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    2024年03月26日
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    建設・工事代金の債権回収方法│違法な未払いとは?
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    建設・工事代金の債権回収方法│違法な未払いとは?

    建設工事を請け負ったにもかかわらず、建設会社(元請業者)から請負代金の支払いがない、または一部しか支払われないという経験がある施工業者の方もいるでしょう。

    建設・工事代金が未払いになると、他の業者への支払いなどにも影響が生じ、最悪のケースでは倒産に至るおそれもあります。そのため、未払いの建設・工事代金がある場合には、迅速な債権回収が重要です。

    今回は、未払いの建設・工事代金の債権回収をする方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、建設・工事代金でよくあるトラブル4つ

以下では、建設・工事代金に関して、よくあるトラブルとその原因について説明します。

  1. (1)見積書と比べて発注書の金額が低い

    通常、商取引では、発注者側が受注者側に見積もりの依頼をし、受注者側が発注者側に見積書を提示します。そして、見積書の内容に合意した場合には、発注者側が発注書を作成し、受注者側に提示するという流れで行われます。

    そのため、基本的には、見積書と発注書の金額は、一致しますが、建築工事においては、元請業者が取引上の地位を利用して、下請業者に不当に低い金額で建築工事の発注を行うことがあります。見積書と比べて発注書の金額が低い場合には、下請業者に利益がなく赤字になることも少なくありません。

  2. (2)金額が明記されている書面がない

    請負契約を締結する際には、請負金額を明記した請負契約書を作成するのが基本です。しかし、元請業者と下請業者との関係性によっては、発注書だけだったり、発注書すらなくて、口約束だけで工事に取り掛からなくてはならないような場合もあります。

    このように契約書などに請負金額が明記されていない場合には、後日、建設・工事代金に関してトラブルが生じたとしても、下請業者側は請負金額を立証することができず、不利になるおそれがあります。

  3. (3)追加・変更工事で発注書を発行してくれない

    建築工事では、基本となる請負契約を締結した後も、追加工事や変更工事が発生することがあります。その都度、契約書や発注書を発行してくれればよいですが、追加工事や変更工事が多数発生する現場では、毎回発注書を発行するのが煩雑だという理由から、発注書を発行することなく、追加・変更工事が行われることがあります。

    しかし、発注書がなければ、元請業者からの発注内容および請負金額を立証することができません。そのため、後日建設・工事代金をめぐってトラブルになることがあります。

  4. (4)支払期日の延長を何度も頼まれる

    元請業者の資金繰りの悪化や施主からの代金支払いの遅れなどが原因で、元請業者から下請業者への建設・工事代金の支払いが遅れることがあります。元請業者から支払期日の延長を何度も頼まれる状況は、元請業者の資金繰りの悪化により、建設・工事代金が支払われなくなるおそれがありますので、早めに対応する必要があります。

2、建設業法違反となるケースと罰則

建設・工事代金に関するトラブルの中には、建設業法違反となるケースもあります。以下では、具体的なケースとその罰則について説明します。

  1. (1)指値で発注をする

    指値発注とは、元請業者が下請業者と十分な協議をすることなく、元請業者が一方的に定めた請負代金額を提示し、その金額で請負契約を締結させる行為をいいます。

    • 元請業者が下請業者から提示された見積書を一切見ない
    • 元請業者の指示で強制的に見積書を書かせる
    • 原価割れの仕事を引き受けさせる
    • 請負金額を定めずに、工事が終わってから指値で都合のよい金額を提示する


    このような指値発注があった場合には、不当に低い請負代金の禁止(建設業法19条の3)、建設工事の見積もり条件の提示(建設業法20条4項)、書面による契約締結(建設業法19条1項)に違反するおそれがあります。
    もっとも、これらの違反があったとしても罰則はありませんが、行政庁から指示または勧告を受ける可能性があります。

  2. (2)取引上の地位を利用して不当に低い請負代金にする

    建設工事の発注者は、取引上の地位を利用して、不当に低い請負代金を設定してはいけません(建設業法19条の3)。特に、元請業者と下請業者との間では、取引上優越的な地位にある元請業者により、不当な取引が強制されることがあります。

    当該建設工事を実施するにあたって通常必要と認められる原価に満たない金額を下回っている場合には、「不当に低い請負代金」と認められ、建設業法に違反するおそれがあります。

  3. (3)工事代金を明記した書面の取り交わしをしない

    建設業法では、建設工事請負契約は、書面により締結することが義務付けられています(建設業法19条1項)。請負代金の金額は、建設工事請負契約において、必ず定めるべき項目のひとつですので、工事代金を明記した書面の取り交わしをしていない場合は、建設業法違反となりえます。

    また、追加・変更工事をする際には、工事着手前にその内容を書面に記載することが義務付けられています(建設業法19条2項)。そのため、追加・変更工事で発注書を発行してくれないというケースも、建設業法違反となりえます

  4. (4)過失がないのにやり直し工事を負担させる

    下請業者に過失がないのにやり直し工事を行わせる際に、費用負担などを明確にすることなくやり直し工事を行わせるのは、建設工事の請負契約の内容明示を義務付ける建設業法19条2項に違反する場合があります

    また、下請業者に過失がないにもかかわらず、やり直し工事の費用を下請業者に負担させることで、「不当に低い請負代金」になった場合には、建設業法19条の3に違反する可能性があります。

  5. (5)不当に長期間支払いをしない

    元請業者は、注文者から支払いを受けた日から1か月以内に下請業者への支払いを行う必要があります(建設業法24条の3)。

    また、元請業者が特定建設業者である場合、下請業者に対し(下請業者が特定建設業者若しくは資本金4000万円以上の法人である場合を除く)、元請業者は、以下のいずれか早い日までに支払いを行わなければなりません

    • 注文者から支払いを受けた日から1か月以内(建設業法24条の3第1項)
    • 下請業者が引き渡しの申し出をした日から50日以内に定めた支払期日まで(建設業法24の6第1項)


    元請業者から不当に長期間支払いがなされない場合には、建設業法違反の可能性があります。

3、建設代金の未払い分を債権回収する方法

建設代金の未払いが生じた場合には、以下のような方法により未払いの債権回収を行います。

  1. (1)当事者間で話し合い・交渉

    建設代金の未払いが生じた場合には、まずは当事者同士で話し合いを行います。未払いが生じたまま放置していると相手の資金繰りがさらに悪化して回収が困難になるおそれがありますので、早めに対応することが大切です。

    相手との話し合いで、建設工事代金の支払いに関する合意が成立した場合には、具体的な支払期限を定めて、書面に残しておくようにしましょう。

  2. (2)内容証明郵便で未払い請求する

    相手が話し合いに応じないとき、または、話し合いでは解決が難しいという場合は、配達証明付きの内容証明郵便を利用して、書面で支払いを求めましょう。

    内容証明郵便には、支払いを強制する効力まではありませんが、いつ、どのような請求をしたのかに関して客観的な証拠を残すことができます。また、支払いの催告は、時効の完成猶予事由(消滅時効をストップさせる)としての意味もありますので、今後裁判などの法的手続きを進める際の時間的余裕を作ることも可能です

    当事者間での話し合いでは解決できない場合には、法的措置により解決を図ることになります。

  3. (3)法的措置1│支払督促

    支払督促とは、金銭などの支払いを求める際に利用される簡易裁判所の手続きです。訴訟とは異なり、書類審査のみであるため、審理のために裁判所に行く必要はありません。このように簡易な手続きで金銭の支払いを命じてもらうことができ、「仮執行宣言付き支払督促」が発付されれば、判決の代わりに強制執行が可能になります。

    ただし、債務者から督促異議の申し立てがなされると、通常の訴訟手続きに移行してしまいます。

  4. (4)法的措置2│訴訟

    債務者が事実関係を争うことが予想される場合には、通常の訴訟手続きを利用することになります。通常の訴訟手続きでは、原告および被告が書面等に基づいて主張立証を行い、それを踏まえて裁判官が請求を認めるかどうかを判断します。

    原告の請求が認められた場合には、被告に支払いを命じる内容の判決が言い渡され、判決が確定すれば強制執行が可能になります。

  5. (5)法的措置3│強制執行

    仮執行宣言付き支払督促や確定判決などの債務名義を取得すれば、強制執行の申し立てが可能です。相手方が任意に建設代金の支払いを行わない場合には、強制執行を申し立てて、相手方の財産を差し押さえることで、強制的に債権回収を実現できる場合があります。

    ただし、強制執行を申し立てるにあたっては、債権者側が、債務者の財産を特定して申し立てる必要がありますので、注意が必要です。

4、建設代金の債権回収は弁護士に相談を

建設代金の債権回収をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)時効の完成を防ぐことができる

    長期間建設代金が未払いの状態で放置していると、時効により債権が消滅してしまうおそれがあります。元請業者と下請業者との関係性によっては、元請業者に対して、強く主張できないこともあるかもしれませんが、時効により権利が消滅してしまうと、未払い金額によっては自社の経営状態にも重大な影響を与えてしまいます。

    弁護士であれば、時効を完成させないための手段を熟知していますので、状況に応じて適切な手段を選択することによって、時効の完成を防ぐことが可能です。債権回収には時効がありますので、長期間建設代金の未払いが続いている場合には、早めに弁護士にご相談ください。

  2. (2)債権回収に向けたサポートが可能

    弁護士に依頼をすれば、代理人として債権回収に向けたサポートをしてもらうことができます。元請業者が支払いを渋っている事案であっても、弁護士を介して請求することで、相手が任意に支払いに応じてくれる可能性が高くなります。また、交渉では解決できない事案であっても、支払督促ないし訴訟、強制執行などの法的措置により債権回収を実現することが可能です。

    少しでも債権回収の可能性を高めたいという場合は、建築トラブルに実績のある弁護士や法律事務所に相談することをおすすめします。

5、まとめ

建設代金や工事代金の未払いが生じた場合には、そのまま放置するのではなく早めに債権回収に取り掛かることが大切です。また、取引先からの債権回収は、これまでの関係性や今後の取引も考慮し、交渉なども慎重に行う必要があります。

債権回収をお考えの方は、「初回相談60分無料」なベリーベスト法律事務所までご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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