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    2022年11月30日
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    2022年11月30日
    リフォームで想定外の追加費用を請求されたら? 適切な対応方法とは
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    リフォームで想定外の追加費用を請求されたら? 適切な対応方法とは

    リフォーム工事では、工事開始後に当初想定していなかった追加工事が必要になることがあります。追加費用に納得できればそのままリフォーム工事を続けてもらうことになることが一般的です。

    では、納得できないような高額な追加費用を請求されてしまった場合にはどのように対応したらよいのでしょうか。また、施工業者との信頼関係がなくなってしまった場合には、リフォーム工事自体をキャンセルすることはできるのでしょうか。

    本コラムでは、リフォーム工事で想定外の追加費用を請求された場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、納得ができない追加費用を請求されたらすべきこと

リフォーム工事を行った施工業者から納得できないリフォーム費用を請求された場合には、以下の対応をとるべきです。

  1. (1)契約書の確認

    納得ができない追加費用を請求された場合には、施工業者の請求に従ってすぐに支払ってしまうのではなく、本当に支払い義務のあるお金かどうかを確かめるために、契約書などの書類を確認することが大切です。

    リフォーム工事に関連する書類としては、以下のものが挙げられます。

    ① 工事請負契約書
    工事請負契約書とは、施工業者と施主との間に、リフォーム工事に関する請負契約が成立したことを証明する契約書です。施工業者と施主との間に、どのような内容の契約が成立したのかについては、工事請負契約書によって判断することができます。

    ② 見積書
    工事請負契約書には、リフォーム工事にかかる費用の総額が記載されていますが、細かい内訳については、見積書に記載されるのが一般的です。見積書を確認することによって、どのような工事内容で、どの程度の費用がかかるのかがわかります。

    ③ 工事請負契約約款
    工事請負契約約款とは、工事請負契約書に記載することが難しい詳細な契約内容が記載された書面になります。リフォーム工事でトラブルが生じた場合、工事請負契約書で取り決めがない部分については工事請負契約約款に記載された契約条項にしたがって解決していくことになります

    ④ 設計図面
    設計図面とは、設備の配置や電気配線などのリフォーム工事の内容が書かれた図面になります。追加工事が合意内容に含まれていたかどうかについては、見積書や設計図面を照らし合わせて確認することによって判断が可能です。

    ⑤ 仕上表
    仕上表とは、床・壁・天井などをどのように仕上げるのか、どのような資材を使用するのかを記載した書面です。仕上表を確認することによって、リフォーム工事で使用した資材を確認できます
  2. (2)各種相談機関への相談

    リフォームに関するトラブルは、建築に関する専門的な知識がなければ適切に対応することが難しいといえます。そのため、どのように対応すればよいかわからないという場合には、リフォームのトラブルに関する各種相談機関に相談をしてみるとよいでしょう。

    その際には、リフォーム工事に関する上記書類を持参してください。特に法的なトラブルかどうかを判断する必要がある場合は、書類がなければ回答が難しくなります。

  3. (3)施工業者との交渉

    各種相談機関への相談によって、具体的な対応方法がわかった場合には、施工業者と話し合いを行い、トラブルの解決を図ります。お互いの主張が対立していて、話し合いでは解決が難しいという場合には、後述のように、裁判所の民事調停やADR(裁判外紛争処理手続き)を利用するのも有効な解決手段となるでしょう。

    また、ひとりでの対応が難しいという場合や、施工業者が弁護士を立てている場合には、あなたも弁護士に依頼して、施工業者との交渉を任せることをおすすめします。

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2、裁判例からみる追加費用を支払う必要があるケース

施工業者から納得できない追加費用を請求された場合でも施主は支払う必要があるのでしょうか。

  1. (1)追加費用とは

    リフォーム工事は、既存の建物を前提とする工事であるため、リフォーム工事に着手する時点では建物の隅々まで把握した上で工事内容を決定することができず、リフォーム工事に着手したあとにさまざまな問題点が発見される場合も少なくありません。

    このような場合には、追加の工事や当初の工事内容の変更が必要になりますが、この追加変更工事の内容が当初の契約内容に含まれていないものであれば、当然、当初の契約代金とは別に追加費用が請求されるものと考えておいたほうがよいでしょう。

    本来であれば、追加変更工事を行う際には改めてその部分についての合意内容を示す契約書等の書面を交わしておくべきですが、実際の現場では見積書だけが出されているケースや、メールや口頭でのやりとりのみで工事が進んでしまうケースもあります。そのようなケースでは、追加費用の支払いをめぐってトラブルになり、追加変更工事についての合意があったのかどうかが争点になることも多いようです。その結果、施主にとって合意がなかったと考える場合でも、一定の事実関係においては、追加費用として相当な範囲の金額を支払わなければならない場合があります

  2. (2)施主側が追加費用を支払う判決が下った裁判例

    施工業者からの追加費用の請求に関して、施主側の支払い義務が認められた裁判例としては、以下のものが挙げられます。

    ① リフォーム工事内容の認識について争いになった事件(東京地裁令和3年9月30日判決)

    <事案の概要>
    施主が施工業者に対してリフォーム工事契約の解除と支払い済み代金の返金等を求め、施工業者が完了した工事分の費用を求めた裁判です。施主側は、施工業者の債務不履行を理由として契約を解除する内容証明を送付し、支払い済みのリフォーム代の返還などを求めて施工業者を提訴しました。対する施工業者は、工事を完成して引き渡したことを理由に、追加工事による追加費用を含めた請負代金から未施工部分の代金を控除した残額の支払いを求めて提訴をしました。本訴訟において、施主側は、前主の使用または経年により生じた建物の損傷部分などのすべてを補修する全面リフォームを契約していたつもりであると主張し、施工会社からの追加工事の主張を否定しました。

    <裁判所の判断>
    裁判の争点のひとつは、施主と施工業者間の当初の請負契約の内容に追加工事が含まれるかという点にありました。裁判所は、当初の請負契約書および見積書などの記載内容、施工業者が追加工事に関する見積書を施主に提示していたこと、さらに施主自身も追加工事であることを前提とした行動をしていたことなどから、当初の請負契約は全面的なリフォーム工事ではなく、契約書に記載されている内容のリフォーム工事を行うものであったと認定し、施主と施工業者間には追加工事契約が成立しているとして、施主に対して施工業者へ追加費用の支払いを行うよう判決を下しました。


    ② リフォーム工事の追加費用の支払いを求められた事件(東京地裁平成25年3月12日判決)

    <事案の概要>
    施主から建物のリフォーム工事の依頼を受け、請負契約を締結した施工業者が、契約後、施主の要望にそって、床下全面防湿コンクリート工事や台所改修工事などの追加工事を行い、工事を完了させて引き渡したのち、追加費用も含めて代金を請求したところ、施主が追加工事の合意を否定し、支払いを拒んだ事件です。施工業者は、追加費用の支払いを求めて裁判所に提訴しました。

    <裁判所の判断>
    追加工事について、施主と施工業者との間で結ばれた契約書はありませんでした。しかし、施工業者は、施主から追加工事の依頼を受けるたびに、施主に対して見積書を提示していたという事実がありました。さらに、施主が事情を十分把握しながらその見積金額等について特に異議を述べることなく工事が進んだという経過があったため、裁判所は、施主と施工業者との間には、追加工事契約が成立していると認定しました。施工業者はすでに施主の依頼に従って工事を終えていることから、施主は施工業者に対して追加費用を支払う義務があるという判決になりました。

3、工事着手後のキャンセルはできる?

実際に工事が始まってみないと、どのような業者かわからないという部分はどうしてもあるでしょう。では、リフォーム工事に着手したあとに、工事をキャンセルすることはできるのでしょうか。

  1. (1)工事着手後のキャンセルの可否

    施工業者がリフォーム工事に着手したあとであっても、施主側から契約をキャンセル(解除)することは可能です。

    施主側から契約を解除する方法としては、以下の2つの方法が考えられます。

    ① 施工業者の契約違反を理由とする解除(民法541条・542条)
    施工業者が工期を過ぎてもリフォーム工事を完成させていない、着工期限が過ぎているにもかかわらず工事に着手しない、契約内容どおりにリフォーム工事が行われていないなど、施工業者に契約違反がある場合は、施工業者の債務不履行に基づいて工事請負契約を解除することができます。

    ② 施主側の都合による解除(民法641条)
    施工業者に契約違反がなかったとしても、施工業者が仕事を完成させるまでの間であれば、施主側の都合によって契約を解除することが認められています。施工業者が信頼できないなどの感情的な理由で契約を解除する場合には、こちらの解除を選択することになります。
  2. (2)キャンセルする場合のリスク

    前述の通り、リフォーム工事に着手したあとにリフォーム工事のキャンセルを行うことは可能です。しかし、工事が始まってから契約を解除すると、以下のようなリスクが生じますので注意が必要です。

    ① 施工業者の契約違反に基づく解除であっても既施工部分の報酬の支払いが必要な場合がある
    施工業者側の債務不履行を理由に工事請負契約を解除する場合でも、既施工部分については、それによって施主が利益を受ける場合には、その利益の割合(出来高)に応じた報酬を施工業者に支払わなければなりません(民法634条第2号)。
    施主都合の解除の場合でも同様です。

    ② 施主側の都合による解除(民法641条)では多額のキャンセル料(違約金・損害賠償)を請求される場合がある
    施工業者に契約違反がなかったとしても、施主側の都合によって一方的に契約を解除することができる反面、施主都合で工事請負契約を解除する場合、施主は施工業者に生じた損害を賠償しなければなりません。
    着手後のキャンセルの場合には、施工業者としてもすでに資材の発注は大半が済んでおり、実際の施工もある程度進んでいることもあるでしょうから、高額なキャンセル料が発生するリスクがあります。
    また、前記①のとおり、既施工部分がある場合にはその部分の報酬も発生します。

    ③ リフォーム工事を引き継いでもらえる業者が見つからない
    リフォーム工事に着手後にキャンセルした場合には、新たなリフォーム業者を見つけて工事を再開する必要があります。
    しかし、すでにリフォーム工事に着手した状態の現場では、トラブルが生じるリスクがあることからリフォーム工事を引き継いでもらえる業者を見つけることが難しい場合もあります。また、リフォーム業者を見つけることができたとしても、当初の工事代金と同程度の費用がさらにかかってしまい、結果的に当初より費用が割高になってしまう可能性は否定できません。

4、リフォームトラブルの相談先

リフォームに関するトラブルが生じた場合には、以下のような相談先があります。

  1. (1)住まいるダイヤル

    住まいるダイヤルとは、国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口です。電話相談では、一級建築士の資格を持ち、住宅に関する広い知識を備えた相談員による専門的なアドバイスを得られます。

    また、電話相談だけでは足りないという場合には、弁護士や建築士による面談相談を受けることもできるようです。

  2. (2)国民生活センター(消費者センター)

    国民生活センターでは、国民生活の安定・向上に寄与するために、国民生活に関するさまざまな情報提供や調査研究を行っています。全国に設置されている消費者センターを窓口として、住宅のリフォームなどのトラブルの相談に対応しています。

  3. (3)弁護士

    住まいるダイヤルなどの相談窓口に相談をすることによって、トラブル解決に向けた具体的なアドバイスを受けることは可能です。しかし、トラブルの内容によっては、相談窓口からのアドバイスだけでは解決することができず、弁護士への相談を促されることもあります。また、アドバイスを受けたものの自分だけで対応するのが不安だという方もいるでしょう。

    そのような場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士は、法的観点からの対応についてのアドバイスが可能です。さらには、弁護士に交渉を依頼すれば、弁護士が施主の方に代わって施工会社と交渉を行い、損害賠償などの請求を行います。施工会社と話し合いをする場合でも弁護士が対応する方が個人で対応するよりも任意での解決が期待できるでしょう。

    施工会社が話し合いに応じない場合や話し合いでは納得いく結論が出ないという場合には、後述のように裁判などの法的手段によって解決を図ることになります。この場合にも、弁護士であれば最終的な解決までサポートすることができます。

5、話し合いで結論が出ないときの解決方法

施工業者との話し合いではトラブルの解決ができないという場合には、以下のような解決方法があり得ます。

  1. (1)ADR(裁判外紛争処理手続き)

    施工業者との話し合いでは解決できないという場合には、第三者を入れることによって解決できる場合もありますので、ADRを利用することが考えられます。

    ADRとは、裁判外紛争処理手続きのことをいい、中立・公正な第三者が間に入ってトラブルを解決する手続きです。リフォーム工事のトラブルに関するADRとしては、以下のものがあります。

    • 住宅紛争審査会(弁護士会)
    • 国民生活センター紛争解決委員会(国民生活センター)
    • 建設工事紛争審査会(国土交通省、都道府県)


    ADRの手続きは、施主の方が個人で進めることもできますが、弁護士に依頼をすることによって、ADRの申立て手続きから、ADRの期日の対応まで任せることが可能になります。

  2. (2)民事調停

    民事調停は、裁判のように裁判官に判決を下してもらうのではなく、当事者による話し合いによってトラブルの解決を目指す手続きです。リフォームに関するトラブルについては、建築トラブルに詳しい弁護士や建築士などが調停委員となることが多いので、専門的見地からの意見をもらいながら交渉することができます。

    調停が成立した場合には、裁判での判決と同様の効力がありますので、合意内容に従わない場合には、強制執行などの手続きも可能になります。

  3. (3)裁判

    ADRや民事調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、施工業者が話し合いに応じない場合や意見が対立して合意が得られる見込みがないという場合には、ADRや民事調停では解決が難しいといえます。このような場合には、裁判所に訴訟を提起することによって最終的な解決を図ることになります。

    裁判では、ADRや民事調停のような話し合いの手続きではなく、証拠に基づいて主張立証をしていかなければなりません。非常に専門的かつ複雑な手続きになりますので、裁判をする場合には、弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。

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6、まとめ

リフォーム工事では、その性質上、工事に着手したあとに追加工事が発生するケースが多くみられます。工事完成後に追加費用の支払いで揉めることのないようにするためには、その都度、追加工事契約書や見積書を求めるなどして、契約内容を明確にしておくことが大切です。

また、リフォーム工事のトラブルは、建築に関する専門的な知識がなければ適切に対応することが難しい分野です。トラブルを適切に解決するためには、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。ベリーベスト法律事務所では、リフォーム工事の追加費用にまつわるトラブルについてのアドバイスを行っております。お困りの際には、お気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築トラブルにお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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