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    2024年08月15日
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    2024年08月15日
    契約書なしの工事代金未払いも回収できる│方法の手順や時効を解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    契約書なしの工事代金未払いも回収できる│方法の手順や時効を解説

    建設工事を請け負ったものの、建設会社から工事代金が支払われず、お困りの施工業者の方もいると思います。きちんとした契約書がないため、工事代金の支払いを諦めているかもしれませんが、契約書なしでも工事代金の請求は可能です。

    工事代金が未払いのまま放置していると他の業者への支払いにも影響が生じ、経営状態の悪化にもつながりますので早めに対応することが大切です。

    今回は、契約書なしの未払い工事代金を回収する方法や手順について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、「契約書がない……」未払いの工事代金を回収できる?

契約書なしでも未払い工事代金を回収することができます。以下では、契約書なしでも未払い工事代金を回収できる理由を説明します。

  1. (1)そもそも契約書なしは建設業法違反

    建設業19条では、建設工事に携わる事業者に対して、建設工事請負契約書の作成を義務付けています。そのため、契約書なしで建設工事を行うことは建設業法違反となります。

    契約書の作成義務を怠ったとしても罰則が適用されることはなく、請負契約自体が無効になることもありませんが、契約内容を立証するための重要な証拠になりますので、必ず作成するようにしましょう。

  2. (2)メールや口頭、LINEでのやり取りでも契約は成立する

    建設会社からの発注を受けて施工業者が行う建設工事は、民法上の請負契約に該当します。

    請負契約は、
    ・当事者の一方がある仕事を完成することを約すること
    ・相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約すること
    という2つの要件のみで成立します。すなわち、当事者の合意だけで成立するのです。契約の成立に、契約書の作成は不可欠な要素ではありません。

    そのため、メール、口頭、LINEのやり取りで工事の発注・受注が行われていれば、建設工事請負契約が成立します

  3. (3)発注側には支払い義務がある(民法632条)

    請負契約が成立すれば、発注者側には工事代金の支払い義務が発生します。

    工事代金は、特約がなければ工事の完成または目的物の引き渡し後に請求することができます。
    ただし、工事請負代金請求権の立証責任は、工事の受注者側にあります。受注者が証拠を集めて、請負契約の存在およびその内容を立証していかなければなりません

    契約書がない場合には、以下のような証拠によって、請負契約を立証していくことになります。

    • 建設会社(発注者)に提示した工事代金の見積書
    • 建設会社(発注者)から送付された工事の発注書
    • 施工業者(受注者)から送付した工事の請書
    • 建設会社(発注者)と施工業者(受注者)で行われた打ち合わせ記録
    • 工事内容に関するメールやLINE
  4. (4)商法512条に基づく報酬請求も可能

    商法512条に基づく報酬請求とは、商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときに相当な報酬を請求することをいいます。施工業者が無償で建設工事を行うことはありませんので、契約書がなく請負契約が立証できなくても、商法512条に基づいて報酬請求を行うことが可能です。

2、未払いの工事代金を回収するなら弁護士へ相談を!

未払いの工事代金を回収するなら、弁護士に相談することをおすすめします。以下では、弁護士に相談する流れを説明します。

  1. (1)まずは状況を整理し証拠収集

    弁護士に相談する前提として、工事代金が未払いになっている状況を整理し、これまでの経緯をメモなどにまとめておきましょう。弁護士への相談には相談費用がかかることもありますが、相談する際に、経緯をまとめたメモなどがあれば、スムーズに相談を行うことができ、相談時間を有効に活用できます。

    また、契約書がなかったとしても建設工事に関する資料やメール・LINEなどが残っていると思いますので、データなどが失われないよう、しっかりと保全しておきましょう

  2. (2)法律事務所に連絡をして相談の予約をする

    弁護士への法律相談は、基本的には予約制となっていますので、事前に法律事務所に連絡をして相談の予約を入れます。その際に、相談にあたって必要な持ち物などを確認しておきましょう。

  3. (3)弁護士へ相談する

    経緯をまとめたメモや証拠などを持参して、弁護士に工事代金の未払いに関する問題を相談します。法律相談の時間は限られていますので、経緯をまとめたメモを渡して、要点をかいつまんではなすようにしましょう。また、トラブルに関係する資料については、自己判断で取捨選択するのではなく、すべて持参するのがよいでしょう。

    なお、未払い工事代金の請求権には、時効がありますので、できる限り早めに弁護士に相談しましょう。工事代金が未払いになったまま時間がたってしまうと、債権回収が困難になることもありますので、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

3、工事代金の支払いを拒否された際の対策

建設会社から工事代金の支払いを拒否されてしまったときは、以下のような対策が考えられます。弁護士であれば、以下の対策から最適な対策を組み合わせ、解決に導くことが可能です。

  1. (1)建物の引き渡しを拒否する

    建設工事により完成した建物の引き渡しがまだであれば、施工業者は、同時履行の抗弁権(相手から支払いがあるまで、建物の引き渡しを拒否できる権利。逆もありうる。)、または発注者が業者であれば商事留置権(ビジネス上の取引で、品物の引き渡し時期と支払い時期、どちらも来ている場合に、支払いがなければ商品の引き渡しを拒否できる権利。逆もありうる。)を行使して、建物の引き渡しを拒むことができます。

    建物の引き渡しが受けられなければ建設会社は、契約の目的を達成することができません。そのため、間接的に工事代金の支払いを強制する効果が期待できます。

  2. (2)工事請負契約を解除する

    工事代金を前払いとする特約があったにもかかわらず、工事代金が支払われない場合には、建設会社の債務不履行を理由として、工事請負契約を解除することができます

    これにより施工業者は、建設工事を継続する義務がなくなりますので、工事代金不払いによる被害の拡大を防ぐことができます。また、工事が完成していなかったとしても、請負契約が解除されたところまで工事が進んでおり、それによって建設会社が利益を受ける場合には、それに応じた報酬を請求することが可能です。

  3. (3)立替払い制度を検討する

    元請け事業者が特定建設業者に該当する場合、建設業法41条に基づく立替払い制度の利用も検討してみるとよいでしょう。

    立替払い制度とは、国土交通大臣または都道府県知事が元請け事業者に対して、適正と認められる金額の立替払いをするよう、勧告を行ってくれる制度です。行政からの勧告があれば、支払いを拒否する建設業者も、支払いに応じてくれることが期待できます。

    なお、特定建設業とは、1件の建設工事について、4500万円(建築一式工事は7000万円)以上の工事を下請け業者に発注する際に、元請け事業者に取得が義務付けられている許可のことです。

  4. (4)支払い請求をする(書面・電話・訪問)

    建設会社から支払いを拒否されたときは、まずは電話により支払いの催促を行うことが多いでしょう。電話であれば手間や費用がかかりませんので気軽に行うことができますが、支払う意思のない相手に対してあまり効果的とはいえません。

    電話による支払いに応じてくれないときは、建設会社に直接訪問して支払いを求める場合もあります。しかし、タイミングによっては経営者や担当者に会えず、空振りに終わることもあります。

    電話や訪問でも工事代金の支払いに応じてくれないときは、内容証明郵便を利用して、未払い工事代金の支払いを求める書面を送付します。内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を送付したかを証明できる郵便です。内容証明郵便には、支払いを強制する効力はありませんが、特別な形式の郵便が届いたことで、相手方に対して心理的な圧力を与えることができます。

    また、工事代金の請求をすることは、法律上の「催告」に該当し、時効の完成を6か月間猶予することができます。内容証明郵便を利用すれば「催告をした」という証拠を残すことが可能です。時効が迫っている場合には、すぐに内容証明郵便で請求することが重要です。

  5. (5)支払督促、ADR、調停、少額訴訟、訴訟など法的手続きを利用する

    支払いを請求しても相手にされない場合には、法的手続きを利用します。法的手続きには裁判所での手続きと裁判所が関わらない手続きがあります。

    裁判所が関わらない手続きとしては、裁判外の交渉や、ADRがありますが、それでも建設会社から未払い工事代金の支払いを受けられないときは、以下のような裁判所での手続きの利用を検討します。

    • 民事調停
    • 支払督促
    • 少額訴訟
    • 通常訴訟

    このうち、民事調停は、当事者同士の話し合いによる紛争解決手段で、最終的に裁判所が判断をすることはありませんので、手続きを通じて当事者間で合意ができなければ、不成立で終了します。
    裁判所からの判断を得るには、支払督促、少額訴訟、通常訴訟を行う必要がありますが、これらの手続きにより債務名義(強制執行の根拠となる公的な書類)を取得すると、強制執行の申立てを行うことができます。

    強制執行をすれば、建設会社の財産(預貯金、売掛金、不動産など)を差し押さえて、そこから強制的に未払い工事代金を回収することができます。

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4、未払い回収には時効がある! 早めに弁護士に相談を

未払い工事代金には時効がありますので、早めに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)未払い回収の時効は5年

    工事代金を請求する権利には消滅時効がありますので、権利行使をすることなく一定期間が経過してしまうと、時効により権利が消滅してしまいます。

    時効により権利が消滅してしまうと、工事代金を請求することができなくなりますので、早めに行動することが重要です。
    工事代金の消滅時効期間は、請負契約の成立日に応じて以下のように定められています。

    • 請負契約が令和2年4月1日以降に成立……工事代金を請求できるときから5年
    • 請負契約が令和2年3月31日以前に成立……工事代金を請求できるときから3年
  2. (2)未払い回収を弁護士に相談するメリット

    建設会社から工事代金が未払いとなりお困りの施工業者の方は、ぜひ弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば、以下のようなメリットがあります。

    ① 適切な未払い工事代金の回収方法をアドバイスしてもらえる
    未払い工事代金を回収する方法には、さまざまな方法がありますので、状況に応じて適切な回収方法を選択することが重要です。

    弁護士であれば債権回収の方法を熟知していますので、建設会社の態度や工事代金が未払いになった経緯、建設会社の財産状況などを踏まえて最適な回収方法をアドバイスすることができます。

    ② 代理人として交渉や法的手続きを行ってもらえる
    施工業者が、実際に未払い工事代金の回収手続きを行うのは大きな負担になるでしょう。

    この点、弁護士であれば、施工業者に代わって債権回収業務を行うことができます。債権回収に手間取っていると、債務者の財産状況の悪化や時効により債権回収が難しくなることもありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

    ③ 財産調査により相手の財産を明らかにできる
    建設会社が任意に未払い工事代金の支払いに応じてくれないときは、最終的に強制執行の申立てを行い、工事代金を回収することになります。その際には、債権者側が、債務者の財産がどこにあるか特定して申立てをしなければなりませんので、財産を把握していなければ債権回収は手間がかかります。

    弁護士であれば、弁護士会照会、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きなどにより、相手の財産を特定するお手伝いをすることができますので、相手の財産がわからないという場合には弁護士にお任せください。

5、まとめ

建設工事の請負契約は、口頭の合意のみで成立しますので、契約書なしでも工事代金を請求することができます。

しかし、工事代金を請求するためには、施工業者の側で請負契約の成立を立証しなければなりませんので、証拠が重要です。また、未払い工事代金の回収にあたっては、スピードが大切ですので、工事代金の未払いが生じたらすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

ベリーベスト法律事務所では、初回相談60分無料(ただし現地調査などは別途費用)、一級建築士との連携も可能ですので、工事代金の未払いでお困りの施工業者の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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