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    2022年12月22日
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    買い主の追完請求権とは? 請求できる範囲とその方法
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    買い主の追完請求権とは? 請求できる範囲とその方法

    新築物件の引き渡しを受けたとき、契約内容と異なる部分が見つかることがあります。そのような場合に、新築物件の買い主としては、売り主に対してどのような責任を追及することができるのでしょうか。

    令和2年4月に施行された改正民法によって、契約不適合責任があった場合の買い主の権利として、新たに追完請求権が定められました。新築物件に契約内容と異なる部分があった場合、買い主は、追完請求権を行使することによって、契約内容どおりの物件とするよう修補等を求めることができる場合があります。

    今回は、買い主の追完請求権とそのほかの責任追及の方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、契約不適合責任と追完請求権

契約不適合責任とはどのような責任なのでしょうか。また、追完請求権とはどのような権利なのでしょうか。以下で詳しく説明します。

  1. (1)契約不適合責任とは

    契約不適合責任とは、売買において引き渡された目的物が契約内容に適合しないものであった場合において、売り主が負う責任のことをいいます。従来は、「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものですが、令和2年4月に施行された改正民法によって「契約不適合責任」という名称に改められることになりました。

    契約不適合といえるかどうかについては、契約書の記載内容だけではなく、契約の目的・性質、契約締結に至る経緯など契約に関する一切の事情を考慮して判断されることになります。たとえば、新築物件の引き渡し時に、以下のようなトラブルがあった場合は、契約不適合といえるでしょう。


    • 新築物件に雨漏りがあった
    • 給排水管が故障していた


    なお、買い主が売り主に対して契約不適合責任を追及する場合には、原則として、不適合を知ったときから1年以内に売り主に対して通知をする必要があります(民法566条本文)。

    ただし、新築住宅については、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって、期間制限に関する特則が定められています。具体的には、「雨水の浸入を防止する部分」および「構造耐力上主要な部分」に、雨水の侵入防止や構造耐力に関わる瑕疵が認められる場合には、引き渡し時から10年間、瑕疵担保責任(契約不適合責任と内容は変わりませんが品確法では瑕疵という表現を用いています)を負うことになっています。ただし、この場合にも、民法566条は瑕疵と読み替えて適用されるので、瑕疵を知ったときから原則として1年以内に通知をしなければなりません。

  2. (2)追完請求権とはどのような権利か

    追完請求権とは、売り主に対して、契約内容に適合するように目的物の修補等を求めることができる権利のことをいいます。追完請求権の具体的な内容としては、以下のものが挙げられます。


    • 目的物の修補請求権
    • 代替物の引き渡し請求権
    • 不足分の引き渡し請求権


    たとえば、引き渡しを受けた新築物件に雨漏りが見つかった場合には、買い主は、売り主に対して、追完請求権を行使して、屋根の修理を求めることができます。

    改正前民法では、目的物に瑕疵があった場合に、買い主に追完請求権を認める明文規定はありませんでしたが、令和2年4月に施行された改正民法によって買い主の追完請求権が明文で規定されるようになりました。

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2、追完の方法と責任範囲

売り主に契約不適合責任が認められる場合に、買い主はどのような方法で売り主に対して追完請求をしていけばよいのでしょうか。

  1. (1)追完請求の方法の選択

    追完請求として、「目的物の修補請求」、「代替物の引き渡し請求」、「不足分の引き渡し請求」のいずれを選択するのかについては、買い主の自由に委ねられています。ただし、買い主の指定する追完請求の方法を常に押し付けられるとすると、売り主としても酷な場合がありますので、買い主に不相当な負担を課すものではない場合には、売り主が選択した方法での追完をすることも認められています。

    たとえば、雨漏りが生じた建物について屋根の修理で対応が可能であるにもかかわらず、買い主が代替物として雨漏りのない建物の引き渡しを求めた場合、売り主に過大な負担をかけることになります。そのため、このような場合には、買い主の選択した追完方法ではなく、売り主による修補対応が認められることになるでしょう。

  2. (2)売り主の責任範囲

    目的物に契約不適合があれば常に買い主による追完請求が認められるというわけではありません。契約不適合が買い主の帰責事由によって生じた場合にまで追完請求を認めるのは、売り主にとって酷であると考えられますので、このような場合には、売り主に対して追完請求をすることはできません。

    また、そもそも追完が不能な場合にも買い主は、追完請求権を行使することができません。
    この場合には、下記の手段を用いて責任を追及することになるでしょう。

3、そのほか、契約不適合責任で買い主が請求できること

売り主に契約不適合責任が認められる場合には、買い主は、追完請求権以外にも以下の権利を行使することができます。

  1. (1)代金減額(催告/無催告)

    売り主に契約不適合責任が認められる場合には、不適合の程度に応じて売買代金の減額を請求することができます。これを「代金減額請求権」といいます。民法改正前の瑕疵担保責任では、代金減額請求権は認められていませんでしたが、改正民法によって新たに認められるようになった権利です。

    代金減額請求をする場合には、まずは、売り主に対して、相当な期間を定めて追完の催告を行います。そして、売り主が期間内に履行の追完をしない場合に、代金減額請求が認められます。ただし、追完の催告をしたとしても追完が得られる見込みがないことが明らかである場合や売り主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した場合は、催告をせずに代金減額請求をすることが可能です

    なお、追完請求権と同様に、買い主に帰責事由がある場合には、代金減額請求をすることはできません。

  2. (2)契約解除

    売り主に対して相当な期間を定めて追完の催告をしたにもかかわらず、その期間内に履行の追完がない場合には、契約を解除することもできます。ただし、売り主の債務不履行の程度が、社会通念に照らして軽微である場合には、解除までは認められません
    また、追完がそもそも不可能である場合や履行を明確に拒絶されているような場合には、催告をすることなく契約を解除することも可能です。

  3. (3)損害賠償請求

    目的物に契約不適合があることについて、買い主が損害を被った場合には、買い主は、施工業者に対して損害賠償請求をすることもできます。
    改正民法では、契約不適合の際の損害賠償請求は、債務不履行責任にもとづくものですので、売り主が契約不適合について無過失であることを立証できたときには損害賠償請求はできません。

4、契約不適合責任について、気をつけるべきこと

売り主の契約不適合責任を追及する場合には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)特約・容認事項について

    目的物に契約不適合の状態がある場合には、買い主は、売り主に対して契約不適合責任を追及することができます。しかし、契約不適合責任は、当事者間の特約により免除することも可能であるとされています。

    不動産売買契約書に契約不適合責任を免責または制限する内容の特約や容認事項がある場合には、売り主に対して契約不適合責任を追及することができない可能性もありますので注意が必要です。

    ただし、契約不適合責任を免責、または制限する内容の特約や容認事項があったとしても、消費者契約法や宅地建物取引業法などによって、特約の全部または一部が無効になる可能性があります。また、契約不適合があることを知りながら、売り主が買い主にそのことを伝えていなかったような場合には、特約があったとしても売り主の責任が免責されることはありません。

    このように契約不適合責任を追及する場合には、まずは契約書をみて特約の有無を確認することが重要となります。そして、特約があった場合でも、当該事案に適用されない場合もありますので、建築関係のトラブルに詳しい弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。

  2. (2)損害賠償請求について、個人で対応するのは難しい

    契約不適合責任を追及する場合には、目的物に契約に適合しない状態があることが必要となります。

    契約不適合の有無は、契約に関する一切の事情を考慮したうえで判断していくことになります。とりわけ、新築建物の売買となると、適法・適切な建築がなされているかというのは大きな問題になってきますので、法律の知識や経験のない方では正確に判断することが難しいといえます。また、契約不適合責任は、不適合を知ったときから1年以内の通知という短い期間制限が設けられていますので、目的物の不具合に気付いた場合には速やかに対応する必要があります。

    このような対応を迅速かつ適切に行うためには専門家である弁護士のサポートが不可欠となるでしょう。弁護士に依頼をすることによって、売り主との対応もすべて任せることができますので、追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償といった契約不適合責任に関する交渉の負担から解放されるといえるでしょう。

    個人での対応が難しいと感じた場合には、お早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

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5、まとめ

新築物件に不具合があった場合には、売り主に対して追完請求権を行使することによって、不具合の修理などを求めていくことができます。もっとも追完請求権を行使するためには、当該不具合が契約不適合に該当するということを明らかにしていく必要がありますが、それには建築分野などに関する専門的知識が不可欠となります。

ベリーベスト法律事務所では、建築トラブルについて知見を有する弁護士が在籍する建築訴訟専門チームがありますので、専門的知識を要する建築分野のトラブルについても適切に対応することが可能です。建築トラブルでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
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