新築住宅の工事を請け負ったハウスメーカーや工務店(元請け)は、施工不備などが下請事業者のミスによる場合でも、施主に対して責任を負わなければなりません。
ただし、元請けと下請事業者の間の契約内容によっては、下請事業者に対して請求できる場合もあります。
元請けは施主・下請事業者の両方との調整を迫られますが、必要に応じて弁護士のサポートを受けられることをおすすめします。
今回は、新築住宅の工事トラブルに関して元請けが負う法的責任や、下請事業者との責任分担などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
元受けであるハウスメーカーや工務店は、施主から受注した新築住宅の工事を、下請事業者に再発注するケースがよくあります。
しかし、下請事業者を活用した場合、元請けと下請事業者の間で、施工に関するトラブルに発展するリスクに注意が必要です。
元請けと下請事業者のよくあるトラブルとしては、以下の例が挙げられます。
元請けから下請事業者に対する再発注が行われた場合、実際に新築住宅の施工を担当するのは下請事業者です。
本来建設業法では、一括下請負(いわゆる丸投げ)は禁止されており、元請け業者が責任をもって工事に実質的に関与していかなければならないのですが、元請けによる施工管理が十分に行き届かないケースもあります。
このような状況下では、下請事業者のミスによって、建物の欠陥が発生してしまうリスクもより高くなるでしょう。
建物の欠陥には補修等によって対応する必要がありますが、その際のコストについて、元請けと下請事業者のどちらが負担すべきかがよく問題になります。
元請けと下請事業者の間の情報共有に齟齬があり、元請けが施主から受注していた内容とは違う方法により、下請事業者が工事を行ってしまうケースがあります。
この場合、元請けは、施主との間で、再施工の要否を協議することが必要です。
仮に再施工するとなれば、その費用について、元請けと下請事業者のどちらが負担すべきか問題になります。
再施工しない旨を施主と合意したとしても、本来の契約内容よりも良い建築部材を使ってしまった場合には超過した原材料の調達予算について、元請けと下請事業主のどちらが負担すべきか問題になります。
新築住宅の工事について、下請事業者の責任によるミスが発生した場合、元請けは施主に対してミスの責任を負わなければなりません。
施主と工事請負契約を締結しているのは、元請けであるハウスメーカーや工務店です。
これに対して、下請事業者は元請けとの間で契約を締結しているだけであって、施主との間で契約関係はありません。
したがって、たとえ施工ミスが下請事業者の責任によるものだとしても、施主に対しては元請けが施工ミスの責任を負います。
元請けと下請事業者の間で締結される、再委託に関する工事請負契約であっても、通常の請負契約であることに変わりはありませんから、下請事業者のミスによって生じた損害については下請事業者が責任を負うのが通常です。
この場合、契約上の規定に従って、元請けは、施主に対して負担する責任の全部又は一部につき、下請事業者に請求できる可能性があります。
新築住宅の工事ミス等に関して、元請けが施主に対して負担する責任には、主に「契約不適合責任」と、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という)上の「瑕疵担保責任」の2つがあります。
契約不適合責任とは、請負契約の目的物が種類、品質又は数量等に関して契約内容と適合していない場合に、請負人が注文者に対して負担する法的責任です(民法第562条以下、同法第559条)。
新築住宅の工事について不備があった場合、施主は、施工業者(元請け)に対して、以下の方法により契約不適合責任を追及できます。
契約不適合責任を追及するには、原則として施主が不適合を知ったときから1年以内に、施工業者にその旨を通知しなければなりません(民法第566条、同法559条)。
ただし、この期間は契約で任意に定めることができるので、多くの契約では、「引渡から2年」などと、民法の規定と異なる定めがされています。注意して契約書を確認することが必要です。
なお、下請事業者の責任による施工ミスが発生した場合、下請事業者が元請けに対して契約不適合責任を負担することもあります。
この場合、元請けは下請事業者に対して、上記の各方法によって責任を追及することが可能です。
品確法第94条および同法施行令第5条に基づき、新築住宅の工事請負契約については、契約不適合責任の特則として「瑕疵担保責任」が設けられています。
瑕疵担保責任は、新築住宅の以下の部分について、構造耐力又は雨水の浸入に影響のある瑕疵(不具合)が生じた場合に発生します。
施主が施工業者(元請け)の瑕疵担保責任を追及する方法は、契約不適合責任と同様に以下の4種類です。
ただし、品確法に基づく瑕疵担保責任の場合、責任期間が「引き渡した時から10年」と長期間に設定されており、短縮が認められない点に特徴があります。
つまり、新築住宅の構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分について、構造耐力や雨水の侵入に関わる不具合があった場合、施工業者は長期間にわたって責任を負わなければならない点に注意が必要です。
施工ミス等による新築住宅の欠陥が見つかった場合、元請けと下請事業者は、以下の対応を行い、事態の収拾に努めましょう。
事態の収拾が困難な場合には、お近くの弁護士に相談することもおすすめです。
元請けであるハウスメーカーや工務店は、業者にミスによる欠陥については、施主に謝罪をしたうえで、その後の対応について協議を行いましょう。
誠実な対応に努めて施主の信頼を獲得することが、円満なトラブル解決につながります。
修補可能な欠陥であれば、施工業者側の負担で修補工事を行いましょう。
一方、修補できない欠陥の場合は、代金の減額や損害賠償で対応しましょう。
契約の目的を達成できないような重大なミスだとして、施主に工事請負契約を解除されてしまうと、請負代金全額を失ってしまう場合もあります。
そのため元請けとしては、そうした事態を避けるために、施主に対して積極的に代替案を提案しましょう。
いずれにしても、契約不適合責任や品確法上の瑕疵担保責任を踏まえて、弁護士のサポートを受けながら対応することをおすすめします。
施主に対しては元請けが責任を負担しますが、元請けと下請事業者の責任分担については、別途協議により決定する必要があります。
元請けと下請事業者の工事請負契約における取り決めが基本になりますが、下請事業者に責任があるのかどうか、元請けからの指示が誤っていたなど元請けにも一定の責任があるのではないかといった、様々な争点が発生する可能性があります。
もし元請けと下請事業者の間でトラブルに発展した場合は、弁護士に調整を依頼するとよいでしょう。
元請けと施主、元請けと下請事業者の間の協議がまとまらない場合には、民事調停、建築ADR※、訴訟等の法的手続きを活用することも考えられます。
※建築ADR:建築工事紛争審査会等の、裁判所以外の第三者機関による建築紛争のあっせん、調停、仲裁手続き
これらの法的手続きを活用する際には、各委員や裁判官などに対して、自社の主張を説得的に伝えることが大切です。
弁護士にご相談いただければ、法的な観点から筋の通った主張を組み立て、依頼者にとって有利な解決を目指して参ります。
新築住宅の工事に関する紛争対応は、お早めに弁護士までご相談ください。
下請事業者の責任による新築住宅の施工ミス又は欠陥が発見された場合、元請けは、施主との間で対応を協議するとともに、下請事業者に対する請求を検討する必要があります。
法的な観点から公正かつ妥当な解決を図るためには、弁護士へのご依頼がおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、建築紛争に関する法律相談を随時受け付けております。
新築住宅の工事に関してトラブルに巻き込まれた施工業者の方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。