新築に合わせて太陽光パネルを設置する方も多いでしょう。また、リフォームを機に、追加で設置することもあります。
しかし、太陽光パネルの設置工事のミスが原因でトラブルが起きてしまったら、どのように対応すればよいのでしょうか。
この記事では、太陽光パネルの施工ミスが起こる原因や施工ミスへの対応方法、トラブルの予防法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
日本は、2050年の温室効果ガス実質ゼロ(カーボンニュートラル)を宣言しています。
このような中、2022年12月、東京都で、新築住宅への太陽光パネルの設置義務化を定めた条例が、全国で初めて成立し、注目を集めました。
今後、こうした動きが、他の自治体に広がる可能性もあるといえるでしょう。
東京都の条例は、2025年4月から、新築住宅に太陽光パネルの設置を義務化するものです。
設置義務を課せられるのは、住宅を購入する消費者ではなく住宅販売業者で、その中でも、販売する住宅の延べ床面積の合計が年間2万平方メートル以上の住宅メーカーに限定されています。
消費者にとっては、太陽光パネルの設置にかかる費用が住宅の販売価格に上乗せされるのではないかと心配になるところですが、住宅メーカーへの助成金が用意されていることや、太陽光パネルの設置によって毎月の電気代が下がることなど、消費者へのメリットも挙げられています。
太陽光パネルの施工者となるためには、「一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)」が実施する統一資格である「PV施工技術者」資格の取得や、各メーカーが実施する施工研修を受講して「認定ID」を取得するという手順があります。
しかし、「メーカーの認定IDを取得した者が施工しなければメーカーの保証を受けることはできない」という制限があるものの、これらの資格やIDを保有していなくても設置工事を行うこと自体は可能です。新規参入にもその後の施工にも、基準や制限は特にありません。
そのため、知識・スキル不足によって施工ミスが生じることが考えられます。
新規参入業者の知識・スキル不足以外にも、詐欺などをたくらむ悪質な業者の存在も指摘されています。
トラブルとしては、以下のようなものが考えられます。
① 雨漏り
金具や横桟(よこざん)などに、太陽光パネルを屋根に設置する際の防水ための穴開けのコーキング処理が不十分であったり、その後の設置が不適切であることが原因で、その屋根から雨漏りがするトラブルが少なくありません。
雨漏りを修理するためには、設置したパネルを外して補修し、再度、パネルを設置し直さなければならないことがほとんどですので、施主にとっての経済的負担は大きなものとなります。
② 発電量不足、火災、感電
パネルを設置する際の金具の強度不足、ケーブル・パワーコンディショナ・蓄電池・室内用機器送配電ケーブルの設置ミスなども、よく見られるトラブルです。
これらの施工ミスが起きれば、発電量不足、火災、感電などが発生するおそれがあります。
③ その他
上記のほか、発生する可能性があるものとしては、以下のようなトラブルも考えられます。
太陽光パネルを設置するかどうか、設置するとしてどの業者と契約を締結するかに当たっては、設置後の管理なども含めた長期的な視点をもって慎重に検討しましょう。
トラブルを予防するためには、実際に契約をする前に、業者に知識・技術があるか、施工ミスがあったときのアフターサービスや補償はどうなっているか、十分に確認しておくことが必要です。
確認の方法としては、設置業者がメーカーの認定IDを保有しているか、住宅瑕疵担保責任保険に加入しているかを確認することなどが考えられます。
また、万が一、業者の対応などに不安があるときは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが実施する「住まいるダイヤル」を利用してみてもよいでしょう。
施工ミスが発覚したとき、どのように対応する必要があるか、対処法の流れをお伝えします。
まずは、トラブルの起きている現場を確認し、写真を撮る、見積書・図面・契約書などを保存しておくなどをして証拠を集めることが必要です。
設置の施工業者の責任を追及するにあたっては、どのような契約内容であったのか、どのような損害が発生しているのかなどを明らかにしなければなりません。
このほか、建築士による第三者検査を利用することも考えられます。
次に、トラブルが発覚したら早い段階で設置の施工業者と連絡を取り、施工ミスがあることを通知し、対応について協議を行いましょう。
この際に考えられる対応としては、設置業者に補修をしてもらう、他の業者に修理をしてもらい代金を設置業者に請求する、損害賠償をしてもらうなどの方法が考えられます。
設置業者の修理が適切に行われるのか、他の業者に頼むべきか、賠償額が適切であるかは、慎重に検討しなければなりません。
業者の対応が納得できない場合には、弁護士を交えた交渉に進む検討をしてもよいでしょう。
太陽光パネルの設置工事に関するトラブルにかかわらず、建築・建設についてトラブルが生じたときは、弁護士へ相談することをおすすめします。
太陽光パネルを設置するための請負契約が締結され、当初の想定とは異なる施工ミスやトラブルがあれば、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追及していくこととなります。
法的知識に加えて、建築に関する専門知識も必要となりますので、個人で対応することは難しく、負担も極めて大きいといえるでしょう。
この点、弁護士に依頼すれば、業者の責任追及を円滑に進めることを期待できます。
また、業者との交渉や裁判手続きについても、弁護士であれば代理人として全てを代行することが可能ですので、施主の負担は大きく軽減されます。
太陽光パネルの施工ミスを発見したときには、なるべく早く弁護士にご相談ください。
契約不適合責任の追及は、不適合を知ったときから1年以内に通知しなければならないとされており、短い期間制限の間に対応を進める必要があります。
弁護士に対応を依頼すれば、業者との対応を全て任せることができますので、追完(修補)請求、損害賠償など、契約不適合責任に関する交渉や裁判手続きの負担から解放され、事案に応じた適切な金額や内容で、示談や判決による解決を期待することができるようになります。
太陽光パネルのトラブルに遭遇してしまった場合には、早期の弁護士への相談をおすすめします。
設置義務化の検討が進められている太陽光パネルですが、施工ミスによる雨漏り・火災などのトラブルも指摘されています。
太陽光パネル設置の契約不適合責任を追及するためには、法的知識に加えて、建築に関する知識が求められます。弁護士に依頼することで、示談交渉や裁判手続きに関する負担の軽減、スピーディーな解決、有利な内容での解決を期待することができます。
太陽光パネルのトラブルでお困りの方は、建築訴訟専門チームを有するベリーベスト法律事務所へご相談ください。