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    2022年08月29日
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    2022年08月29日
    依頼通りにリフォーム工事がされていない! 請負代金減額請求は可能か。
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    依頼通りにリフォーム工事がされていない! 請負代金減額請求は可能か。

    リフォーム工事では、施工業者のミスによってさまざまな不具合が生じることがあります。

    このような不具合を発見した場合には、施工業者に対して契約不適合責任を追及することによって、施主の利益を守ることができます。

    契約不適合責任を追及する方法には、いくつかの方法がありますが、今回は、「請負代金減額請求」に焦点を当てて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、請負代金減額請求とは

リフォーム工事で不具合が生じた場合には、施工業者に対して請負代金減額請求をすることが可能です(請負の場合には、請負人が受け取るのは、民法では「代金」ではなく「報酬」と定められているので、報酬減額請求というのが正しい表記ですが、請負代金という言葉も一般的に用いられているので、このコラムでは、「請負代金」減額という表現で統一します)。
以下では、契約不適合責任の概要と請負代金減額請求の方法について説明します。

  1. (1)契約不適合責任とは

    契約不適合責任とは、民法の売買の規定で定められている、売買契約の目的物が種類、品質、数量に関して契約内容に合わないものであった場合の、売主の責任のことです。リフォーム工事は、設備の交換や部分的な修繕などを目的とした工事ですので、法律上は請負契約に該当します。

    売買契約における契約不適合責任は、民法上請負契約にも準用されていますので、リフォーム工事で不具合が生じた場合には、施工業者に対して契約不適合責任を追及できます。
    請負工事で完成した目的物に不具合があったときの責任追及としては、令和2年4月1日前の請負契約には、改正前の民法の規定により「瑕疵担保責任」とされていましたので、こちらの名称の方が馴染みのある方も多いらっしゃるでしょう。令和2年4月1日に施行された民法改正法により、引き渡された請負契約の目的物の不具合を追及する法的根拠は、瑕疵担保責任という名称から、契約不適合責任という名称に改められることになりました。

    契約不適合責任を追及する方法としては、以下の5つの方法があります。

    ① 請負代金減額請求
    請負代金減額請求とは、契約の目的物が結んだ契約の水準を満たしていなかったり、契約とは違う物だったりした場合に、その内容に応じて請負代金の減額を求めることです。

    代金減額請求は、民法改正前には、売買における瑕疵担保責任の数量不足の場合にしか、認める規定はありませんでしたが、民法改正により種類・品質において契約の内容に適合しない場合にも認められる規定が創設されました。

    ② 追完請求
    追完請求とは、引き渡された目的物が、当事者間で締結された契約内容に適合するよう、相手に要求する方法です。追完請求の内容としては、目的物の修理や補強、売買契約であれば代替物を渡す、不足分を引き渡すなどがあります。

    リフォーム工事で不具合が生じた場合には、追完請求(修補工事の請求をすることになるでしょう)を行うことによって、不具合のない状態に修繕してもらうことが可能です

    ③ 催告解除
    催告解除とは、施工業者に対して、相当期間を定めて追完の催告をしたにもかかわらず、催告期間内に契約不適合の状態が改善されない場合に契約を解除することができるという方法です。

    ただし、契約不適合の状態があったとしても、それが社会通念上軽微なものである場合には、解除までは認められません。

    ④ 無催告解除
    無催告解除とは、施工業者に対して催告をすることなく、請負契約を解除することができるという方法です。無催告解除が可能となるのは、契約内容の全部の履行が不可能であるような重大な不具合があるときになります。現在の状況から、どれだけ修正や補修をしても、契約内容が全く履行されたといえないようなときも、重大な不具合があるといえるでしょう。

    ⑤ 損害賠償請求
    目的物に契約不適合が生じたことについて、施主に損害が発生し、施工業者に責任を取るべき事由がある場合には、施主は、施工業者に対して損害賠償請求をすることができます。

  2. (2)請負代金減額請求の方法

    リフォーム工事をして引き渡された物件に、契約内容に適合しない不具合があった場合としても、すぐに請負代金減額請求をすることができるわけではありません。

    請負代金減額請求をするためには、まずは施工業者に対して相当期間を定めて追完の催告を行います。そして、期間内に施工業者が契約内容を守るための仕事を追加で行わない場合には、請負代金減額請求が可能になります(民法563条1項、559条)。

    もっとも、追完が不可能であるときや、追完の催告をしたとしても追完をしてくれる見込みがないことが明らかであれば、追完の催告をすることなく、請負代金減額請求をすることができます(民法563条2項、559条)。

    請負代金減額請求には、施工業者の帰責事由は必要とされていませんので、契約内容に不適合な状態であることを証明することができれば、請負代金の減額を受けることができます。

    なお、施主によって契約内容の不適合が生じた場合には、請負代金減額請求をすることはできません(民法636条本文)。

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2、請負代金減額請求をする場合には、期限に注意

請負代金減額請求をする場合には、期間制限がありますので注意が必要です。

契約不適合責任のうち、種類または品質に関する契約不適合責任を追及する場合は、施主が契約不適合を知ったときから1年以内に施工業者に対して通知しなければなりません(民法637条本文)。ただし、施工業者が不適合を知っていたり、重大な過失によって知らなかった場合には1年という期間制限はありません(民法637条但書)。

これに対して、数量に関する契約不適合責任については、期間制限はありません。契約不適合を知ったときから1年以上経過していたとしても契約不適合責任を追及することができます。

契約不適合責任を追及することができる期間は、非常に短くなっていますので、契約不適合があることを知った場合には、早めに行動することが大切です。

3、施工業者に責任がある場合には、損害賠償請求も可能なのか

リフォーム工事の不具合について施工業者に責任がある場合には、請負代金減額請求だけにとどまらず、損害賠償請求をすることも可能なのでしょうか。

請負代金減額請求をするということは、不具合のある目的物を契約に適合したものとして受け入れて、それに見合う請負代金額までの減額を請求するということです。
だから、請負代金減額請求をしたうえで、さらに、その不具合を直す費用を損害賠償するということはできませんし、契約に不具合があるとして解除するということもできません
理論的には、請負代金減額請求(不具合ある目的物を契約に適合したものとして受け入れるということ)と、両立する損害賠償であれば請求できるということになりますが、具体的にどのようなものが請求できるのかは、これからの解釈になってくると思われます。

また、請負代金減額請求は、施工業者の過失を必要としないものであり、施主にとって対抗手段が増えたとも考えられますが、減額されるべき請負代金というのはいったい幾らなのかという難しい問題もあります。

減額されるべき請負代金額の算定については、民法上の規定はなく、解釈に委ねられています。契約で定められた請負代金から、不具合の修補に要する費用を単純に控除するという考え方もあるようですが、それが通説であるとも言えない状況です。不具合のある工事部分が、工事全体のどれだけの割合にあたるかということを判断して、その割合で減額するという考え方もあり、実際に裁判になった場合に、幾らまで減額されるべきなのかということは、難しい問題になるでしょう。

4、請負代金減額請求をしたい場合は弁護士に相談を

リフォーム工事をした施工業者に対して、請負代金減額請求をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)契約不適合かどうかは専門的な判断を要する

    リフォーム工事によって不具合が生じたとしても、契約不適合責任を追及するためには、単に不具合が生じているということだけでなく、その不具合が契約内容に適合しない状態であることを証明していかなければなりません。

    そのためには、当事者間でどのような契約が締結されたか、という契約締結に至る一切の事情を考慮して契約内容を判断し、引き渡された目的物が契約内容に合っているかどうかを判断することが必要です

    このように契約不適合かどうかを判断するためには、契約の解釈が必要となりますので、法的知識と経験がなければ適切な判断を行うことができません。そのため、施工業者の責任を追及することができるかどうかを判断するためにも、まずは弁護士に相談をすることが大切です。

    また、請負代金請求権を行使するということは、不具合のある目的物を契約に適合したものとして受け入れることですから、請負代金請求権を行使したほうが良いのか、損害賠償請求を行ったほうがよいのかは、慎重に考えていくべきことです。専門家である弁護士と相談されることをお勧めします。

  2. (2)契約不適合責任は任意規定であるため契約書の確認も必要

    契約不適合責任は、任意規定であるため、当事者の合意によって施工業者の契約不適合責任を減免することも可能です。そのため、施工業者との間の請負契約書に、契約不適合責任を免責する旨の条項がある場合には、原則として、施工業者の責任を追及することはできなくなってしまいます。

    しかし、このような特約があったとしても、消費者契約法などによって特約が無効になることがありますので、すぐに諦める必要はありません。契約書をきちんと読み込み、トラブルが起こった場合にどのような方法が最適な解決方法であるかは、専門家である弁護士に相談をすることによって、アドバイスをしてもらうことができます。

    ただし、契約不適合責任の追及をする際には、民法では1年という非常に短い期間制限があります(契約でもっと短くされていることもあります)ので、不具合を知った場合には、早めに弁護士に相談をすることが大切です。

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5、まとめ

リフォーム工事では、契約内容があいまいであったために希望していたものと違う仕上がりとなってしまった、などのトラブルが生じることがあるでしょう。このようなトラブルが生じた場合には、契約内容を解釈し、トラブルの内容が契約内容に適合していない状態であるといえれば、施工業者に対して、代金減額請求などの契約不適合責任を追及していくことが可能です。

もっとも、契約不適合責任の追及には、建築分野に関する専門的な知識と経験が必要となりますので、施主の方が一人で対応するのは非常に難しいといえます。このようなリフォームに関するトラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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