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    2022年06月09日
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    注文住宅の新築工事の契約解除をしたい場合の注意点を解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    注文住宅の新築工事の契約解除をしたい場合の注意点を解説

    注文住宅の新築工事を依頼したとしても、「転勤や引っ越しが突然決まった」「施工業者の対応に不信感を抱いた」等の理由で、新築工事の契約を解除したいと考えることもあります。

    しかし、新築工事の契約を解除する場合には、損害賠償が必要な場合もありますし、未施工部分しか解除できず、既施工部分についての代金を払わなくてはならないという場合もありますので、慎重に判断することが大切です。

    今回は、注文住宅の新築工事の契約を途中で解除する場合の注意点等をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、注文住宅の新築工事の契約解除はできるのか?

そもそも、注文住宅の新築工事の契約を解除することができるのでしょうか。まずは、契約解除を考え得るタイミングを整理した上で、契約解除が可能かどうか、確認していきましょう。

  1. (1)注文住宅の新築を依頼した施主が解除を検討する場合の具体例

    施工業者との間で注文住宅の新築工事の請負契約をしたとしても、以下のような事情がある場合には、契約の解除を検討する方も少なくありません。

    ① 転勤や引っ越しが急に決まった
    その地域に住むことを前提として土地を購入し、施工業者との間で注文住宅の新築工事の請負契約をしたとしても、その後に仕事や家庭の事情で転勤や引っ越しを余儀なくされることもあります。
    一時的な引っ越しであり、すぐに戻ってくる予定である場合には、そのまま注文住宅の建築を進めても問題ありませんが、長期的な引っ越しであり、その土地に戻ってくるかどうかが不明確な状態では注文住宅の建築を進めるのは難しくなります。

    ② 施工業者の対応や工事の進捗、経営状態に不信感を抱いた
    注文住宅の建築を依頼する前は、施工業者の担当者が親身になって対応してくれていたものの、契約後は、定期的な打ち合わせもなくなり、質問に対する回答もなかなかしてくれないということもあります。また、工事に着工したものの予定よりも大幅に遅れており、工事内容にも不満があるという場合には、「このままこの施工業者に任せてもよいのだろうか」と不安になることもあります。

    ③ より条件がよくて信頼できる施工業者が見つかった
    現在の施工業者に注文住宅の新築工事を依頼したものの、その後、別の施工業者から好条件での見積もりが提示されるということがあります。本来であれば、契約前に複数の施工業者から見積もりをもらう等して、一番条件の良い施工業者を選定すべきですが、見積書が提示されるタイミングによっては、他社と契約後に好条件が提示されるということもあります。
    施主としては、少しでも安くかつ少しでも高品質で注文住宅を建てることができる施工業者を選びたいと考えますので、より条件が良くて信頼できる施工業者が見つかった場合には、現在の施工業者との契約を解除できないかと考えてしまうこともあるでしょう。

  2. (2)契約解除をすることはできる?

    上記のような理由で契約解除をしたいと考えたとしても、実際に契約を解除することはできるのでしょうか。

    なお、令和2年4月1日前に締結された契約の場合には改正前民法が適用され、他方で、令和2年4月1日以降に締結された契約の場合には改正後民法が適用されることになりますが、下記では改正後民法を念頭において説明を進めていきます。

    注文住宅の新築工事の契約は、民法上の「請負契約」という契約類型になります。請負契約に関する解除について定めた民法641条は、施主から請負契約を解除する場合には、施工業者の建物を建築するという仕事が完成する前、つまり建物完成前であれば、いつでも契約を解除することができるとしています。また、建築中の建物に欠陥が見つかった等、施工業者の側に落ち度がある場合には、民法541条、同法542条に基づいて契約を解除することもできます。

    ただし、施主側からの一方的な理由による契約の解除の場合(民法641条)には、施工業者が新築工事に向けた部材の発注や労力が全て無駄になってしまいますし、工事代金も請求できなくなってしまいますので、施主は施工業者に対して、施工業者が被った損害を賠償しなければなりません

    このように、注文住宅の新築工事請負契約は、建物が完成する前であれば、いつでも解除することができますが、施工業者に発生した損害賠償を行わなければなりません。
    また、すでに建物の一部が建築されているときには、既施工部分の代金が算定できて、当事者の利益になるようなときには、未施工部分しか解除できず、既施工の出来高部分の請負代金を払わなければなりません(民法634条)。

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2、新築工事の途中に欠陥が判明した場合、どのような対応ができる?

「新築工事の契約を解除したい」とまではいかなくても、注文住宅の新築工事の途中で、何らかの欠陥が判明した場合には、「直して欲しい」と思うのは当然のことです。

それでは、新築工事の途中で欠陥が見つかったとき、どのような対応を求めることができるのでしょうか。

  1. (1)具体的な対応方法

    ① 施主からの修補請求
    注文住宅の新築工事の契約をした当事者には、その契約を誠実に履行する責任を負うことになります。建築途中の建物に不備がある場合には、施工業者は、契約内容に従った債務の履行をしていないことになります。そのため、施主は、施工業者に対して、不具合の補修を請求することが可能です。

    ② 契約違反を理由とする契約の解除
    施主からの修補請求によって、施工業者が補修をしてくれればよいですが、施主からの催告にもかかわらず、施工業者が修補を行わない場合や、補修が不可能で、補修がされなくては契約の目的を達することができない場合には、施主は施工業者の債務不履行を理由に契約の解除をすることができます(民法541条、同法542条)。ただし、建物の欠陥が軽微なものであった場合には、解除が制限されることもありますので注意が必要です(民法541条但書)。

    ③ 損害賠償請求
    施工業者との間の契約を解除した場合には、施主は、別の施工業者に依頼して未施工部分の工事を進めることになります。しかし、この場合に施主が支払う契約金額は、当初の施工業者が一貫して工事をした場合に比べて割高になることが多いといえます。
    このように施主が他の施工業者に発注せざるを得ない状況になったことによって生じた余分な代金負担については、当初の施工業者に対して損害賠償請求をすることができます(民法415条)。

  2. (2)対応にあたっての注意点

    建物の欠陥を理由に施工業者に対して対応を求める場合には、「欠陥」の種類や程度、契約書の明確さ等によって、欠陥に当たるかどうかの判断が分かれる可能性があります。
    欠陥があるということは「瑕疵」があるということですが、契約の内容が実現されていないことが「瑕疵」にあたります。ですから、契約で明示されていない部分に瑕疵があるかどうかとなると、契約で合意した内容はそもそもどういうものであったのかというところから、確定していかなければならなくなるのです。

    欠陥の有無で争いが生じてしまうと、工事がストップしてしまい、資材が劣化したり、引渡時期が遅れる等の不利益が生じる可能性がありますので、早い段階で問題点を明確にするためにも、契約書面や図面、見積書で可能な限り契約内容を明確にしておく、設計図書どおりに施工してもらえるよう、第三者の建築士事務所に工事監理業務を依頼する等の対応が必要となるでしょう。

    また、すでに行われている工事については、工事内容が可分であり(可分というのは、行われた工事について施工業者の報酬が算定できるものと解されています)、当事者が既施工部分に利益を有する場合には、施工業者に債務不履行があったとしても、既施工部分の契約を解除することはできません。この場合には、施主は、契約を解除したとしても既施工部分に対応する請負代金を支払う必要がありますので注意が必要です(民法634条)。

    なお、工事が完了し、建物が完成して引渡しを受けた後では、瑕疵があったなど場合には、契約不適合責任を追及して、瑕疵の修補や代金の減額を求めていくことになりますが、この場合にも、補修を求めても補修が行われず、それが社会通念上軽微とは言えないような場合や、補修が不可能で契約の目的を達成することができないような場合には、契約を解除することができます(民法541条、同法542条)。
    既履行部分の解除ができないことを定めた民法634条の規定は、仕事を完成することができなくなった場合と、仕事の完成前に解除された場合の規定なので、完成後に解除する場合には、原則どおり、解除により遡及的に契約は消滅し、支払った代金を返還し、建物は収去することになります。

3、契約違反がある場合と契約違反がない場合との違い

様々な事情から、「どうしても新築工事の契約を解除したい!」と思う方もいるでしょう。

注文住宅の契約を解除する場合には、施工業者に契約違反がある場合とそうでない場合とで具体的な解除の方法が異なってきます。

  1. (1)契約違反がある場合

    建物に欠陥があり修補を求めても対応してくれない、修補が不可能で契約をした目的が達せられない等、施工業者に契約違反がある場合には、施工業者の債務不履行を理由として契約を解除することができます(民法541条、同法542条)。

    建物完成後の債務不履行を理由とする解除の場合には、契約の全部が遡及的に消滅することになりますので、契約当事者は原状回復義務を負うことになります。
    ですが、建物完成前の解除で、既施工部分が可分で当事者に利益になる場合には、未施工部分の解除しかできないので、既施工部分の原状回復といったことは求めることができず、施主は、既施工部分についての報酬を支払わなければなりません(民法634条)。

    また、引き渡された建物の欠陥等、契約不適合を理由に契約を解除する場合には、施主が不適合を知ってから1年以内に通知しなければならないという期間制限があります(民法637条1項)。

    工事の途中で施工業者の契約違反を理由に契約の解除をし、既施工部分の給付を受けた場合には、施主は、別の施工業者に依頼をして未施工部分の工事を進めていくことになります。一般的には別の施工業者に依頼した場合には、余分な代金負担をしなければならなくなりますので、建物完成のために現実に要した費用と当初の請負契約における代金の差額については、損害賠償請求をすることもできます(民法415条)。

  2. (2)契約違反がない場合

    売買契約等の一般的な契約の場合には、契約当事者は契約内容に拘束されることになりますので、契約当事者の債務不履行等がない限りは契約を解除することができないのが原則です。しかし、請負契約の場合には、施主が不要としているにもかかわらず建物の完成を強制することは無意味ですので、仕事の完成前、つまり建物の完成前であれば、債務不履行がなかったとしてもいつでも解除することができます(民法641条)。

    ただし、施工業者の契約違反を理由としない解除の場合には、施主の一方的事情によって工事が中途解除されることになりますので、施主は、施工業者に対して損害賠償をしなければなりません(民法641条)。

    この場合の損害賠償の範囲としては、施工業者が工事のために既に支出した材料費や人件費等に限らず、工事が完成したとすれば得ていた利益(逸失利益)についても、対象となります。たとえ、施工業者が着工する前に契約解除をしたとしても、損害が生じている場合には、施主は施工業者に対して、その損害を賠償する必要があります。

4、新築工事の契約を解除したいと考えているなら弁護士に相談

新築工事の契約を解除したいとお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)契約解除の方法についてアドバイスをもらえる

    請負契約を解除する場合には、契約違反を理由とする解除かそうでない解除なのかによって、損害賠償が必要かどうかが異なってきます。施主側に少しでも有利に交渉を進めるためには、施工業者の契約違反を立証して契約を解除することが必要です。

    ただし、契約違反の立証には、当事者間の契約内容の解釈等が必要となりますので、適切に判断するためには、法律に関する専門的知識と建築に関する専門的知識とが必要不可欠となります。ご自身のケースが施工業者の契約違反を理由に解除することができるケースであるかについては、弁護士や建築士に相談をしてアドバイスしてもらうとよいでしょう。

  2. (2)損害賠償の要否・金額について相談できる

    請負契約を解除することになった場合には、施主が施工業者に対して、又は施工業者が施主に対して損害賠償をすることが考えられます。請負契約に違約金の規定がある場合には、それに従って計算することになりますが、そのような規定がない場合には、具体的な損害項目を積み上げて、具体的な損害額を主張立証していかなければなりません。

    ご自身が請求する場合でも、施工業者から請求される場合でも、有利な内容で解決するためには、弁護士のサポートが不可欠となります。少しでも有利に話し合いを進めたいとお考えの方は、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

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5、まとめ

注文住宅の建築の場合には、施工業者に契約違反がある場合はもちろん、契約違反がない場合であっても、建物が完成する前はいつでも契約を解除することができます。しかし、注文住宅の建築契約を解除するとなると、どの範囲で解除ができるかという問題や、施工御者にどれだけの損害賠償をする必要があるかなど、トラブルになる可能性があります。建築トラブルは専門性が必要とされる分野です。

不動産会社や住宅会社との建築トラブルでお悩みの方は、建築専門チームのあるベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
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