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    2023年05月08日
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    2023年05月08日
    請負代金の請求に時効はある? 代金を回収するための方法は?
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    請負代金の請求に時効はある? 代金を回収するための方法は?

    工事を請け負ったにもかかわらず、請負代金が支払われない、一部しか支払ってもらえない、支払いが遅れているといった経験がある施工業者の方も少なくないのではないでしょうか。

    元請け業者との関係性から、支払いを強く求められないという事情があるかもしれませんが、請負代金の支払いがされないまま放置していると、時効によって請負代金の回収ができなくなってしまうおそれもあります。

    そのため、請負代金の未払いが生じた場合には、早期に適切な対応をとることが必要です。今回は、請負代金の時効と未払いの請負代金を回収する方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、請負代金の消滅時効は5年

請負代金の消滅時効期間は、「権利を行使することができることを知ったときから5年(主観的起算点)」または「権利を行使することができるときから10年(客観的起算点)」です(民法166条)。
工事を請け負った施工業者としては、契約上請負代金を請求できる時期が明確になっていますので、通常は5年の消滅時効期間が適用されることになります

上記の消滅時効期間は、令和2年4月の民法改正によって変更された時効期間のため、改正する前に発生した工事の設計、施工、又は監理を業とする者の工事に関する債権については、改正前の消滅時効期間である3年が適用されます(改正前民法170条)。

消滅時効期間が経過した後は、未払いの請負代金があったとしても、支払ってもらえない可能性があります。長期間支払いがないという場合には、時効が完成してしまうおそれがありますので、後述する「時効の完成猶予」により時効の完成を先延ばしにするか、「時効の更新」をすることにより、時効の進行をリセットする必要があります

2、請負代金が支払われない理由を確認する

元請け業者から請負代金が支払われない、または支払いが遅れる理由としては、以下のような状況が考えられます。

  • 施主と元請け業者が揉めている
  • 元請け業者の資金繰りがうまくいっていない
  • 工事に瑕疵(かし)があって施主から代金が支払われていない


このように請負代金が支払われない理由には、さまざまな理由が考えられます。
請負代金が支払われない状況によって請負代金の回収の方針が変わってきますので、適切な方針を立てるためにも請負代金が支払われない理由を把握することが重要です。

施主と元請け業者がトラブルになっているという場合には、トラブルが解決すれば支払われる可能性もありますが、資金繰りがうまくいっていない場合、そのまま放置していると将来回収が困難になるおそれがあります。そのため、すぐに請負代金の回収に着手しましょう。

3、未払いの請負代金を回収する方法

未払いの請負代金がある場合には、以下の方法によって回収を目指します。

  1. (1)当事者同士で話し合い

    請負代金の未払いが発生した場合には、まずは当事者で話し合いを行います。その際には、請負代金を支払ってもらえない理由をきちんと確認することが大切です。
    相手が話し合いに応じるようであれば、具体的な支払いのスケジュールを立てて、その内容を書面に残しておくようにします。

  2. (2)内容証明郵便の送付

    相手が話し合いに応じない、または話し合いによる解決が難しいという場合には、こちらの請求内容を書面にまとめ、配達証明付きの内容証明郵便で送付しましょう。
    内容証明郵便には、相手に対して支払いを強制するという法的効力はありませんが、いつ・どのような内容の請求をしたのかについて客観的な証拠を残すことができます。また、配達証明を付けておくことで、確実に相手へ内容証明郵便を届けたことを郵便局が証明してくれますので、内容証明郵便を利用するときは、必ず、配達証明も付けましょう。

    特に、時効の完成が迫っている場合には、配達証明付きの内容証明郵便による催告が大きな意味を持ちますので、必ず送付しましょう。

    法律上、催告は時効の完成猶予事由とされていますので(民法150条1項)、催告があったときから6か月を経過するまでの間は、時効の完成をストップさせることができます。催告自体には、時効の進行をリセットする効果まではありませんが、訴訟手続きに進む前の時間的余裕が作れます。

  3. (3)仮差し押さえ

    任意の交渉では解決が難しい場合には、訴訟手続きに移行することになりますが、裁判で判決を得る前には、ある程度の時間が必要です。裁判で時間をかけて争っている間に相手の財産が散逸してしまうと、裁判で勝訴判決を得た場合でも未払いの請負代金を回収することはできません。

    このような場合には、仮差し押さえという手続きが有効となります。仮差し押さえとは、勝訴判決が出ていない段階であっても、債務者の財産処分を禁止する手続きです

    仮差し押さえをした場合、相手は財産を実質的に処分できなくなりますので、勝訴判決後に強制執行により未払いの請負代金を回収することができます。
    なお、仮差し押さえは、時効の完成猶予事由とされていますので(民法149条1号)、仮差し押さえが終了したときから6か月を経過するまでの間は、時効の完成をストップさせることが可能です。

  4. (4)支払い督促、少額訴訟、通常訴訟

    任意の交渉では解決が難しい場合には、裁判所を使って解決を図ることになります。裁判所を使って解決を図る方法には、支払い督促、少額訴訟、通常訴訟という種類がありますが、以下では、迅速な解決が可能な支払い督促について説明します。

    支払い督促とは、金銭の支払いなどを求める場合に利用することができる手続きであり、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申し立てを行います。支払い督促は、書類審査だけですので、訴訟のように裁判所に出頭する手間がありません。

    書類審査の結果、請求に理由がないことが明らかなとき以外には、支払い督促が発布され、相手への支払い督促の送達後2週間以内に異議の申し立てがなければ仮執行宣言の申し立てをすることができます(異議が出された場合には、通常訴訟に移行します。)。
    仮執行宣言の申し立て内容を審理し、問題がなければ、相手に仮執行宣言付支払督促が送達されますそして、送達後も相手から支払いがなければ、強制執行の申し立てをすることが可能です

    なお、支払い督促は時効の完成猶予及び更新事由とされているため(民法147条)、支払い督促手続き中及び終了したときから6か月を経過するまでの間は、時効の完成猶予により時効の進行をストップさせることが可能となり、また、仮執行宣言付支払い督促が確定した場合には、時効の更新により、新たに時効期間がスタートすることになります(民法147条2項)。

  5. (5)強制執行

    相手から支払いがない場合には、相手の財産を差し押さえるなどの強制執行の手続きをとることができます。強制執行も時効の完成猶予事由及び更新事由とされています(民法148条)。強制執行をする場合には、仮執行宣言付支払督促や確定判決といった債務名義が必要となりますので、より迅速かつ確実に債権回収を実現するためには、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

4、請負代金の時効を完成させないために。相談先は?

請負代金の時効が完成してしまった後では、請負代金の回収は困難になります。時効が完成する前に、以下のような相談先に相談しましょう。

  1. (1)建設工事紛争審査会

    建設工事紛争審査会とは、建設工事の請負契約に関する紛争処理を行う機関です。建設工事紛争審査会では、建設工事の請負契約に関して紛争が生じた場合に、あっせん、調停、仲裁といった手続きによってトラブルの解決を図ることができます。
    建設工事紛争の専門家である委員が審理を担当しますので、専門的・技術的な問題が多く含まれる建設工事紛争であっても、適切妥当な解決を図ることが期待できるでしょう。

    なお、建設工事紛争審査会に仲裁の申請をした場合には、仲裁法の規定により時効完成猶予および時効更新の効力が認められ、あっせん又は調停についても、手続きが打ち切られた後、1か月以内に訴えを提起した場合には、時効完成猶予の効果が認められます。

  2. (2)弁護士

    建設工事紛争審査会は、あくまでも中立的な立場になりますので、当事者の味方をしてくれるわけではありません。

    弁護士であれば、依頼者の立場に立って、相手と交渉を行います。建設工事の請負契約に関するトラブルについても、適切に解決することが可能です。専門的な紛争に一人で立ち向かうのが不安だという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

5、弁護士に相談するメリット

請負代金のトラブルについて弁護士に相談をするメリットとしては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)時効の完成を防ぐことができる

    消滅時効が完成してしまうと、未払いの請負代金があったとしても、回収することは非常に困難になります。そのため、未払いの請負代金を回収するためには、時効完成前に迅速に手続きを進めていかなければなりません。

    弁護士であれば、時効を成立させないための時効の完成猶予、時効の更新といった手段を熟知していますので、時効の成立が迫っている事案であっても、これらの手段を駆使して時効の完成を防ぐことが可能です

    長期間未払いの状態が続いているという場合には、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

  2. (2)債権回収の可能性がアップする

    未払いの請負代金がある場合には、相手に対して支払いを求めていくことになります。
    債権回収には、相手の態度や資力などに応じ、さまざまな方法がありますので、より確実に債権回収を実現するためには、最適な手段を選択することが大切です。

    たとえば、内容証明郵便によって支払いの督促をする場合であっても、債権者本人が対応する場合と弁護士が代理人として対応する場合とでは、後者の方が相手に与える心理的なプレッシャーは大きくなります。少しでも債権回収の可能性を高めたいという場合には、専門家である弁護士に相談をしましょう。

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6、まとめ

請負代金の時効は、5年とされていますので、未払いの請負工事代金がある場合には、早めに対応をしなければ、あっという間に時効が成立してしまいます。時効が成立した後では、回収は困難ですので、時効を迎える前に弁護士に相談をすることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、請負代金の未払いを含む建築トラブルについては、初回相談60分無料で対応しています(ただし、現地調査などは別途費用がかかります)。
また、一級建築士とも連携して対応にあたりますので、専門的な建築トラブルであっても対応が可能です。
請負代金の未払いでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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