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中国民事訴訟Q&A(その23) 

2016年11月15日
  • 訴訟・仲裁手続
中国民事訴訟Q&A(その23)

Q23:「民訴法」上の立証責任はどのようになっていますか。

中国律師からの回答

「民訴法」第64条によると、当事者は、自己の主張について、証拠を提出する責任を負うのが原則です。当事者は、自己の訴訟請求の根拠となる事実または相手の訴訟請求に反論する根拠となる事実につき、証拠を提出し、証明しなければなりません。
証拠がない場合、または当事者の主張を証明するには証拠が不十分である場合、立証責任を負う当事者が不利な結果を引き受けることとなります。
なお、以下の立証責任の例外があります。

「立証責任」の例外
  • 新製品の製造方法の発明特許に関する特許侵害訴訟については、同様の製品を製造した当事者が、その製品の製造方法が特許方法と異なることについて立証責任を負います。
  • 危険度の高い作業による人身損害の権利侵害訴訟については、被害者が故意に損害をもたらした事実について、加害者が立証責任を負います。
  • 環境汚染による損害賠償訴訟については、加害者が法律に規定されている免責事由及びその行為と損害結果との間に因果関係が存在しないことにつき立証責任を負います。
  • 建築物その他の施設、及び建築物上の置物等の脱落・落下等による人身損害の権利侵害訴訟については、所有者または管理者が無過失であることにつき立証責任を負います。
  • 動物を飼育することによる人身損害の権利侵害訴訟については、動物の飼育者または管理者が、被害者または第三者に過失があったことにつき立証責任を負います。
  • 製品の欠陥による人身損害の権利侵害訴訟については、生産者が法律に規定されている免責事由の立証責任を負います。
  • 共同の危険行為による人身損害の権利侵害訴訟については、危険行為を行った者がその行為と損害結果との間に因果関係が存在しないことにつき立証責任を負います。
  • 医療行為による権利侵害訴訟については、医療機関が、医療行為と損害結果との間に因果関係が存在しないこと、及び医療過失が存在しないことにつき立証責任を負います。
  • 契約の履行に関する争いについては、履行義務を負う当事者が立証責任を負います。
  • 代理権に関する争いについては、代理権を有することを主張する当事者が立証責任を負います。
  • 使用者による解雇、労働契約解除、減俸、労働者の勤続期間の計算等の決定によって生じた労働紛争については、使用者が立証責任を負います。

ちなみに、
①一方当事者が、相手当事者の主張事実及び訴訟請求に対して、明確に承認したもの(但し、身分関係、国の利益、社会公共利益等に係わる人民法院が職権調査をしなければならない事実につき、自認が適用されません。自認の事実と調査・明確した事実が異なる場合も自認が適用されません。)
②自然的法則及び定理、③周知の事実、③法律規定、既知事実及び日常生活の経験則に基づいて推定できるその他の事実、④人民法院の発効した判決、仲裁機構の発効した仲裁判断により確定された事実、⑤既に有効な公証証書により証明された事実については、当事者の立証の必要はありません。③乃至⑤については、相手当事者が当該事実を覆すに足りる反証のある場合は、この限りでないものとします。

また、法律に具体的な規定がなく、関係司法解釈によっても立証責任を負う者を確定できない場合、人民法院は、公平原則及び信義則に基づき当事者の立証能力等の要素を考慮して、立証責任者を確定します。

注意点

当事者及びその訴訟代理人が客観的事由により自己で収集できない証拠、または人民法院が事件の審理に必要であると認める証拠につき、人民法院は、職権によって調査・収集しなければなりません。
ただし、実務上、人民法院は、①国の利益、社会公共の利益または当事者の悪意共謀による第三者の合法的な権益を損害する可能性のある事実の場合、②身分関係に係わる事実、③環境汚染、多数の消費者の適法な権益を侵害すること等の事実の場合、④職権による当事者の追加、訴訟の中断、訴訟の終結、忌避等の手続事項の場合のみ自ら職権により調査・収集し、これ以外の場合は当事者の申請によるものになります。

重要関係司法解釈

「最高人民法院の『中華人民共和国民事訴訟法』の適用に関する解釈」(2015年2月4日施行、法釈[2015]5号)第4章 (証拠)
「最高人民法院の民事訴訟証拠に関する若干規定」(2001年4月1日施行、法釈[2001]33号)

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