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中国人向け不動産販売のよくあるトラブル|予防策と対処法を解説 

2023年08月10日
  • 訴訟・仲裁手続
中国人向け不動産販売のよくあるトラブル|予防策と対処法を解説

中国人に不動産を販売する際には、国際取引特有のトラブルに注意が必要です。不動産投資に関する法務や国際取引に詳しい弁護士のサポートを受けながら、安定した取引に努めましょう。

今回は中国人向け不動産販売のよくあるトラブルについて、予防策と対処法をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、中国人向けの不動産を販売する際に起こりがちなトラブル

日本企業が中国人向けに不動産を販売する際には、以下のようなトラブルが発生しがちです。
  • ① 契約締結後、一方的にキャンセルされる
  • ② 重要事項説明を理解しておらず、クレームを受ける
  • ③ 外為法上の報告を怠って行政処分を受ける

それぞれ、見ていきましょう。
(1)契約締結後、一方的にキャンセルされる
中国人には、契約は守るべきものであるという意識が薄い方が少なくありません。そのため、不動産の売買契約の締結が完了しても、買主側から一方的にキャンセルを主張されるケースがあります。

契約には法的拘束力があるため、買主が売買契約を一方的にキャンセルすることはできず、売主は買主に対して代金の支払いを請求できます。日本の裁判所に訴訟を提起すれば、売主が勝訴する可能性が高いでしょう。

しかし日本の裁判所の判決は、中国で強制執行することができません。買主が中国国内にのみ財産を保有している場合、売主は訴訟で勝ったとしても、売買代金を回収できず、再度中国で訴訟を提起するしかありません。
(2)重要事項説明を理解しておらず、クレームを受ける
日本では、宅地建物取引業者が仲介する不動産取引については、買主に対して重要事項の説明が義務付けられています(宅地建物取引業法第35条)。

買主に対する重要事項の説明は、買主の母国語で行う必要はなく、日本語で行えば足ります。買主に交付する重要事項説明書も、翻訳文の用意は必須ではありません。

しかし、中国人の買主に対して重要事項説明を日本語で行うと、買主はその内容を十分に理解しない可能性があります。その結果、契約上重要な合意事項などについて、重要事項説明書に書いてあるにもかかわらず、買主からクレームを受けてしまう例が後を絶ちません。
(3)外為法上の報告を怠って刑事罰を受ける
非居住者による日本国内の不動産の購入は、外国為替及び外国貿易法に規定される「資本取引」に該当し(同法第20条第10号)、原則として事後的に財務大臣へ所定の事項を報告しなければなりません(同法第55条の3第1項第12号)。

財務大臣への報告義務に違反した場合、買主である非居住者に対して「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります(同法第71条第3号)。
仲介などによって中国人買主をサポートする場合には、外為法上の規制の見落としによってトラブルになるリスクに注意が必要です。

2、中国人向け不動産販売に関するトラブルの予防策

中国人向け不動産販売についてよくあるトラブルを予防するためには、以下の対策を検討することをおすすめします。
  • ① エスクローを活用する
  • ② 中国と日本における不動産取引の違いを理解し、顧客に説明する
  • ③ 重要事項説明書の翻訳文を用意する
  • ④ 外為法について弁護士のアドバイスを受ける
(1)エスクローを活用する
契約締結後に中国人買主が逃げてしまうトラブルを防ぐには、エスクローを活用する対策が考えられます。

エスクローとは、中立的な第三者が取引の代金等を預かり、決済の安全性を確保するサービスです。主に信託銀行などがエスクローサービスを提供しています。

契約締結直後の段階で売買代金をエスクローに預託させれば、もし買主が逃げてしまったとしても、エスクローから売買代金や仲介手数料を回収可能です。
(2)中国と日本における不動産取引の違いを理解し、顧客に説明する
中国と日本では、不動産取引のルールについて異なる点が多数存在します。
中国人買主の念頭には中国のルールがある一方で、日本人オーナーは日本のルールを前提に対応するというミスマッチは、中国人向け不動産販売に関するトラブルの主要因の一つです。

仲介業者としては、中国と日本における不動産取引の違いを理解する必要があります。その上で、両者の違いを顧客に対しても説明し、売主・買主間のミスマッチの解消に努めましょう。
(3)重要事項説明書の翻訳文を用意する
中国人を買主とする不動産売買を仲介する際には、重要事項説明書の翻訳文を用意することが望ましいでしょう。

宅地建物取引業法上は、重要事項説明書の翻訳文を交付する必要はありません。しかし、中国人買主に重要事項をよく理解させるためには、翻訳文の活用が大いに役立ちます。
(4)外為法について弁護士のアドバイスを受ける
仲介業者として中国人買主をサポートする場合には、外為法上の報告についても対応を求められることがあります。

外為法の規制はわかりにくい部分が多く、正しく報告を行うためには専門的な知識が不可欠です。弁護士のアドバイスを受けながら、適切に中国人買主をサポートしましょう。

3、中国人向け不動産販売に関するその他のトラブル例

中国人向け不動産販売については、これまで紹介したもののほかにも、以下のようなトラブルが発生することがあります。
  • ・区分所有建物ではないマンションについて、部屋ごとに売買契約を締結してしまう
    (不動産登記の確認漏れ)
  • ・売主が非居住者である場合に、売買代金の源泉徴収を忘れてしまう
    (非居住者から不動産を購入する際には、売買代金の10.21%を源泉徴収して税務署に納める必要がある)
  • ・三為契約※を締結した不動産業者(不動産会社)が、取引条件などについて売主および買主の双方からクレームを受ける
    ※三為契約:不動産業者が売主から不動産を買い取り、買主に対して当該不動産を売却する形式をとるものの、実際には売主から買主へ直接不動産の所有権を移転する取引。不動産業者が多額の売買差益を得るケースが多い。

4、中国人との不動産トラブルについては弁護士に相談を

中国人向け不動産販売に関するトラブルを避けるためには、契約段階から弁護士に相談してリスクを予防することが重要です。

ベリーベスト法律事務所には外国人向けの不動産売買に詳しい弁護士が所属しており、複数の不動産業者の顧問弁護士を担当しています。
中国人向けの不動産販売についても、契約上のリスクについて具体的かつ丁寧にアドバイスいたします。契約交渉・クロージングの立ち会い・登記手続きなど、不動産取引を最初から最後まで一括してサポート可能です。

また、実際にトラブルが発生した場合には、最善の解決策を検討した上で、迅速に事態の収拾を図ります。

中国人向けの不動産販売をご検討中の企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

5、まとめ

中国人向けの不動産販売に関しては、日本人が買主であるケースとは異なる注意点が存在します。中国法務に詳しい弁護士のサポートを受けながら、トラブルのない取引完了を目指しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、中国法に詳しい弁護士(中国律師を含む)と中国法務の専門グループを擁しています。中国最大級の法律事務所「北京大成律師事務所」とも提携し、企業の中国ビジネスを強力にサポートいたします。

中国人向け不動産売却・買取やその仲介業務に関するご相談は、ぜひベリーベスト法律事務所にお任せください。
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