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    2022年08月04日
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    2022年08月04日
    出来高とは? 工事を途中でキャンセルされた場合の損害賠償請求
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    出来高とは? 工事を途中でキャンセルされた場合の損害賠償請求

    建物の工事を施主が途中でキャンセルした場合、未完成工事の施工済部分(既施工部分)の工事代金(出来高)を請求できる場合があります。

    工事キャンセルによって施工業者が被った損害を、損害賠償請求や出来高報酬請求等によってできる限り回復するためには、一度弁護士にご相談ください。特に出来高については、判例や改正された民法により、報酬請求できる場合が定められているので、着工後のキャンセル時には弁護士へのご依頼をお勧めいたします。

    今回は、建物の新築工事を施主都合でキャンセルされた場合における、損害賠償請求や工事出来高の請求などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、工事の「出来高」とは?

工事における「出来高」とは、途中まで出来上がった部分(=出来形)に相応する請負代金を意味します。

合意解約・施主都合解除・債務不履行解除によって、建物の工事の途中で請負契約が終了した場合、現場には途中まで出来上がった建物が残されます。
この途中まで出来上がった建物を「出来形(工事出来形)」と言います。

請負契約が工事途中で終了した場合、施工業者は施主に対して、出来形を取り壊して原状を回復しなければならないのが原則です。
しかし、出来形に一定の利用価値がある場合には、無為に取り壊すことを強制すると、社会経済上不利益となってしまいます

そこで、以下のいずれかの理由で請負契約が中途終了する場合において、出来形の給付によって注文者(施主)が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなして、請負人(施工業者)に出来高に対応する報酬請求を認めています(民法第634条)。

  • 注文者の責めに帰することができない事由によって、仕事を完成することができなくなったとき
  • 請負契約が、仕事の完成前に解除されたとき


上記の民法第634条の規定は、最高裁判所の昭和56年2月17日判決によって示された規範が、2020年4月1日施行の改正法によって明文化されたものです。

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2、工事の途中で施主側からキャンセル|拒否して工事を続行できる?

工事請負契約については、施主都合による解除が認められています。
したがって、施主からキャンセル(請負契約解除)を申し入れられた場合は、施工業者は工事をストップせざるをえませんが、施主に対して損害賠償を請求できます。

  1. (1)工事はストップしなければならない

    請負契約の注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法第641条)。

    したがって、建物新築の工事請負契約については、施工業者が建物の施工を完成しない間は、施主は施工業者に対して損害を賠償して、施主都合で契約を解除できるのです。

    なお、施工業者側の債務不履行を理由とする解除の場合は、施主は施工業者に対して損害賠償を行う必要はありません。

    施工業者の立場としては、施主側から債務不履行解除を主張されるケースも想定されます。
    この場合、債務不履行を認めないとしても、工事自体はストップすべきでしょう。
    仮に債務不履行解除が認められなくても、施主は無条件で施主都合の解除ができるので、施主の意に反して工事を強行するのは無用のトラブルとなる危険性があります。

    ただし、いわれもない債務不履行解除をされたうえに、損害賠償請求にも応じなければらないということはありませんから、施主側から債務不履行解除の連絡を受けて、施工業者が工事をストップする際には、「債務不履行を認めるわけではない」という留保を明確化した文書を、施主に対して内容証明郵便等で送付しておくとよいでしょう

  2. (2)施主都合によるキャンセルの場合、損害賠償を請求できる

    施主都合で請負契約が解除された場合、施工業者は施主に対して損害賠償を請求できます。

    なお、出来高は請負代金そのものであるため、損害賠償とは別個のものです。
    したがって施工業者は、施主に対して損害賠償を請求すると同時に、出来高の支払いも併せて請求できます。

    損害賠償・出来高の請求に関する考え方は、次の項目で詳しく解説します。

3、工事の途中の施主都合キャンセル時における、損害賠償等の考え方

建物の工事請負契約が、施主都合により工事途中で解除された場合、どのような損害の賠償を請求できるのか、また出来高の金額はどのように算出するのかについて解説します。

  1. (1)工事着工前の施主都合キャンセル時の損害賠償

    基本的に、損害賠償請求できるのは、施工業者がすでに支出した費用と、工事を完成したとすれば得られたはずの利益(逸失利益)になります。
    工事着工前の段階で、工事請負契約が施主都合解除された場合には、実際の建築工事はまだ始まっていないので、すでに支出した費用は、工事が相当進んだ場合と比べて、比較的少額でしょう。

    しかし、工事着工前の段階であっても、工事の準備等を行う過程で生じた費用などは、施主に対する損害賠償の対象となります。
    具体的には、以下の費目について損害賠償請求が認められる可能性が高いです。

    • 発注済みの建築資材の調達費用
    • 設計、図面作成の費用
    • 打ち合わせに要した関係者の稼働費用
    • 現地調査の費用
    • 逸失利益(算定は難しいです。請負代金の50%とされた例もありますが、15%とされた例もあります。)
    など
  2. (2)工事着工後の施主都合キャンセル時の損害賠償

    工事着工後の段階で、工事請負契約が施主都合解除された場合、すでに建物がある程度組み上がってしまっている分、施工業者が支出した費用は大きくなります。

    ただ、この場合にも、既施工部分が利益となるものであれば、その部分は出来高の請求ができるので、既施工部分のための費用は、出来高の報酬請求でカバーすることになり、出来高に加えて損害賠償請求が認められるものではありません
    その結果、施工業者が請求できるのは、既施工部分の代金(出来高)と、未施工部分のために支出した費用と、未施工部分について得たであろう利益(逸失利益)ということになります。

  3. (3)違約金規定があれば、その内容に従う

    工事請負契約では、施主都合解除の場合における違約金規定が定められているケースもあります。
    たとえば、解除の時期に応じて段階的に引き上げる形で、請負代金に対する一定の割合の違約金を定めるのが一般的です。
    違約金は損害賠償の予定と推定され、損害の発生や損害額を立証しなくてもその額を支払ってもらえますが、それ以上の損害が発生したとしても、請求できるのは違約金の額のみとなります。なお、約定額が損害に比して著しく過大な場合には、公序良俗違反等を理由に予定賠償額が一部無効になる可能性もありますので、違約金の額の設定の仕方には注意が必要です

    工事請負契約に違約金規定がある場合には、施主都合解除時の損害賠償は、違約金規定の内容に従います。

  4. (4)出来高の算出に関する考え方

    施工業者が施主に対して出来高を請求できるのは、施主が出来形によって受ける利益の割合に応じた額となります(民法第634条)。

    出来高の算定は難しい問題ですが、例えば、全体の何割くらい出来ているかということから出来高を算定していくこともあります。
    しかし、いくら費用を投下していたとしても、施工に重大な不備があるようなときには、施工業者が投下した費用に比べて、出来高率が低い、あるいは全くないと認定される可能性もあります。

    たとえば、大阪地裁平成17年10月25日判決では、構造上の安全性を欠き、全体としてもずさんな工事が行われた建物の出来形につき、施主の利益を否定しました。

    一方、東京地裁平成26年12月24日判決の事案では、杭工事と基礎工事が行われた段階で、基礎工事の施工不良を理由に、施主が請負契約を解除しました。
    東京地裁は、基礎工事部分について施主の利益を否定した一方で、杭工事部分については、その上から新たな基礎を施工することが可能であるとして、施主の利益を認めました。

    このように、出来形によって施主がどの程度の利益を受けているかについては、施工の内容や質などを個別具体的に考慮して判断されます。

4、工事の途中終了に係る損害賠償・出来高請求などは弁護士にご相談を

施主都合で工事請負契約を中途解除され、施主に対して損害賠償請求や出来高請求を行いたい場合には、弁護士へのご依頼がお勧めです。

損害賠償の請求や出来高を回収するための方法には、示談交渉・調停・ADR・訴訟など、さまざまなパターンが存在します。
施工業者としては、施主側の反応を観察しながら、損害賠償金や出来高をできるだけ多く円滑に回収するため、適切な手続きを選択しなければなりません。

弁護士にご依頼いただければ、紛争の状況を良く分析して、回収可能性の高い請求方法についてアドバイスいたします。
実際の請求手続きについても、弁護士が一括して代理して行いますので、時間と労力を大幅に軽減できます。

また、これまで解説したように、施主都合により工事請負契約が中途解除されたケースでは、損害賠償や出来高の計算に関する考え方もかなり複雑になっています
弁護士は、過去の裁判例や建築の専門家の意見等を踏まえたうえで、施主に対して最大限請求可能な金額を見積もり、施工業者にとってできる限り有利な解決を得られるようにサポートします。

工事請負契約の途中終了に伴う、施主に対する損害賠償・出来高の請求などは、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。

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5、まとめ

建物の工事請負契約が、施主によって中途終了された場合、施工業者は施主に対して、出来形に対応して施主が受ける利益に応じた「出来高」の支払いを請求できます。
また、施主都合解除の場合には、施工業者は施主に対して、出来高とは別に損害賠償を請求することも可能です。

損害賠償や出来高の請求に当たっては、工事請負契約の内容や過去の裁判例などを踏まえて、法的な根拠のある主張を準備することが大切です。

ベリーベスト法律事務所は、施主との間の建築トラブルに関して、事業主からのご相談を随時受け付けております。
スポットでのご依頼と併せて、顧問契約の締結についても、ニーズに合わせて柔軟に承ります。

施主都合で工事請負契約を解除され、対応にお困りの施工業者・建設業界関係者の方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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