せっかく注文住宅を新築したのに、施工ミスによって入居が遅れたり、住み始めてから施工ミスに気づいたりした場合には、マイホームへの夢や期待もしぼんでしまいます。気持ちの問題だけでなく、ケガや病気の原因になることもあるので、注文住宅の施工ミスは極めて重要な問題です。
注文住宅に施工ミスが見つかった場合、施工業者(施工会社)に対して損害賠償などを請求できます。弁護士にご相談のうえで、施工業者の責任を正しく追及しましょう。
この記事では、新築した注文住宅の施工ミスが見つかった場合に、施主がとり得る手段について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築住宅の施工ミスは、施主にとって大変ショックなものです。しかし、そのようなときだからこそ冷静になって、施工業者に対してしかるべき対応を求めましょう。
施工ミスが発覚したのが工事中であれば、まだやり直しが利くことが多いです。
工期が延びるかどうか、延びるとしたらどのくらいかなどを確認したうえで、施工業者に対して施工のやり直しを求めましょう。当然ながら、請負金額は変更なし、施工業者負担で補修工事を行う旨を合意しておきましょう。
すでに建物が完成し、引き渡し直前となった段階で施工ミスが発覚した場合、施主は、そのまま引き渡しを受けて契約不適合責任を追及していくか、引き渡しを延ばしても工事をやり直すかどうかを決めることになります。
施工ミスの箇所によっては、相当大がかりな補修工事が必要になることもあります。そうなると、引き渡しを受けてから補修を請求するとしても、また仮住まいをしなければならないということもあり、引き渡し・入居を延ばしても、引渡し前に補修工事をしてもらうほうが合理的な場合もあります。このような場合には、引き渡しが伸びたことにより発生した損害(賃貸物件の賃料など)について、請負代金から差し引くなどの交渉をしっかり行って、引き渡しを延ばしてもらうなどで対応することが考えられます。
施工ミスのあるままで引き渡しを受けるとしても、引き渡し後に契約不適合責任を追及することができます。
建物の引き渡しを受けた後の段階で施工ミスが発覚した場合には、施主は施工業者の「契約不適合責任」を追及しましょう。
具体的には、以下の4つの請求をいずれか、または組み合わせて行うことが可能です。
請負契約において、施工ミスなどについて施工業者を免責する旨が規定されていることがあります。しかし、注文住宅を新築する請負契約については、このような免責特約は無効の可能性があるので、施主は施工業者の言い分をうのみにしてはいけません。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条では、新築住宅の以下の部分について、構造耐力・雨水の侵入に影響がある瑕疵(かし)があった場合、施工業者は引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うと定めています。
施工ミスについて、これら品確法の規定に反し注文者に不利な、施工業者を免責する旨の特約は無効となります。
もし施工業者が、免責事項があることを理由に「対応できません」と主張してきた場合、弁護士に相談して、品確法の規定に違反していないかをチェックすることが大切です。
もし免責特約に法的な問題がある場合は、施工業者に対して反論し、正当な補償を求めましょう。
施工ミスは、補修工事によって解決するケースもある一方で、補修だけではカバーしきれない損害が施主に発生することもあります。その場合は、施工業者に対して損害賠償請求を行いましょう。
施工ミスを理由として、施主が施工業者に損害賠償を請求できるケースの代表例は、以下のとおりです。
施工ミスの箇所が住宅の基礎に関わる場合や、引き渡し直前の段階で施工ミスが発覚した場合などには、是正工事に伴って入居が大幅にずれ込むことにもなりかねません。
もし賃貸住宅に住んでいる場合には、余分に家賃などが発生しますので、その費用分を施工業者に請求することができます。
入居後に施工ミスが発覚し、大規模な是正工事が必要となった場合には、いったん仮住まいに移らなければならないケースもあります。
その場合には、仮住まいの家賃などの出費が発生しますので、施工業者にその費用を請求しましょう。
施工ミスの内容によっては、トゲの露出などによってケガをしたり、床の傾きなどが原因で体調不良となってしまったりする可能性があります。
施工ミスが原因となったケガや病気については、治療費や精神的損害について、施工業者に賠償を請求することができます。
注文住宅は、施主の希望するマイホームの使い道に沿って、建物を設計することが大前提です。
しかし、施工ミスが発生した場合には、契約上の間取りが不本意に変更されたり、予定されていた設備が使えなくなったりすることがあります。その場合、予定していた使い道ができなくなったことの損害賠償に加えて、財産的損害の賠償を受けただけでは償われないような大きな精神的苦痛があると判断できるときには、施主の精神的苦痛を慰藉する慰謝料が認められる場合もあります。
注文住宅の施工ミスに係る損害賠償は、非常に高額になるケースがあります。法的手続きに発展することも多いので、早い段階で弁護士にご相談ください。
施工業者に損害賠償を請求するための主な手続きは、以下のとおりです。
まずは施工業者(ハウスメーカー・工務店など)と連絡をとり、契約不適合の事実を通知し、損害賠償についての協議を行います。
施工業者側が金額などを提案してくる可能性がありますが、それをうのみにしてはいけません。他の業者に修補工事のための見積を出してもらうなど、あくまでも施主に生じた客観的な損害額を見積もったうえで、適正と考える金額を施主側から提示することが大切です。
施工業者との間での協議がうまくまとまらない場合は、民事調停を申し立てることも考えられます。
民事調停では、調停委員が仲介者となって、当事者双方の言い分を聞き取り、調停案の合意を目指します。施工業者側の責任と、施主に生じた損害の内容・金額を、証拠資料を用いてわかりやすく示すことが大切です。
弁護士のサポートを受けることにより、民事調停を優位に進められる可能性が高まるでしょう。
注文住宅の施工ミス事例は、建築紛争に特化した「建築工事紛争審査会」による紛争解決手続きを利用することも有力な選択肢です。
建築工事紛争委員会では、訴訟以外の方法(当事者双方の話を担当の委員が聞いて折り合えるところを探ったり、話を聞いた担当委員が裁判所に代わり判断をする)で紛争の解決を目指します。
建設工事に関する技術や商慣行などに通じた委員が担当するため、より公正妥当な解決が期待できます。実際に令和5年度、143件手続きの申請がなされています。
施工業者側からも、施工に関する技術的な主張が展開される可能性が高いので、施主側も弁護士や建築士などと連携しながら対応することをおすすめします。
(出典:国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001754395.pdf)
施工業者との間で合意による解決が実現しなかった場合には、訴訟による解決を図ることになります。
訴訟では、施工業者の責任と、施主に生じた損害についての厳密な立証が求められます。1年以上の長期にわたるケースもありますので、弁護士のサポートを受けながら、粘り強く訴訟を戦っていきましょう。
新築住宅の施工ミスについて、施工業者に対する損害賠償を検討中の方は、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。
新築した注文住宅について施工ミスが発覚した場合、ショックな気持ちを抑えて冷静になり、施工業者に対する損害賠償請求などの準備を進めましょう。
施工業者を相手にした損害賠償請求には、法的な観点からの検討に加えて、建築に関する技術的な分析も求められます。
ベリーベスト法律事務所では、必要に応じて建築士と連携したうえで、施工ミスによる損害が適切に補償されるように、施主の皆さまをサポートします。新築住宅やリフォーム工事の施工ミスを発見した場合には、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。