軟弱な地盤に住宅を建てる場合には、地盤調査をしっかりと行い、地盤改良を行わなければ、不同沈下が発生する可能性があります。不同沈下が発生してしまうと、建物に傾きが生じ、建物の構造材にも負荷がかかるなどして建物の寿命にも影響を及ぼすおそれがあります。
もし、このような不同沈下が生じた場合には、誰にどのような責任を追及すればよいのでしょうか。
今回は、不同沈下とはどのような現象で、不同沈下が発生した場合にはどのような責任を問うことができるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
不同沈下とはどのような現象なのでしょうか。また、不同沈下が発生する原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
不同沈下とは、地盤の一部がゆがむことなどによって、建物がふぞろいに沈下する現象のことをいいます。
よく似た言葉として、地盤沈下を思い浮かべる方もいるでしょう。地盤沈下は、地盤が均等に沈下する状態のことで、建物の沈下も均等に生じます。そのため、建物に傾斜は発生しません。
一方、不同沈下の場合には、地盤の一部のみが沈下することにより、建物がふぞろいに沈下し、その結果、建物に傾斜が生じるという違いがあります。
建物は水平に建てることを前提に設計されていますので、建物の一部が沈下して傾斜が生じると、建物の荷重が1か所に集中して構造材などに大きな負担がかかってしまいます。このような負担がかかると、ドアや窓の開閉がしにくくなったり、壁やタイルに亀裂が生じたり、最悪のケースでは建物の倒壊といった事態が生じたりするおそれがあります。
また、人によっては傾斜が生じた建物で生活を続けると、バランス感覚に影響を与え、吐き気やめまいなどの症状を引き起こすこともあり、不同沈下は、建物だけでなく、人身への影響も及ぼしかねないものなのです。
不同沈下の原因には、さまざまなものが考えられますが、代表的な原因としては以下のものが挙げられます。
不同沈下による被害が生じた場合には、施工業者に対して契約不適合責任を理由として、以下のような責任を追及することができます
履行の追完とは、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合に、目的物の修補、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しを求めることをいいます。
引き渡しを受けた土地に不同沈下が生じた場合には、施主は、施工業者または売り主に対して、土地の造成工事をやり直すことや不同沈下により損傷を受けた住宅の補修を無償で行うよう請求することができます。
代金の減額とは、施主から施工業者に対して、相当期間を定めて履行の追完を求めたにもかかわらず、相当期間内に履行の追完がなされない場合に、不適合の程度に応じて、代金の減額を請求することをいいます。
なお、不同沈下による、土地の造成工事のやり直しが不可能である場合や施工業者が履行の追完を拒否した場合などには、相当期間を定めた催告をすることなく、直ちに代金減額請求をすることが可能です。
不同沈下によって損害を被った場合には、施工業者に対して、損害賠償請求が可能です。不同沈下による損害としては、造成工事のやり直し費用、不動産の価値減少分、不同沈下による建物の補修費用、不同沈下に起因する慰謝料などが考えられます。
施主は、施工業者に対して相当期間を定めて履行の追完の催告をしたものの、その期間内に適切な補修がなされなかった場合には、売買契約または請負契約を解除して、代金の返還を求めることができます。
ただし、不同沈下を含む債務不履行の程度が契約・取引上の社会通念に照らして軽微であるという場合には、解除までは認められません。
どのような場合に、不同沈下の責任を施工業者に追及できるのでしょうか。以下では、施工業者に責任を追及することができるケースとできないケースについて説明します。
施工業者に対して責任追及をすることができるケースとしては、以下のケースが挙げられます。
以下のようなケースでは、施工業者の責任を追及することができない可能性があります。
不同沈下による建築トラブルでお困りの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
不同沈下が生じた場合には、施主が責任追及のために売り主や施工業者と交渉を行っていかなければなりません。しかし、建築に関する専門的な知識がなければ、業者を相手に対等に交渉を進めることは難しく、業者に言いくるめられてしまうおそれもあります。
弁護士であれば、住宅・建築トラブルに関する豊富な知識と経験を有していますので、業者との交渉であっても適切に進めていくことが可能です。ひとりで交渉することに不安を感じている方は、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう。
施工業者との話し合いで解決をすることができない場合には、最終的には、裁判所に訴訟を提起することになります。建築訴訟は、通常の訴訟に比べて専門性の高い裁判となりますので、個人だけで進めていくのは非常に難しいといえるでしょう。
ご自身の主張をしっかりと裁判所に伝えるためにも弁護士のサポートが不可欠となります。弁護士に依頼をすれば複雑な訴訟手続きもすべて任せることができますので、ご本人の負担は大幅に軽減されることでしょう。
不同沈下が生じた場合には、建物にも重大な影響が及ぶおそれがありますので、早期に適切な対応を取る必要があります。施工業者に対する契約不適合責任は、不適合を知ったときから1年以内に施工業者に通知しなければなりません。
非常に短い期間制限となっていますので、不同沈下が判明した場合には早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。ベリーベスト法律事務所では、建築問題に関する知識豊富な弁護士が、問題解決に向けてサポートいたします。