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    2023年04月24日
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    未払いの工事代金を回収するために取るべき手段や注意すべきことは?
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    未払いの工事代金を回収するために取るべき手段や注意すべきことは?

    施主からの工事代金の未払いは、よく起こる建築トラブルのひとつといえます。

    元請け業者から受注した工事の代金が支払われないとき、下請け業者はどのように対応すれば良いのでしょうか。適切な対策を講じなければ、労働者への給料の支払いができなくなるだけでなく、資金繰りが悪化し、自社の経営が立ち行かなくなる可能性もあり得ます。

    本コラムでは、未払いの工事代金の原因や回収方法、注意すべき点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、工事代金の未払いが発生する理由は?

まずは、工事代金未払いの原因となりやすい3つのケースをご紹介します。

  1. (1)契約書に問題がある

    1つ目は、契約書(請負契約書)を締結したにもかかわらず、代金の支払時期や回数などについて定めていないケースです。

    それほど規模の大きくない工事であれば、工事代金は、完成後・引き渡しと同時に一括払いとされることもあります。しかし、工期が長く請負金額も大きい工事の場合、次のように複数回の支払いが定められるのが通常です。


    • 工事開始時(契約金・着手金・前払い金)
    • 工事期間中の出来高払い(中間払い)
    • 完成後・引き渡し時


    このほかにも、工期の途中で建築に必要な資材や材料の価格が高騰した場合に、施主と施工業者のどちらが負担するのかなどが定められることもあります。

    契約書の作成は、建設業法で義務付けられていますが、契約書を作成していないというケースも見受けられます。契約書がない場合はもちろんのこと、せっかく契約書があっても、契約内容を適切に定めていなければ、トラブルが生じた際に有利な解決ができなくなってしまいます。契約を締結する段階からリスク回避を意識して、契約書に適切な内容を定めておく必要があります。

  2. (2)発注者の資金繰りが悪化した

    2つ目は、元請け(発注者・施主)の資金繰りが悪化し、単純に支払いができなくなったというケースです。

    ある工事では発注者の立場にある元請けも、他の工事では下請けとなり、一時的に資材や材料の費用を立て替えなければならないことがあります。その他にも、労働者災害が発生して安全配慮義務違反を追及されている、施工ミスを理由に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を追及されているなど、資金繰りが悪化する原因にはさまざまなものが考えられます。

  3. (3)完成した建物を先に引き渡してしまった

    請負契約では、完成した目的物の引き渡しと同時に報酬を支払わなければならないとされています(民法第633条)。しかし、下請け業者は元請け業者との関係で弱い立場にあるため、元請け業者の要望を優先し、完成した建物を代金支払いよりも先に引き渡してしまうことがあります。

    支払いを受ける前に建物を引き渡してしまうと、支払いを受けるまでは建物を引き渡さないという留置権(商法第524条)を行使することができなくなってしまいます。引き渡し時期について交渉する際には、この点に注意する必要があるでしょう。

2、未払いの工事代金を回収する方法

請負契約の締結や引き渡し時期などにいくら気を付けていたとしても、工事代金の支払いを受けられない事態に遭遇してしまう可能性はゼロではありません。その際には、他社と競合する前に、早期になるべく多くの代金を回収するための対応を取る必要があります。

  1. (1)回収の流れ

    一般的には、次のような流れで回収を試みることが多いでしょう。


    ① 未払いの理由を確認する
    未払いが発生している理由によって、その後に取るべき対応も変わってくるため、まずは元請けが工事代金を支払わない理由を正確に把握する必要があります。

    ② 交渉による督促・催告をする
    元請けが不払いに陥った理由が分かれば、それに応じた提案などを行い、当事者間での交渉によって支払いの督促・催告を行います。

    ③ 弁護士名義の書面で工事代金を請求する
    当事者間での交渉で解決することができなければ、弁護士名義で工事代金を請求する書面を作成し、内容証明郵便等の方法でこれを送付します。

    弁護士名義の書面には、支払期限、支払先銀行口座などの工事代金に関することの他、未払いが続けば訴訟などの法的措置を取らざるを得ないことや、訴訟になれば遅延損害金や弁護士費用などを併せて請求することも記載します。

    ④ 法的措置をとる
    工事代金の請求を弁護士名義で請求しても元請けが支払いに応じなければ、法的措置に移行します。
  2. (2)法的措置の進め方

    事案ごとにとるべき法的措置は異なるため、弁護士に相談のうえ、最適な方法を選択することが大切です。

    • 支払督促
    • 裁判所から、債務者に対して督促してもらう手続きです。
      債務者(元請け)から異議(督促異議)があれば、通常の訴訟手続きに移行することになりますが、そうでなければ1~2か月程度で強制執行手続きを行うことができます。

    • 訴訟
    • 裁判を起こし、支払いを求めます。勝訴すれば、未払いの工事代金を強制的に回収することができます。

      双方が激しく対立しているようなケースでなければ、訴訟の途中で和解によって解決することも十分にあり得ます。和解の場合、判決よりも早期に解決でき、任意の支払いを期待できるといったメリットがあります。

      なお、訴訟を提起してから判決までの間に元請けの資金繰りが悪化するなどした場合、せっかく勝訴判決を受けたとしても、回収が不能となり目的を達成することができなくなります。
      このような事態を防止するために、訴訟を提起する前に、仮差押えを行うことによって財産の保全を行うことが重要です。仮差押えの対象となるのは、元請けが所有する不動産、銀行預金、工事代金債権などが考えられます

    • 強制執行
    • 債務名義(仮執行宣言付支払督促、確定判決、和解調書など)がある場合は、強制執行手続きによって、強制的に代金を回収することが可能です。

3、未払いの工事代金の回収で知っておくべき点と注意すべき点

  1. (1)特定建設業者の立て替え払い制度

    工事代金の未払い等によって、当該工事の建設のために雇っている労働者への賃金支払いが滞った場合、元請け業者が「特定建設業者」であれば、立替払いを受けることのできる場合があります(建設業法第41条2項)。

    特定建設業者とは、建設業法第15条の定める基準に適合した建設業者のことをいいます。特定建設業者は、直接契約している1次下請け業者だけでなく、1次下請け業者から発注を受けた2次・3次の下請け業者も保護する義務を負っています
    たとえば、自社が2次下請けで発注者が1次下請けであった場合には、元請け業者が特定建設業者かどうかを確認してみると良いでしょう。

  2. (2)工事代金の請求には時効がある

    未払いの工事代金がある場合には、消滅時効に注意する必要があります。

    請負契約に基づく工事代金債権は、権利を行使することができるときから10年、権利を行使することができることを知ったときから5年で時効により消滅します。通常、建物を引き渡せば工事代金を請求できると知るはずですから、工事代金債権の時効は5年と考えておくべきでしょう。

  3. (3)遅延損害金を請求できる

    契約で合意した支払期限を過ぎても支払いがない場合は、遅延損害金を含めて請求することが可能です。遅延損害金の利率は契約で別段の合意をしなければ、民法第404条2項に従い「年3%」です

  4. (4)契約書がない場合

    前述したように、契約書の作成は義務付けられていますが、たとえ口頭での合意だけであったとしても、契約は有効に成立します。したがって、契約書がない場合も、仕事の目的物を完成して、これを引き渡せば、工事代金を請求できます。

    しかし、トラブルになった場合、契約書がなければ自社にとって不利益な結果となる可能性が高くなります。契約書を作成していなかった場合は、仕様書・設計図・見積書・請求書など、契約があったことを確認できる資料を残しておくようにしましょう

4、未払い工事代金の回収で弁護士がサポートできること

  1. (1)手続きを一任できる

    工事代金未払いのトラブルに巻き込まれてしまった場合、早い段階で弁護士に相談すれば、元請け業者との交渉から内容証明郵便の発送、さらには裁判手続きに至るまで、代理人として、すべての手続きを委任することができます。

    債権回収手続きを弁護士に一任しておくことで、トラブル解決のための余計な負担を負うことなく、自身は通常の業務に専念することが可能となります。

  2. (2)最適な回収方法を検討してもらえる

    建築トラブルや債権回収の知見が豊富な弁護士であれば、事案に応じた最適な回収方法を提案することが可能です。費用倒れや期待した金額を回収できなかったなどの失敗を回避できる可能性が高まります。

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5、まとめ

工事代金の未払いは、よくある建築トラブルのひとつですが、その原因はさまざまです。
交渉で解決しなければ法的措置へ移行する必要があるので、早い段階から弁護士に相談しておくことが適切といえます。
弁護士に依頼すれば、契約書のレビュー段階から関与することができるので、トラブルを事前に回避するための予防法務も可能となります。
ベリーベスト法律事務所では、初回相談は60分まで無料で承っております。建築訴訟専門チームが最大限サポートいたしますので、お困りの方はぜひご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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