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【2023年】中国撤退4つの方法。企業が撤退を考えるとき注意すべき点とは? 

2023年02月27日
  • 中国法務(進出・展開・撤退)
【2023年】中国撤退4つの方法。企業が撤退を考えるとき注意すべき点とは?

政治関与による外資制限や人件費の高騰などを受け、脱中国依存が国際的なトレンドになっています。たとえば米アップルは、iPhoneなどの中国における集中生産を避けるように、主要取引先へ要請したことが報道されました。

日本も例外ではなく、中国市場からの撤退を加速させる日系企業が少なくありません。たとえば任天堂は、生産ラインの一部を中国からベトナムへ移管する旨を発表しました。さらにアイリスオーヤマ・HOYA・シャープなども、生産拠点を中国から移管することを計画中です。

中国進出企業が撤退する際には、中国市場特有の注意点があります。実績ある弁護士と緊密に連携することが、スムーズに撤退を完了するためのポイントです。

今回は中国市場からの撤退について、判断基準・方法・注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、【2023年】日系企業が中国撤退を加速させる背景

日系企業が中国撤退を加速させる背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大に対して中国政府がロックダウン政策を実施し、既存のサプライチェーンが寸断されたことがあります。
今度のコロナ対策を含む中国政府の動向によって、生産・物流が停止させられる可能性があることを考えると、拠点を中国に集中させることはリスクが高すぎるという認識が広まっている状況です。

また、人件費の高騰や法人税率の上昇などにより、中国を生産・物流の拠点とする経済的メリットが薄れてきています。そのため、依然として低コストでの生産が可能な東南アジアなどに拠点を移す流れが、コロナ禍以降の世界の潮流といえるでしょう。

2、中国撤退の判断基準と4つの方法

(1)中国撤退の判断基準
中国市場から撤退するかどうかは、以下の3つのポイントを基準に判断するのがよいでしょう。

① 事業継続の可能性
→何らかの問題がボトルネックとなって重大な支障が生じている場合、手元資金や問題の状況を考慮して、許容可能な期間で事態を脱出できる見込みが立たなければ、撤退を決断すべきでしょう。

②(短期的な業績が好調の場合)業績好調の持続可能性
→短期的に業績が好調であれば、直ちに事業が頓挫する可能性は低いです。しかし、業績好調が持続する見込みが小さければ、好調のうちに撤退することも賢明な判断といえます。

③(短期的な業績が不調の場合)業績改善の可能性
→短期的な業績が不調の場合、手元資金が尽きないうちに業績を改善しなければなりません。業績改善の現実的な見込みが立たなければ、早い段階で撤退した方が小さなダメージで済みます。
(2)中国市場から撤退するための4つの方法
中国市場から撤退する方法(スキーム)には、主に以下の4種類があります。

① 持分譲渡
会社(中国現地法人)の持分を第三者に譲渡し、中国市場における営業から撤退する方法です。

② 合併・分割
別の企業に会社を吸収させて、経営権を完全に譲渡する方法です。

③ 解散・清算
解散・清算の手続きをとり、会社の法人格を消滅させる方法です。

④ 破産
破産手続きによって会社財産を債権者に配当し、最終的に法人格を消滅させる方法です。


各方法のメリット・デメリットは、それぞれ以下のとおりです。

メリットデメリット
持分譲渡
  • 債権者保護や雇用維持の問題が発生しにくい
  • 中国当局は中立的な姿勢
  • 費用が低廉
  • 手続きが簡易で所要期間が短い
  • 親会社のレピュテーションへの影響が少ない
  • 買い手が見つからない可能性がある
  • 譲渡価格が不確定
合併・分割
  • 債権者保護や雇用維持の問題が発生しにくい
  • 親会社のレピュテーションへの影響が少ない
  • 吸収先が見つからない可能性がある
  • 譲渡価格が不確定
  • 地域を跨(また)ぐ合併・分割については、中国当局が協力的でない場合がある
  • 免税措置や事業ライセンスなどを包括承継することは困難
解散・清算
  • 買い手を探す必要がない
  • 債権者保護や雇用維持の問題が発生する
  • 中国当局が協力的でない場合がある
  • 費用が高額
  • 手続きが煩雑で所要期間が長い
  • 親会社のレピュテーションリスクが懸念される
破産
  • 買い手を探す必要がない
  • 債権者保護や雇用維持の問題が発生する
  • 中国当局が協力的でない場合がある
  • 費用が高額
  • 手続きが煩雑で所要期間が長い
  • 親会社のレピュテーションリスクが懸念される
  • 破産管財人によって手続きが行われるため、親会社のコントロールが及ばない


総じてメリットが多く、買い手さえ見つかればデメリットが少ない「持分譲渡」が選択されるケースが多いです。これに対して、他の手続きはデメリットが多いため、あまり用いられていません。

3、経済産業省がバックアップする「事業費補助金」とは

中国市場の不安定化等によって日本のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が顕在化したことを受け、経済産業省は、国内拠点を整備して生産拠点の集中解消に取り組む企業に向けた補助金を創設しました。
(参考:「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」(経済産業省)

同補助金については、2023年2月中旬から4月中旬ごろにかけて、4次公募が行われる予定です。中国市場からの撤退を検討している企業は、同補助金を利用できないか確認してみましょう。

4、中国市場から撤退する際の注意点

中国市場から撤退する際には、以下の問題がボトルネックになる可能性がある点に注意が必要です。

  • ① 持分譲渡・合併先が見つからない
  • ② 中国当局が非協力的な場合がある
  • ③ 従業員のリストラが進まない
(1)持分譲渡・合併先が見つからない
持分譲渡または合併・分割を試みる場合、いかにして買い手を見つけるかが課題となります。
特に経営不振に陥っている場合、名乗りを上げる買い手候補が全く見つからない可能性もあります。スムーズに中国市場から撤退するには、できる限り業績好調の段階で決断することが望ましいでしょう。
(2)中国当局が非協力的な場合がある
中国当局が非協力的な場合、撤退の手続きは遅々として進まない可能性が高いです。
特に、債権者保護や雇用維持の観点から問題がある場合(解散・清算、破産)や、地域を跨ぐ合併・分割については、中国当局の協力を得にくい傾向にあります。
持分譲渡であれば、中国当局にも比較的ニュートラルな対応を期待できるので、基本的には持分譲渡による撤退を模索することをお勧めいたします。
(3)従業員のリストラが進まない
中国の労働法は非常に厚く労働者を保護しており、会社都合退職の従業員に対しては、法定の経済補償金の支払いが義務付けられています。
また、会社による一方的な解雇は厳しく制限されているため、退職に当たって従業員から経済補償金の上積みを求められる可能性が高いです。
このような事情から、撤退に伴い従業員のリストラを進める際には、多額の経済的負担が見込まれます。持分譲渡の方法を選択しつつ、リストラの範囲を最小限に抑えることで、中国市場からのスムーズな撤退を図りましょう。

5、中国撤退は実績ある弁護士との連携が重要

中国市場から撤退する際には、現地の法律や実務上の留意点を踏まえた対応が求められます。スムーズに撤退を完了するためには、中国法に関する知見と実績に長(た)けた法律家のサポートが必要不可欠です。
ベリーベスト法律事務所には、中国法に詳しい弁護士(中国律師を含む)が複数名所属しております。さらに、中国人を中心に構成した中国法務専門チームを有しており、また中国の大手法律事務所とも提携していますので、中国法務に関するサポート体制は万全です。
中国市場からの撤退を検討している企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

6、まとめ

日本企業が中国市場からスムーズに撤退するには、中国法特有の留意点を念頭に置いた対応が求められます。日本のルールや常識とは異なる部分も多々あるので、中国法に精通した法律家へのご相談がおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、中国法に詳しい弁護士(中国律師を含む)と中国法務の専門グループを擁しており、中国市場からの撤退を最初から最後までサポートいたします。中国事業の取りやめを視野に入れている企業は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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