建設業を営む際には、建設業法に基づく許可を受けなければなりませんが、例外として軽微な建設工事の請負だけであれば、建設業許可は不要です。
他方、建設業法に基づく許可を受ければ、軽微な工事に限られることなく請負ができます。また許可の種類が「一般建設業許可」であるか「特定建設業許可」であるのかによって、代金の上限が変わります。また、必要な許可なく上限を超えた建設工事をすると、罰則や営業停止処分などが課される可能性もあります。そうならないよう、建設業法を理解することが大切です。
今回は、建設業法による許可と請負代金の上限との関係を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
建設業法に基づく許可を取らない場合、工事の請負代金の上限はいくらでしょうか。
建設業とは、元請・下請等の名義にかかわらず建設工事の完成を請け負う営業、つまり、ビジネスとして建設工事の完成を引き受けることです(建設業法2条2項)。
元請けであるとか、下請けであるとか立場は関係ありません。
建設業には建設業法で規制がかけられており、営むには建設業法の許可(有効期間5年。5年ごとの更新必要)がいります。
許可を得て、建設業を営む業者のことを「建設業者」といいます。ダム工事をするゼネコンや、道路工事を行う業者、一般の住宅を作るハウスメーカーが建設業者の一例としてあげられます。
建設業者が工事を請け負うには、原則として建設業法の許可が必要です。しかし、軽微な建設工事だけするのであれば、例外として許可は必要ありません。
軽微な建設工事とは、以下のいずれかの条件に該当する工事です。
建築一式工事であれば1500万円が上限、それ以外であれば500万円が上限です。
なお、代金の上限を計算する際には、以下の点に注意が必要です。
いずれも代金の上限額を超えてはなりません。
建設業の許可には、「一般建設業許可」・「特定建設業許可」という2つの種類があります。どちらを持っているかによって、請負代金の上限額は変わります。
以下では、一般建設業許可を持っている場合の上限額を解説します。
建設業をするためには、軽微な建設工事のみを除き、元請け・下請けを問わず、一般建設業の許可が必要です。ただし、発注者からじかに工事を引き受けた元請け業者で、かつ下請け業者への発注額が4500万円以上、建築一式工事であれば7000万円になる場合には、後で説明する特定建設業許可がいります。
そのため、一般建設業にあたるのは、以下のようなケースです。
このように代金額の上限は、建設業者が元請けか下請けかによって異なります。以下でそれぞれ分けて説明します。
建設業法では、一般建設業許可を持つ元請けが下請けに仕事を出す場合、その金額に上限が設けられています。
なお、これはあくまでも元請けから下請けへの発注金額の上限であることに注意しましょう。発注者から元請け業者が受注する際の請負代金には、上限は設けられていません。建設業許可を受けていれば、上限なしで工事の請負ができます。
上記の場合にはその金額に上限はありません。
そのため、これらに該当するときは、金額の上限なく工事を請け負うことができます。
一般建設業許可を持っている建設業者の場合には、下請け業者への発注金額に上限が設けられています。では、特定建設業許可を持っている場合には、請負代金に制限はあるのでしょうか。
1つの工事で、4500万円(建築一式の場合は7000万円)以上の工事を下請けに出す際に取得が義務付けられている許可のことです。
たとえば、発注者から2億円の建設工事の発注を受けた建設業者(元請け業者)が下請け業者に対して、1億円の工事を発注する場合、元請けは特定建設業許可が必要です。
他方、1億の工事を受注した下請けには、特定建設業許可はなくてもかまいません。
特定建設業許可を得る必要があるのは、発注者から直接工事を依頼された建設業者(元請け業者)です。下請け業者は、請負代金の多寡にかかわらず、特定建設業許可は不要です。
一般建設業許可を得た建設業者では、下請け業者への発注金額に上限が設けられていましたが、特定建設業許可を得ることで、そのような上限はなくなります。
そのため、元請け業者は、下請け業者への発注額の上限なく、工事の下請けを依頼することができます。
対して、一般建設業許可を持っている下請け業者には、工事の請負に上限金額はありません。
建設業法に基づく建設業の許可を受ける必要性は上記で解説しましたが、では、許可を受けずに仕事をした場合、どのようなトラブルやペナルティーがありうるのでしょうか。
建設業は、人々の生活に直結する重要な役割を果たしています。不正な建設工事が行われれば、多くの人の生活に大きな損害が出るおそれがあります。そこで、建設業法では、建設業法違反のペナルティーとして、以下のような監督処分と刑事処分を定めています。
① 建設業法違反による刑事処分
建設業法上必要な許可を得ることなく建設工事を行った場合には、建設業法違反となり、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されます。情状によっては懲役刑と罰金刑が併せて科せられる場合もあります。
② 建設業法違反による監督処分
建設業法に違反する行為をした場合には、上記のような刑事処分とは別に以下のような監督処分を受けるおそれがあります。
建設業法違反で許可が取り消されてしまうと、その後5年間は新たな建設業許可は取れず、できる仕事は軽微な建設工事のみとなり、事実上廃業せざるを得なくなります。
建設業の許可を受けた業者が行う建設工事には、基本的に請負代金の上限がないので、ケースによっては、大規模な建設工事を請け負うこともあるでしょう。このような大規模な工事でトラブルが発生すると、損害額も大きくなるため、事前のトラブル予防が重要です。
この点、弁護士であれば、取引先と交わす契約書を法律の観点からチェックすることなどを通じ、トラブルを未然に回避するためのサポートができます。法的観点から安全に業務を進めたいのであれば、弁護士への相談がおすすめです。
本格的に建設業を営む業者は、一般建設業許可または特定建設業許可のいずれかを受けて工事を行うケースが多いでしょう。
必要な許可を得ることなく建設工事を行うと、刑事処分や監督処分を受けるリスクがあります。リスクを最小限に抑えるためにも早めに弁護士に相談し、アドバイスを求めることが大切です。ベリーベスト法律事務所では、初回60分相談料無料、一級建築士も所属していますので、請負トラブルや建築紛争でお困りの企業経営者の方は、当事務所までご相談ください。