マンションで漏水(水漏れ)が発生した場合は、管理組合が責任を負う可能性があります。
管理組合の担当者は原因調査を十分に行ったうえで、損害賠償などの必要な対応を行いましょう。早い段階で弁護士に相談することを検討してください。
本記事ではマンションにおける漏水事故について、管理組合は責任を負うのかどうか、どのように対応すべきかなどを弁護士が解説します。
マンションで漏水が発生した場合は、被害の拡大を防止しつつ、区分所有者や賃借人とのトラブルに備えるため、迅速かつ丁寧に原因調査・対策を行うことが大切です。
マンションで漏水が発生したときは、管理組合が主導して被害の拡大を防止する対応を行いましょう。具体的には、給水・排水設備の使用停止や止水などの措置を講じるとともに、被害箇所の養生や漏水を止めるための応急措置、被害状況の確認等を速やかに行うことが大切です。
また、関係者への連絡も迅速に行いましょう。
管理会社や施工業者に連絡して、修繕などの対応を求めます。保険に加入している場合は保険会社に連絡し、どのような補償を受けられるのかを確認しておきましょう。
漏水が起こっている現場の状況を記録化することも大切です。
後に区分所有者や賃借人とトラブルになった際、現場の記録を証拠として利用できることがありますので、写真や動画を撮影する、報告書を作成するなどの対応を行いましょう。
また後述するように、専門的な原因調査を実施することも重要になります。
初動対応が遅れると、漏水による被害を拡大させてしまうことに加えて、区分所有者や賃借人との間でトラブルに発展するリスクも高まります。
管理組合としては、管理会社や弁護士と協力しながら、迅速に初動対応を進めてください。
マンションにおいて漏水が発生したときは、その原因を正確に特定することが重要です。
原因調査が重要である理由のひとつは、的確な修繕を行うためです。漏水の原因を明確に把握できれば、それを解消するために必要十分な修繕を実施できます。
さらにもう一つ、区分所有者や賃借人とのトラブルに備える観点からも、漏水原因の調査はきわめて重要です。
後述するように、漏水の原因が専有部分にあるのか、それとも共用部分にあるのかによって、管理組合が責任を負うのかどうかが変わります。
管理組合としては、漏水の原因を客観的な調査を通じて把握したうえで、その結果に従って損害賠償請求への対応などを適切に進めることが求められます。
漏水原因の調査には専門的な知見を要するため、専門業者に依頼して実施しましょう。調査が不十分だと、被害の拡大やトラブルの深刻化につながりかねないので、客観的な調査をきちんと行うことが大切です。
漏水原因の調査や修繕を実施する際には、上階住戸や隣接住戸への立ち入りが必要となる場合があります。しかし、区分所有者の理解が得られず、立ち入りや調査を拒否されるかもしれません。
区分所有者の協力が得られない場合には、まず区分所有法第6条および管理規約上の根拠を示して、立ち入り調査への協力義務があることを説明し、任意の協力を求めましょう。
それでもなお協力が得られないときは、法的な対応を検討する必要があります。
たとえば、裁判所に対して住戸への立ち入りを妨害してはならない旨を命ずる仮処分を申し立てることが考えられます。仮処分命令が発せられたにもかかわらず、区分所有者が立ち入りを拒み続けた場合は、間接強制(民事執行法172条)の申し立てにより金銭的な制裁を課すことが可能です。
漏水の調査や修繕に必要な立ち入りについて、区分所有者の理解が得られず困っているときは、弁護士に相談してください。
マンションにおける漏水について誰が責任を負うのかは、漏水の原因がどの部分にあるかによって異なります。
共用部分の設置・保存に瑕疵(かし)があったために漏水が発生した場合は、管理組合が責任を負うことに注意が必要です。
マンションの設備は「専有部分」と「共用部分」に区分されます。漏水の原因がどちらにあるかによって、誰が損害賠償責任を負うかが変わります。
もっとも、個々の設備が専有部分と共用部分のどちらに含まれるかは、管理規約等の定めを踏まえて検討する必要があります。
前述の通り、共用部分の設置・保存に瑕疵があり、その瑕疵が原因で漏水が発生した場合は、民法第717条第1項に基づき、管理組合が工作物責任を負う可能性があります。
民法第717条第1項は、「土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた」場合、その工作物の「占有者」が損害賠償責任を負うことを規定しています。共用部分の管理責任を担う管理組合は、この「占有者」に当たると解されるためです(後述の最新判例参照)。
したがって、漏水原因が共用部分にあることが判明したときは、被害を受けた区分所有者や賃借人に対し、管理組合が損害を賠償する必要があります。
調査をしても漏水原因が明らかにできないというケースは多々あります。
その場合、共用部分の設置・保存の瑕疵を立証することが困難になるため、被害を受けた区分所有者などからの損害賠償請求が認められにくくなる傾向があります。なぜなら、請求する側が共用部分の瑕疵を立証する責任を負うためです。
ただし、管理組合側の調査では原因が判明しなかったケースでも、被害者側が独自に調査を行った結果、共用部分に原因があると報告されることがあります。この場合、訴訟において調査報告書が証拠として提出され、被害者側の損害賠償請求が認められる可能性が出てきます。
原因不明だからといって、管理組合として何も対応しなくてよいわけではありません。引き続き調査を続けるとともに、弁護士に相談しながら適切な対応を検討すべきでしょう。
最高裁令和8年1月22日判決では、外壁コンクリート躯体部分と床下スラブ部分の亀裂などが原因で、マンションの室内において漏水が発生した事案が問題となりました。
原審となる東京高等裁判所では、管理組合は当該共用部分の「占有者」には当たらないとして損害賠償請求を棄却していました。しかし、最高裁は、以下の理由からこの判断を否定し、区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、共有部分について民法第717条第1項の「占有者」に当たると判断しました。
したがって、漏水原因が共用部分にあることが判明したときは、特段の事情がない限り、区分所有者の団体(管理組合など)が工作物責任を負うことになり、被害を受けた区分所有者や賃借人に対し、管理組合がその損害を賠償する必要が生じます。
漏水事故に関する損害賠償責任が多額に及ぶ場合、管理組合が自力でその費用を捻出することは困難なケースが多いでしょう。
本章では、漏水のような不測のトラブルに備える方法と注意点を解説します。
管理組合が加入・活用できる保険には、主に以下のものがあります。
保険を申請しても保険会社から支払いを拒否されてしまうケースがあります。また、管理会社が適切に対応してくれないケースも少なくありません。そのような場合は、以下の対応を検討してください。
マンションの漏水について、管理組合が区分所有者や賃借人とのトラブルが深刻化しそうなときは、速やかに専門家のサポートを受けることをおすすめします。
管理組合の担当者が漏水トラブルについて相談できる窓口としては、主に以下のものがあります。
区分所有者や賃借人から損害賠償請求の訴状が届いた場合は、なるべく早いタイミングで弁護士へ相談してください。
訴状を受け取っている場合、裁判所が指定する期日までに答弁書を提出しなければなりません。対応が遅れると、相手方の主張を認めたものとして扱われる可能性があるためです。
また、訴状が届く前の段階であっても、相手方から内容証明郵便が送付されてきた場合や、話し合いが平行線をたどっている場合には、弁護士への相談を検討すべきでしょう。
漏水トラブルを適切な形で解決するためには、建築訴訟の知見を有する弁護士のサポートが大いに役立ちます。専門の調査会社と連携して漏水の原因を正確に特定し、それを踏まえて法的な観点から示談交渉や訴訟対応を進めることが期待できます。
また、共用部分と専有部分の区分に関する技術的な判断や、管理規約の解釈など、建築と法律の両面にわたる複合的な問題に対応することが可能です。
マンションにおける漏水の原因が共用部分にあるときは、管理組合が被害者に生じた損害を賠償する必要があります。弁護士や調査会社と協力して、原因調査や被害者との和解交渉、訴訟などの対応を適切に進めてください。
マンションでの漏水を含む建築トラブルに関するご相談を随時受け付けております。漏水による区分所有者や賃借人とのトラブルに悩んでいる管理組合の担当者はご相談ください。


