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    2024年01月11日
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    公共工事の設計ミスは誰に責任がある? 法規制とポイント
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    公共工事の設計ミスは誰に責任がある? 法規制とポイント

    公共工事は、一般的な建設工事に比べると代金未払いなどによるトラブルが少なく、公的な受注審査が要求される大規模工事を請け負えば企業としての信用も高まるため、受注者として大きなメリットがあるといえます。

    しかし、受注した公共工事に後から設計ミスがあることが判明した場合、責任の所在を明らかにできないと、工事を進めた受注者が責任を問われる可能性があります。不当な責任を負わないためにも、公共工事に関する法律の理解を深め、誰がどのような責任を負うのかを明確にすることが大切です。

    今回は、公共工事に設計ミスがあった場合の責任の所在と法規制について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、公共工事発注・受注の流れ

公共工事は、どのような流れで発注・受注されるのでしょうか。以下では、公共工事の発注・受注に関する一般的な流れを説明します。

  1. (1)発注者側の流れ

    発注者側では、以下のような流れで公共工事の発注を行います。

    ① 企画
    公共工事の必要性が生じた場合、まずは行政機関の担当者が公共工事の企画立案を行い、予算措置を講じます。公共工事は、すべて税金により賄われることになりますので、公共工事の実施にあたっては議会の承認が必要です。

    ② 基本設計
    基本設計とは、各種法規制などの条件を前提に基本的な内容を図面で明らかにすることをいいます。基本設計では、以下のような設計図書が作成されます。

    • 仕様書
    • 仕上表
    • 配置図
    • 平面図
    • 断面図
    • 立面図
    • 概算見積書


    ③ 実施設計
    実施設計とは、基本設計に基づき公共工事の施工業者が実際に建築工事を行うことができるようにするために、詳細な図面や仕様書を作成することをいいます。
    実施設計では、以下のような設計図書が作成されます。

    • 意匠設計図
    • 構造設計図
    • 構造計算書
    • 設備設計図
    • 工事仕様書
    • 工事費積算書


    ④ 積算
    公告・入札での予定価格を算出するために、公共工事の積算を行います。積算とは、工事の費用を積み上げて、全体の費用を算出することをいいます。

    ⑤ 公告
    公告とは、建設業者などに発注する公共工事の内容を公開し、入札への参加を促すことをいいます。建設業者は、公開された設計図書の内容から自社の技術力で請け負うことができるか、どの程度の費用であれば請け負うことができるのかなどを検討します。

    ⑥ 入札
    入札とは、公共工事を受注する業者を決める方法で、入札に参加した複数の業者のうち最もよい条件を出した業者に公共工事が発注されます。

  2. (2)受注者側の流れ

    発注者側では、以下のような流れで公共工事の受注を行います。

    ① 入札
    入札にあたっては、発注者側で最低落札価格を設定していますので、それを下回らない金額で入札する必要があります。
    なお、公共工事の入札に参加するためには、以下の条件が必要になります。

    • 建設業許可の保有
    • 経営事項審査の受審
    • 入札参加資格審査の申請


    ② 受注
    公共工事を落札した場合には、発注者と受注者との間で工事請負契約書を締結し、受注者は施工計画書の作成を行います。

    ③ 施工
    受注者は、施工計画書に従って、公共工事を実施します。

    ④ 引き渡し
    公共工事の目的物が完成したら、必要な検査を終え、目的物を発注者に引き渡します。受注者は、目的物の引き渡し後工事代金を受け取り、工事は完成となります。

2、公共工事の設計ミスは誰に責任があるのか

公共工事の請負契約の基本は、設計図書に基づいて工事を行うことにあります。

しかし、建設工事ではその特性から、工事現場と設計図書との間で施工の前提に食い違いが生じたり、設計図書では想定外の条件が施工期間中に発生することがあります。

このようなケースが発生した場合には、過去には、公共工事を受注した受注者が責任を問われることも少なくありませんでした。

しかし、設計側に大きなミスがあった場合に責任の所在が曖昧であるという指摘もあり、平成7年に公共工事の設計業務委託契約書のひな型である「土木設計業務等委託契約書」の内容が改定され、その後、数回の改定を経て、現在では責任の所在に関するルールの明確化が下記の限度で図られてはいます。

同契約書では、
設計の受注者は、発注者が示す設計図書または業務に関する指示に基づいて設計業務等を実施する
ことが責務とされています。

そのため、同契約書上は、公共工事の設計そのものにミスがあった場合、その責任は、公共工事の発注者が負うことになります。

3、公共工事に関わる法律・規制

公共工事に関わる主な法律や規制としては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)公共工事品確法

    公共工事品確法とは、正式名称を「公共工事の品質確保の促進に関する法律」といいます。この法律は、公共工事の品質を確保するために、品質確保の促進に関する基本事項を定めた法律で、品質と価格に優れた契約を公共工事契約の基本に位置付けています。

    この法律が制定された背景には、発注者である国・地方公共団体の財政状況の悪化、不良・不適格業者の参入、ダンピングの増加などによる品質低下の懸念がありました。

    すなわち、発注者においては受注者の選定にあたって十分な技術力の審査が行われておらず、適切な技術力を持たない施工業者による不良工事が発生しており、国の厳しい財政状況を考慮すると予算のより効果的かつ効率的な執行が求められています。

    このような背景を受けて、公共工事品確法では、以下のような規定を設けています。

    • 個々の工事において入札参加者の技術力の審査を実施しなければならない
    • 民間の技術提案の活用に努める
    • 民間の技術提案を有効活用するための必要な措置を講じる
  2. (2)入契法

    入契法とは、正式名称を「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」といいます。この法律は、情報の公表や施工体制の適正化等の措置を通じて、公共工事の入札および契約の適正化を図ることを目的とした法律です。

    入契法では、適正な入札および契約を行うために、入契法の基本原則に基づく発注者の義務を規定するとともに同法の運用につきガイドラインなども規定されています。

    なお入契法の基本原則とは、以下のような内容です。

    • 透明性の確保
    • 公正な競争の促進
    • 適正な施工の確保
    • 不正行為の排除の徹底
    • ダンピング受注の防止
  3. (3)建設業法

    建設業法とは、建設業者の資質向上、建設工事請負契約の適正化等を通じ、建設工事の適正な施工や発注者保護などを図るための規制を定めた法律です。公共工事を受注する建設業者などは、建設業法のルールを順守して施工を行わなければなりません。

    建設業法による代表的な規制が、建設業の許可制です。建設業者は、国または都道府県の許可を受けなければ建設業を行うことができません。これは、公共工事の入札に参加する資格のひとつとされていますので、公共工事の受注を予定している建設業者は、必ず許可を受ける必要があります。

    また、建設業法に違反した場合には、営業停止、許可取り消しなどの行政処分や刑事罰の対象になる可能性もありますので注意が必要です。

4、公共工事の設計ミスに関連して損害が発生した場合

公共工事の設計ミスに関して損害が発生した場合には、どのような対応が必要になるのでしょうか。

  1. (1)どのようなことが損害といえるのか

    公共工事の設計ミスが発覚した場合には、その責任は、基本的には、公共工事の設計を請け負った業者が負うことになります。

    公共工事の設計ミスによって発生する損害としては、以下のようなものが考えられます。

    • 契約不適合修補費用
    • 契約不適合に起因する補修工事費用
    • 設計ミスへの対応で必要となった検証費用
    など
  2. (2)公共工事の設計ミスで損害が発生した場合の対処法

    公共工事の設計ミスで発生した損害は、発注者が設計ミスを行った業者に対して請求することになりますが、設計ミスにより施工にあたり追加費用が生じた場合には、工事の受注者と工事の発注者との間で、追加費用の負担方法などを協議していくことになります。

  3. (3)公共工事の設計ミスに関する問題は弁護士へ依頼を

    公共工事の設計ミスに関する問題が生じた場合には、発注者、受注者、設計者などの当事者の間で責任の所在を特定して、不当な責任を負わないよう、交渉等により法的に責任を負う当事者が誰かを説得的に主張していく必要があります。

    受注者である施工業者が不当な責任を負わされないようにするためには、工事の成果物に生じた契約不適合の原因を特定し、原因となった当事者に対してしっかりと責任追及していくことが重要です

    そのためには、公共工事をはじめとした建築紛争に関する知見や実績がある弁護士に依頼するのがおすすめです。実績のある弁護士に依頼をすることで、当事者との交渉、交渉が決裂した場合でも裁判による解決が期待できます。

    ベリーベスト法律事務所は、必要に応じて一級建築士と連携し、国や地方自治体への適正な主張をサポートします。公共工事の設計ミスに関する問題でお困りの場合は、まずは当事務所までご相談ください。

5、まとめ

通常、公共工事の受注は、受注業者にとって大きなメリットになります。しかし、公共工事の設計ミスに関するトラブルに巻き込まれてしまった場合には、自社の利益を守るためにも、早急に弁護士に相談して責任の所在を明らかにしていくことが重要です。

ベリーベスト法律事務所では、建築訴訟専門チームが一級建築士と連携しながら、トラブルの早期解決にあたります。公共工事の設計ミスに関する問題でお困りの方は、まずは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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