購入した新築物件において、給水管・排水管の損傷等により漏水事故(水漏れ)や雨漏りが発生した場合、新居に抱いていた期待が壊されるだけではなく、日常生活に支障が生じます。このようなケースでは、売主や施工業者側の法的責任を追及したいところです。
新築建物の漏水については、売主や施工業者の契約責任または不法行為責任を追及できる可能性があります。損害賠償だけではなく、工事不備が重大なケースでは契約解除等が認められることもあるのです。
今回は、新築建物の施工等の不備によって生じた漏水について、売主や施工業者側に発生する責任の内容や、損害賠償請求が認められた裁判例などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築建物で漏水が発生した場合、売主や施工業者に対して、法的責任を追及できる可能性があります。
「契約不適合責任」とは、有償契約の目的物について、契約内容との不適合があった場合に、売主や施工業者が買主や施主に対して負担する法的責任です(民法第559条、第562条以下)。
損害賠償請求・修補請求・代金減額請求・契約の解除によって責任追及をすることができます。
品確法に基づき、新築住宅の請負契約および売買契約については、契約不適合責任の責任期間を延長した「瑕疵担保責任」が認められています(同法第94条および第95条)。
民法上の契約不適合責任と同様に、買主(施主)は売主(施工業者)に対して、修補請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除を行うことができます。
新築建物の工事不備は、民法第709条の「不法行為」にも該当する可能性があります。
不法行為責任は、直接の契約関係がない主体に対しても追及できるのが大きな特徴です。ただし、不法行為責任の追及方法として認められるのは、損害賠償請求のみとなります。
契約不適合責任・品確法に基づく瑕疵担保責任・不法行為責任は、新築建物の漏水についていずれも成立する可能性があります。
損害賠償の二重取りはできませんが、それぞれ責任を負う主体・成立要件・責任期間・責任追及方法が異なるので、状況に合わせて適切な法律構成を選択しましょう。
責任を負う主体・成立要件・責任期間・責任追及方法について、それぞれ違いをまとめました。
契約不適合責任・品確法に基づく瑕疵担保責任の2つは、売買契約や請負契約に基づく契約責任として位置づけられます。
したがって、買い主(施主)が契約不適合責任または品確法に基づく瑕疵担保責任を追及できるのは、契約の直接の相手方である売り主(施工業者)のみです。
戸建住宅であればハウスメーカーや工務店、集合住宅(マンションなど)であれば売り主であるデベロッパーに対して、契約不適合責任または品確法に基づく瑕疵担保責任を追及することになります。
これに対して不法行為責任は、契約関係にない者の間でも問題になり得ます。
たとえば、注文住宅の請負工事につき、ハウスメーカーが別の施工業者に下請け工事を発注したとします。この場合、施主は下請施工業者との間で契約を締結していないため、下請施工業者の契約責任を追及することはできません。
しかし、下請施工業者による施工不良の結果漏水が生じた場合、下請施工業者の不法行為責任を追及する余地は残されています。
各成立要件は、それぞれ異なります。複数の法的責任が併存する場合には、各要件を踏まえて成立を立証しやすい法律構成を選択するのがよいでしょう。
契約不適合責任・品確法に基づく瑕疵担保責任・不法行為責任は、それぞれ責任期間が異なります。いずれかの責任期間が経過してしまっても、他の法律構成であれば責任期間が経過していないというケースも考えられます。
特約によって、この期間の変更は可能とされますが、宅地建物取引業者が自ら売り主となる宅地・建物の売買契約では、目的物の引き渡しの日から2年以上となる特約を除き、買い主(施主)にとって不利な内容に変更する特約は無効となります(宅地建物取引業法第40条)。
また、買主が個人(消費者)の場合、売主の責任を制限し、買主の利益を一方的に害するような特約は無効となります(消費者契約法第8条・第8条の2、第10条)。
さらに、売主(施工業者)が引き渡しの時に不適合を知った、または重大な過失によって知り得なかった場合、期間は無制限です。
不法行為責任の追及方法は、損害賠償請求のみです。
これに対して、契約不適合責任・品確法に基づく瑕疵担保責任については、前述のとおり、以下の4つの責任追及方法が認められています。
契約不適合責任や品確法に基づく瑕疵担保責任に比べると、契約関係にない第三者に対する不法行為責任の追及は、要件が厳しくなかなか認められないのが実情です。
それでも、同じ事案に係る最高裁平成19年7月6日判決・最高裁平成23年7月21日判決の2つの最高裁判例は、建築工事の不備について不法行為が成立する場合があることを明確に判示しています。
本件は、9階建ての新築共同住宅・店舗について、梁(はり)や壁のひび割れ、鉄筋の露出、耐力不足など、多数の施工不備が発見された事案です。
最高裁は平成19年判決において、建物の建築に携わる設計者・施工者・工事監理者は、契約関係にない居住者等に対しても、建物としての基本的な安全性が欠けることのないように配慮すべき注意義務を負う旨を指摘しました。
そのうえで、その義務を怠ったことによって建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それによって居住者等に損害が発生した場合には、特段の事情がない限り、設計者・施工者・工事監理者が居住者等に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うと判示しました。
さらに最高裁は、平成23年判決において、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは何かにつき、以下の点を指摘して具体化しました。
売り主や直接契約関係にある施工業者の資力がないなどの理由で、契約責任を追及することが難しい場合でも、上記の最高裁判例を踏まえて、契約関係にない設計監理会社や施工業者等への不法行為責任を追及する余地は残されています。
漏水に関する損害賠償請求等について、さまざまな可能性を検討するためにも、ぜひ一度弁護士までご相談ください。
新築建物に漏水が発生した場合、契約の相手方である売主(施工業者)の契約不適合責任・品確法に基づく瑕疵担保責任・不法行為責任を追及できる可能性があります。
また、直接の契約関係にない下請施工業者などに対しても、不法行為責任を追及する余地があります。
各法的責任は、主体・成立要件・責任期間・責任追及方法がそれぞれ異なるので、状況に合わせて適切な法律構成を選択することが大切です。
ベリーベスト法律事務所は、建築の施工トラブルに関する法律相談を随時受け付けております。
購入した新築住宅の施工不備につき、損害賠償請求等をご検討中の所有者の方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。