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    公開日:2026年07月15日
    更新日:2026年07月15日
    マンション老朽化で立ち退きは可能? 正当事由と立退料の相場を解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    マンション老朽化で立ち退きは可能? 正当事由と立退料の相場を解説

    賃貸マンションの老朽化が進み、建て替えや大規模修繕を検討する際、避けて通れないのが入居者への立ち退きのお願いです。オーナーさまとしては「建物の安全性が心配だから、早く対応したい」と切実に感じていらっしゃることでしょう。

    しかし、日本の借地借家法では、単に「建物が古いため安全性が心配」という主観的な理由だけでは、立ち退きを求めるための「正当事由」として認められにくいという厳しい側面があります。

    円満かつスムーズに解決するためには、居住者との感情的な対立を避けるために、主観的な理由だけでなく、耐震診断などの客観的なデータに基づき丁寧に説明していくことが重要です。

    本記事では、賃貸マンションの老朽化を理由とする立ち退きについて、オーナーさまが注意すべきポイントや立退料の考え方、具体的な立ち退き交渉の進め方をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、老朽化によりマンションからの立ち退きを求めるには「正当事由」が必要

マンションの老朽化が進行すると、建物の安全性や資産活用の観点から、建て替えや大規模修繕が必要になる場合があります。建て替えを行う場合には、入居者の退去が前提となります。

しかし、借地借家法により、オーナーさま(賃貸人)側の都合で賃貸借契約を終了させるには「正当事由」が必要とされています。

  1. (1)借地借家法における「正当事由」とは

    借地借家法における「正当事由」とは、土地や建物の賃貸人が、賃借人との契約を終了させるために必要とされている事由です。賃借人の居住や事業などを安定させる目的で、賃貸人による一方的な契約終了を制限するために設けられています。

    マンションを含む建物の賃貸人は、正当事由が認められる場合でなければ、賃貸借契約の期間満了時において更新を拒絶し、または賃貸借契約の解約を申し入れることができません(借地借家法第28条)
    老朽化を理由とする建て替えや大規模修繕のために、賃借人に対して立ち退きを求める際にも正当事由が必要です。

  2. (2)正当事由の有無を判断する際の考慮要素

    裁判所が「立ち退きを求めることに正当な理由があるか」を判断する際は、単に築年数を見るだけでなく、借地借家法第28条に基づき、主に以下の要素を総合的に考慮します。

    ① オーナーさまが建物の使用を必要とする事情(賃貸人側の事情)
    「老朽化による建て替えの必要性」がここに含まれます。単に新しいビルを建てたいという収益目的だけでなく、耐震不足など「安全上の理由」でその土地・建物を利用せざるを得ない事情の有無が問われます。
    単なる収益改善や資産価値向上のみを理由とする場合には、正当事由としては弱いと評価される可能性があります。

    ② 入居者が建物の使用継続を必要とする事情(賃借人側の事情)
    入居者が使用する建物がその場所でなければならない理由(高齢で転居が困難、その場所で長年商売をしていて顧客がついているなど)がどれほど強いかが考慮されます。

    ③ これまでの契約の経緯(建物の賃貸借に関する従前の経過)
    これまでの賃料支払いの状況や、契約時の約束事、過去の更新の回数などが考慮されます。

    ④ 建物の利用状況
    現在、建物がどのように使われているかを確認します。賃貸借関係の実態、管理状態は適切かといった点も判断の材料となります。

    ⑤ 建物の現況(物理的な寿命)
    修繕では安全性の確保が困難なため立て替えが必要であることが客観的に示されている場合には、正当事由の判断において重要な要素となります。

    ⑥ 立退料の申出
    上記の事情だけでは立ち退きの理由が不十分な場合に、それを補う(補完する)ものとして立退料の提示内容が考慮されます。
  3. (3)マンションの老朽化を理由に立ち退きを求めることができるケース

    オーナーさまが「老朽化が進んで危険だ」と感じていても、法的には築年数だけでは正当事由として認められにくいのが実情です。
    そのため、入居者の方々にも「安全性の確保のために立ち退きが必要である」と納得してもらうためには、以下のような「客観的な数値やデータ」に基づく丁寧な説明が欠かせません。

    • 耐震診断の結果、Is値(構造耐震判定指標)が基準を下回っている
    • コンクリートの中性化や鉄筋の腐食など、構造上の深刻な劣化が確認できる
    • 設備の老朽化が著しく、部分的な修繕では安全な居住環境を維持できない
    など


    このように、専門家による建物診断の結果を「法的な根拠」として整理することが、双方にとって納得できる解決への第一歩となります。

2、マンションの老朽化に関する立退料

立退料は、住み慣れた場所を離れる入居者の不利益を補完するための大切な要素です。

  1. (1)立退料と正当事由の相関関係

    立退料の額は、法律上の「正当事由」をどれだけ補完する必要があるかによって変動します。
    例えば、建築診断などによって「建物の老朽化による危険性」が客観的に示されている場合、それは立ち退きの必要性を高める要素となり、「正当事由」は認められやすくなるため、立退料は低くなる傾向になります
    なお、「お金さえ払えば解決できる」というわけではありません。
    判例では、正当事由が全くない状態で、立ち退き料の提供のみをもって立ち退きを強制することはできないとされています。

  2. (2)マンションの立退料の相場はある? 適正な算出のために

    住居の場合、立退料の相場は、家賃の1~2年分程度が目安とされることもありますが、実際には明確な相場はなく、事案ごとに大きく異なります。
    裁判例では、移転費用・差額賃料・営業損失などを個別に積み上げて算定される傾向にあります。

    オーナーさまとしては、単に相場の金額を提案するのではなく、「なぜその金額が適正なのか」という根拠を明確にすることが、入居者との信頼関係を維持し、スムーズな合意を得るポイントとなります。

  3. (3)立退料の算定に当たって考慮される主な要素

    訴訟においては、正当事由の判断に影響するその他の考慮要素を踏まえて立退料が定められる傾向にあります。

    老朽化を理由とする立ち退きの場合は、次のような事情が考慮されます。

    • 老朽化の進行状況、建て替えや大規模修繕の必要性
    • 賃借人の居住年数(長いほど高額になりやすい)
    • 代替物件を確保する難易度(難しいほど高額になりやすい)
    • 入居者の属性(高齢者や子育て世帯の場合は高額になりやすい)
    など


    交渉段階においても、訴訟になった場合の見通しを踏まえて立退料を算定すべきなので、上記のような事情が立退料の金額に影響します。

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3、【オーナーさま向け】老朽化したマンションの立ち退き交渉の進め方

マンションの老朽化による建て替えや大規模修繕のために、入居者の立ち退きを進める際には、計画的な準備と対応が必要になります。弁護士のサポートを受けながら、次の流れで対応を進めましょう。

  1. (1)建築調査・建て替え計画の策定

    まずは、マンションの現況を正しく把握するための「建築調査(耐震診断や劣化調査)」を実施します。「なぜ今、建て替えが必要なのか」という理由を、主観ではなく数値や写真などの客観的なデータで示すことが、入居者への説得力、そして法的な正当事由を支える、重要な根拠の一つとなります。

    そのうえで、建て替えや大規模修繕の計画を策定します。
    立ち退き交渉にかかる期間を考慮したスケジュール・工事の内容・工期・資金計画などを具体的に検討して、計画に落とし込みましょう。

  2. (2)費用シミュレーション・立ち退き交渉の条件設定

    工事スケジュールと並行して、立ち退き費用の総額をシミュレーションします。
    立退料は交渉によって決まるため、個々の賃借人との間での金額は流動的です。

    弁護士のアドバイスのもと、法的な相場と建物の安全性を照らし合わせ、適正な条件をあらかじめ検討しておくことで、各入居者に対して根拠のある、公平な条件提示が可能になります。

  3. (3)入居者向けの説明会・個別交渉

    建て替えや大規模修繕に関する計画が固まった段階で、入居者(賃借人)へ向けた説明会を開催します。建物の老朽化が進行しているため、立ち退いてもらう必要があることを丁寧に説明しましょう。

    その後、入居者と個別に交渉して立ち退きの条件を詰めていきます。スムーズに交渉をまとめるには、入居者の主張や要求にも耳を傾け、立退料の増額にも柔軟に応じることも検討しましょう。
    誠実な対話を通じて、「安全のために協力はやむを得ない」という共通認識を持ってもらえるよう努めることが、早期合意への近道です。

  4. (4)立ち退きに関する合意書の締結・立退料の支払い

    入居者との交渉がまとまった場合には、立ち退きに関する合意書を締結します。後々のトラブルを未然に防ぐため、合意書には次の事項を明記しましょう。

    • 退去日
    • 立退料の金額、支払時期、支払方法
    • 立ち退き時の原状回復の免除範囲
    • 残置物の処分方法、処分費用の負担割合
    • 敷金の返還・精算方法
    • 清算条項(立退料の追加請求等の将来の請求を防止するため)
    など


    合意書の締結後、入居者に対して立退料を支払います。支払いの時期は、入居者の立ち退きを確認した後としておくのが安心です。

  5. (5)合意に至らない場合の法的手続き

    誠意を持って交渉しても合意が得られない場合は、民事調停や訴訟などの法的手続きを検討します。

    特に訴訟では、正当事由の有無が厳格に審査されます。賃貸人としては、(1)で準備した、老朽化の状況に関する客観的なデータなど、建て替えや大規模修繕の必要性を裏付ける資料を提出することが大切です。

    訴訟においては、法律上の要件を踏まえた主張・立証が必要になります。良い条件での立ち退きが認められる可能性を高めるため、弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。

    訴訟において立ち退きが認められた場合は、裁判所に強制執行を申し立てることができます。強制執行では、裁判所の執行官立ち会いのもと、一定の手続きを経て室内の動産を搬出し、明け渡しが実施されます。
    弁護士は、強制執行の申し立てについてもサポートを行っています。訴訟から引き続き、弁護士と協力して対応を進めてください。

4、マンション老朽化による立ち退きを弁護士に相談するメリット

マンションの老朽化に伴う立ち退きは、法律の知識だけでなく「建物に関する専門的知識」も求められる、専門性の高い分野です。建築訴訟の知見を持つ弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。

  1. (1)建物調査の結果を「法的な正当事由」として構成できる

    単に建物が古いという報告書があるだけでは、法的な正当事由として不十分な場合があります。弁護士は、診断結果(耐震性能や劣化度)を「なぜ今、立ち退きが必要なのか」という法的根拠に組み換え、説得力のある主張を組み立てます。

  2. (2)適正な立退料の見極めにより、円満な合意を目指せる

    建物の危険性による立ち退きの必要性等と、居住者の居住年数や代替物件確保の難易度等を照らし合わせ、根拠のある適正な立退料を算出します。
    過大な要求を避け、客観的な基準に基づいた条件を提示することで、入居者にも納得感を持っていただきやすくなります。

  3. (3)直接交渉の負担を軽減し、感情的な対立を防げる

    オーナーさま自身が交渉に立つと、長年の関係性から感情的な議論になりがちです。
    弁護士が代理人として間に入ることで、冷静かつ論理的な対話が可能になり、関係性を損なうことなく早期解決を目指せます

  4. (4)交渉から訴訟、強制執行まで一貫して任せられる

    万が一、交渉がまとまらない場合でも、スムーズに訴訟等の法的手続きへ移行できます。
    建築的知見を生かした訴訟活動から、最終的な明け渡しの断行まで、全プロセスを任せられる安心感があります。

    弁護士のサポートを受けながら、建築的知見と不動産法務の両面から適切に対応を進めることが、早期に立ち退きを完了するためのポイントです。ベリーベスト法律事務所には、建築訴訟に詳しい弁護士が多数在籍しておりますので、ぜひご相談ください。

5、まとめ

マンションの老朽化に伴う立ち退きは、オーナーさまと入居者の方々、双方の「安全」と「生活」が関わる繊細な問題です。だからこそ、主観的な判断ではなく、建築調査に基づいた客観的なデータを用いて、誠実に協議を進めることが求められます。
立ち退きが認められるかどうかは個別事情によって大きく異なるため、まずは専門家に相談し、見通しを確認することが重要です。

ベリーベスト法律事務所は、建築的知見と豊富な不動産法務の経験を生かし、皆さまが安心して次の一歩を踏み出せるよう、法的な裏付けに基づいたサポートを提供いたします。老朽化によるマンションの建て替えや大規模修繕を検討しているオーナーの方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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