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    2025年10月22日
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    区分所有法などが改正! マンション管理の法律、最新事情を解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    区分所有法などが改正! マンション管理の法律、最新事情を解説

    令和7年の国会において、区分所有法などの改正法が可決・成立しました。

    今回の区分所有法等改正では、老朽化していくマンションを適切に管理・再生する仕組みが整備されています。改正法は一部を除き、令和8年4月から施行される予定です。

    本記事では、令和8年4月施行・区分所有法等改正による変更のポイントを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、マンション管理に関する主な法律と、改正の背景

今回の区分所有法等改正では、マンションなどの区分所有建物の管理に関する法律が改正の対象となっています。改正された主な法律と、改正が行われた背景について解説します。

  1. (1)マンション管理に関する主な法律|区分所有法等

    今回改正されたのは、主に以下のマンション管理に関する3つの法律です。

    ① 区分所有法
    ※正式名称:建物の区分所有等に関する法律
    マンションなどの1棟の建物を、複数の区分に分けて所有する場合のルールを定めています。

    ② マンション建替え円滑化法
    ※正式名称:マンションの建替え等の円滑化に関する法律
    老朽化したマンションの建て替えなどについて、区分所有者間での意思決定方法や必要な手続きなどを定めています。

    ③ マンション管理適正化法
    ※正式名称:マンションの管理の適正化の推進に関する法律
    マンションの管理に関する行政の基本方針や監督、マンション管理士制度やマンション管理業者の登録制度などを定めています。
  2. (2)【令和8年4月施行】区分所有法等改正の背景

    区分所有法などのマンション管理に関する法律が改正されたのは、マンションの老朽化によって外壁が剥がれ落ちる危険が生じていることや、区分所有者の高齢化によって集会決議が難しくなり、円滑な管理ができなくなってきていることなどの問題が現れてきているためです。

    今回の区分所有法等改正では、以下の3つの変更点が掲げられています。

    ① マンション「管理」の円滑化
    マンションは経年劣化するため、計画的に管理や修繕を行う必要があります。今回の改正では、管理計画や管理組合集会における意思決定などの観点から、適切に管理や修繕が行われるような仕組みが整備されました

    ② マンション「再生」の円滑化
    マンションが建築されてから長期間が経過すると、危険防止や価値向上のため、建て替えなどを検討する必要性が生じます。今回の改正では、建て替えその他の方法によってマンションの再生に取り組む際、区分所有者間の意思決定を円滑化するための仕組みが整備されました

    ③ 地方公共団体の取組の充実
    区分所有者だけではマンションを適切に管理・再生できない場合は、地方公共団体や民間団体の支援が必要になります。今回の改正では、地方公共団体の監督権限や、民間団体との連携の強化を図る変更が行われました

    次の項目から、各変更点の内容を解説します。

2、改正ポイント①|マンション「管理」を円滑に

区分所有法等改正による変更点の一つ目は、マンション「管理」の円滑化です。経年劣化するマンションの計画的な管理や修繕を促すため、以下の変更が行われました。

  1. (1)管理・修繕計画の引き継ぎ|分譲事業者から管理組合へ

    マンションの経年劣化に備えるためには、新築時から適切に管理や修繕を行うことが望ましいです。今回の改正では、分譲事業者が管理計画を作り、管理組合に渡す仕組みが導入されました。

    管理組合が管理を行う予定の分譲マンションについては、分譲事業者が管理計画を作成したうえで、都道府県知事等の認定を申請することができます(改正マンション管理適正化法第5条の13第1項)。

    都道府県知事等の認定を受けるためには、管理計画が以下の基準に適合すると認められる必要があります。(同法第5条の14)

    • マンションの修繕その他の管理の方法が国土交通省令で定める基準に適合するものであること
    • 資金計画がマンションの修繕その他の管理を確実に遂行するため適切なものであること
    • 管理組合の運営の状況が国土交通省令で定める基準に適合するものであること
    • その他マンション管理適正化指針及び都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
  2. (2)自己取引等がある場合は事前説明が義務化された

    マンション管理業者が、管理組合の管理者(代表者)として、自社との間で工事等の受注・発注に関する契約を結ぶ場合があります。しかしそれは、マンション管理業者と区分所有者が一体となってしまい、マンション管理業者の利益が高くなる契約を結ぶなど所有者の利益に反する状態を引き起こす可能性があり、健全でない契約になる可能性があります。これをいわゆる「利益相反」といいます。

    上記のような事態をできる限り防ぐため、マンション管理業者が自己取引を行う際には、区分所有者への事前説明を義務として負うことになりました(改正マンション管理適正化法第77条の2)

  3. (3)管理組合集会で決議要件の緩和がなされた

    マンションの管理や修繕をきちんと行うためには、管理組合の集会で迅速に意思決定をする必要があります。
    しかし従来の区分所有法では、管理や修繕に関する集会決議の要件が厳しく、迅速な意思決定が妨げられている側面がありました。

    上記の問題意識を踏まえて、管理組合の集会決議について主に以下の変更が行われました。決議要件の緩和により、管理組合の迅速な意思決定を促す効果が期待されます。

    • 区分所有権に関係のない事項(修繕など)の決議は、従来は全区分所有者の多数決によるとされていましたが、集会出席者の多数決によるものとなりました(改正区分所有法第17条第3項)。
    • 裁判所が認定した所在不明者を、すべての決議の母数から除く制度が創設されました(同法第38条の2)。
  4. (4)マンション等に特化した財産管理制度がスタート

    住民の死亡や退去などによって空き家となっているマンションについては、老朽化で外壁が崩れるといった恐れがあり、周囲に危害が及ぶおそれが懸念されます。

    その問題に対応するため、今回の改正では、マンション等に特化した以下の財産管理制度が新設されました。

    ① 所有者不明専有部分管理命令
    区分所有者が誰であるか分からない、または区分所有者の所在が分からないマンション等の専有部分について、裁判所が管理人を選任して管理させることができるようになります(改正区分所有法第46条の2~第46条の7)。

    ② 管理不全専有部分管理命令・管理不全共用部分管理命令
    専有部分または共用部分の管理が不適当であることにより、他人の権利が侵害される場合などにおいて、裁判所が管理人を選任して、その専有部分または共用部分を管理させることができるようになります(同法第46条の8~第46条の14)。

3、改正ポイント②|マンション「再生」の円滑に

区分所有法等改正による変更点の二つ目は、マンション「再生」の円滑化です。老朽化したマンションについて、建て替えその他の方法による再生を促すため、以下の変更が行われました。

  1. (1)建て替え以外の新たな再生手法ができた

    従来の区分所有法やマンション建替え円滑化法では、マンションの建て替えに関する手続きなどは整備されていましたが、その他の方法による再生の手続きについては未整備でした。

    今回の改正では、マンションの再生について、以下の方法で行えることが明記されました。また、これらの再生方法を取ることについて、集会の多数決決議によって行うことができるようになりました(改正区分所有法第64条の5~第64条の8)。また、決めた再生方法を実現するための手続き(例:組合を作る)も整備されました。

    • 建物の更新
    • 建物と敷地の一括売却
    • 一棟リノベーション
    • 建物の取り壊し
    など
  2. (2)いろいろなニーズに応じた建て替え等ができるように

    マンションの建て替え等を行う際には、その選択肢が幅広い方が、区分所有者にとって決断のハードルが下がり、迅速な意思決定ができる可能性が高まります。

    今回の改正では、マンションの建て替え等に関する、いろいろなニーズに対応するため、主に以下の変更が行われました。

    • 隣の土地や借地権が設定されている土地の所有権等について、建て替え等の後のマンションの区分所有権と入れ替えることができるようになりました(改正マンション建替え円滑化法第55条第1項)。
    • 建て替えの理由が耐震性不足等であった場合、容積率のほか、行政の許可による高さ制限の特例を受けられるようになりました(同法第163条の59)。

4、改正ポイント③|地方公共団体の取り組みを強化

区分所有法等改正による変更点の三つ目は、地方公共団体の取り組みを強化したことです。適切に管理されずに放置されているマンションの管理状況を改善するために、以下の変更が行われました。

  1. (1)危険なマンションへの勧告ができるように

    老朽化したマンションについては、外壁が剥がれ落ちることなどによって周囲に危険を及ぼすリスクが懸念されます。

    このような危険な状態にあるマンションについては、もともと定められていた報告の徴収に加えて、地方公共団体やその長に以下の監督権限が与えられました(改正マンション管理適正化法第5条の2)。

    • 助言、指導
    • 勧告
    • あっせん
    など
  2. (2)民間団体との連携を強化

    できる限り幅広いマンションについて管理の適正化を促すためには、行政が自ら対応するだけでなく、行政と民間団体が連携して対応することも重要です。

    今回の改正では、区分所有者がどういう考えを持っているか確認し、区分所有者同士が合意できるようサポートなどを行う民間団体(=マンション管理適正化支援法人)の登録制度が創設されました(改正マンション管理適正化法第5条の3以下)

5、マンション管理のトラブルについて、弁護士ができること

以上、令和8年に行われるマンションの再生や管理の法律の改正ポイントをお伝えしてきました。
弁護士であれば、こうした法律改正を確認し、マンション管理を法的にスムーズに行えるようサポート可能です。

また、マンションの管理については、管理費の滞納や使い込み、規約の適用や変更に関するもめ事など、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。

こうしたトラブルへ適切に対応するためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。弁護士は、相手方との協議から訴訟などの裁判手続きに至るまで、トラブル解決に必要な手続きを全面的に代行いたします。

弁護士と顧問契約を締結すれば、マンション管理に関する心配事をいつでも相談できるようになります。管理組合の総会や理事会に弁護士が出席したうえで、臨機応変にアドバイスすることも可能です。

マンション管理に関するトラブルの予防・対応については、早い段階でベリーベスト法律事務所にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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