訪問販売や電話勧誘販売を受けて申し込んだリフォーム契約は、クーリングオフによって解除できる場合があります。
仮にクーリングオフが認められなくても、他の方法によってリフォーム契約をキャンセルできる可能性もありますので、弁護士にご相談ください。
本コラムでは、リフォーム契約をクーリングオフするための要件や、リフォーム契約をキャンセルできるその他の方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
リフォーム工事の契約は、主に訪問販売または電話勧誘販売によって締結した場合に、クーリングオフによって解除できることがあります。
クーリングオフとは、契約締結後一定の期間に限り、消費者側がペナルティーを受けることがなく契約を解除できる制度です。クーリングオフの制度は特定商取引法などにより、特定の方法によって締結された消費者契約に限り認められています。
業者から、強引に契約を迫られたり急かされたりしながら締結した契約の内容は、消費者にとって不必要だったり不利益だったりすることが多いです。
そのため、一度冷静になって自由に契約を解除できる期間を消費者に与え、不本意な契約によって消費者が不利益を受けてしまう事態を回避することがクーリングオフ制度の目的とされています。ちなみに、「クーリングオフ」は英語で「cooling-off period」といい、「頭を冷やす期間」という意味があります。
リフォーム工事契約をクーリングオフできるのは、以下の条件をすべて満たす場合です(特定商取引法9条1項、24条1項参照)。
【詳細な説明】
① 消費者と事業者の間の契約であること
クーリングオフ制度は、消費者を保護するための規定なので、事業者が営業のために契約をした場合はクーリングオフの対象外となります。ここでいう事業者には個人事業主も含むため、たとえ個人であってもクーリングオフできないことがあるので、要注意です。
② 訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む)または電話勧誘販売によって契約を締結したこと
クーリングオフ制度は、対象となる契約の種類があらかじめ決まっています。リフォーム工事であれば、主に訪問販売(自宅等に来て契約を迫られる場合)や電話勧誘販売(電話で契約する場合、電話を切った後に郵便等によって申し込みをする場合)の類型に当てはまることが必要です。
③ 契約締結場所が請負人(施工業者)の営業所等以外の場所であること
契約の締結場所が契約相手のオフィス・事務所・店舗などのときは、契約者が自分の意思でリフォームを申し込んだ場合が多いため、クーリングオフの期間を設ける必要がないとされています。ただし、路上などで勧誘してから営業所に連れ込む場合などもあるため、それはクーリングオフの対象とされます。
④ 契約書面を受領した日から起算して8日以内に書面でクーリングオフを行うことを記載した通知を契約相手に発送すること
クーリングオフを検討している場合、特に注意していただきたいポイントが④です。クーリングオフができる期間は、契約締結書面を受領した日から起算して8日以内に限られています。また、クーリングオフをする際は、この期間中にクーリングオフを行うという内容を記載した書面(ハガキも可)や電磁的記録(メールや問い合わせフォーム等)を契約相手に発送までする必要があります。したがって、リフォーム工事の契約をクーリングオフするには、早めの対応が重要になります。
ただ、この8日以内という期間は契約相手から適正な書面を交付された日からカウントされるので、不備がある契約書しか交付されていなかった場合や、そもそも契約書が交付されていなかった場合は、8日以内のカウントが始まっていないことになり、クーリングオフ制度が使える場合があります。
実際にクーリングオフができるかの判断は、上記のように解釈が難しい要件も含むので、弁護士に相談してみることをおすすめします。
以下のようなケースでは、リフォーム工事の契約をクーリングオフすることができないため、注意が必要です。
クーリングオフが使えない場合にも、リフォーム契約は以下のような方法によりキャンセルできる場合があります。
リフォーム契約の施工業者は、相手方となる消費者に対して、契約締結の判断に影響を及ぼす重要な事実について説明する必要があります。そのため、真実ではないことを告げることや、逆に本当のことを故意に告げないことは禁止されています(特定商取引法第6条第1項、第2項、第21条第1項、第2項)。
施工業者による真実ではないことの告知または真実の不告知によって、重要な事実を誤認してリフォーム契約を締結した場合には、特定商取引法に基づく契約取り消しが認められます(同法第9条の3、第24条の3)。
事業者側によって以下の勧誘行為がなされた場合は、消費者契約法に基づいてリフォーム契約の取り消しが可能です(同法第4条第1項~第4項)。
リフォーム契約に関する重要な事実(サービス内容や対価など)について認識違いがあった場合、リフォーム契約の錯誤取り消しが認められます(民法第95条第1項)。
ただし、認識違いを理由として錯誤を主張する場合は、契約しようと思った動機を施工業者に対してあらかじめ表示していなければなりません(同条第2項)。また、錯誤について重大な過失がある場合には、錯誤取り消しは認められません(同条第3項)。
また、だまされてリフォーム契約を締結した場合には、詐欺取り消しが認められます(民法第96条第1項)。ただし、相手方である施工業者以外の者にだまされた場合、施工業者が詐欺の事実を知り、または知ることができたことが詐欺取り消しの要件です(同条第2項)。
他にも、完成したリフォーム工事の品質が契約内容と異なっていて、それによりリフォームの目的を達成できない場合や、目的は達成できるが不備の度合いが大きい場合に、契約不適合を理由として契約解除をすることができます(民法564条・541条、542条)。
上記のような事情がなくとも、リフォーム工事が完成していない間は、施主はいつでもリフォーム契約を解除できます(民法第641条)。しかし、施主の都合によって請負契約を解除する場合は、施工業者に生じた損害を賠償しなければなりません。
施主側からリフォーム契約をキャンセルした場合、契約金・出来高報酬・損害賠償・違約金などについては、キャンセルの方法によって取り扱いが変わります。
リフォーム契約をクーリングオフした場合は、支払い済みの契約金全額の返還を求めることができます。また、工事済みの部分についての撤去費用も負担する必要がありません。
さらに、クーリングオフによるリフォーム契約の解除については、施工業者は施主に対して損害賠償・違約金を請求できません(特定商取引法第9条第3項、第24条第3項)。したがって、クーリングオフの方法によれば、施主はペナルティーなしでリフォーム契約をキャンセルすることが可能です。
特定商取引法・消費者契約法・民法の規定によってリフォーム契約を取り消した場合も、支払い済みの契約金は返還を求めることができます。施主側には債務不履行がないため、損害賠償責任や違約金の支払い義務を負うこともありません。
ただし、すでにリフォーム工事が着工済みであり、施工済みの部分によって施主が利益を受けるときは、その出来高に応じた報酬を施工業者に支払わなければなりません(民法第634条)。
施工業者から出来高報酬を請求された場合、施主としては、出来高の評価額をできる限り低く抑えるための主張を尽くす必要があります。出来高の評価方法はケース・バイ・ケースなので、弁護士へのご相談をおすすめいたします。
クーリングオフができず、契約取り消しも認められないケースであっても、施主都合によってリフォーム契約を解除することは可能です(民法第641条)。
ただし、施主都合によってリフォーム契約を解除した場合にも、施工済みの部分に対応した出来高報酬は発生し、それに加え、施工業者に生じた損害も施主は賠償しなければなりません。施工業者の損害とは、未完成部分につき調達済み資材の調達費用や、解除されずに未完成部分を仕上げていれば施工業者が得られたであろう利益などが該当します。
施主都合でリフォーム契約を解除せざるを得ない場合において、施工業者から多額の出来高報酬や損害賠償を請求されてしまった場合は、すぐに弁護士へご相談ください。
リフォーム契約をキャンセルする際には、クーリングオフや契約取り消しの可否、さらに契約金・出来高報酬・損害賠償・違約金の取り扱いなど、さまざまな問題について検討しなければなりません。これらの問題について適切に対処し、トラブルのリスクをできる限り抑えながらリフォーム契約をキャンセルするためには、弁護士へのご相談がおすすめです。
弁護士は、リフォーム契約をキャンセルする方法や手続きの進め方について、具体的な状況に合わせた最善策を検討・提案いたします。さらに、実際の施工業者側との交渉や、交渉決裂時における法的手続きの対応についても代行できるため、依頼者の労力を大幅に軽減いたします。
リフォーム契約を締結してしまい、キャンセルしたいとお考えの方は、お早めに弁護士までご相談ください。
リフォーム契約は、キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む訪問販売、または電話勧誘販売によって締結した場合等に限り、クーリングオフが認められます。
仮にクーリングオフができない場合だったとしても、特定商取引法・消費者契約法・民法の規定により、リフォーム契約を取り消せる可能性もあります。また、施工業者の損害を賠償する必要はありますが、工事完成前であれば施主都合による契約の解除も可能です。
リフォーム契約をどのような方法でキャンセルすべきかについては、要件や金銭の取り扱いなどについて法的な知識が必要になるため、弁護士へのご相談をおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所の建築訴訟専門チームは、必要に応じて一級建築士と連携し、施主であるご依頼者さまの利益を守るためのサポートをいたします。
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