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    2023年08月03日
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    不同沈下はどのような現象? 施工業者に責任を問える可能性と対処法
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    不同沈下はどのような現象? 施工業者に責任を問える可能性と対処法

    軟弱な地盤に住宅を建てる場合には、地盤調査をしっかりと行い、地盤改良を行わなければ、不同沈下が発生する可能性があります。不同沈下が発生してしまうと、建物に傾きが生じ、建物の構造材にも負荷がかかるなどして建物の寿命にも影響を及ぼすおそれがあります。

    もし、このような不同沈下が生じた場合には、誰にどのような責任を追及すればよいのでしょうか。

    今回は、不同沈下とはどのような現象で、不同沈下が発生した場合にはどのような責任を問うことができるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、不同沈下とは? 発生する原因について

不同沈下とはどのような現象なのでしょうか。また、不同沈下が発生する原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

  1. (1)不同沈下とは

    不同沈下とは、地盤の一部がゆがむことなどによって、建物がふぞろいに沈下する現象のことをいいます。

    よく似た言葉として、地盤沈下を思い浮かべる方もいるでしょう。地盤沈下は、地盤が均等に沈下する状態のことで、建物の沈下も均等に生じます。そのため、建物に傾斜は発生しません。
    一方、不同沈下の場合には、地盤の一部のみが沈下することにより、建物がふぞろいに沈下し、その結果、建物に傾斜が生じるという違いがあります

    建物は水平に建てることを前提に設計されていますので、建物の一部が沈下して傾斜が生じると、建物の荷重が1か所に集中して構造材などに大きな負担がかかってしまいます。このような負担がかかると、ドアや窓の開閉がしにくくなったり、壁やタイルに亀裂が生じたり、最悪のケースでは建物の倒壊といった事態が生じたりするおそれがあります。

    また、人によっては傾斜が生じた建物で生活を続けると、バランス感覚に影響を与え、吐き気やめまいなどの症状を引き起こすこともあり、不同沈下は、建物だけでなく、人身への影響も及ぼしかねないものなのです。

  2. (2)不同沈下の原因とは

    不同沈下の原因には、さまざまなものが考えられますが、代表的な原因としては以下のものが挙げられます。

    ① 盛り土や切り土
    丘陵地などでの宅地の造成にあたっては、盛り土(斜面に土を盛って土地を平らにすること)や切り土(斜面を削って土地を平らにすること)が行われ、同じ敷地内に盛り土と切り土が混在していることがあります。一般的に切り土のほうが、地盤が固く、盛り土のほうが、地盤が緩くなります。そのため、十分な締固めができていないと不同沈下が発生する可能性があります。

    ② 荷重の偏り
    軟弱地盤の土地上に荷重の分布が均等ではないアンバランスな建物を建ててしまうと、不同沈下が生じる可能性があります。近隣にビルやマンションが建つ場合にも荷重のバランスが崩れて不同沈下が生じる可能性がありますので注意が必要です。

    ③ 地層の傾斜
    地層が傾斜している土地では、基礎下の軟弱地盤の厚さが異なる場合があります。軟弱層が厚い部分のほうが、沈下量が大きくなりますので、薄い部分との沈下量に変化が生じてしまいます。その結果、不同沈下が発生しやすくなるのです。

    ④ がれきによる盛り土
    がれきを使用して盛り土をしている場合には、雨水の浸透によってがれきの隙間の土砂が流れていき、不同沈下が生じる可能性があります。

    ⑤ 雨水や地下水で土が動く
    雨水や地下水は、地盤のなかを浸透して、土を動かす性質があります。そのため、雨水や地下水が流れている場所では、不同沈下が生じやすくなります。

    ⑥ 締固めが不十分
    地中に埋まっている浄化槽を撤去した場合や防空壕(ごう)の跡などがあった場合には、埋め戻しを行います。その際に、埋土や盛り土の締固めが不十分であった場合には、その部分で沈下が生じることがあります。
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2、不同沈下による被害で施工業者に問える責任とは?

不同沈下による被害が生じた場合には、施工業者に対して契約不適合責任を理由として、以下のような責任を追及することができます

  1. (1)履行の追完(民法562条1項)

    履行の追完とは、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合に、目的物の修補、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しを求めることをいいます。

    引き渡しを受けた土地に不同沈下が生じた場合には、施主は、施工業者または売り主に対して、土地の造成工事をやり直すことや不同沈下により損傷を受けた住宅の補修を無償で行うよう請求することができます。

  2. (2)代金の減額(民法563条1項)

    代金の減額とは、施主から施工業者に対して、相当期間を定めて履行の追完を求めたにもかかわらず、相当期間内に履行の追完がなされない場合に、不適合の程度に応じて、代金の減額を請求することをいいます。

    なお、不同沈下による、土地の造成工事のやり直しが不可能である場合や施工業者が履行の追完を拒否した場合などには、相当期間を定めた催告をすることなく、直ちに代金減額請求をすることが可能です。

  3. (3)損害賠償請求(民法415条1項)

    不同沈下によって損害を被った場合には、施工業者に対して、損害賠償請求が可能です。不同沈下による損害としては、造成工事のやり直し費用、不動産の価値減少分、不同沈下による建物の補修費用、不同沈下に起因する慰謝料などが考えられます。

  4. (4)契約の解除(民法541条)

    施主は、施工業者に対して相当期間を定めて履行の追完の催告をしたものの、その期間内に適切な補修がなされなかった場合には、売買契約または請負契約を解除して、代金の返還を求めることができます。

    ただし、不同沈下を含む債務不履行の程度が契約・取引上の社会通念に照らして軽微であるという場合には、解除までは認められません。

3、施工業者に責任を追及できるケース

どのような場合に、不同沈下の責任を施工業者に追及できるのでしょうか。以下では、施工業者に責任を追及することができるケースとできないケースについて説明します。

  1. (1)施工業者に責任追及ができるケース

    施工業者に対して責任追及をすることができるケースとしては、以下のケースが挙げられます。

    ① 地盤調査が不十分であったケース
    建物を建てる前提として、その土地が建物を建てることができる地盤であるかの調査を行います。これを「地盤調査」といいます。地盤調査をすることによって、その地盤がどの程度の建物の重さに耐えることができるのかを知ることができ、地盤改良工事の必要性を判断することができます。

    このように、不同沈下を防止するために、地盤調査は不可欠です。しかし、十分な地盤調査を行わずに、軟弱地盤や地中の空洞・障害物などを見落としてしまうと不同沈下が生じる可能性があります。

    そのため、施工業者の地盤調査が不十分であったことが原因で、不同沈下が発生した場合には、その責任を追及することが可能となるでしょう。

    ② 不適切な地盤改良工事であったケース
    地盤調査の結果、地盤強度が足りない軟弱地盤であることが判明した場合には、地盤改良工事によって建物の建築に耐えられるようにしなければなりません。地盤改良工事の方法には、さまざまな方法がありますので、当該地盤の状況に応じた最適な工法を選択する必要があります。

    しかし、施工業者が選択した工法が間違っていたことにより、強度不足が生じて、不同沈下が生じた場合には、施工業者の責任を追及できるでしょう。
  2. (2)施工業者に責任追及ができないケース

    以下のようなケースでは、施工業者の責任を追及することができない可能性があります。

    ① 予期せぬ災害によって不同沈下が生じたケース
    大地震や大規模な水害などにより、不同沈下が生じることもあります。このような一般的な安全基準では想定することができないような災害によって不同沈下が生じた場合は、施工業者に、その責任を追及することはできません。

    ② 契約不適合責任を免責する特約(免責特約)があるケース
    施工業者または売り主が負う契約不適合責任は、契約時の特約によって免除することが可能です。そのため、請負契約書や売買契約書において、契約不適合責任を免責する特約が設けられている場合には、施工業者の責任を追及することができません。
    もっとも、免責特約がある場合であっても、施工業者または売り主がその契約内容不適合を知りながら注文者または買い主に告げなかった事実については、施工業者または売り主はその責任を免れることはできません。

4、不同沈下による建築トラブルや損害賠償請求などは弁護士へご相談を

不同沈下による建築トラブルでお困りの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)売り主や施工業者との交渉を任せることができる

    不同沈下が生じた場合には、施主が責任追及のために売り主や施工業者と交渉を行っていかなければなりません。しかし、建築に関する専門的な知識がなければ、業者を相手に対等に交渉を進めることは難しく、業者に言いくるめられてしまうおそれもあります。

    弁護士であれば、住宅・建築トラブルに関する豊富な知識と経験を有していますので、業者との交渉であっても適切に進めていくことが可能です。ひとりで交渉することに不安を感じている方は、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう。

  2. (2)複雑な建築訴訟もサポート

    施工業者との話し合いで解決をすることができない場合には、最終的には、裁判所に訴訟を提起することになります。建築訴訟は、通常の訴訟に比べて専門性の高い裁判となりますので、個人だけで進めていくのは非常に難しいといえるでしょう。

    ご自身の主張をしっかりと裁判所に伝えるためにも弁護士のサポートが不可欠となります。弁護士に依頼をすれば複雑な訴訟手続きもすべて任せることができますので、ご本人の負担は大幅に軽減されることでしょう。

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5、まとめ

不同沈下が生じた場合には、建物にも重大な影響が及ぶおそれがありますので、早期に適切な対応を取る必要があります。施工業者に対する契約不適合責任は、不適合を知ったときから1年以内に施工業者に通知しなければなりません。

非常に短い期間制限となっていますので、不同沈下が判明した場合には早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。ベリーベスト法律事務所では、建築問題に関する知識豊富な弁護士が、問題解決に向けてサポートいたします。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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