せっかくマイホームを購入・新築したのに、手抜き工事による欠陥住宅であることが発覚した場合、買い主や施主としては大きな憤りを感じることでしょう。
手抜き工事は、買い主や施主が精神的にショックを受けるのはもちろんのこと、生活する中で危険が生じるおそれもあるため、速やかに是正される必要があります。是正が不可能な場合にも、損害賠償請求などが可能なケースがありますので、弁護士に相談したうえで適切に対処することが大切です。
この記事では、注文住宅や建売住宅の手抜き工事が発覚した場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築住宅の手抜き工事には、実にさまざまなパターンが存在しますが、代表的なケースについてみていきましょう。
なお、手抜き工事というと、故意に(わざと)手を抜いた工事を真っ先にイメージされると思いますが、ここでは故意に手を抜いた工事だけではなく、うっかりして間違った工事をしてしまったり、施工すべき個数を間違えてしまったなど、過失によるものも含むこととします。
購入した新築住宅や建ててもらった新築住宅について手抜き工事が発覚した場合、売り主や施工業者に対してどのような責任追及ができるのでしょうか。
手抜き工事について責任追及を行う際の法的根拠は、「契約不適合責任」(民法第562条、第563条、第559条)と「不法行為」(民法第709条)の2つです。
【契約不適合】
「契約不適合責任」とは、売買契約や請負契約の目的物につき、種類・品質・数量に関して契約の内容と適合しないものが存在する場合に、売り主や施工業者が負う法的責任をいいます。
新築住宅の買い主や施主は、次のいずれかの方法により、契約不適合責任を追及することができます。
【不法行為】
「不法行為」とは、故意または過失により、他人に対して違法に損害を加えた場合に成立します。
手抜き工事によって新築住宅に欠陥が生じ、建物としての基本的な安全性を損なった状態の建物となってしまっており、故意または過失が認められた場合には、買い主や施主は、施工業者に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行うことも可能です。ただし、契約不適合責任と不法行為に基づく損害賠償が重複する場合でも、二重に損害賠償が受けられるわけではありません。
契約不適合責任に基づく各種請求権(履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除)と、不法行為に基づく損害賠償請求権には、権利行使に期間制限が設けられています。売り主や施工業者の責任を追及する場合には、期間制限に注意して、早めの対応を心がけましょう。
これらの除斥期間内に通知を行っておくことで、請求権は保存され、消滅時効期間内であれば請求権を行使することができます。請求権の消滅時効期間は、権利者が権利を行使することができることを知ったときから5年間、権利を行使することができるときから10年間です。
新築住宅の場合、販売業者と施工業者が異なるケースがありますが、誰に対して手抜き工事の責任を追及すれば良いのでしょうか。
責任追及の相手方は、契約不適合責任か不法行為責任か、また注文住宅か建売住宅かによっても異なります。そのため、誰に対して請求すべきかわからない場合には、弁護士にご確認ください。
契約不適合責任は、契約を締結している相手方のみが責任追及の対象となります。
一方、不法行為責任については、契約関係にあるか否かにかかわらず、建物としての基本的な安全性を損なう手抜き工事について故意または過失があると認められる主体に対して追及することが可能です。
平成23年7月21日、最高裁は、建物の所有者は自分が得た建物に「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」(瑕疵とは、いわゆる不具合のこと)がある場合には、不法行為責任にもとづき、その不具合を直す費用相当額の損害賠償を請求できる、という判断を下しました。
この「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、住んでいる人の生命身体や財産を危険にさらすような不具合のことですが、それだけではなく、放置するといずれは危険が発生する不具合も、基本的な安全性を損なう瑕疵に含まれるとしました。
この判決から、放置するといずれは危険性が発生する不具合に関しても、施工会社に責任を追及することができるようになりました。
新築住宅の手抜き工事が発覚した場合は、弁護士へ相談のうえ、速やかに施工業者や売り主の責任追及を行いましょう。
前述したように、手抜き工事の責任を追及するためには、どういう法的根拠で追及するかといった法的知識が欠かせず、個人で対応することは非常に難しいでしょう。その点、弁護士に依頼することで、施工業者や売り主の責任追及をスムーズに進めることが期待できます。
施工業者や売り主が請求に応じず、訴訟などの法的手段に訴える状況に発展した場合でも、弁護士に依頼していれば、状況に応じたサポートを受けることが可能です。
工事途中であれば、施工業者には工事を完成させる義務があり、手抜き工事による欠陥の補修が可能であれば、施主としてもまずは施工業者に補修を求めることになるので、まず完全な履行をするよう請求していくことになります。
補修が可能であり、かつ施工業者が補修に応じたのであれば、請負契約を解除することはできません。また、解除する必要性もないでしょう。
その一方で、補修が行われなかったり、補修が不可能な場合や、施工業者が補修を拒否した場合であって、かつ欠陥の内容が軽微ではないときは、工事の途中でも請負契約を解除することができます(民法第541条、第542条)。
手抜き工事による欠陥の補修を行うに当たって、施工業者や売り主が追加費用を請求してくるケースがあります。
しかし、手抜き工事による欠陥の責任は、あくまでも施工業者や売り主にあるので、施主や買い主が追加費用を負担する合理的な理由はありません。法律上も、契約不適合責任に基づく補修(履行の追完)にかかる費用は、施工業者(請負人)・売り主の側が負担すべきものとされています。
もしハウスメーカーや工務店、建売住宅の売り主などから、補修にかかる費用の負担を求められたとしても、それは法律に基づかない要求ですので、受け入れる必要はありません。
万が一、しつこく追加費用の負担を求められた場合には、弁護士を通して交渉することをおすすめします。
新築住宅の手抜き工事が発覚した場合、施工業者や売り主に対して、契約不適合責任または不法行為責任を追及することが考えられます。また、欠陥が補修不可能で重大なものであった場合には、請負契約や売買契約を解除できる可能性があるでしょう。
しかし、これらの請求を行うのは簡単ではないことに加え、施工業者や売り主から誠意ある対応を望めない場合も少なくありません。そのため、弁護士に相談したうえで対応を検討することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、手抜き工事の被害に遭った方のために、施工業者や売り主に対する責任追及をサポートします。新築住宅やリフォーム工事の欠陥にお悩みの施主の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所へご相談ください。