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    2023年05月25日
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    欠陥住宅の原因は設計ミス! 建築士と施工業者、どちらの責任?
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    欠陥住宅の原因は設計ミス! 建築士と施工業者、どちらの責任?

    「念願の注文住宅を建てることができた」と喜ぶのもつかの間、設計ミスが発覚して、希望どおりの住宅にならなかった……と、肩を落とす方もいるでしょう。

    設計ミスが建物の構造上の重要な部分に生じてしまうと、最悪のケースでは、欠陥住宅になってしまう可能性があります。このような設計ミスが発覚した場合、施主は誰に対して、どのような責任を追及することができるのでしょうか。

    今回は、住宅の設計ミスに関する責任の所在や内容、検討すべきことなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、設計ミスによる欠陥住宅|検討すべき対応と責任の所在

最初に、住宅の設計ミスの責任の所在、設計ミスが生じる原因や、設計ミスが発覚した場合の基本的な対応について説明します。

  1. (1)設計ミスの責任の所在

    住宅を建てるとき、設計を建築士に、施工を施工業者にというように、設計を頼む相手と施工を頼む相手が別々のことがあります。これを「設計施工分離」といいます
    この場合には、設計に関する契約は施主と設計者との間で締結されるので、設計ミスについては、設計者との間の契約にもとづいて、設計者に責任追及することができます。

    一方で、設計も施工も施工業者に頼むことを「設計施工一貫」といい、こちらの契約類型のほうが多くみられます
    この場合、施主は設計も含めて施工業者に発注しているので、たとえ施工業者が設計を外部に委託していたとしても、設計ミスについては施工業者との契約にもとづき、施工業者に責任追及することができます。

    なお、後に述べますが、設計ミスが建物としての基本的な安全性を損なうようなものであり、不法行為と評価されるような場合には、直接の契約がなくても実際に設計ミスをした設計者(建築士)に対して、不法行為にもとづく損害賠償請求をすることも可能です。

  2. (2)設計ミスが生じる原因

    住宅は、たくさんの人が関わって建築していくものであるため、さまざまな原因によって設計ミスが生じる可能性があります。
    設計ミスが生じてしまう代表的な原因は、以下のとおりです。

    ① CADというツールでの入力・設定ミス
    CADとは、「コンピューター利用設計システム」と呼ばれる、コンピューターを用いて設計をすることができるツールです。
    建築関係の図面には、基本設計図や実施図、施工図、竣工図などがあり、それらを手書きすると、どうしても線の太さなどによる誤差やミスが生じてしまいますが、CADのツールを利用すれば、そのようなミスを減らすことが可能です。

    しかし、不慣れな方がツールを利用すると、入力や設定ミスが発生し、図面に誤差が生じてしまう場合もあるでしょう。それによって、設計ミスが生じるケースがあります。

    ② 実際の現場での測定ミス
    建築現場では、図面に従って住宅の建築を進めていかなければなりません。実際の現場で測定ミスなどが生じると図面どおりの建築ができず、設計ミスの原因となります。

    ③ 法令などの理解の誤り
    住宅の設計を行う場合には、建築基準法をはじめとした各種関連法令への理解が必要です。施主の希望どおりに住宅を設計したとしても、耐震基準や建ぺい率・容積率などが法令に適合していない場合には、設計ミスとなります。
  3. (3)設計ミスが発覚したときに検討すべきこと

    住宅の設計ミスが発覚したときには、以下のようなことを検討しましょう。

    ① 専門家に調査・検証の依頼をする
    設計ミスがあったとしても、建築素人である施主には、それが設計ミスなのかどうかを判断することができません。そのため、設計ミスの疑いが生じた場合には、まずは専門家に調査・検証の依頼をすることが必要です。

    ② 設計者または施工業者の責任を問う(補修請求)
    専門家の調査・検証の結果、設計ミスによる住宅の不具合が明らかになった場合には、契約不適合責任を問えますので、「設計施工一貫」であれば、施工業者に対して、不具合などの補修・やり直しを求めることができます。
    「設計施工分離」の場合、やり直しの工事が可能なのであれば設計者に設計のやり直しを求め、すでに工事されている部分をやり直すための費用については、③で述べるようにその費用を損害賠償請求していくことになります。
    設計ミスに気付いたタイミングが建物が完成する前の早い段階であれば、補修・やり直しも容易です。

    ③ 設計者または施工業者の責任を問う(損害賠償)
    やり直しを求めるほか、やり直しを求めても応じてくれない、もう工事が進んでしまってやり直せない等の場合、設計ミスにより生じた損害の賠償を設計者に対して請求することができます。やり直しができたときでも、そのために工事期間が延びて仮住まいの家賃が余分にかかったというような場合には、その余分の出費について損害賠償請求することもあり得ます
    ②も③も、契約不適合責任の追及になりますので、設計施工分離であれば設計を委託する契約の相手となった設計者への請求、設計施工一貫であれば設計についても発注された施工業者への請求になります。

    ただし、設計者の行った設計内容に設計ミスの瑕疵があったとしても、その瑕疵が注文者の与えた指示等によって生じた場合には、契約不適合責任を追及することはできません(民法636条本文)。
    もっとも、設計者がその指示等が不適当であると気づいていながら、それを告げなかったという場合、注文者は契約不適合責任を追及することが可能となります(民法636条ただし書)。
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2、契約不適合責任で追及できる4つのこと

ここからは、契約不適合責任を追及する場合の手段と注意点について説明します。

  1. (1)契約不適合責任を追及する場合の手段

    契約不適合責任を追及する場合には、以下の4つの手段を取ることが考えられます。

    ① 追完請求
    目的物に契約不適合がある場合には、契約の相手方に対して、目的物の修補請求(追完請求の一種)をすることができます。住宅に設計ミスで生じた不具合がある場合、施主は追完請求を行うことによって、本来の状態に戻すように求めることが可能です。

    ただし、施主に不相当な負担を生じさせるものでない場合に限り、契約の相手方は、施主が請求した方法とは異なる方法で追完をすることができます。

    ② 代金の減額請求
    施主が相当の期間を定めて履行の追完の催告を行ったにもかかわらず、その期間内に履行の追完がなされない場合、施主は、契約の相手方に対して、契約不適合の程度に応じた代金の減額を求めることができます。

    なお、目的物の修補が不可能である場合や、契約の相手方が修補を明確に拒絶している場合には、催告なくいきなり代金の減額請求をすることもできます。

    ③ 損害賠償請求
    目的物に契約不適合が生じたことについて、責に帰すべき事由(責められるべき理由や過失など)が契約の相手方にある場合には、相手方に対して損害賠償請求を行うことが可能です。

    この場合の損害としては、目的物の契約不適合によって生じた実損害のほか、転売予定で購入した場合であれば、転売機会を失ったことによる転売利益についても、相手方も転売予定を知っていた場合や、当然知っていてしかる場合だったようなときには請求できます。

    ④ 請負契約の解除
    目的物に契約不適合があった場合には、施主は相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間に契約の相手方による追完がなされない場合には、請負契約を解除するという手段も考えられます。場合によっては催告なしで解除することもできます(民法559条、564条)。

    ただし、契約不適合の程度が取引上の社会通念に照らして、軽微である場合には契約の解除まではできません。
    追完・代金減額請求においても、その設計ミス(契約不適合)が、施主側の責めに帰すべき事由が原因であるときは請求できません(民法559条、562条2項、563条3項)。
    また、損害賠償請求の場合も、その設計ミスが債務者(設計者側)の「責めに帰することができない事由」(民法415条1項ただし書)であるときは請求できません。
  2. (2)契約不適合責任を追及する場合の注意点

    契約不適合責任を追及する場合には、以下の2点に注意が必要です。

    ① 契約不適合責任の追及には期間制限がある
    契約不適合責任を追及する場合には、施主が契約不適合責任を知ったときから1年以内に通知をしなければなりません。

    施工業者から契約不適合な目的物が引き渡され、上記期間が経過すると、契約不適合責任を追及できなくなってしまうため、請求期間については注意が必要です

    ② 契約不適合責任免責の特約が設けられている可能性
    契約不適合責任免責とは、「契約の相手方が契約内容に適合しない建物を引き渡したとしても、相手方は契約不適責任を負わない」とする内容の特約です。

    このような特約も原則として有効とされているため、請負契約書などにおいて契約不適合責任免責の特約が設けられている場合には、施工業者に対して責任を追及することができなくなってしまいます。

    ただし、宅地建物取引業法や消費者契約法などによって、契約不適合責任免責の特約の効力が制限されるケースもありますので、特約の有効性については、弁護士に相談することで判断してもらうとよいでしょう。
    また、免責するという特約があったとしても、相手方が契約不適合の事実について知っていたり、重大な過失により知らなかった場合には責任追及できる余地がありますので、この点についても弁護士に相談されることをお勧めします

3、欠陥住宅で施工業者と建築士を相手に行われた裁判例

欠陥住宅であることが発覚した場合には、「設計施工分離」の場合などでは、施工業者と建築士のどちらに対して責任追及をすればよいか悩む方も少なくありません
以下では、不法行為責任の場合ですが、欠陥住宅を理由として、施工業者と建築士の責任が争われた裁判例を紹介します(最高裁平成23年7月21日判決)。

  1. (1)事案の概要

    土地の所有者であるAは、施工業者Y2との間でマンションを建築する旨の請負契約を締結し、マンションの設計および工事監理をY1に委託しました。マンション完成後に、AはマンションをXに売却し、引き渡しました。

    しかし、そのマンションには、廊下や床、壁に多数のひび割れがあり、梁(はり)の傾斜、バルコニーの手すりのぐらつき、鉄筋量の不足、排水管の亀裂などさまざまな不具合があることが判明しました。

    そこでXは、マンションの設計を担当したY1およびマンションの施工業者であるY2を相手として、修補費用相当額などの損害賠償を求めて、裁判所に訴えを提起しました。

  2. (2)裁判の争点とポイント

    売買の目的物に不具合があった場合には、売り主の契約不適合責任を追及するのが一般的です。しかし、本件事案のように個人から不動産を購入したような場合には、売り主の資力や契約不適合責任期間が経過しているなどの理由から責任追及が困難な場合もあります。

    そこで、本件のように、Xとは直接の契約関係にない施工業者や建築士が責任を負うかどうかがこの裁判のポイントです。
    この裁判では、「直接の契約関係にない施工業者や建築士についても、不法行為責任を負う場合がある」と、以下のような理由で判断されました。

    • 建物としての基本的安全性を損なう瑕疵がある場合には、直接の契約関係にない施工業者や建築士にも不法行為責任が生じる
    • 建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者などの生命、身体または財産を危険にさらすおそれのある瑕疵のこといい、具体的には、建物の構造耐力に関する瑕疵だけでなく、漏水や外壁の崩落の危険などの欠陥・不具合についても含まれる

4、欠陥住宅に関するトラブルを弁護士に相談するべき理由

欠陥住宅に関するトラブルに直面した場合には、弁護士に相談することがおすすめです。その理由を3つに分けて、ご紹介します。

  1. (1)契約不適合責任免責が無効となるケースを判断することができる

    前述のとおり、契約不適合責任免責が契約書に設けられている場合には、原則として、契約の相手方への契約不適合責任を追及することはできません。

    しかし、一般消費者である施主と事業者である施工業者などの契約の相手方との間には、圧倒的な情報格差があり、施主が不利な条件で契約を締結させられるおそれがあります。
    そこで、当事者の関係や特約の内容次第では、宅建業法や消費者契約法などによって、契約不適合責任免責の効力を制限できる場合もあるのです。
    また、相手方に故意や重過失がある場合に責任を追及するできる可能性もあります

    「契約不適合責任免責が設けられているから何もできない」と諦める前に、まずは弁護士に相談をしてみましょう。

  2. (2)業者とのやり取りで代理人になることができる

    契約の相手方に対して契約不適合責任を追及していく場合には、施主が相手方と交渉をしていかなければなりません。

    しかし、住宅建築に関する知識や経験の乏しい施主では、経験豊富な施工業者などの相手方に対して交渉を進めていくのは難しいといえます。正確な知識がなければ、相手方から適当に言いくるめられてしまい、設計ミスの責任を追及することができない可能性もあるでしょう。

    弁護士であれば施主に代わって相手方と交渉を行うことが可能であるため、適切に話を進めていくためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
    建築紛争に関する経験豊富な弁護士が交渉を担当することによって、相手方と対等な立場で交渉を進めることが可能です。

  3. (3)交渉で解決できない場合でも法的措置によって解決を図ることができる

    相手方が設計ミスを認めない、相手方から提示された解決案に納得がいかないなどのケースでは、最終的に裁判で決着を付ける必要があります。

    建築紛争に関する裁判は、通常の裁判に比べて内容も専門的かつ複雑です。そのため、弁護士のサポートがなければ適切に進めていくことは困難といえるでしょう。

    また、トラブルの内容によっては、解決までに期間を長く要するものもあります。その中で、施主側の主張を裁判所に理解してもらうためにも、証拠をそろえてしっかりと争っていくことが大切です。

    設計ミスが判明した場合には、早めに弁護士に相談をして、今後の対応について話し合っていくようにしましょう。

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5、まとめ

設計ミスによって欠陥住宅になってしまった場合には、施工業者や設計士に対して責任を追及できる可能性があります。

しかし、そもそも設計ミスがあるのかどうかを判断するためには、専門家による調査検証が必要です。責任追及をする場合は、施主個人で対応するのは難しい問題でもあります。

「設計ミスの疑いが生じて、どうしたら良いのかわからない」「誰に設計ミスの責任を問えるのか分からない」など、住宅のトラブルに関してお困りの際には、まずはベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
ご相談者さまに寄り添いながら、法的サポートをいたします。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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