任を負うケース、追わないケースの一例を紹介しましたが、それでは実際の裁判ではどのような基準でどのような判断が下されたのでしょうか。新築住宅の施主が化学物質過敏症など(アレルギー)を発症し、施工業者に対して損害賠償を請求した裁判例を3つ紹介します。

  1. (1)建材から放散されたホルムアルデヒドにより発症し賠償責任が肯定された事例

    東京地裁平成21年10月1日判決の事案では、施主が新築住宅に住み始めた後でシックハウス症候群および化学物質過敏症になったことを理由に、施工業者に対して損害賠償を請求しました。

    東京地裁は、建築時点においてホルムアルデヒドの有害性が広く認識されていたことや、ホルムアルデヒドの放散が最小限となる建材を用いることが十分可能だったことなどを指摘しました。
    その上で施工業者の責任を認め、売買代金の減額・病気にかからなければ得られたはずの利益・慰謝料・弁護士費用を併せて総額3662万3303円の損害賠償を命じました。

  2. (2)床下処理時の油の使用による発症の予見可能性が否定された事例

    さいたま地裁平成22年4月28日判決の事案では、施主一家が新築住宅に住み始めた後で化学物質過敏症になったのは、施工業者が床下処理時に、とある油を使用したことが原因であると主張して、施工業者に対して損害賠償を請求しました。

    さいたま地裁は、この油の使用と化学物質過敏症発症の因果関係を一部認めました。
    しかしながら、化学物質過敏症の病態や発生の仕組みについて未解明な部分が多いことなどを指摘し、施工業者側の予見可能性を否定して施主の請求を棄却しました。

  3. (3)化学物質の放出等に関する債務不履行責任が否定された事例

    札幌地裁平成14年12月27日判決の事案では、施工業者から新築住宅の請負代金の支払いを請求された施主が、ホルムアルデヒドをはじめとするさまざまな化学物質の発生が原因で化学物質過敏症を発症したと主張して、逆に施工業者に対して損害賠償を請求しました。

    札幌地裁は、放散された化学物質の質量が一定水準以下であったことなどを指摘した上で、化学物質過敏症の発症に関する施工業者の責任を否定し、施主の請求を棄却しました(その他の施工不良に関して、27万2000円の限度で施主の請求が認められました)。

4、新築アレルギーを理由に損害賠償を請求されそうな場合にすべきこと

新築住宅に住み始めた後のアレルギー反応について施主からクレームを受けたら、施工業者はまず、自らに責任があるかどうか、法的に検討する必要があります。
施工とアレルギー反応の間に因果関係があるのか、アレルギー反応を予見および回避できたのかという観点から検討し、責任の有無を判断しましょう。

施工業者が責任を負うと思われる場合は、示談交渉を通じて穏便に解決することが望ましいです。受け入れ可能な和解のラインを定めた上で、施主との話し合いを行いましょう。

これに対して、施工業者には責任がないと思われる場合や、施主の請求内容が不当であると思われる場合は、法的な観点から反論を行いましょう。

いずれにしても、施主のクレームについてどのように対応するかは、弁護士に相談してから判断することをおすすめします

5、施主が工事代金を支払わない場合にすべきこと

「アレルギーの問題が解決するまでは払わない」などと言って、施主が工事代金(請負代金)の支払いを拒否する場合には、訴訟などを通じて回収を図りましょう。

弁護士に依頼すれば、アレルギーに関するクレーム対応と併せて、工事代金に関する債権回収についてもサポートを受けられます。新築住宅に関して施主とトラブルになり、対処にお困りの施工業者は、お早めに弁護士へご相談ください。

6、まとめ

新築住宅を引き渡した後で、施主がアレルギーに関するクレームを入れてきたら、施工業者は自らの責任の有無について法的な検討を行った上で、対応しましょう。
どのように対応すべきかについては、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、施主とのトラブルに関する施工業者のご相談を随時受け付けております。
新築住宅の施工やアレルギーなどについて、施主からのクレームへの対応にお困りの施工業者は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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