建物の施工不良などを巡る紛争(=建築紛争)は訴訟で争う額が大きいため、施主(建築主)と施工業者の間で深刻な争いに発展するケースが多数あります。
もし建築紛争に巻き込まれたら、弁護士のサポートを受けながら、適正な条件による速やかな解決を目指しましょう。
本コラムでは、建築紛争のよくあるトラブル事例・対処法・解決までの流れ・相談先のことなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
建築紛争とは、主に施主と施工業者の間で争われる、建築物に関する紛争です。
よくある建築紛争としては、契約不適合責任に関する紛争・工事の中断・工期の遅れ・工事代金の不払いなどが挙げられます。それぞれの紛争について、具体的に見ていきましょう。
建築紛争の中で発生頻度が非常に高いのが、契約不適合責任に関する紛争です。
契約不適合責任とは、引き渡された目的物の品質・種類・数量が契約内容に適合していないときに、売り主などが買い主などに対して負担する責任です。
建物の売買契約や工事請負契約については、売り主・施工業者が買い主・施主に対して契約不適合責任を負う場合があります。
天候や資材調達スケジュールなどの影響により、建設工事の工期が遅れる場合があります。
工期が遅れた場合の取り扱いについては、建設工事請負契約書において規定されるのが通常です。しかし、契約上の取り扱いが不明確な場合や、工期が遅れた原因について認識が相違している場合には、遅延損害金の負担等についてトラブルになる可能性があります。
施工業者側の資金繰りの都合により、資材の仕入れや下請け事業者への発注ができずに、建設工事が長期間中断するケースがあります。
このようなケースでは、施工業者側の資金繰りが改善しない限り、工期がどんどん遅れていきます。最終的には工事中止となるリスクも高く、そうなれば当然施主は施工業者の責任を追及しますので、争いに発展する可能性が高いです。
工事請負契約で定められた期日どおりに、施主側が工事代金を支払わないケースもあります。
工事請負契約では、契約時・上棟時・引渡時などと、工事代金を分けて支払う旨を定めるのが一般的です。契約時には施主の経済状況が良好でも、その後に経済状況が悪化した場合には、上棟時・引渡時の支払いができなくなることがあります。
途中で工事代金が不払いとなると、途中で工事を止めざるを得ません。この場合、工事代金の精算に加えて、出来形(途中まで建設された建物)の取り扱いも大きな問題となり、深刻な争いになるケースが多いです。
双方の合意のないままに追加・変更工事が行われた場合、追加工事代金を支払う必要はありません。ただし、追加・変更工事に関する契約書面が作成されていて追加工事請負契約が成立しているケースでは、当然ながら施主側は請負代金を支払うことが必要です。
このとき、追加・変更工事に対する合意はあったものの、費用面に関して明確に定めないまま着工していたり、口頭の合意で契約書面の作成義務(建設業法第19条第1項)を果たさなかったりした場合、追加・変更工事の報酬請求に関して争いになることがあります。
建築紛争に直面した場合、施主は契約不適合責任の追及、施工業者は工事代金の請求などを行うことができます。
施主側としては、施工の不良等に関して、施工業者の契約不適合責任を追及することが考えられます。
施工業者としては、建築紛争に直面したときは法的手段(ADR・訴訟など)の利用も視野に入れつつ、施主に対して工事代金の支払いを請求しましょう。工事代金の請求に当たっては、契約書(追加・変更工事に関するものを含む)の規定に沿って対応することが大切です。
なお、工事の途中で施主との契約が終了した場合は、途中まで出来上がった建物(=出来形)によって施主が受ける利益の範囲内で、出来高報酬を請求できます(民法第634条)。
建築紛争を解決するまでの手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。
まずは建築紛争の原因となっている施工不備等の箇所について、現場の確認や図面・建築計画との照合などを行いましょう。
特に施主側は、契約不適合責任を追及するためには、契約との不適合があることを主張・立証する必要があるので、施工業者側に調査を委ねるのではなく、自ら依頼した建築士などに調査を任せるようにすることが大切です。
新築住宅については、施工業者が住宅瑕疵担保責任保険を付保しているケースが多いです。
参考:「住宅瑕疵担保履行法とは」(一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会)
住宅瑕疵担保責任保険が付保されていれば、構造耐力や雨水の侵入に関する瑕疵については、施工業者が施主に対して負う責任がカバーされます。施主はスムーズに補償を受けることができる一方で、施工業者にも巨額の支出を免れることができるメリットがあります。
新築住宅について建築紛争が発生した際には、住宅瑕疵担保責任保険の付保状況を必ず確認しましょう。
建築紛争を早期に解決するためには、施主と施工業者の間で和解することが望ましいです。
和解を成立させるには、施主と施工業者の歩み寄りが必要不可欠です。互いに相手方の主張を聴き取り、よく検討して、適切な和解条件を模索しましょう。
和解交渉が決裂した場合は、ADRや訴訟によって解決を図ることができます。
ADRは、裁判所以外の第三者機関による建築紛争の解決手続きです。国土交通省および都道府県が設置する「建設工事紛争審査会」や、弁護士会が設置する「住宅紛争審査会」などがADRを取り扱っています。
ADRでは、あっせん・調停・仲裁の各手続きを通じて紛争解決のサポートを受けることが可能です。ただし、あっせんおよび調停では解決内容について、仲裁では申し立てについて当事者双方の合意が求められます。
訴訟は、裁判所で行われる紛争解決手続きです。裁判所に訴訟を提起すれば、建築紛争を強制的かつ終局的に解決することができます。訴訟においても和解することができますし、裁判所からの勧めで和解が成立することも多いです。
ADRや訴訟において有利な解決を得るためには、法的な観点からの検討と準備が必要不可欠です。弁護士のサポートを受けながら、周到に準備を整えましょう。
建築紛争に関する相談先としては、以下の窓口が挙げられます。紛争の長期化・深刻化を防ぐためにも、お早めに各窓口へご相談ください。
建築工事について問題が発生すると、施主と施工業者の間で深刻なトラブルになる可能性があります。トラブルの深刻化を防ぎ、スムーズな紛争解決を図るためには、できるだけ早期に弁護士へご相談いただくことが大切です。
ベリーベスト法律事務所は、建築紛争に関するご相談を受け付けております。
経験豊富な弁護士が、法令や事実関係を適切に踏まえた上で、適正な条件による紛争解決を目指します。
一級建築士とも緊密に連携しているため、建築工事に関する技術的な問題についても十分に対応することが可能です。
施主の工事代金未払いなどにお悩みの施工業者や、施工不良などについて施工業者の責任を追及したい施主の方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。