リフォーム工事では、工事開始後に当初想定していなかった追加工事が必要になることがあります。追加費用に納得できればそのままリフォーム工事を続けてもらうことになることが一般的です。
では、納得できないような高額な追加費用を請求されてしまった場合にはどのように対応したらよいのでしょうか。また、施工業者との信頼関係がなくなってしまった場合には、リフォーム工事自体をキャンセルすることはできるのでしょうか。
本コラムでは、リフォーム工事で想定外の追加費用を請求された場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
リフォーム工事を行った施工業者から納得できないリフォーム費用を請求された場合には、以下の対応をとるべきです。
納得ができない追加費用を請求された場合には、施工業者の請求に従ってすぐに支払ってしまうのではなく、本当に支払い義務のあるお金かどうかを確かめるために、契約書などの書類を確認することが大切です。
リフォーム工事に関連する書類としては、以下のものが挙げられます。
リフォームに関するトラブルは、建築に関する専門的な知識がなければ適切に対応することが難しいといえます。そのため、どのように対応すればよいかわからないという場合には、リフォームのトラブルに関する各種相談機関に相談をしてみるとよいでしょう。
その際には、リフォーム工事に関する上記書類を持参してください。特に法的なトラブルかどうかを判断する必要がある場合は、書類がなければ回答が難しくなります。
各種相談機関への相談によって、具体的な対応方法がわかった場合には、施工業者と話し合いを行い、トラブルの解決を図ります。お互いの主張が対立していて、話し合いでは解決が難しいという場合には、後述のように、裁判所の民事調停やADR(裁判外紛争処理手続き)を利用するのも有効な解決手段となるでしょう。
また、ひとりでの対応が難しいという場合や、施工業者が弁護士を立てている場合には、あなたも弁護士に依頼して、施工業者との交渉を任せることをおすすめします。
施工業者から納得できない追加費用を請求された場合でも施主は支払う必要があるのでしょうか。
リフォーム工事は、既存の建物を前提とする工事であるため、リフォーム工事に着手する時点では建物の隅々まで把握した上で工事内容を決定することができず、リフォーム工事に着手したあとにさまざまな問題点が発見される場合も少なくありません。
このような場合には、追加の工事や当初の工事内容の変更が必要になりますが、この追加変更工事の内容が当初の契約内容に含まれていないものであれば、当然、当初の契約代金とは別に追加費用が請求されるものと考えておいたほうがよいでしょう。
本来であれば、追加変更工事を行う際には改めてその部分についての合意内容を示す契約書等の書面を交わしておくべきですが、実際の現場では見積書だけが出されているケースや、メールや口頭でのやりとりのみで工事が進んでしまうケースもあります。そのようなケースでは、追加費用の支払いをめぐってトラブルになり、追加変更工事についての合意があったのかどうかが争点になることも多いようです。その結果、施主にとって合意がなかったと考える場合でも、一定の事実関係においては、追加費用として相当な範囲の金額を支払わなければならない場合があります。
施工業者からの追加費用の請求に関して、施主側の支払い義務が認められた裁判例としては、以下のものが挙げられます。
① リフォーム工事内容の認識について争いになった事件(東京地裁令和3年9月30日判決)
② リフォーム工事の追加費用の支払いを求められた事件(東京地裁平成25年3月12日判決)
実際に工事が始まってみないと、どのような業者かわからないという部分はどうしてもあるでしょう。では、リフォーム工事に着手したあとに、工事をキャンセルすることはできるのでしょうか。
施工業者がリフォーム工事に着手したあとであっても、施主側から契約をキャンセル(解除)することは可能です。
施主側から契約を解除する方法としては、以下の2つの方法が考えられます。
前述の通り、リフォーム工事に着手したあとにリフォーム工事のキャンセルを行うことは可能です。しかし、工事が始まってから契約を解除すると、以下のようなリスクが生じますので注意が必要です。
リフォームに関するトラブルが生じた場合には、以下のような相談先があります。
住まいるダイヤルとは、国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口です。電話相談では、一級建築士の資格を持ち、住宅に関する広い知識を備えた相談員による専門的なアドバイスを得られます。
また、電話相談だけでは足りないという場合には、弁護士や建築士による面談相談を受けることもできるようです。
国民生活センターでは、国民生活の安定・向上に寄与するために、国民生活に関するさまざまな情報提供や調査研究を行っています。全国に設置されている消費者センターを窓口として、住宅のリフォームなどのトラブルの相談に対応しています。
住まいるダイヤルなどの相談窓口に相談をすることによって、トラブル解決に向けた具体的なアドバイスを受けることは可能です。しかし、トラブルの内容によっては、相談窓口からのアドバイスだけでは解決することができず、弁護士への相談を促されることもあります。また、アドバイスを受けたものの自分だけで対応するのが不安だという方もいるでしょう。
そのような場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士は、法的観点からの対応についてのアドバイスが可能です。さらには、弁護士に交渉を依頼すれば、弁護士が施主の方に代わって施工会社と交渉を行い、損害賠償などの請求を行います。施工会社と話し合いをする場合でも弁護士が対応する方が個人で対応するよりも任意での解決が期待できるでしょう。
施工会社が話し合いに応じない場合や話し合いでは納得いく結論が出ないという場合には、後述のように裁判などの法的手段によって解決を図ることになります。この場合にも、弁護士であれば最終的な解決までサポートすることができます。
施工業者との話し合いではトラブルの解決ができないという場合には、以下のような解決方法があり得ます。
施工業者との話し合いでは解決できないという場合には、第三者を入れることによって解決できる場合もありますので、ADRを利用することが考えられます。
ADRとは、裁判外紛争処理手続きのことをいい、中立・公正な第三者が間に入ってトラブルを解決する手続きです。リフォーム工事のトラブルに関するADRとしては、以下のものがあります。
ADRの手続きは、施主の方が個人で進めることもできますが、弁護士に依頼をすることによって、ADRの申立て手続きから、ADRの期日の対応まで任せることが可能になります。
民事調停は、裁判のように裁判官に判決を下してもらうのではなく、当事者による話し合いによってトラブルの解決を目指す手続きです。リフォームに関するトラブルについては、建築トラブルに詳しい弁護士や建築士などが調停委員となることが多いので、専門的見地からの意見をもらいながら交渉することができます。
調停が成立した場合には、裁判での判決と同様の効力がありますので、合意内容に従わない場合には、強制執行などの手続きも可能になります。
ADRや民事調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、施工業者が話し合いに応じない場合や意見が対立して合意が得られる見込みがないという場合には、ADRや民事調停では解決が難しいといえます。このような場合には、裁判所に訴訟を提起することによって最終的な解決を図ることになります。
裁判では、ADRや民事調停のような話し合いの手続きではなく、証拠に基づいて主張立証をしていかなければなりません。非常に専門的かつ複雑な手続きになりますので、裁判をする場合には、弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。
リフォーム工事では、その性質上、工事に着手したあとに追加工事が発生するケースが多くみられます。工事完成後に追加費用の支払いで揉めることのないようにするためには、その都度、追加工事契約書や見積書を求めるなどして、契約内容を明確にしておくことが大切です。
また、リフォーム工事のトラブルは、建築に関する専門的な知識がなければ適切に対応することが難しい分野です。トラブルを適切に解決するためには、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。ベリーベスト法律事務所では、リフォーム工事の追加費用にまつわるトラブルについてのアドバイスを行っております。お困りの際には、電話かメールでお問い合わせください。