「念願の注文住宅を建てることができた」と喜ぶのもつかの間、設計ミスが発覚して、希望どおりの住宅にならなかった……と、肩を落とす方もいるでしょう。
設計ミスが建物の構造上の重要な部分に生じてしまうと、最悪のケースでは、欠陥住宅になってしまう可能性があります。このような設計ミスが発覚した場合、施主は誰に対して、どのような責任を追及することができるのでしょうか。
今回は、住宅の設計ミスに関する責任の所在や内容、検討すべきことなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
最初に、住宅の設計ミスの責任の所在、設計ミスが生じる原因や、設計ミスが発覚した場合の基本的な対応について説明します。
住宅を建てるとき、設計を建築士に、施工を施工業者にというように、設計を頼む相手と施工を頼む相手が別々のことがあります。これを「設計施工分離」といいます。
この場合には、設計に関する契約は施主と設計者との間で締結されるので、設計ミスについては、設計者との間の契約にもとづいて、設計者に責任追及することができます。
一方で、設計も施工も施工業者に頼むことを「設計施工一貫」といい、こちらの契約類型のほうが多くみられます。
この場合、施主は設計も含めて施工業者に発注しているので、たとえ施工業者が設計を外部に委託していたとしても、設計ミスについては施工業者との契約にもとづき、施工業者に責任追及することができます。
なお、後に述べますが、設計ミスが建物としての基本的な安全性を損なうようなものであり、不法行為と評価されるような場合には、直接の契約がなくても実際に設計ミスをした設計者(建築士)に対して、不法行為にもとづく損害賠償請求をすることも可能です。
住宅は、たくさんの人が関わって建築していくものであるため、さまざまな原因によって設計ミスが生じる可能性があります。
設計ミスが生じてしまう代表的な原因は、以下のとおりです。
住宅の設計ミスが発覚したときには、以下のようなことを検討しましょう。
ここからは、契約不適合責任を追及する場合の手段と注意点について説明します。
契約不適合責任を追及する場合には、以下の4つの手段を取ることが考えられます。
契約不適合責任を追及する場合には、以下の2点に注意が必要です。
欠陥住宅であることが発覚した場合には、「設計施工分離」の場合などでは、施工業者と建築士のどちらに対して責任追及をすればよいか悩む方も少なくありません。
以下では、不法行為責任の場合ですが、欠陥住宅を理由として、施工業者と建築士の責任が争われた裁判例を紹介します(最高裁平成23年7月21日判決)。
土地の所有者であるAは、施工業者Y2との間でマンションを建築する旨の請負契約を締結し、マンションの設計および工事監理をY1に委託しました。マンション完成後に、AはマンションをXに売却し、引き渡しました。
しかし、そのマンションには、廊下や床、壁に多数のひび割れがあり、梁(はり)の傾斜、バルコニーの手すりのぐらつき、鉄筋量の不足、排水管の亀裂などさまざまな不具合があることが判明しました。
そこでXは、マンションの設計を担当したY1およびマンションの施工業者であるY2を相手として、修補費用相当額などの損害賠償を求めて、裁判所に訴えを提起しました。
売買の目的物に不具合があった場合には、売り主の契約不適合責任を追及するのが一般的です。しかし、本件事案のように個人から不動産を購入したような場合には、売り主の資力や契約不適合責任期間が経過しているなどの理由から責任追及が困難な場合もあります。
そこで、本件のように、Xとは直接の契約関係にない施工業者や建築士が責任を負うかどうかがこの裁判のポイントです。
この裁判では、「直接の契約関係にない施工業者や建築士についても、不法行為責任を負う場合がある」と、以下のような理由で判断されました。
欠陥住宅に関するトラブルに直面した場合には、弁護士に相談することがおすすめです。その理由を3つに分けて、ご紹介します。
前述のとおり、契約不適合責任免責が契約書に設けられている場合には、原則として、契約の相手方への契約不適合責任を追及することはできません。
しかし、一般消費者である施主と事業者である施工業者などの契約の相手方との間には、圧倒的な情報格差があり、施主が不利な条件で契約を締結させられるおそれがあります。
そこで、当事者の関係や特約の内容次第では、宅建業法や消費者契約法などによって、契約不適合責任免責の効力を制限できる場合もあるのです。
また、相手方に故意や重過失がある場合に責任を追及するできる可能性もあります。
「契約不適合責任免責が設けられているから何もできない」と諦める前に、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
契約の相手方に対して契約不適合責任を追及していく場合には、施主が相手方と交渉をしていかなければなりません。
しかし、住宅建築に関する知識や経験の乏しい施主では、経験豊富な施工業者などの相手方に対して交渉を進めていくのは難しいといえます。正確な知識がなければ、相手方から適当に言いくるめられてしまい、設計ミスの責任を追及することができない可能性もあるでしょう。
弁護士であれば施主に代わって相手方と交渉を行うことが可能であるため、適切に話を進めていくためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
建築紛争に関する経験豊富な弁護士が交渉を担当することによって、相手方と対等な立場で交渉を進めることが可能です。
相手方が設計ミスを認めない、相手方から提示された解決案に納得がいかないなどのケースでは、最終的に裁判で決着を付ける必要があります。
建築紛争に関する裁判は、通常の裁判に比べて内容も専門的かつ複雑です。そのため、弁護士のサポートがなければ適切に進めていくことは困難といえるでしょう。
また、トラブルの内容によっては、解決までに期間を長く要するものもあります。その中で、施主側の主張を裁判所に理解してもらうためにも、証拠をそろえてしっかりと争っていくことが大切です。
設計ミスが判明した場合には、早めに弁護士に相談をして、今後の対応について話し合っていくようにしましょう。
設計ミスによって欠陥住宅になってしまった場合には、施工業者や設計士に対して責任を追及できる可能性があります。
しかし、そもそも設計ミスがあるのかどうかを判断するためには、専門家による調査検証が必要です。責任追及をする場合は、施主個人で対応するのは難しい問題でもあります。
「設計ミスの疑いが生じて、どうしたら良いのかわからない」「誰に設計ミスの責任を問えるのか分からない」など、住宅のトラブルに関してお困りの際には、まずはベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
ご相談者さまに寄り添いながら、法的サポートをいたします。