弁護士コラム

【ニュース解説】<アスベスト健康被害訴訟>建材メーカーと地裁判決前に和解。全国初。

  • アスベスト健康被害
公開日:2026年09月07日
更新日:2026年09月07日

【ニュース解説】<アスベスト健康被害訴訟>建材メーカーと地裁判決前に和解。全国初。

アスベスト健康被害訴訟において建材メーカーとの和解が地裁判決前に成立しました。

これは全国初で画期的なことです。

しかし、和解まで6年もの長い時間が過ぎてしまったのも事実です。

ニュース概要

2026年6月26日、首都圏建設アスベスト訴訟・東京3陣(建設現場で働きアスベスト健康被害にあった方々が、2020年に国とアスベストを含んだ建材を作っていたメーカーを訴えた裁判)で、一部の原告と建材メーカーの和解が判決を待たずに成立したと報道されました。

訴訟提起から和解成立まで6年という時間がかかっていますが、第一審の判決を待たずに建材メーカーとの和解が成立したのは初めてということで、アスベスト健康被害訴訟の歴史の中では画期的なことと言えるでしょう。(すでに国とは和解が成立済み)

これまでの訴訟の中で、和解が一番短い期間で実現できたのは喜ばしいことではあります。しかし、ニュースによれば和解前に亡くなった原告もいらっしゃるとのこと。訴訟を担当した首都圏建設アスベスト訴訟東京3陣訴訟弁護団は、和解後の声明の中で「裁判をしなくても建材メーカーから補償を受けられるよう、メーカー側が建設アスベスト給付金制度にお金を拠出すること」を求めています

建設アスベスト給付金制度とは、建設現場でアスベスト健康被害を受けた方々に対して国が補償金を出す制度です。一般的には、自分が受けた損害に対して賠償してもらいたい場合は、訴訟を起こさなければなりませんが、アスベスト健康被害については被害者が多いことや、補償までに時間がかかりすぎることを踏まえて、この制度が作られました。

アスベスト(石綿)は現在使用・製造禁止になってはいますが、過去作られた多くの製品の中に含まれています。そのため、多くの業界で健康被害が発生しています。国はアスベスト健康被害を受けた方に対して一定の補償が受けられるよう制度を整備していますが、十分ではありません。今回のように、補償を受けるまでに長い時間がかかっていることも未だ解決できていない問題のひとつです。

アスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説

アスベストは、「石綿」といわれ、熱、摩擦、酸、アルカリに強く、丈夫で変化しにくいうえ、加工しやすく、安価という特徴から、1960年代~1990年代にかけて、建材や摩擦材、断熱材といった様々な工業製品に利用されてきました。
しかし、アスベストを吸入すると、長い潜伏期間を経て、中皮腫や肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの疾病を発症することがあります。

建設現場でアスベスト健康被害を受けた方々は、厚生労働省に建設アスベスト給付金を申請することで、一定の条件のもと、裁判によらずとも、国の制度によって早期の被害救済を受けることができます

これに対して、建材に含まれていたアスベストによる健康被害については、賠償を受けるための公的な給付制度は整備されておらず、多くの場合、建材メーカーに対する訴訟提起等の手段を通じて、損害賠償請求を行う必要があります

今回の和解が成立するまでには次のような経緯がありました。
これは、建材メーカーの製造販売したアスベストを含む建材が建設現場にて使用されていたため、建設作業従事者が長期間にわたり石綿粉じんにばく露したとして、建材メーカーに対して損害賠償を請求するものでした。

この裁判に先んじて起こされていた別の訴訟において、最高裁判所は、2021年5月17日に、先行する東京1陣訴訟に関して国及び一部建材メーカーらの賠償責任を認める判決を言い渡しました。この最高裁判決を受けて締結された国と原告団との基本合意に基づき、被災者99名が国との間で和解しました

さらに、東京高裁では、2025年8月7日、先行する東京1陣訴訟及び東京2陣訴訟で、建材メーカーとの大規模な和解が成立しました。
この東京高裁の和解を踏まえて、東京3陣訴訟でも、東京地裁において和解協議が行われたのです。

東京3陣訴訟は提訴から和解成立まで約6年という歳月を要したものの、その背景には先行する東京1陣・東京2陣訴訟における審理や和解の積み重ねがありました。
このような先行訴訟における審理や和解の積み重ねがあったにもかかわらず、東京3陣訴訟においても、提訴から和解成立まで約6年を要しました。

今後は、被害者が同様の長期間の紛争、訴訟を余儀なくされることのないよう、建材メーカー側の協力の下、建設アスベスト給付金制度に類する迅速な補償の仕組みや制度整備が検討されるべきとの指摘もあるところです。アスベスト健康被害は長い潜伏期間を伴うため、被災者の高齢化が進んでいることも大きな課題です。被害者が長期間にわたる紛争や訴訟を余儀なくされることなく、適切な補償を受けられる仕組みの整備に向けて、本件和解をきっかけとした今後の議論の進展が期待されます。

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