木造住宅が多い日本では、キクイムシやシロアリなどの害虫による被害が発生することがあります。人体には直接影響はありませんが、キクイムシなどより木材が食べられてしまうと、内部の空洞化が進み、住宅の耐震性などに影響が生じるリスクも生じます。
このようなキクイムシなどの害虫による被害が発生したときは、原因を特定した上で、施工業者への損害賠償請求など適切に対処することが重要です。
今回は、キクイムシなどの害虫がもたらす被害とその原因、施工業者への損害賠償請求の可否などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
木造建築物では、キクイムシという害虫による被害が発生することがあります。以下では、キクイムシとはどのような害虫なのか、キクイムシがもたらす被害などについて説明します。
キクイムシとは、赤褐色を中心に黒褐色、黄褐色などさまざまな色をした、キクイムシ科に属する昆虫の総称です。キクイムシはその名の通り木材を食べる虫で、成虫になると、3~4mm程度になります。
キクイムシの雌は、木材の導管(水分の通り道)に卵を産み付けます。卵からかえったキクイムシの幼虫は、木材の内部を食べながら移動し木材内で成長します。羽化する際には木材表面に1~2mm程度の穴をあけ外に出てきます。
キクイムシによる被害を受けた木材は、外観上は小さな穴が開いているだけに見えますが、木材内部はキクイムシに食い荒らされていますので、木材内部が空洞化するなど大きな被害が生じている可能性もあります。
キクイムシが食べる木材は、広葉樹が中心です。針葉樹は被害を受けません。木造住宅の構造材には、主に針葉樹が使われていますので、キクイムシによる被害が生じるのは、表面に使われるフローリング材や木製家具などが多いです。
新築の木造住宅では、キクイムシ以外にもさまざまな害虫が発生する可能性があります。そのうち、代表的なものが「シロアリ」です。
シロアリは、比較的柔らかい木を好んで食べ、キクイムシが対象としない針葉樹もシロアリによる食害の対象になります。そのため、シロアリによる被害が進行すると、構造材の耐久力が大きく低下して、最悪のケースでは建物の倒壊のリスクが生じることもあります。
木造建築の多い日本では、新築住宅であっても、さまざまな害虫による被害が発生する可能性があります。キクイムシやシロアリがいるかもしれないと疑念を持ったときは、早期に適切な対応をとる必要があります。
キクイムシなどの害虫を見つけた場合、どのような対応が必要になるのでしょうか。以下では、害虫を見つけたら行うべき事項とその方法を説明します。
キクイムシは、木材の内部を食い荒らすため、被害に気付きにくいという特徴があります。しかし、キクイムシがいる場合、細かい木くずが床に落ちていたり、木材表面に小さな穴があいているなどのサインがありますので、そのようなサインを見逃さないことが大切です。
キクイムシが潜んでいるかもしれないサインを発見したときは、建物内のどの部分でキクイムシによる被害が発生しているのかを特定するために、注意深く木材の状況を観察し、記録をとるようにしましょう。
キクイムシによる被害は、建築用・家具用などの木材が原因で発生します。
建築用の木材にキクイムシが潜んでいたのであれば、それを使って建築した施工業者への責任追及を行うことになりますが、家具などの木材が原因であれば、家具のメーカーなどに対して責任追及をしていくことになります。
このようにキクイムシの発生原因によって、責任追及の相手が変わってきますので、キクイムシの存在が明らかになったら、その発生原因を調査し、特定する必要があります。
個人では発生原因の特定が難しいという場合には、専門業者に依頼して調査してもらうのも有効です。
発生原因の調査の結果、建材に原因があるとわかったら、施工業者に対して、契約不適合責任に基づく責任追及を行っていきます。
契約不適合責任とは、請負や売買契約に基づき引き渡された目的物について、以下のような契約内容との相違があった場合に、施工業者が施主に対して負う責任のことです。
建築請負契約や新築住宅の売買契約では、キクイムシによる虫害が生じていない建材を利用することが契約内容に含まれていると解される可能性が高く、建材が原因で虫害が生じている場合には、契約不適合責任を追及することが考えられます。具体的な責任追及の方法としては、以下の4つの方法が挙げられます。
建材に原因があることが特定された場合、まずは、施工業者に連絡して、殺虫剤によるキクイムシ駆除や建材の取り換えなどを要求してみるとよいでしょう。施工業者が対応してくれない場合には、施主が別途業者を手配して、修復や駆除を行い、その費用を施工業者に請求することもできます。
なお、契約の解除は、不適合の程度が契約や取引上の社会通念に照らし、軽微であるときは認められませんので、キクイムシによる虫害の程度に応じて検討する必要があります。
キクイムシなどによる虫害が発生したときは、施工業者に対して、損害賠償請求を行うことができるのでしょうか。
以下では、虫害が発生した場合の設計者、建材業者や売主等の法的責任が問題となった裁判例を紹介します。
① Y1の責任が認められた理由
② Y2の責任が認められた理由
なお、以下では、便宜上、シロアリ被害の争点のみ取り上げて説明をします。
① Y1の責任を認めなかった理由
本件物件の状況を踏まえると、売買契約締結前からシロアリ被害があった可能性があると推測できるものの、Y1がこれを認識していたことを推認させる事情は認められない。
② Y2の責任を認めなかった理由
Y2は、本件収益物件の現地確認の際に部屋の一部で虫の死骸を確認しているが、そのほかにシロアリ被害が生じていることをうかがわせる事情はなく、窓から侵入した無視であるとの説明が不合理であるとまではいえない。
そのため、Y2には、Y1に対して確認する以上にシロアリ被害を調査すべき義務があったとは認められない。
キクイムシ等の発生原因が建材にあることが判明しているにもかかわらず、施工業者から対応を拒否されてしまったようなケースでは、施主の方が個人で対応するのは困難だと思われますので、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、キクイムシ等の被害が出た場合の施工業者の責任追及の方法をアドバイスできますので、適切な方法により、施工業者等への責任を追及してくことが可能です。
ご依頼いただいた場合、施工業者との対応はすべて弁護士が代理人として行います。建築問題に詳しい弁護士であれば、施工業者が相手であっても対等な立場で交渉を進めることができますので、不当な要求をのまされるおそれはありません。
弁護士は交渉で解決できなくとも、その後、調停や訴訟などの法的手続きの代理人となり、問題を解決に導くことができますので、最後まで安心して任せることができます。
木造建築物の多い日本では、キクイムシやシロアリなどの害虫による被害が生じる可能性があります。特に、キクイムシによる被害は、建築に利用された建材に潜んでいたことが原因で生じることもありますので、そのような場合には、施工業者等への責任追及が可能です。
もっとも、専門的知識のない施主が個人で施工業者を相手にするのは、非常に困難でしょう。このようなキクイムシによるトラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。