弁護士コラム

  • 法人
    契約・支払い
    • #請求漏れ
    • #支払い
    • #時効
    • #請求漏れ
    • #支払い
    • #時効
    公開日:2026年08月19日
    更新日:2026年08月19日
    請求漏れの工事代金は支払う義務がある? 建設業法の支払い期間と時効
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    請求漏れの工事代金は支払う義務がある? 建設業法の支払い期間と時効

    下請業者から、数年前の工事について突然「請求漏れがありました」と連絡を受けた場合、対応に悩む施工業者もいるでしょう。

    支払うべきか否かは、本当に未払い工事があるのか、追加工事について合意があったのか、消滅時効が完成していないかなどを個別に確認しながら判断する必要があります。また、請求内容によっては、減額交渉や支払い拒否が認められるケースもありますので、適切な対処法を理解しておきましょう。

    今回は、建設業法における下請代金の支払期間の基本ルールを整理したうえで、請求漏れがあった場合の支払い義務や消滅時効、施工業者として取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、建設業法における下請代金の支払い義務期間に関する基本ルール

建設業法では、下請業者への代金支払いについて一定のルールが定められています。
まずは、請求漏れトラブルを考える前提として、支払期間の基本を確認しておきましょう。

  1. (1)【基本】発注者から出来高払い・竣工払い後1か月以内の支払い

    建設業法では、元請業者が発注者から工事代金を受け取った場合、下請業者に対してできる限り早く支払うことが求められています。
    具体的には、出来高払いや竣工払いを受けた日から1か月以内とされています(建設業法24条の3)。

  2. (2)【特定建設業者の特例】下請業者からの引渡し申し出後50日以内

    元請業者が「特定建設業者」の場合には、さらに厳しいルールが適用されます。
    建設業法24条の6では、下請業者から工事目的物の引渡しの申し出を受けた日から50日以内に、下請代金を支払わなければならないとされています。

    たとえば、

    • 工事が完成している
    • 引渡し可能な状態になっている
    • 下請業者から請求や引渡しの申し出があった

    という状況であれば、元請業者は50日以内の支払いを意識する必要があります。

  3. (3)契約で1か月を超える期間を定めていても無効

    下請業者との契約で「支払いは3か月後」「半年後にまとめて精算する」などと定めていても、建設業法で定められた支払期限に従う必要があります

2、建設業法の期限を過ぎた請求漏れでも支払い義務は残る?

1章で説明したとおり建設業法には支払期間のルールがあります。しかし、期限を過ぎたからといって、未払い工事代金が自動的になくなるわけではありません。
ここでは、期限を過ぎた請求漏れがあった場合の扱いと施工業者に生じるリスクについて説明します。

  1. (1)支払期限超過=支払い義務が消えるわけではない

    建設業法の「1か月以内」「50日以内」というルールは、あくまで「いつまでに支払うべきか」を定めたものです。そのため、期限を過ぎていても、直ちに支払い義務がなくなるというわけではありません。

    建設業法の支払い期間と法律上の支払い義務は、まったく別のものですので、分けて考える必要があります。

    なお、請求漏れの下請代金の支払い義務がいつまであるのかについては、3章で詳しく解説します。

  2. (2)支払いを遅延した場合に生じるリスク

    請求漏れだからといって放置していると、後から思わぬトラブルへ発展することがあります。
    ここでは、支払いを遅延した場合に生じる代表的なリスクを見ていきましょう。

    ① 遅延損害金の支払い
    支払いが遅れた場合、工事代金とは別に、契約で定められた遅延損害金や、法定の遅延損害金の支払いが必要になる場合があります。また、特定建設業者が下請代金の支払いを遅延した場合、14.6%の遅延損害金が生じることがあります
    このような遅延損害金は、支払いが遅れた日数に応じて増えていくため、すぐに対応していくことが重要です。

    ② 建設業法違反による行政指導
    正当な理由のない下請代金未払いや支払い拒否は、建設業法違反となり、国土交通省や都道府県による行政指導の対象となる可能性があります。
    行政指導には、強制力はありません。しかし、これに従わない場合には、指示処分、営業停止、許可取消などの行政処分に発展することもあるため、軽視はできません。

    ③ 取引先からの信用低下
    建設業界では、同じ下請業者と継続的に取引することも多くあります。
    そのため、請求漏れへの対応を巡って揉めると、
    • 「支払い対応が悪い会社」
    • 「追加工事を認めてくれない会社」
    という印象を持たれる可能性があります。
    一度関係が悪化すると、協力業者の確保や今後の現場運営にも影響が出かねません。法的な問題だけでなく、取引先との関係維持という視点でも、慎重な対応が求められます。
工事代金未払いなどの債権回収でお困りでしたらご相談ください
電話で相談する
0120-024-006
平日 9:30〜21:00/土日祝 9:30〜18:00
メールでのお問い合わせ

3、請求漏れの下請代金はいつまで支払い義務がある? 消滅時効の考え方

下請業者から請求漏れの工事代金の請求を受けた場合、すぐに支払いに応じるのではなく、法的な支払い義務があるかどうかを検討すべきです。
以下では、下請代金の支払い義務の有無を判断する際に重要になる消滅時効の考え方を説明します。

  1. (1)工事代金請求権の時効は原則5年

    消滅時効とは、一定期間権利を行使しない場合に、その権利が法律上消滅してしまう制度です。一定期間権利が行使されない場合に、時効の援用によって請求を受けても支払いを拒むことができます。

    工事代金請求権の時効は、権利を行使できることを知ったときから5年または権利を行使できるときから10年とされています。
    実際の建設工事では、下請業者側が「請求できる状態であること」を認識しているケースがほとんどです。そのため、基本的には5年が時効期間になると考えておけばよいでしょう。

    なお、令和2年4月1日より前に締結された請負契約については、改正前の民法が適用され、時効期間が異なる場合があるため、注意が必要です

  2. (2)時効の起算点|完成・引渡し・支払期など

    時効の起算点とは、時効期間のカウントダウンが始まるスタート地点(日付)のことをいいます。
    請負契約における工事代金は、工事が完成し、引き渡しができる状態になった時点で請求できるようになりますので、基本的には、「工事完成引き渡し時」が時効の起算点になります。
    ただし、契約により工事代金の支払い日が定められているときは、その時点が起算点です。

  3. (3)時効完成後は支払いを拒否できる

    工事代金の請求漏れにより、5年の時効期間が経過した場合、元請業者は、工事代金の支払いを拒否することができます。
    ただし、時効は自動的に成立するわけではないため、下請業者に対して、「時効を援用する」という意思表示を行わなければなりません。
    なお、時効完成後に工事代金の一部でも支払ったり、支払義務を認めるような対応をしたりすると、時効の援用が認められなくなる可能性があるため、注意してください。

4、請求漏れの工事代金請求への対応判断|無視・減額・拒否は可能か

下請業者から請求漏れの工事代金を請求された場合、支払いを拒否できるケースでなければ、基本的には支払う方向での対応になります。ただし、合理的な理由があれば一部支払いや減額交渉も可能です。

  1. (1)請求漏れの工事代金請求は原則として無視できない

    請求漏れであっても、実際に工事が行われており、契約上の根拠もある場合には、下請業者側への支払いが必要になります。
    そのため、「かなり前の案件だから」「もう終わった話だと思っていたから」といって、何も対応しないまま放置するのは危険です。
    まずは契約書や注文書、追加工事の記録、メール履歴などを確認し、請求内容に根拠があるかどうかを確認するようにしましょう。

  2. (2)例外的に支払いを拒否できるケース

    以下のようなケースに該当する場合であれば、例外的に請求漏れの工事代金の支払いを拒否することができます。

    ① 時効完成
    3章で解説したとおり、時効期間が経過している場合には、時効を援用することで支払いを拒否することができます。

    ② 契約外請求
    建設業界では、本工事以外にも工事を進めていく中で、追加工事や変更が必要になることがあります。
    当事者間の合意に基づいて追加・変更工事が行われたのであれば、工事代金の支払いに応じなけなければなりません。しかし、合意がなければ「契約外請求」として、工事代金の支払いを拒否できる可能性があります。

    ③ 工事内容に争いがある
    実際に工事が行われてはいるが、図面どおりに施工されていなかったり、契約内容に適合しない施工が行われている場合、その部分の支払いを拒否できる可能性があります。
    このようなケースでは、契約書や設計図書に基づいて仕様を満たしているかを確認し、不適合がある場合には、やり直しや代金減額を求めていくことになります

    ④ 反対債権による相殺
    元請業者が下請業者に対して、損害賠償、前払い金、立替金などの反対債権を有している場合、請求漏れの工事代金と相殺をすることで、支払いを拒否することができます。
    ただし、契約書に相殺禁止の特約がある場合には、相殺が認められない可能性があります。そのため、相殺可能なケースかどうかを判断するためにも、まずは契約書を確認してみましょう。
  3. (3)合理的な理由があれば一部支払い・減額交渉も可能

    請求漏れの工事代金の支払いに応じなければならないケースであっても、下請業者からの請求額をそのまま支払うべきか、よく検討した方がよいでしょう。

    たとえば、

    • 単価が契約と違う
    • 数量計算に誤りがある
    • 重複請求が含まれている
    • 一部工事が未了である

    といったケースでは、減額交渉が可能です。

    また、長期間請求が行われていなかった事情を踏まえて、支払時期や支払方法などについて協議を求めてみてもよいかもしれません。

5、下請代金の請求漏れトラブルで弁護士に相談するメリット

下請業者から請求漏れの下請代金を請求されていて、支払うべきかどうかの判断に迷うときは、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)支払い義務の有無を法的に判断できる

    請求漏れのトラブルでは、「本当に支払う必要があるのか」が最初の大きな問題になります。
    しかし、実際には簡単に判断できないケースも多いのが実情です。
    たとえば、追加工事が正式に発注されていたのか、請求内容に契約外の作業が含まれていないか、消滅時効が完成していないかなどは、法的観点から検討しなければなりません。
    弁護士に相談すれば、契約書やメール履歴、注文書などに基づき、本当に支払うべきお金なのかについて、法的な判断することができます。

  2. (2)建設業法違反のリスクに備えることができる

    請求内容に疑問がある場合でも、対応方法を誤ると、建設業法違反のリスクがあります。
    たとえば、十分な確認をしないまま一方的に減額したり、「昔の案件だから」と請求自体を放置したりするなどのケースです。
    万が一、建設業法違反になれば行政処分の対象となり、今後の事業活動にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、不安に感じる点がある場合には、自己判断で行動するのではなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
    弁護士からのアドバイスを受けることで、建設業法違反リスクを踏まえた適切な対応方針を検討しやすくなります。

  3. (3)交渉を冷静に進められる

    請求漏れの案件では、「工事内容は認めるが金額が違う」「追加工事の範囲に認識のズレがある」といった形で、一部に争いが生じることがあります。
    こうしたケースでは、感情的な対立になってしまうと、話し合いが進まなくなることもあります。
    弁護士が間に入ることで、契約内容や証拠を整理しながら、法的根拠に基づいて冷静に交渉を進めることができます。
    また、今後も取引が続く下請業者であれば、「全面的に争う」のではなく、円満な解決を目指したほうがよいケースもあります。状況に応じて、減額交渉や和解を含めた現実的な対応を検討できる点も弁護士に相談するメリットといえるでしょう。

  4. (4)訴訟やトラブルの拡大に対応できる

    請求漏れの案件を放置したり、誤った対応を続けると、訴訟にまで発展する可能性があります。
    訴訟になれば解決までに時間や費用もかかるため、できる限り話し合いで解決するのが望ましいといえるでしょう。
    弁護士に相談すれば、状況に応じた適切な対応方法をアドバイスしてくれますので、訴訟やトラブルの拡大を防げる可能性があります。また、訴訟になった場合の対応方法等も相談できるため、法的な見通しを踏まえた対応につなげることができます。

6、まとめ

下請業者から「請求漏れがあった」として工事代金を請求された場合、建設業法の支払期間を過ぎているだけで、当然に支払いを拒否できるわけではありません。
支払いに応じるべきかどうかは、時効の成否や請求の根拠、反対債権の有無などを踏まえて判断しなければならず、弁護士のサポートが役立つことがあります。ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

同じジャンルのコラム
契約・支払い

あなたが抱える
建築・住宅に関するトラブル
ベリーベストにお任せください
初回相談60分無料!
電話でのお問い合わせ
初回相談60分無料!
お電話でのお問い合わせ
0120-024-006
平日 9:30〜21:00/土日祝 9:30〜18:00
24時間お問い合わせ受付中
メールでのお問い合わせ
初回相談60分無料!
電話受付 平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
初回相談60分無料
お電話でのお問い合わせ
0120-024-006
まずは電話かメールでお問い合わせください。
電話受付時間 平日 9:30〜21:00/土日祝 9:30〜18:00
※ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。