購入した建売住宅に欠陥があった場合、買い主は売り主や施工業者の責任を追及できる可能性があります。
特に売り主に対しては、契約不適合責任または品確法上の瑕疵担保責任に基づき、さまざまな請求が可能です。弁護士のサポートを受けながら、適切な方法によって損害の回復を図りましょう。
今回は建売住宅の欠陥について、買い主ができる責任追及の種類、具体的な手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
建売住宅は、設計や仕様の全部または大部分を、売り主であるハウスメーカーやパワービルダーなどの不動産会社が決定します。
これに対して注文住宅は、設計や仕様の全部または大部分を、買い主(注文者)である施主が決定するのが一般的です。
建売住宅と注文住宅を比較すると、欠陥事例は建売住宅の方が多いと言われることがあります。その理由としては、以下の各点が挙げられます。
もちろん、きちんと施工されている建売住宅もたくさんあります。
しかし、建売住宅であるがゆえの上記の事情により、天井・屋根裏・床下(断熱材不足などを含む)や基礎・構造など見えない部分の欠陥は、注文住宅よりも建売住宅に多く発生する傾向にあります。
建売住宅に欠陥が見つかった場合、買い主は売り主または施工業者に対して法的責任を追及できる可能性があります。
買い主と直接の契約関係にある売り主(不動産会社)に対しては、欠陥について「契約不適合責任」を追及できます(民法第562条以下)。
契約不適合責任とは、売買契約の目的物の種類・品質・数量が契約に適合していない場合に、売り主が買い主に対して負担する法的責任です。
また、建設工事の完了日から起算して1年以内に引き渡された未居住の新築住宅について、住宅の構造耐力上、主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に欠陥があった場合には、「品確法※」に基づき売り主の瑕疵担保責任を追及できます(同法第95条)。
※正式名称:住宅の品質確保の促進等に関する法律
品確法上の瑕疵担保責任の追及方法は、民法に基づく契約不適合責任と同じです。ただし、品確法上の瑕疵担保責任の期間は「引き渡しのときから10年」であり、短縮不可とされています。
施工業者は買い主と直接の契約関係にありませんが、欠陥が施工業者の故意または過失によって生じた場合には、施工業者の不法行為責任を追及できる可能性があります(民法第709条)。
不法行為責任は、故意または過失により、相手に対して違法に損害を与えた場合に成立します。施工者の不法行為責任として、最高裁判所では、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」のある場合に不法行為責任が認められています。
不法行為責任を追及する方法は、損害賠償請求のみであり、契約不適合責任に比べると、施主側の選択肢が狭くなっています。また、施工業者の故意または過失を、施主の側で主張立証する必要があります。
その一方で、消滅時効や除斥期間について、契約不適合責任とは異なるところがあるので、請求の時期によっては不法行為責任の追及しか行えないこともあります。
建売住宅の欠陥について、買い主が売り主の契約不適合責任を追及する方法は、以下の4つです。
なお、品確法上の瑕疵担保責任も同様に責任の追及が可能です。それぞれ、詳しくみていきましょう。
建売住宅の欠陥については、売り主に対して修補を請求することができます(履行の追完請求、民法第562条第1項)。
ただし、欠陥が買い主の責に帰すべき事由によって生じた場合には、売り主に対して欠陥の修補を請求できません(同条第2項)。
買い主が相当の期間を定めて欠陥の修補を催告し、その期間内に欠陥が修補されない場合には、売り主に対して売買代金の減額を請求できます(民法第563条第1項)。
また以下のいずれかに該当する場合には、欠陥の修補を催告せず、直ちに代金の減額を請求することも可能です(同条第2項)。
なお欠陥の修補と同様に、欠陥が買い主の責に帰すべき事由によって生じた場合には、売り主に対して代金の減額を請求できません(同条第3項)。
建売住宅の欠陥によって買い主が損害を被った場合は、欠陥の修補や代金減額請求などと併せて、売り主に対して債務不履行に基づく損害賠償を請求できます(民法第564条、第415条第1項)。
損害賠償の対象となるのは、欠陥の存在と相当因果関係のある損害です。具体的には、欠陥が原因でケガをした場合の治療費や、欠陥の修補のために一時転居を強いられた場合の費用などの請求がこれにあたります。
買い主が相当の期間を定めて欠陥の修補を催告し、その期間内に欠陥が修補されない場合には、売買契約を解除できます(民法第564条、第541条本文)。
また、契約目的の達成に不可欠な修補が不能である場合や、当該修補を売り主が明確に拒絶した場合などには、無催告で売買契約を解除することが可能です(民法第542条)。
ただし、相当期間の経過時における欠陥の程度が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、売買契約の解除は認められません(民法第541条ただし書き)。
建売住宅の欠陥について、買い主が売り主の責任を追及する手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
まずは建売住宅について、売買契約に適合しない欠陥が存在することの証拠を確保する必要があります。
また、損害賠償請求を行うに当たっては、欠陥によって受けた損害を示す証拠も必要です。
売り主に対する請求等を成功させるため、万全の準備を整えましょう。建築訴訟の実績がある弁護士に相談すれば、証拠収集などについて具体的なアドバイスを受けられます。
実際に契約不適合責任を追及する際には、売り主に内容証明郵便等により請求し、交渉を試みるケースが多いです。交渉がうまくまとまれば、建売住宅の欠陥について早期に補償を受けることができます。
ただし不動産会社は知見も実績も一般の方より圧倒的に多く、交渉が思うように進まないことも珍しくありません。建築トラブルの実績ある弁護士に依頼することで、適切な主張を踏まえながらバランスよく交渉を進め、早期に合意が成立する可能性が高まります。
建築紛争については、各種の裁判外紛争処理手続き(ADR)が設けられています。
ADRでは、弁護士や建築士などの専門家があっせん・調停・仲裁などを行い、実務に即した形での建築紛争の解決が図られます。所要期間は訴訟よりも短い傾向にあり、半年前後を要するのが標準的です。
ADRの申立てやその後の対応についても、弁護士に代理を依頼することができます。弁護士を代理人とすることで、ADR委員に対して、住宅の欠陥について効果的に主張することが可能となります。
建売住宅の欠陥について、売り主と買い主の示談交渉等が決裂した場合には、裁判所に訴訟を提起して解決を図りましょう。交渉やADRの申し立てを行わず、直接裁判所に訴訟を提起することも可能です。
訴訟において買い主は、契約不適合責任に基づく請求権の存在を、証拠に基づき立証しなければなりません。法律に基づいた適切な主張構成と、それを裏付ける証拠の確保が重要なポイントです。
ベリーベスト法律事務所には建築紛争の実績ある弁護士が在籍しています。必要に応じて一級建築士と連携しながら、欠陥の証拠確保や図面調査を行い、売り主との示談交渉や訴訟代理人としての対応も可能です。住宅は一生を左右する買い物です。まずは状況をヒアリングし、買い主の損害をできる限り回復できるように尽力いたします。
建売住宅の欠陥については、売り主の契約不適合責任や、品確法に基づく瑕疵担保責任を追及できる可能性があります。契約不適合責任等を追及する方法には、履行の追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除の4つがあります。弁護士のアドバイスとサポートを受けながら、状況に合わせて適切な方法で売り主の責任を追及しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、住宅の建築紛争に関する相談を随時受け付けております。建築紛争の経験豊富な弁護士が、解決に向けて真摯(しんし)にサポートいたします。
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