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    2025年12月16日
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    不動産特定共同事業法とは? 概要や改正内容、注意点を弁護士が解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    不動産特定共同事業法とは? 概要や改正内容、注意点を弁護士が解説

    不動産クラウドファンディングや小口投資など、新しい投資スタイルの広がりとともに注目されているのが「不動産特定共同事業法(不特法)」です。

    この法律は、不動産特定共同事業を行う事業者と投資家の双方を守るためのルールを定めており、不動産投資に興味・関心がある方にとっても重要な内容が含まれています。不動産投資で損をしないためには、内容をしっかりと理解しておくことが大切です。

    本コラムでは、不動産特定共同事業法の概要、過去の改正内容、投資家が知っておくべき注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、投資家として知っておくべき不動産特定共同事業法とは?

近年、投資家の間では、不動産クラウドファンディングや少額不動産投資などの投資方法が注目を集めています。このような不動産投資に深く関わる法律として存在するのが、「不動産特定共同事業法(不特法)」です。
最初に、不動産特定共同事業法の概要や目的、投資家が押さえておくべき基礎知識をわかりやすく解説します。

  1. (1)不動産特定共同事業法(不特法)とは?

    不動産特定共同事業法(不特法)は平成6年に制定された法律で、複数の投資家から資金を集め、不動産を取得・運用・売却し、その利益を分配する「不動産特定共同事業」に関するルールを定めたものです。

    この法律の目的は、事業の健全な発展を促すとともに、一般投資家を不適切な勧誘や詐欺的手法から保護することにあります。

    近年、不動産特定共同事業法が改めて注目されている背景としては、インターネットを活用した「不動産クラウドファンディング」の広がりによるものです。これは少額から手軽に始められる不動産投資として人気を集め、個人投資家が不動産事業に参加する新しい形態として成長しています。

    この仕組みも、多くは不動産特定共同事業法の規制対象となります。

  2. (2)不動産特定共同事業法による投資家保護の仕組み

    不動産特定共同事業法では、事業を行うにあたって国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要とされています。さらに、事業者には財務体質や業務管理体制、契約書面の明確化など、厳格な基準が課されています。

    これにより、事業者の信頼性を一定程度担保し、投資家が安心して資金を出資できるような仕組みとなっているのです。

    また、勧誘時の説明義務や分別管理義務、誇大広告の禁止など、投資家保護の観点からさまざまな規制も設けられています。
    なお、詳しい規制内容については本コラムの3章をご参照ください。

  3. (3)不動産特定共同事業法のスキームを活用すべきケース

    投資家が不動産特定共同事業法のスキームを活用すべきケースとして、以下のようなものが挙げられます。

    ① 少額から不動産投資に挑戦したい個人投資家
    従来の不動産投資は多額の資金が必要で、一般個人にはハードルが高いものでした。
    しかし不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングなどを活用すれば、1~10万円程度の少額から投資できるようになっています。初心者でもリスクを限定しつつ、不動産運用のリターンを期待できるでしょう。

    ② 実物不動産の保有ではなく「運用益」に関心がある方
    物件の所有や管理を伴わずに、不動産を活用したビジネスに間接的に参画したい方にも不動産特定共同事業法のスキームは適しています。事業者が得る賃料収入や売却益などから投資家に配当されるため、ファンド型の資産運用に近い形で利回りを得ることが可能です。

    ③ 地域活性や社会的意義に共感できる投資をしたい方
    たとえば、「古民家の再生を通じたまちづくり」や「地方の廃校を宿泊施設に転用する事業」など、地域性や社会性を重視したプロジェクトに投資したい方にも不動産特定共同事業法は有効です。こうした事業は、金融機関の融資対象となりにくい一方で、投資家からの共感を得やすい特徴があります。

    ④ 保育所・福祉施設など小規模開発案件に投資したい方
    保育所や福祉施設のように投資額が小さく、流動性が低い物件は、大手機関投資家の対象外となることが多く、民間投資家の出資を必要とするケースがあります。不動産特定共同事業法により、このような公共性の高い小規模事業に対しても投資することが可能です。

2、不動産特定共同事業法の改正内容

不動産特定共同事業法は、制定以来、複数回にわたって改正が行われてきました。
ここからは、平成25年・平成29年・平成31年の主要な3回の改正内容をわかりやすく解説します。

  1. (1)平成25年の法改正内容

    平成25年の改正では、事業者の倒産による投資家の損失リスクを軽減するため、「倒産隔離型スキーム」が新たに導入されました。

    これは、投資家の出資財産と事業者自身の財産を法律的に切り離す(隔離)ことで、仮に事業者が倒産した場合でも、投資家の資金が債権者に差し押さえられにくくなる仕組みです。

    この仕組みにより、投資家保護のレベルが大きく向上しました。

  2. (2)平成29年の法改正内容

    平成29年の改正では、不動産業界への新規参入を促進する目的で「小規模不動産特定共同事業者(登録制)」が創設されました。

    従来の不動産特定共同事業者は、許可制で資本金や純資産などの基準が厳しく、空き家活用や地方創生プロジェクトなど、小規模事業者の参入が困難でした。

    そこで、本改正により、以下のような規制緩和が行われています。

    • 許可制から登録制へ移行(手続きの簡素化)
    • 資本金要件の引き下げ(最低1000万円)
    • 会計監査の不要化
    • 対象投資家の出資額上限(100万円)、出資総額(1億円以下)の制限

    これにより、地方の空き家再生や商店街の再興など、小規模なまちづくりプロジェクトへの投資がしやすくなりました。不動産クラウドファンディングとの親和性も高く、不動産特定共同事業法が注目を集めるようになったのです。

  3. (3)平成31年の法改正内容

    平成31年の改正は、インターネットを活用した「不動産クラウドファンディング」の本格的な普及を後押しする規定が整備されました。

    主な改正ポイントは、以下のとおりです。

    • オンライン完結型の不動産投資スキームの制度的承認
    • 電子取引業務の導入
    • 電子取引に関するガイドラインの策定
    • 投資家保護の観点からの情報開示の強化

    これにより、スマートフォンやパソコンから手軽に投資できる環境が整い、若年層や初心者層の投資参入を促進するきっかけとなりました。

3、不動産特定共同事業者の登録制度と規制内容

不動産特定共同事業法は、投資家保護の観点から、事業者には厳格な登録・許可制度が課されています。
3章では、投資家として知っておくべき不動産特定共同事業者の種類、許可要件、守るべき規制内容について、説明します。

  1. (1)不動産特定共同事業者の種類

    不動産特定共同事業者とは、不動産特定共同事業を行う事業者を指し、投資家と契約して不動産の取得・運用・分配を行う会社のことです。

    法律上は、以下の4つに分類されます。


    事業者の種類 概要 最低資本金
    第1号事業者 自ら不動産を取得・管理し、その収益を投資家に分配する者(例:クラウドファンディング運営会社) 1億円
    第2号事業者 第1号事業者と投資家の契約締結を代理・媒介する者(例:仲介会社) 1000万円
    第3号事業者 特例事業者(SPCなど)のために不動産を取得・運用する者 5000万円
    第4号事業者 第3号事業者と投資家の契約を代理・媒介する者 1000万円

    事業者の種類によって、求められる許可内容や資本金要件、業務範囲などが異なる点にご注意ください。

  2. (2)不動産特定共同事業法の主な許可要件

    不特事業者として活動するには、国土交通大臣または都道府県知事からの「許可」を受ける必要があります。

    主な許可要件は、次のとおりです。

    【資本金要件】
    • 第1号事業者:1億円以上
    • 第2号事業者:1000万円以上
    • 第3号事業者:5000万円以上
    • 第4号事業者:1000万円以上

    【純資産要件】
    • 資本金の90%以上の純資産を保有すること

    【業務管理者の設置】
    • 各営業所に宅建士資格を持ち、一定の実務経験や研修を経た「業務管理者」を1名以上配置すること

    【役員の適格性】
    • 過去5年以内に重大な不正・違反歴がないこと

    このように、投資家の資金を扱う以上、事業者には厳格なガバナンス体制の整備が求められます。

  3. (3)不動産特定事業法の主な規制内容

    不動産特定共同事業者が守るべきルールは、投資家保護を目的として、主に以下のような規制が定められています。

    ① 誇大広告の禁止
    利回りやリスクに関する根拠のない表示は禁止されています。

    ② 不適切な勧誘行為の禁止
    不安をあおる手法、断定的判断の提供、執拗な勧誘はすべてNGです。

    ③ 契約書面の交付義務
    契約締結前に、重要事項説明書や契約書面を交付し、内容を明示する必要があります。

    ④ 分別管理義務
    投資家からの出資金と自社の資産を厳格に分けて管理し、混在を防ぐことが義務付けられています。

    ⑤ 定期的な情報開示
    財産管理報告書や事業報告書を通じて、運用状況を投資家や行政に報告することが求められています。

    これらのルールを遵守しない事業者は、業務停止命令や許可取消処分を受ける可能性があり、違反事例も存在します

    投資家としては、事業者の対応や情報開示状況を確認し、リスク回避につなげていきましょう。

4、投資家として押さえるべき不動産特定共同事業に関する注意点

不動産特定共同事業は、比較的手軽に不動産投資を始められる魅力的な仕組みですが、当然ながらリスクも存在します。投資で損をしないために、投資家として押さえるべき不動産特定共同事業に関する注意点を見ていきましょう。

  1. (1)元本保証がない

    最大の注意点は、不動産特定共同事業法による不動産投資には元本保証がないことです。

    たとえば、想定していた賃料収入が得られなかったり、不動産の売却価格が下落したりした場合、投資家に配当が支払われない可能性が十分あります。

    元本どころか、分配も受けられないケースもあるため、利回りだけを見て飛びつかず、リスクとのバランスを冷静に判断するようにしましょう。

  2. (2)流動性が低い

    不動産特定共同事業は、原則、中途解約ができない仕組みであることが多く、流動性が非常に低い点にも注意が必要です。

    一度出資をすると、運用期間中は資金を引き出すことができず、出資持分を第三者に売却する手段も通常は整備されていません。つまり、急な資金ニーズがある場合に対応できない可能性があるため、「余裕資金」で行うことが原則です。

    クラウドファンディング型でも、運用期間は数か月〜数年とさまざまであり、期間終了まで資金が拘束される点を十分理解しておきましょう。

  3. (3)事業者の倒産や不正のリスク

    不動産特定共同事業法のスキームは法律に基づいた仕組みですが、それを運営するのは民間の事業者です。事業者の倒産や不正によるリスクは、ゼロではありません。

    不動産特定共同事業法のスキームを利用して投資をする場合、以下のような点に注意してください。

    • 過去に行政処分を受けたことはないか
    • 財務状況は健全か(決算書や報告書を確認)
    • 出資金の管理体制は明確か(分別管理の有無)
    • 必要な許可・登録をきちんと取得しているか

    不動産特定共同事業法では、一定の資本金要件やガバナンス体制が求められているため、許可・登録済みの事業者は一定の信頼性が担保されますが、それでも100%の安全を保証するものではありません。事業者選びは慎重に行いましょう。

  4. (4)契約内容の複雑さ

    不動産特定共同事業では、「任意組合契約」や「匿名組合契約」など、投資スキームの内容が法律的に難解であることもあります。

    契約内容の理解が不十分なまま出資してしまうと想定外のリスクを被るおそれがあるため、以下の点は、事前に必ず確認しましょう。

    • 出資の性質(貸付型・所有型など)
    • 想定利回りとリスク説明のバランス
    • 賃料や売却益の分配ルール
    • 損失が出た場合の対応
    • 契約の終了条件や中途解約の可否

    事業者によっては、丁寧な説明資料やFAQ(よくある質問)などを提供しているところもありますが、不明点がある場合は、弁護士に確認することも有効です。

5、まとめ

不動産特定共同事業法(不特法)は、出資による不動産取引を可能にしつつ、投資家を保護するための制度です。少額投資やクラウドファンディングの普及により注目されていますが、一方で元本保証がなく、流動性が低いことにも注意しましょう。

出資する際は、事業者の許可・登録状況や財務基盤、契約内容などを慎重に確認しましょう。内容が難解な場合や、リスクが見えにくいと感じた場合には、事前に弁護士へ相談することでトラブルを未然に防ぐことができます。

不動産特定共同事業を活用するなら、制度のメリットとリスクを正しく理解し、自分に合った投資かどうかを冷静に見極めることが重要です。不動産や投資に関するトラブルはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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