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    公開日:2026年08月05日
    更新日:2026年08月05日
    工事の不履行を理由に契約解除されそうな場合の対応と注意すべき点
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    工事の不履行を理由に契約解除されそうな場合の対応と注意すべき点

    建築工事の不履行を理由に、発注者(注文者)から一方的に契約解除を通告された場合、受注者(請負人)には慎重な対応が求められます。

    解除の要件と可否を確認したうえで、金銭的な請求の準備を進めましょう。弁護士のサポートを受けながら対応することをおすすめします。

    本記事では、工事の不履行を理由とする解除の種類と要件、契約解除された受注者がとるべき対応などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、工事の不履行を理由とした発注者による契約解除|可否の判断基準は?

発注者から契約解除を通知されたときは、任意解除と債務不履行解除のどちらに当たるかを確認したうえで、その後の対応方針を検討しましょう。

  1. (1)発注者による契約解除の種類|任意解除と債務不履行解除

    発注者による一方的な工事請負契約の解除は、主に「任意解除」と「債務不履行解除」の2つに分類されます。

    ① 任意解除(民法第641条)
    発注者の都合による解除です。
    受注者が仕事を完成しない間は、発注者はいつでも任意解除ができます。その際、発注者は受注者に生じた損害を賠償しなければなりません。

    ② 債務不履行解除(民法第541条、第542条)
    受注者の契約違反(=債務不履行)を理由とする解除です。催告を要する解除(催告解除)と、無催告解除の2種類があります。
    契約違反をした受注者は、発注者に生じた損害を賠償する責任を負います(民法第415条第1項)。
    債務不履行の種類については、「債務不履行の種類と該当するケース」で詳しく解説します。
  2. (2)債務不履行解除の可否の判断基準

    工事の不履行を理由とする解除は、債務不履行解除に当たります。債務不履行解除は、次の要件を満たす場合に認められます。

    【催告解除】
    催告解除(民法第541条)は、受注者の契約違反に対して、「相当の期間」を定めて履行を催告し、期間内に受注者の履行がない場合に契約を解除する方法をいいます。要件は以下のとおりです。

    要件:
    • (a)受注者が正当な理由なく契約内容にしたがった債務を履行しないこと(債務不履行)
    • (b)発注者が受注者に対し、相当の期間を定めて履行を催告したこと
    • (c)(b)の期間内に、受注者が債務を履行しなかったこと
    • (d)債務不履行が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微なものではないこと

    【無催告解除】
    無催告解除(民法第542条)は、受注者に対して履行の催告をせずに、契約を解除することをいいます。原則として、契約を解除する際は受注者に対して催告を行いますが、以下の要件を満たす場合には、無催告による契約解除が可能です。

    要件:
    ① 民法第542条に基づく無催告解除
    • (a)受注者が正当な理由なく契約内容にしたがった債務を履行しないこと(債務不履行)
    • (b)次のいずれかに該当すること
      ・債務の全部の履行が不能であるとき
      ・受注者が、その債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
      ・債務の一部の履行が不能である場合、または受注者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
      ・契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、受注者が履行をしないでその時期を経過したとき
      ・上記のほか、受注者がその債務の履行をせず、発注者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき
    • (c)債務不履行が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微なものではないこと

    ② 契約の定めに基づく無催告解除
    • (a)受注者が正当な理由なく契約内容にしたがった債務を履行しないこと(債務不履行)
    • (b)契約内容に、無催告解除を認める規定が存在すること
    • (c)(b)の規定の要件を満たすこと
  3. (3)債務不履行の種類と該当するケース

    「債務不履行」とは、契約に基づいて負う義務を果たさないことを意味します。法律上は、次の3つに分類されます。

    ・履行遅滞
    契約上の期限までに正当な理由なく契約内容にしたがった債務を履行しないことを意味します。
    (例)受注者の都合で工期が遅れている場合など

    ・履行不能
    契約上の債務が物理的に、または社会通念上履行できないことを意味します。
    (例)受注者の過失によって工事現場の地盤が崩落し、建物の建設自体が不可能になった場合など

    ・不完全履行
    債務が一応は履行されたものの、その内容が契約に適合していないことを意味します。
    (例)完成した建物の壁に亀裂が入っていた場合、使用された建材が契約内容と異なっていた場合など


    債務不履行解除は民法上、不履行が軽微なものである場合には認められないことになっています。

    たとえば工期が少し遅れただけ、あるいは修繕が容易な程度の契約不適合があったにすぎないといったケースでは、不履行は軽微であると考えられるため、債務不履行解除は認められないでしょう。

    これに対して、工事の完成が実務上困難である場合や、重大な施工不備が発覚した場合などには、債務不履行解除が認められる可能性が高いです。

    なお、不完全履行の一種である契約不適合を理由とする解除が認められるのは、原則として契約不適合責任の有効期間内に限られます。
    民法上の有効期間は発注者が契約不適合を知った時から1年以内とされていますが(民法第566条)、契約書の定めによって修正されているケースもあるのでご注意ください

2、契約解除された受注者が確認すべきポイント

受注者が発注者から契約解除の通知を受けたときは、まず任意解除と債務不履行解除のどちらであるのかを確認します。そのうえで、弁護士に相談しながら次のポイントについて検討し、対応の方針を定めましょう

  1. (1)発注者都合による任意解除の場合|損害賠償や違約金の請求

    任意解除は仕事が完成するまでの間であれば認められるため、解除の効力自体を争うことは難しいでしょう。

    しかし任意解除の場合、受注者は発注者に対して損害賠償を請求できます。請求できる損害賠償の額は、次の式によって計算します。

    損害賠償額=実際に支出した費用+逸失利益-解除によって得られた利益

    • ※実際に支出した費用:資材代金や人件費など
    • ※逸失利益:工事が完成していれば得られたであろう利益。請負代金(報酬)など
    • ※解除によって得られた利益:不要となった資材の売却代金など


    また、工事請負契約に違約金の定めがある場合は、それに従って違約金を請求できることもあります。

    任意解除の通知を受けたときは、損害賠償請求や違約金請求について検討しましょう。

  2. (2)債務不履行解除の場合|解除要件の確認・出来高報酬の請求など

    債務不履行解除は、1章で解説した要件を満たす場合に限り認められます。

    発注者から解除通知を受けたら、まず債務不履行解除の要件を満たしているかどうか確認しましょう。
    催告が適切に行われたか、不履行が軽微なものではないか、契約不適合責任の有効期間が経過していないかといったポイントを、弁護士に相談しながらチェックします。
    もし要件を満たしていなければ、解除は認められない旨を主張して争うことが考えられます。

    また、工事請負契約が債務不履行解除された場合でも、受注者は発注者が受ける利益(出来高)の割合に応じて報酬を請求できる可能性があります(民法第634条第2号)
    出来高報酬の請求についても、弁護士に相談しながら検討しましょう。

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3、工事の不履行を理由に契約解除された受注者のリスクと対応

工事の不履行を理由に契約を解除された場合、受注者は請負代金を回収できなくなることに加えて、発注者から損害賠償を請求されるおそれがあります
受注者としては、自社の損害を最小限に食い止めつつ、可能であれば損害を回復するための対応を行わなければなりません。

① 工事の停止と現場の保護
まずは、速やかに工事を停止してください。その際、工事を再開することになった場合に備えて、現場を適切に保護しておくことが大切です。

② 不履行についての事実関係と調査
また、発注者との交渉や訴訟などを見据えて、発注者が主張する不履行について事実関係を確認する必要があります。専門の調査会社や弁護士と連携し、徹底的な調査を経て交渉や訴訟に備えましょう。

③ 損害賠償や出来高報酬の請求を検討
発注者に対する損害賠償や出来高報酬の請求についても検討を要します。請求が成功すれば、契約解除によって被った損害をある程度回復することができます。
弁護士のサポートを受けながら、成否の見通しを立てたうえで発注者に対する請求を行いましょう。

4、工事に関するトラブルを弁護士に相談するメリット

工事についてトラブルを抱えている受注者(施工業者)は、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士に相談することの主なメリットは、次のとおりです。

【弁護士に相談するメリット】
  • 債務不履行の有無や解除の可否を、法的な観点から判断できる
  • 発注者との交渉や、訴訟などの裁判手続きを任せられる
  • 状況に応じた臨機応変な対応により、損害を最小限に食い止められる可能性が高まる
など


ベリーベスト法律事務所には、建築訴訟の知見を有する弁護士が在籍しておりますので、工事に関するトラブルが発生したらお早めにご相談ください。

5、まとめ

工事の不履行を理由に発注者から契約解除を通知された場合、未払いの請負代金や損害賠償などを巡って深刻なトラブルに発展する可能性があります。
受注者としては、自社の損害を最小限に食い止めるための対応を行わなければなりません。法的な観点から適切に対応するためにも、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は建築訴訟専門チームを設け、工事に関するトラブルのご相談を随時受け付けております。契約解除を巡る発注者とのトラブルは、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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