新築で家を建てるときは、施主が間取りや設備などさまざまな仕様を決定します。施主の希望は、設計者によって設計図や仕様書にまとめられ、それに従って、施工業者が家の建築を進めます。
しかし、実際に建てられた家が注文した仕様と違っているということがあります。仕様書があれば、確認して相違点を明らかにすることができますが、万が一仕様書がないときはどのように対処すればよいのでしょうか。
今回は、新築の家の仕様書がないときに、注文した仕様と異なる建物ができた場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
新築の注文住宅における仕様書とは、どのようなものなのでしょうか。
住宅建設における仕様書とは、何を使用してどう取り付けるかなど、工事内容の詳細を文章で記載したものです。
たとえば、外壁であれば以下の項目が挙げられます。
こうした詳細が、屋根、外壁、部屋の内装、キッチン、トイレ、バルコニー、外構まですべて細かく記されます。
なお設計図は、平面図、立体図、断面図、構造図、設備図などの図面により構造や形状を明らかにするものですが、設計図だけでは説明しきれない情報は仕様書に記載されます。
各種の設計図と仕様書をまとめて「設計図書」といいます。設計図書は、施主や設計者の意図を施工業者に適切に伝え、希望どおりの注文住宅を建てるために欠かせない書類です。
また、設計図書は、施工業者との契約締結する際に結ぶ建築工事請負契約書に添付することが通常です。
仕様書がなかったり、内容が曖昧だったりすると後々トラブルになる可能性が高いため、仕様書が固まっていない段階で契約すべきではありません。
新築住宅が依頼内容と異なる仕様になっていることに気付いたらどのように対応したらよいのでしょうか。
契約時に指定した材料、施工方法と異なる施工になっていた場合には、すぐにそのことを指摘して、仕様書どおりの施工に修正してもらうよう求めましょう。その際には、住宅工事仕様書の該当部分を明示して、実際の施工方法と仕様書との相違を明らかにすることが大切です。
正しく施工されるかは、任せきりにせず現場に足を運ぶことが大切です。設計図面や仕様書などではイメージできなかった部分も実際の現場を見ることで具体的にイメージすることができるようになります。
施工中にすぐに気付くことができれば、修正も容易ですので、できる限り現場を訪れるようにしましょう。
引渡し直前であれば、すでに新築住宅は完成している状態です。このような状態だと、仕様書との相違があったとしても、修正が容易ではないため、施工業者からやり直しを断られてしまうケースもあります。
しかし、施工業者には、契約内容に従って目的物を完成させる義務がありますので、仕様書と異なる状態では目的物が完成したとはいえません。そのため、施工業者には、仕様書どおりにしっかりとやり直してもらうように伝えるようにしましょう。
なお、仕様書どおりにやり直しをすることで引渡しが延びるのを避けたい場合には、契約金額を減額してもらうなどの対応も検討しましょう。この点については、施工業者と協議しながら進めていくとよいでしょう。
新築住宅の引渡しを受けた後に、仕様との相違に気付いた場合には、施工業者に対して、契約不適合責任を追及することができます。
契約不適合責任とは、契約に基づいて引き渡された目的物に種類・品質・数量に関し、契約内容に適合しない部分があった場合に、施工業者が負う責任です。以前は、「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、民法改正により「契約不適合責任」という名称に変更になりました。
目的物に契約内容との不適合があった場合には、施主は、施工業者に対して、以下のような請求をすることができます。
新築住宅ではなく、建売住宅や新築マンションでも仕様書はあるのでしょうか。
建売住宅では、施工業者がすでに完成させた建物を購入しますので、請負契約ではなく売買契約という形式をとります。建売住宅を販売する業者は、標準仕様書に基づいて、建物の建築を行いますが、実際の仕様書には詳細が記載されていないことも多いです。
そのため、買主は、仕様書があれば仕様書の交付を受けた上で、完成した建物の内覧を行い、詳細は施工業者に確認するようにしましょう。
新築マンションでは、一般的にモデルルームに仕様書が置かれています。マンションが完成後は、仕様書を踏まえて内覧を行い、仕様書との相違点があるかどうかをしっかりと確認することが大切です。
仕様書は、設計図面と同様に建物やマンションを建てる際には不可欠なものですので、基本的には存在しているはずの書面です。しかし、何らかの理由で仕様書が存在していない、または、仕様書があっても詳細な内容が記載されていないこともあります。
そのような場合でも施工業者への契約不適合責任の追及は可能です。契約内容の不適合があったかどうかは、仕様書だけではなく、契約の経緯や工事請負契約書などさまざまな事情を考慮して判断することになります。そのため、仕様書がなくてもその他の事情から契約不適合であるといえるのであれば、施工業者に対して、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除を行うことができます。その際、契約不適合であることについて裏付けができるような証拠があるかが重要になります。
以下のようなケースでは、弁護士に依頼することをおすすめします。
新築の注文住宅を建てる際には、実際の建物が仕様書と異なるケースがあります。施主としては、仕様書どおりの建物が建つことを当然期待していると思いますが、施工業者のミスなどにより仕様書との相違が生じることも少なくありません。
そのような場合には、仕様書どおりの建物を建てるように施工業者に求めていくことになりますが、施主個人では、施工業者を相手にうまく自分の主張を伝えられないこともあります。そのような場合は、弁護士に依頼することで、弁護士が代理人として施工業者との交渉を担当することができます。法的観点から施工業者が対応すべきことを指摘することで、早期の解決が期待できるでしょう。
施工業者には、契約内容どおりの建物を建てる義務がありますので、仕様書との相違がある場合には、仕様書に従って相違部分のやり直しを求めることができます。また、建物の引渡し後であれば、契約不適合責任を追及することで、修繕や代金減額などを求めることができます。
しかし、施工業者によっては、法的義務があるにもかかわらず施主からの要求に応じてくれないところもあります。そのようなケースでは、弁護士に対応を任せることをおすすめします。弁護士が窓口となって対応することで、施工業者としても放置できないと理解して、適切な対応に応じてもらえる可能性が高くなります。また、任意の交渉で解決できないときでも、調停や裁判などの法的手続きにより解決を図ることができます。
新築の注文住宅で仕様書との相違が見つかった場合には、どのように対応したらよいかわからない方も多いと思います。そのようなお悩みを抱えている方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ベリーベスト法律事務所には、建築トラブルに関する豊富な知識と経験を有する弁護士による建築訴訟専門チームがありますので、専門的かつ複雑な建築トラブルであっても適切に解決に導くことができます。トラブルが深刻化する前に、ぜひご相談にお越しください。